境界例

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テンプレート:パーソナリティ障害

境界例(きょうかいれい Borderline case)は精神医学の用語である。

境界例とは、旧来の境界例概念に基づく、パーソナリティ障害における広義の疾患概念であり、主にDSMのB群パーソナリティ障害反社会性パーソナリティ障害境界性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害演技性パーソナリティ障害)の病理を持った患者を指す。境界性パーソナリティ障害と混同されやすく、一般的に境界例と呼称される場合、現代では基本的に境界性パーソナリティ障害を指すが、時には他のパーソナリティ障害をも指している言葉として使用される事もあり、歴史的にはパーソナリティ障害全般を全て含む概念として使われていた。

語義

境界例と境界性パーソナリティ障害は混同されがちであるが、同一の言葉ではない。

アメリカの精神分析医ナイトによると、境界例という言葉は1928年にリックマン(Rickman) が用いたのが最初である。1900年代初頭、表面上は神経症の症状を呈しながら本質的には精神分裂病であると考えられていた病態があった。その状態は境界例、潜伏性精神病、偽神経症性分裂病などという呼び方をされていた。

精神分裂病の亜型である、神経症と分裂病の移行状態である、中間に位置する一臨床単位である、パーソナリティの障害であるなど、様々な概念の変遷があり、各国の研究者、臨床家達の間で議論が交わされた。そしてその概念は後のパーソナリティ障害の元となった。

その後1980年代に入り、DSM-III により、境界例概念の症状が具体的に細分化され、境界性パーソナリティ障害スキゾイドパーソナリティ障害反社会性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害等、パーソナリティ障害の診断名が明確に規定された(具体的な診断名はパーソナリティ障害を参照)。よって境界例とは広義の疾患概念であり、境界性パーソナリティ障害とはその一部に属するものである。

典型例

テンプレート:Main 境界例の最も中心的な患者とされている、境界性パーソナリティ障害における症状は以下の通りである。

  • 不安定な対人関係 - 理想化とこき下ろしを激しく往復する。配偶者、恋人や親友などに対して特に多い。
  • 原始的な防衛機制 - 分裂、投影性同一視、否認などの多用。
  • 衝動性乱用依存、攻撃性、自殺企図、浪費、性的逸脱行動など。
  • 自己同一性の拡散 - 過去から現在に至る一貫した自己像が抱けない、慢性的に空虚感を持つ、など。

境界例はアルコール依存症薬物依存症ギャンブル依存症リストカット過呼吸幼児虐待摂食障害うつ病などさまざまな表現形・症状で表面化することが多い。症状に応じて抗うつ薬抗精神病薬などを対症的に投与することがある。自殺企図などで生命が危機にさらされている場合などには入院が必要な場合もある。

これはあくまでも境界性パーソナリティ障害の典型例であり、他のパーソナリティ障害においてもこの特徴が全般的に確認されている。そのため、他のパーソナリティ障害における症状は若干異なる。また治療技法も異なる。

原因

下のように諸説あるが、まだ原因ははっきりとは分かっていない。

遺伝要因

カーンバーグなどは環境よりも生まれながらの素質に注目している[1]。子供の生来的な素質(遺伝的要因)が養育(母親という環境)に対して何らかの影響を及ぼしている可能性があると言われている。またこのような子供は、環境が自分に適切に反応してくれないことを過剰に感じてしまうかもしれない可能性がある。このことは双子の追跡研究からでも分かっており、遺伝的素質は無視できない部分もあるが、絶対的とは言えないと一般的には考えられている[2]

環境要因

マスターソンやコフートなどが環境要因に注目している[3]。例えば子供が病気になったため母親の育児がおろそかになったり、父親の失業やアルコール依存からくる暴力など、その要因は多岐にわたっている。また社会の変化による家族関係や親自身の変化が子供に大きな影響を与えているかもしれないことを示唆している。ただしどれもが絶対的ではなく、複雑な家族背景や社会背景によって生じていると推測されている。

参考文献

脚注

  1. オットー・カーンバーグ『重症パーソナリティ障害』より
  2. 岡田尊司『パーソナリティ障害』より
  3. ハインツ・コフート『自己心理学セミナー』加えてジェームズ・マスターソン『自己愛と境界例』より

関連項目

テンプレート:ICD-10におけるパーソナリティ障害