国際通貨基金

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テンプレート:Infobox UN 国際通貨基金(こくさいつうかききん、テンプレート:Lang-enIMF)は、通貨為替相場の安定化を目的とした国際連合専門機関。本部はアメリカ合衆国ワシントンD.C.2011年9月現在の加盟国は188ヶ国。

沿革

為替相場の安定を図ることなどを目的に1944年7月アメリカ合衆国ニューハンプシャー州ブレトンウッズで開かれた国際連合の「金融財政会議」のブレトン・ウッズ協定によって、戦後復興策の一環として国際復興開発銀行と共に1946年3月に29ヶ国で創設された。

1947年3月にIMF協定が発効し実際の業務を開始し、国際連合と協定を結び国連の専門機関となった。世界銀行と共に、国際金融秩序の根幹を成す。

業務

加盟国の経常収支が著しく悪化した場合などに融資などを実施することで、国際貿易の促進、加盟国の高水準の雇用と国民所得の増大、為替の安定、などに寄与する事を目的としている。 また、為替相場の安定のために、経常収支が悪化した国への融資や、為替相場と各国の為替政策の監視などを行っている。各国の中央銀行の取りまとめ役のような役割を負う。

毎年秋に年次総会と呼ばれる世界銀行と合同の総務会を開催。また年2度の国際通貨金融委員会の開催も行っている。

主要会議

総会

総会(テンプレート:Lang-en)は、毎年秋に1回、世界銀行と合同で開催される。

国際通貨金融委員会

国際通貨金融委員会(テンプレート:Lang-en、IMFC)は、年に2回開催される。

構成

意思決定機関として以下の二つがある。

総務会

テンプレート:Lang-en(一般的に総務会と訳される)」は、各国2人の代表者(財務大臣中央銀行総裁など)で構成される最高意思決定機関で、年1回開催される。投票権は出資金の支払い比率に応じて与えられる。この出資金がIMFの財源であり、経済規模に応じて定められている。

理事会

テンプレート:Lang-en(一般的に理事会と訳される)」は、24名の理事によるIMFの通常業務に関する執行機関。

幹部

理事

現在24名で構成されている。

専務理事

テンプレート:Lang-en(一般に専務理事と訳される)」は、理事会の議長と国際通貨基金の代表を務める。世界銀行の総裁に米国出身者が選出されているのと同様、国際通貨基金の専務理事には欧州出身者の就任が不文律となっているが、かつてカムドシュの後任として日本の榊原英資元財務官が、またストロスカーンの後任にメキシコ中央銀行のカルステンス総裁の起用が検討されたことがある。

専務理事 就任 退任
1 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon ベルギー 1946年5月6日 1951年5月5日
2 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon スウェーデン 1951年8月3日 1956年10月3日
3 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon スウェーデン 1956年11月21日 1963年5月5日
4 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon フランス 1963年9月1日 1973年8月31日
5 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:NED 1973年9月1日 1978年6月16日
6 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon フランス 1978年6月17日 1987年1月15日
7 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon フランス 1987年1月16日 2000年2月14日
8 60px ホルスト・ケーラー テンプレート:Flagicon ドイツ 2000年5月1日 2004年3月4日
代行 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 2004年3月4日 2004年6月7日
9 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon スペイン 2004年6月7日 2007年10月31日
10 60px ドミニク・ストロス・カーン テンプレート:Flagicon フランス 2007年11月1日 2011年5月18日
代行 60px テンプレート:仮リンク テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 2011年5月18日 2011年7月5日
11 60px クリスティーヌ・ラガルド テンプレート:Flagicon フランス 2011年7月5日 (現職)

クォータ改革

2008年3月28日、クォータ(各国の投票権等の基礎となる出資額)の改革について、理事会において決議案が合意された。クォータ改革の最大の目的は、世界経済における加盟国の相対的地位をクォータ・シェアにより反映させることであり、この改革によって新興国市場でのIMFの役割と責任は高められるとされている。

出資比率

出資比率は2012年現在下記の通りだが、BRIC諸国の比率は高められ、今後中国が3位、インド、ロシア、ブラジルがそれぞれ8位、9位、10位になる予定。IMFへの出資額が世界第2位の日本がIMFの管理下におかれることはほぼありえない。仮に日本政府が債務不履行になり財政自主権が失われるとは、 財政運営が極度に困難となり財政の自由度が失われる状況であると財務省は定義する[1]。また財務省は日本のような自国通貨建てで国債を発行していて、かつ通貨発行権を有する国が債務不履行になることを否定している[2]

順位 国名 比率
1位 アメリカ 17.67%
2位 日本 06.56%
3位 ドイツ 06.11%
4位 イギリス 04.51%
4位 フランス 04.51%
6位 中国 04.00%
7位 イタリア 03.30%
8位 サウジアラビア 02.93%
9位 カナダ 02.67%
10位 ロシア 02.49%

日本との関係

ファイル:Official document (S39).jpg
1964年、8条国移行に関する外為法改正について、通商産業大臣閣議を求めることに関する通商産業省の決裁文書。
  • 1952年(昭和27年) - 日本がIMFに加盟し、理事国になる。
  • 1964年(昭和39年) - 国際収支の赤字を理由に為替制限ができる14条国から、それができない8条国へ移行。
  • 1970年(昭和45年) - 任命理事になる。
  • 2006年(平成18年) - 小寺清が日本人として初の合同開発委員会の事務局長となる。

問題点

テンプレート:出典の明記 かつては融資を行う際に、内政不干渉の原則を守り、特に条件をつけることはなかった。しかしながら、成果があがらない国も多く、踏み倒しも横行した。

このため、1979年以降は融資の効果を阻害するような政治状態の国には、政策改善を条件にした融資を行うようになった。この際に、対象国に課せられる要求のことを「構造調整プログラム(Structural Adjustment Program)」と呼ぶ。このIMFの構造調整プログラムにより、アフリカや南米、アジアなどの発展途上国では、様々な経済問題(失業など)が発生し、社会が混乱に陥ったという見解が多い。

テンプレート:See also

日本の財務省との関係

日本はIMFへの第2位の出資国である[3]。副専務理事は4人いるがこのうち1人は日本人で、財務省財務官を退職した後の指定ポストとなっている[3] 。日本はこのほかに理事ポストを確保し、財務省からの出向者が務めている[3]。理事室には理事のほかにも財務省からの日本人スタッフが多くいる[3]。日本の新聞のIMFに関する記事は、ワシントン駐在の日本人記者が理事室を取材して書いていることが多い[4]。元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一によれば、日本の財務省からの出向者がIMFの資料を要約し説明するため、IMFには財務省の意向が入りやすいとのことである[4]

2010年7月14日、IMFが日本に対し「消費税15%」を提言するレポートを発表した[5]。「消費税率を15%に引き上げれば、国内総生産(GDP)比で4-5%の歳入増が生じる」「当初は、成長率を0.3-0.5%押し下げるが、老後のための貯蓄が消費に回り、日本経済への信用度が増すことで海外からの投資が増えるなどの結果、毎年0.5%ずつ成長率を押し上げる」としている[6]

しかし、この提言について経済学者の相澤幸悦は「IMFには各国の財政政策を指導する権限があるが、それは財政危機に陥った国などに対して資金支援を行なった場合に限ってのことであり、アメリカに次いで2番目の出資国である日本に対してこんな指導を出すのはあまりにも不自然である。」と指摘している[6]。また産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久は「この提言も財務省の意向を十分に反映しているものであることは間違いない」と指摘している[6]

経済学者の浜田宏一は2010年8月時点に「政府の信用状態を正確に把握するには、粗債務ではなく純債務を見るのが常識である。純債務であれば日本政府の負債はGDP比60%以下にもかかわらず、同レポートでは粗債務の数字(日本政府の負債はGDP比約180%)を用いている。またレポートは日本円へのソブリンリスクを懸念しているが、日本は世界最大の債権国であり、円に対する市場の信任は高く、リスクが高いとは到底いえない。さらにこれまで金融緩和などの対策を講じていないことに言及せず、デフレの危険が伴う消費税増税を求めるのにも無理がある」と指摘している[6]

IMFは、2014年5月30日にも、2015年10月に消費税率の10%引き上げを行うとともに、最低でも15%に引き上げることを重ねて求める声明を出した[7]。一方で、安倍政権が進めている法人税率の引き下げについて「財政リスクの高まりを防ぐための財源確保が必要だ」とした上で「法人税の税率引き下げは段階的に実施することで、財政リスクの上昇は抑えられる」との声明を出している[8]

不祥事

IMF国際通貨基金トップのドミニク・ストロス・カーン氏が女性強姦未遂容疑で米当局に逮捕され、この事は米国メディアで連日大きく取り上げられた。トップのストロスカーン氏の逮捕とあって、IMFの政策運営に空白が生じれば、財政危機が深刻化し国債利回りが急上昇しているギリシャ問題、原油高騰を招いている中東・北アフリカ情勢への対応など、重要課題への対応が遅れることなどへ大きな懸念が高まった。なおストロス・カーン容疑者は事件について否認している。

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脚注

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関連項目

テンプレート:Sister

外部リンク

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  1. 衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対する答弁書 2011年2月10日
  2. 外国格付け会社宛意見書要旨
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 高橋洋一の自民党ウォッチ IMF「日本の消費税15%が必要」報告 実はこれ財務省の息がかかった数字なのだ(1/2)J-CASTニュース 2013年8月8日
  4. 4.0 4.1 連載:「日本」の解き方 IMFの記事で増税が強調されるワケ(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)ZAKZAK 2012年4月24日(2012年4月26日時点のアーカイブ
  5. 日本の消費税15%をIMF提言 来年度から段階的に asahi.com(朝日新聞社)2010年7月16日9時13分
  6. 6.0 6.1 6.2 6.3 「大新聞は国民の敵だ② これこそ『世論誘導』ではないのか IMF 国際通貨基金 『消費税15%提言』報道に財務省のヤラセ疑惑」 週刊ポスト、2010年8月6日号41頁-42頁。
  7. IMF、消費税「最低15%必要」 軽減税率はコスト増大と指摘日本経済新聞 2014年5月30日
  8. IMF、法人税下げ「財政リスクの高まり防ぐため財源確保を」日本経済新聞 2014年5月30日