国際情報統括官組織

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国際情報統括官組織(こくさいじょうほうとうかつかんそしき、テンプレート:Lang-en-short)は、外交情報の収集・分析を専門に行う外務省の局である。トップである国際情報統括官は定員1名。

2004年(平成16年)8月、領事移住部の領事局への格上げに伴う組織改編によっての数が足りなくなったことから、それまでの国際情報局から局長分掌官に変更されたが、実態は局時代と殆ど変わらない。

内閣情報調査室警察庁警備局)、防衛省情報本部)、公安調査庁とともに内閣情報会議合同情報会議を構成する。

組織概要

外務省では、地域局が在外公館からの公電を集約し、政策判断に当たる一方で、国際情報統括官組織が政策判断から距離を置き、情報分析に専念している。

組織の性格

“分析”機関としての色彩が強い。類似している外国機関としては、アメリカ国務省の情報調査局(INR; Bureau of Intelligence and Research)が挙げられる。

したがって国際情報統括官組織は、協力者工作を行うなどのヒューミント(HUMINT, human intelligence)は組織的には行っていない。

また、通信・電波傍受は行われていないが、内閣衛星情報センター情報収集衛星計画に参画している。

組織の編成

2005年(平成17年)現在の定員は約80人。

幹部は、局長級である国際情報統括官を長として、ナンバー2である大臣官房審議官参事官、国際情報官(課長分掌官)4人で構成されている。

国際情報官は、それぞれ第一から第四までの国際情報官室を統括しており、第一国際情報官室が企画、情報衛星運用、第二国際情報官室が国際テロ、大量破壊兵器、第三国際情報官室が 東アジア、東南アジア、大洋州、南西アジア地域の分析、第四国際情報官室が欧州、中央アジア、米州、中東、アフリカ地域の分析を担当している。各室の定員は、20人程度とみられる。

職員は、国家公務員総合職(旧国家公務員I種)、外務省専門職および国家公務員一般職大卒程度技術系(旧国家公務員Ⅱ種技術系)から外務省に採用された職員で構成され、他省庁からの出向者も在籍している。また、現地語が堪能な地域研究者を、「専門分析員」として期限付(最長2年間)で採用している。

組織の能力

国際情報統括官組織には、前述のように外交官が配属されているが、配属期間は数年ほどである。

外務省では外交官として採用された人物は、研修語(専門とする外国語)を決められ、研修語が語地語となっている国の大学院などで2年ないし3年の在外研修を受ける。さらに、研修語が現地語となっている地域の在外公館に原則1回以上は在勤するため、外交官の語学力・現地情勢の知識は高い。そのため、分析能力については評価する向きもある。テンプレート:要出典

しかし外務省の構造的な問題として、国際情報統括官組織の地位は比較的低く、情報収集の最前線である在外公館との連携も不十分であるとされる。また、国家公務員I種で採用されたキャリア外交官はジェネラリスト的な人事が優先され、研修語が通用しない地域の在外公館に配属されることも多い。そのため、在外公館の幹部外交官に現地語・現地情勢に疎い人物が少なくないなど、在外公館の情報収集体制にも問題がある

展望

外務省は、2005年(平成17年)4月、外務省の情報活動の強化策を話し合う有識者懇談会「対外情報機能強化に関する懇談会」を設置し、同年9月、最終報告「対外情報機能の強化に向けて」を公表した。

同報告書は、ヒューミントを行う“情報官”を在外公館に配置することや、イギリス外務省のSISをモデルにした情報機関を外務省に設置すること等を提言した。「情報官」については、平成18年度からの5年間で100人を配置するとも報じられた。

ただし、外国でのヒューミントでは、任国の情報機関から常に行動確認(尾行・張込み・盗聴)をされ、場合によっては拉致や暗殺の脅威にされられるなど、非常な危険を伴う。そのため、世界各国ではヒューミントは情報機関が行っている。例えば、イギリス外務省のSISも、事実上は外務省とは別組織である。

2006年9月、中国の北京高級人民法院(日本の高等裁判所相当)は、判決の中で、情報統括官組織を“スパイ組織”、職員の外務省幹部をケースオフィサー、在北京日本大使館書記官と日本の新聞記者3人(うち1人は読売新聞記者)をスパイと断じた(読売新聞08年3月11日「北京の高級人民法院、判決で日本外交官をスパイ断定」)。

関連項目

組織長

部員

  • 佐藤優(1998年国際情報局分析第一課主任分析官)
  • 高橋博史(2008年第二国際情報官室情報分析官、2011年国際情報官(第二担当))
  • 井出敬二(2009年審議官)
  • 北岡元(国際情報課長)

外部リンク

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