国鉄417系電車

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テンプレート:鉄道車両 国鉄417系電車(こくてつ417けいでんしゃ)は、1978年昭和53年)に日本国有鉄道(国鉄)が設計・製造した交直流近郊形電車。全車日立製作所が製造した。1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化時には、全車東日本旅客鉄道(JR東日本)に承継された。

本項では、阿武隈急行がJR東日本より購入し、所有するA417系電車(A417けいでんしゃ)についても記述・解説を行う。

概要

1970年代の地方都市圏での人口増加・通勤通学需要の増加に伴い、それまで運用されていた客車列車ではデッキ付近の混雑で乗降に時間がかかり、地元からサービス改善の要望も出されていた[1]。このため、これら客車を順次気動車や電車に置換える必要が生じていた。

都市圏用の近郊形電車で直流・交流いずれの電化区間も運行可能な系列としては、当時既に415系電車が常磐・北九州地区へ投入されていた。しかし415系は、地方路線へ投入するには以下の問題点があった。

  • 半自動戸閉め装置・耐寒耐雪構造・抑速ブレーキが未装備のため寒冷地・山岳路線での運用に難がある。
  • 客用扉付近にステップがないためホーム高の低いが多く残る線区では車両側もしくは施設側に対策が必要。

このため地方の気候や路線輸送事情に対応する車両を新設計する要請から開発されたのが本系列である。

構造

当時の国鉄は電車に汎用性を追求していたことから、北海道以外では基本的に交流区間であっても交直両用電車を投入する方針としていた。このため本系列も直流1,500V/交流20,000V50Hz/同60Hzの3電源方式対応車として設計された。

しかし本系列は、営業運転開始から交流50Hz区間でのみ運用され続け、後に誤操作防止のため交直流切替スイッチが交流側に固定された。

車体

1977年から製造されていたキハ47形気動車の車体構造に類似し、乗降口をやや中央に寄せたデッキなしの片側2扉(両開き)構造とした。車体断面も当時製造されていた気動車・客車との共通化が図られた。

前面は、153系電車以来国鉄の急行・近郊形電車で採用されているパノラミックウインドウの貫通形である。貫通扉には膨張性シールゴムを設けて運転室の気密性向上を図った。

運転台は115系電車1000番台車に準じているが、従来の近郊形のものより100mm拡張した前面強化型とした。

前照灯シールドビーム2灯を前面窓下に設置し、中折れシャッターカバー付耐雪構造のタイフォン(警笛)を装備する。

前面下部の排障器(スカート)は、寒冷地での使用に対応した大型のものが設置された。

テンプレート:Vertical images list 寒冷地での運用を考慮し、各車両には雪切室を設置したほか、客用扉は自動・半自動切替式を採用。編成中のどの運転台からでも操作が可能なシステムとした。

塗装は当初、ローズピンク(赤13号)の地にクリーム4号の太帯を正面窓下に入れた交流・直流両用近郊形電車の標準色としたが、JR化後の1990年頃に東北地域本社色と呼ばれるクリーム10号アイボリー)を地に緑14号で帯を巻く塗装に変更された。

また車体側面にはサービスの一環と省力化から、側面行先表示機は電動式方向幕を装備する。

  • K-5編成で分割民営化前後の約1年間にLED液晶での表示試験を実施した。

台車・機器

台車は従来の近郊形車両がコイルバネを使用したDT21系を採用していたのに対し、乗心地向上のため特急・急行形と同等のDT32F形(電動車)・TR69J形(制御車)空気バネ台車を搭載した。

  • 寒冷地での運用を考慮して、軸バネ・軸箱と電動台車のブレーキシリンダには防雪カバーを取り付け、TR69J形ではのブレーキシリンダにゴムベロースを採用し、踏面清掃装置を装備した。

主電動機は強制通風冷却方式としたMT54E形直巻整流子電動機を搭載。歯車比は415系と同様の4.82とした。

主制御器は381系電車で採用されたCS43形を一部改良したCS43A形電動カム軸式抵抗制御器を搭載。1基で2両8基分の主電動機を制御する1C8M方式である。

ブレーキは415系同様のSELD式応荷重装置および発電制動付き電磁直通空気ブレーキのほか、奥羽本線福島 - 米沢間(板谷峠)をはじめとする急勾配区間での運用を考慮[1]し、抑速ブレーキならびに耐雪ブレーキを装備した。

補助電源装置の電動発電機(MG)は、強化した暖房機能や将来の冷房搭載にも対応する160kVAをクハ416形に搭載。

ジャンパ連結器は、当初は他系列との混用を想定しなかったことから74芯のKE96形1基と故障時に455系グループによる推進・牽引を考慮した補助回路接続用19芯のKE76形1基を装備した[3]

車内設備

ファイル:クモハ417-5ドアスイッチ.JPG
クモハ417-5</br>ドアスイッチ(車外側・開操作のみ行う)

座席は固定式クロスシートとロングシートの組合せ(セミクロスシート)である。クロスシート部の間隔は、それまでの近郊形車両の標準であった1,420mmから1,490mmへと70mm拡大され、居住性が急行形車両並に向上した。

客室内の寒冷地対策として、両開き式客用半自動扱いへの切替を可能としたほか、扉脇に袖仕切と上部にガラス製風防を設置した。

  • 半自動扉は、当初手動開閉式で適用時期も限られていたが、1996年に押ボタン操作式に改造後は通年半自動扱いに変更された。半自動扱い中にボタン操作を行うとブザーが鳴るが、車掌によるドア開閉時は鳴らない。

普通列車の冷房化が推進されていた時期にも関わらず、都市部を優先する方針・仙台地区の気候・当時の国鉄財政事情などから経費節減のために屋根上冷房装置搭載場所に塞ぎ板を取付た冷房準備工事車として落成した。

車両形式

クモハ417形(1 - 5)
モハ416形とユニットを組む下り方(一ノ関向き)制御電動車。CS43A形主制御器・主抵抗器を搭載し、1・4位側面に主電動機冷却風用雪切室を設置する。定員108名(座席61名)。
モハ416形(1 - 5)
クモハ417形とユニットを組む中間電動車。耐雪形のPS16H形パンタグラフ空気遮断器・交直切換器・交流避雷器・TM20形主変圧器・RS45B形整流器・主平滑リアクトルを搭載し、1・4位側面に主電動機冷却風用雪切室を設置する。定員124名(座席68名)。
クハ416形(1 - 5)
上り方(黒磯向き)制御車。160kVA電動発電機 (MG) とC2000形空気圧縮機 (CP)を搭載し、3位側隅にトイレと4位側隅にMG冷却風用雪切室を設置する。定員107名(座席60名)。

テンプレート:Triple image

編成

以下の編成を組成する。

  テンプレート:TrainDirection
仙台運転所</br>編成番号 クモハ417 モハ416 クハ416
K-1 1
K-2 2
K-3 3
K-4 4
K-5 5

本系列は、上述仙台地区向け3両編成x5本計15両のみの製造で打ち切られた。

運用

1978年に仙台地区近郊輸送改善を主目的に製造された3両編成x5本計15両は仙台運転所(現・仙台車両センター)に配置された[1]。主に東北本線(黒磯 - 福島 - 仙台 - 一ノ関間)で普通列車・快速列車仙台シティラビット」のほか、一時は仙山線(仙台 - 作並間)普通列車でも運用された。

  • 上述のように交流電化区間での運用に終始し、直流電化区間で営業運転を行ったことは今に至るまで一度もない[4]
ファイル:417mc-sannou.jpg
陸前山王駅構内側線での留置</br>2007年9月

一貫して仙台配置・仙台地区周辺で運用され続けたが、E721系電車への置換えに伴い、2007年7月1日をもって全編成が定期運用を終了した。その後は全編成が陸前山王駅に留置されたが、以下の状況となった。

K-1編成
2008年6月に郡山総合車両センターに配給回送され整備。阿武隈急行に後述するA417系電車として譲渡。
K-4編成
2007年11月に郡山総合車両センターに配給回送。同年12月岩切駅に隣接する仙台レールセンター(新幹線総合車両センターに併設)に配給回送。
2008年1月に書類上廃車とされたが、以後は車籍のない訓練用機械扱いで使用されている。
K-2・K-3・K-5編成
2008年8月に鹿島臨海鉄道神栖駅へ配給回送され廃車。

A417系電車

テンプレート:Vertical images list 2007年に阿武隈急行はJR東日本から中古車両3両編成1本を購入し増備する方針を発表した[5]。JR東日本と協議検討を重ねた結果、状態の良い417系電車を購入するに至り2008年6月から郡山総合車両センターで元仙台車両センター所属のK-1編成に同社向け仕様変更の改造工事を施工した。

2008年10月30日から当初の予定[8]通り、営業運転を開始した[9]。最近は梁川 - 福島間の平日朝夕限定で運用される。

阿武隈急行A417系電車編成表
  テンプレート:TrainDirection
車両</br>番号 AT418 AM417-2 AM417-1
旧番号 クハ416-1 モハ416-1 クモハ417-1

テンプレート:Triple image

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister テンプレート:国鉄の新性能電車 テンプレート:JR東日本の車両リスト テンプレート:阿武隈急行の車両

テンプレート:リダイレクトの所属カテゴリ
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 テンプレート:Cite journal
  2. テンプレート:Cite journal
  3. 後に増備された717系はKE96形を装備したため併結運用が可能。ただし主制御器の違いによる起動時のいわゆる「ドン突き衝動」が発生しやすい(詳細は国鉄115系電車#3500番台(JR西日本)も参照)。
  4. ただし、初期の側面方向幕には上野宇都宮などの東北本線直流区間のコマが存在した。
  5. 河北新報』2007年6月16日。
  6. テンプレート:Cite web
  7. 営業運転開始時に前面貫通扉に阿武隈急行のCIマークが追加された。
  8. テンプレート:Cite journal
  9. テンプレート:Cite web