国会議員政策担当秘書

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国会議員政策担当秘書(こっかいぎいんせいさくたんとうひしょ)とは、日本国会議員公設秘書の一つであり、一般的には単に政策秘書(せいさくひしょ)と呼ばれることが多い。政策秘書の法的な身分は特別職国家公務員である。就任に必要な要件が定められており、衆議院並びに参議院の主催する国会議員政策担当秘書の資格試験に合格するか、任用の要件を満たした者だけが就任することができる。

概説

国会法132条2項「主として議員の政策立案及び立法活動を補佐する秘書一人を付することができる」を根拠として、一議員当たり一人置くことができる秘書である(置かなくてもよいが、その場合、から給与は支払われない)。

「国会議員政策担当秘書」の資格試験合格者又は、選考採用審査認定者である必要がある。試験は、多枝選択方式、論文式、口述式で行われる。最終合格発表日現在において65歳未満の者でなければならない。

官僚主導型から、議員主導型政府を目的とし、1993年国会法改正により導入され、相当の人材を確保するため、国費からの高い年俸を保障し、又、国家公務員I種と同等以上の高度な試験を課す等、実効に向けた高い理想を抱いたものであった。

しかし、永年に亘り築かれた官僚層を打破できるまでの人材が確保できない一方で、選挙対策には、政策能力よりも、選挙区との緊密なリレーションであるとの政治風土から、行動力のある秘書を数多く雇いたいとの国会議員のニーズがあり、本来の導入目的を達しているとは言いがたい。

任用資格

資格試験合格

資格試験は毎年実施され、日程は1次が7月上旬(通例第1・第2の土日、場所は東京大学本郷キャンパス)、2次が8月下旬(通例第3・4週の平日、場所は参議院及び衆議院)。科目は1次が短答式(一般教養科目)と論文式(必修が1問、選択必修が2問のうち1問の計2問)、2次は口述。1次の短答式で得点が低かった場合は、論文の採点はされない。採用合格者発表は9月中旬に、官報への受験番号の掲載及び郵送通知によって行われる。試験は、衆議院と参議院が持ち回りで行っており、平成21年は衆議院が担当した。

難易度は国家公務員I種試験と同等以上とされる。試験科目は少ないが、論文試験の問題が非常に高度なため、国家公務員試験I種より難しいとも言われる。例年の合格者数は20数名で、合格率は4~5パーセント程度である。合格者の年齢幅が広く、また、大学院卒など高学歴者の比率が高い事が特徴である。

受験資格は4年制大学卒(見込み含む)及び試験委員会がそれと同等以上の学力があると認める人。2005年より65歳以上の人は政策秘書として採用出来ないよう法改定されたため、「合格発表日現在65歳未満の者」という年齢制限が加わった。

この試験はあくまでも資格試験であり、合格により秘書としての採用が担保されているわけではない(採用や解職については国会議員が決定する)。

かつてはLEC東京リーガルマインドで試験対策講座が行なわれていた。

選考採用審査認定

政策担当秘書試験に合格しなくても、「選考採用審査認定」を受ければ政策担当秘書資格が付与される。

一定年数以上の公設秘書経験者は、「政策担当秘書研修」を修了し、「選考採用審査認定」を受ければ政策担当秘書資格が付与される。「政策担当秘書研修」を受講するには、公設秘書を10年経験するか、あるいは公設秘書を5年以上勤めるとともに、企業や各種団体で、政策立案の仕事を5年以上経験すればよい。実際には、公設秘書を10年経験して政策担当秘書資格を取得する者はまれで、5年の公設秘書のみで資格申請するケースが大半である。この場合、申請者が実際に企業・団体で「政策立案の仕事」に従事したか、実質的に審査されず、虚偽申請を排除できない状態になっている。

また、博士号取得者、司法試験公認会計士試験、国家公務員採用1種試験合格者等であれば、「政策担当秘書研修」を修了せずに直接「選考採用審査認定」を受けて政策担当秘書になることが可能である。

このように、公設秘書が政策担当秘書研修を修了した場合など、従前からの秘書を政策担当秘書として雇うことが可能となっている。現在、実際に政策担当秘書として勤務する者のうち、資格試験を経た者は全体の1割に満たない。

なお、資格審査は、政策担当秘書となろうとする本人からの申請は受け付けられず、政策担当秘書を採用しようとする議員からの申請しか受け付けられない。

政策担当秘書試験合格者出身の国会議員

(試験合格者に限定・元職を含む)(カッコ内は所属政党、試験合格年)

給与等

  • 国会議員の秘書の給与等に関する法律別表第一の定めるところにより、1級2号給(平成21年4月現在 月額429,273円)以上の給料を受ける。
    • 上記金額は、一般職の公務員における特別区の地域手当相当額(2009年度は17%)を含む。
    • 大山礼子によると、これは公務員の課長補佐クラス以上であるという[1]
  • 給料のほか、住居手当、通勤手当、期末手当、勤勉手当が支給される。
  • 退職時には退職手当を受ける。

政策担当秘書試験合格者出身の著名人

  1. 大山礼子『国会学入門 第2版』(三省堂、2003年)211ページ

関連項目

外部リンク