単相3線式

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一般的な家庭用100Vコンセント(JIS C 8303 2極コンセント 15A 125V)平行型
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200Vエアコン設置箇所等に用いられるコンセント(JIS C 8303 2極接地極付コンセント 20A 250V)エルバー型

単相3線式(たんそうさんせんしき)とは、「単三」「単3」とも略称され、単相交流電力を3本の電線・ケーブルを用いて供給する低圧配電方式である。50kVA以下の配電線・引込み線、短距離の構内幹線などに用いられる。低容量の配電に向く方式のため日本においては一般住宅用として普及しており、単相3線式で受電する家屋では屋内に設置する分電盤も単相3線式で構成される。単相3線式で受電した場合、旧来の商用電源電圧である100Vに加え200Vを容易に取り出すことができ、後述する200V用家庭用電気機械器具普及の前提となる配電方式である。

概要

電力供給方式は、星形(Y形)とデルタ形(Δ形)とがある。星形は中心(中性相)を大地に接地し、最大4線で3相が配電される。一方、デルタ形は最大3線で3相が配電される。日本では、電線数が少なく経済的なことからデルタ形が選ばれ、AC100V/AC200Vが一般家庭に配電されている。AC100Vで配電される国は、世界中で日本国だけであり、星形の多くの国では線間電圧AC115V - 240Vなどが供給されている。安定時の低電力供給にはデルタ形でも問題にならないが、異常時(欠相、落雷など)では星形配電では誘導雷の異常電圧は末端に行くまでに弱められるが、デルタ形では誘導雷として末端の一般家庭まで影響が及んでいる。欠相については後述する。

デルタ形式変圧器の三相(仮に第1相、第2相、中性相と区別)の内、第1相又は第2相のいずれかを100V/200Vとし、100V端子を接地して対地電圧をAC100Vと低くし、対地電圧100Vの電圧がかかった第1相(赤)と第2相(黒)とを引き出しAC200V負荷に、第1相(赤)又は第2相(黒)と中性相(白)とを引き出して100V負荷に供給する。

ただし、100V負荷が両電圧線に不均一に接続されていて、なんらかの理由で中性線が欠相すると、軽負荷側の電圧線と中性線間の電圧が上昇し、100V機器に200V近い電圧がかかって焼損する恐れがある。実際、日本国内の消費生活センターに単相3線式分電盤に関する相談が2002年2月から2008年2月までに58件あり、また、火災又は怪我人が出る事故はないものの、「家電製品から白い煙が出て壊れた」との事故報告もあり、国民生活センターでは注意を呼びかけている[1][2]。これを回避するため、次の1 - 3の対策が行われる。

  1. できるだけ100V負荷を両電圧線に均一に接続する(実際には、常時使うのでなければ均一にはできない)。
  2. 100V負荷をすべて同一の相に接続する(片寄せ配線、不平衡負荷の制限の例外)。
  3. 中性相はヒューズを止めて銅バーを付ける また、タイマー連動などで電磁接触器を用いる場合は中性相は接点を通さないで直送りする。

そのほか、単相3線式専用ブレーカでは、中性相は素通りでかつ端子ねじが2点締めされている

  • 負荷の不均一が大きい場合は、1対1の巻数比の単巻変圧器を利用したバランサーを末端に取り付ける。
  • 中性線欠相の時に自動的に回路を遮断する機能を備えた「単3中性線欠相保護付」遮断器を幹線に設置することが望ましい。単3・三相兼用型にはこの機能がないものが多いため、選定の際は注意を要する。

電気設備技術基準の解釈第162条第2項では、例外を除き住宅の屋内電路での対地電圧を150V以下とすることが決められている(同第272条に基づきIEC 60364によって施工する場合はこの限りではない)。単相3線式で得られる実効値の最大105V最低95Vの対地電圧はこれを満たしている。

1980年代以降、一般家庭でも電力使用量が増える傾向にあり、200Vの電気機器が設置されることが増えている。家庭用の200V機器の例としては、高出力のルームエアコン電熱利用の衣類乾燥機,床暖房IH調理器電気温水器などがあげられる。

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電力線を通信回線としても利用する技術、PLC

家屋内に設けられた100Vコンセントは分電盤内でL1相とL2相に振り分けられるが、それらは互いに逆相であるため相間を跨ぐコンセントを用いてのPLCアダプタ利用は通信確立しにくいとされる。PLCアダプタ利用にあたっては、利用予定のコンセントが同じ負荷相に属するか事前に分電盤の構成を確認することが望ましい。

脚注

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関連項目

外部リンク

  1. 読売新聞2008年5月1日12版13面
  2. テンプレート:Cite web