北周のソースを表示

{{基礎情報 過去の国
|略名 = 
|日本語国名 = 北周
|公式国名 = 周
|建国時期 = [[556年]]
|亡国時期 = [[581年]]
|先代1 = 西魏
|先旗1 = blank.png
|先代2 = 北斉
|先旗2 = blank.png
|先代3 = 柔然
|先旗3 = blank.png
|次代1 = 隋
|次旗1 = blank.png
|位置画像 = 北周･北斉･陳･後梁.PNG
|位置画像説明 = 北周（周）の領域。
|位置画像幅 = 300
|公用語 = {{仮リンク|鮮卑語|zh|鲜卑语}}、漢語（[[中国語]]）
|首都 = [[長安]]
|元首等肩書    = [[天王]]/[[皇帝]]
|元首等年代始1 = [[556年]]
|元首等年代終1 = [[557年]]
|元首等氏名1 = [[孝閔帝]]
|元首等年代始2 = [[557年]]
|元首等年代終2 = [[560年]]
|元首等氏名2 = [[明帝 (北周)|明帝]]
|元首等年代始3 = [[560年]]
|元首等年代終3 = [[578年]]
|元首等氏名3 = [[武帝 (北周)|武帝]]
|元首等年代始4 = [[578年]]
|元首等年代終4 = [[580年]]
|元首等氏名4 = [[宣帝 (北周)|宣帝]]
|元首等年代始5 = [[580年]]
|元首等年代終5 = [[581年]]
|元首等氏名5 = [[静帝]]
|変遷1 = [[西魏]]より禅譲
|変遷年月日1 = [[556年]]
|変遷2 = [[北斉]]を滅ぼして、[[華北]]を統一
|変遷年月日2 = [[577年]]
|変遷3 = [[隋]]に[[禅譲]]
|変遷年月日3 = [[581年]]
}}
'''北周'''（ほくしゅう、[[拼音]]：Bĕizhōu、[[556年]] - [[581年]]）は、[[中国]]の[[南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]に[[鮮卑]]系の宇文氏によって建てられた国。国号は単に'''周'''であるが、紀元前11世紀に[[武王 (周)|武王]]が建てた[[周]]を始めとする同名の王朝と区別するために北周と呼ぶ。

== 歴史 ==
=== 建国期 ===
国祖の[[宇文泰]]ははじめ[[北魏]]の[[六鎮の乱]]に加わったが、のちに[[賀抜岳]]に帰順して頭角を現した。賀抜岳の死後、地盤を引き継いで[[関中]]地方に勢威を張り、関西大都督となった<ref name="新十八史略218">駒田『新十八史略4』、P218</ref>。[[534年]]に北魏の大丞相[[高歓]]に圧力により[[洛陽]]から出奔した北魏皇帝[[孝武帝 (北魏)|孝武帝]]は宇文泰を頼り、孝武帝は宇文泰を大丞相にして高歓と対立した<ref name="新十八史略218"/>。孝武帝の出奔により、高歓は北魏の皇族を[[孝静帝]]として擁立して[[東魏]]を建国し、宇文泰はすぐに孝武帝と不仲になって同年の内に皇帝を毒殺し、新たに孝武帝の従兄弟を[[文帝 (西魏)|文帝]]として擁立し[[西魏]]を建国し、ここに北魏は消滅した<ref name="新十八史略218"/>。宇文泰は西魏の大冢宰に進んで西魏皇帝を傀儡とし、事実上政権を掌握した。

[[537年]]、東魏の高歓が大規模な攻勢をかけるが、宇文泰の西魏は決死の抵抗を見せて撃退した<ref name="中華の崩壊268">川本『中国の歴史、中華の崩壊と拡大、魏晋南北朝』、P268</ref>。[[538年]]に今度は宇文泰が西魏軍を率いて攻勢をかけるが、東魏の猛将[[侯景]]のために大敗し、逆に長安を脅かされるが何とか宇文泰の抵抗により保った<ref name="中華の崩壊269">川本『中国の歴史、中華の崩壊と拡大、魏晋南北朝』、P269</ref>。[[556年]]に宇文泰は死去し、その跡を受けて大冢宰を継いだ3男の[[孝閔帝|宇文覚]]は[[557年]]の元旦に西魏の[[恭帝 (西魏)|恭帝]]から[[禅譲]]を受けて[[天王]]位につき、北周を建国した。

=== 宇文護の独裁 ===
宇文覚は即位して孝閔帝となるが、この時わずか16歳にすぎなかった。このため実権は従兄の[[宇文護]]が補佐の形で専横した<ref name="新十八史略240">駒田『新十八史略4』、P240</ref>。宇文護の政治そのものは北周の国力を充実させた面もあるのだが、やり方が独裁・専横が過ぎて周囲の反感を買っており<ref name="新十八史略240"/>、反対派の重臣は孝閔帝が即位したその年に結託して宇文護の暗殺を謀るが、事前に計画が漏洩して孝閔帝や重臣らは悉く殺害された<ref name="新十八史略241">駒田『新十八史略4』、P241</ref>。

宇文護は新たな皇帝として先帝の兄宇文毓を[[明帝 (北周)|明帝]]として擁立した<ref name="新十八史略241"/>。しかし明帝は明敏で見識度量共に優れていたため、宇文護は後難を恐れて[[560年]]に毒殺した<ref name="新十八史略241">駒田『新十八史略4』、P241</ref>。

次に擁立されたのは先帝と先々帝の弟である宇文邕で即位して[[武帝 (北周)|武帝]]となった<ref name="新十八史略242">駒田『新十八史略4』、P242</ref>。武帝も優れた人物だったが、宇文護に警戒される事を恐れて自ら意見を言うことは無く、必ず他人と相談して物事を決裁する無能な皇帝を演じた<ref name="新十八史略242"/>。そしてすっかり油断した宇文護は[[572年]]、武帝の罠に嵌って誅殺された<ref name="新十八史略243">駒田『新十八史略4』、P243</ref>。

=== 武帝の治世と華北の統一 ===
武帝は宇文護を殺害すると、その徒党も悉く殺戮して親政を開始した<ref name="新十八史略243"/>。一族群臣の引き締め、富国強兵などを図って東の[[北斉]]への東伐の機会をうかがった<ref name="新十八史略244">駒田『新十八史略4』、P244</ref>。当時の北斉皇帝は[[後主 (北斉)|後主]]であり、これが暗愚な上に側近も奸臣揃いと救いようのない有様だったので、武帝は[[親征]]して北斉を攻めた<ref name="新十八史略244"/>。第1次東伐は武帝が病気に倒れたために失敗したが、第2次東伐では[[平陽]]を落とし、さらに[[晋陽]]に迫る勢いを示した<ref name="新十八史略244"/>。

このため、北斉軍も後主が親征して武帝と対峙して反攻したが、肝心の後主が陣中に連れてきていた寵愛する妃が恐怖して逃走したのを追いかけて戦場離脱したために大敗し、北斉軍は壊滅し晋陽も陥落した<ref name="新十八史略245">駒田『新十八史略4』、P245</ref>。後主はこの敗戦で皇太子の[[幼主 (北斉)|幼主]]に譲位した<ref name="新十八史略245"/>。[[577年]]に武帝は北斉の首都[[鄴]]を攻め落として北斉を滅ぼし、華北を43年ぶりに統一した<ref name="新十八史略245"/>。その後も武帝は[[陳 (南朝)|陳]]の[[呉明徹]]を破り、[[突厥]]に遠征するなど勢力を大いに拡大して天下統一を目指したが、[[578年]]に陣中にて病を得て崩御した<ref name="新十八史略246">駒田『新十八史略4』、P246</ref><ref name="中華の崩壊280">川本『中国の歴史、中華の崩壊と拡大、魏晋南北朝』、P280</ref>。

=== 衰退と滅亡 ===
武帝の崩御により、皇太子の宇文贇が[[宣帝 (北周)|宣帝]]として即位した<ref name="新十八史略246"/>。しかし宣帝は父帝に遠く及ばぬ暗愚の息子で、武帝が皇太子時代に心配して厳しい躾を行なったほどであった<ref name="新十八史略246"/>。武帝の心配したとおり、即位した宣帝は「（武帝が）死することおそし」と罵り、さらに後宮を回って気に入った女を見つけると淫欲のままに行動した<ref name="新十八史略246"/>。さらに即位後、武帝を支えていた一族群臣を自らにした躾に賛成していたとして粛清し、かえって貴重な人材を失う結果となった<ref name="新十八史略247">駒田『新十八史略4』、P247</ref>。

宣帝の奇行は留まることを知らず、即位の翌年である[[579年]]には皇太子の宇文闡を[[静帝]]として即位させ、自らは天元皇帝と称した<ref name="新十八史略247"/>。そして身分に関係なくたとえ皇后であっても気に入らなければ天杖と称した杖で120回から240回にわたる叩きを喰らわせた<ref name="新十八史略247"/>。こうして北周は人心を失いだし、政治の実権は[[外戚]]の随国公[[楊堅]]が掌握した。

[[580年]]、宣帝は22歳の若さで崩御し<ref name="新十八史略247"/>、残されたのはわずか8歳の静帝だけとなった。この幼帝の下で楊堅は兵権を掌握し、さらに隋王の称号を下賜された<ref name="新十八史略248">駒田『新十八史略4』、P248</ref>。581年、楊堅は静帝より禅譲を受けて[[隋]]を建国し、ここに北周は滅亡した<ref name="新十八史略248"/>。やがて北周の皇族の宇文氏は前皇帝の静帝を初めとして、多くが楊堅によって皆殺しにされて途絶えた。

== 国家体制 ==
{{中国の歴史}}
西魏・北周の際立った特徴は、[[周礼]]に基づいた官制と[[府兵制]]である。また、その大冢宰（天官府）・大司徒（地官府）・大宗伯（春官府）・大司馬（夏官府）・大司寇（秋官府）・大司空（冬官府）の六官の官制は[[三省六部]]に名称を変え、また、兵制の方は、そのまま隋[[唐]]に受け継がれた。

その一方で、隋唐帝国との大きな違いとして[[鮮卑]]復古主義がある。北周は、[[周]]という中華風の国号を用い、[[儒教]]の経典である周礼に基づく官制をとりながらも、[[北魏]]の[[孝文帝 (北魏)|孝文帝]]以来の[[漢化政策]]に逆行する鮮卑固有の習俗への回帰を標榜していた。具体的には、
* 国朝の儀礼等も鮮卑風に改めた。
* 公用語は漢語ではなく鮮卑語が用いられた。
* 北魏の[[拓跋氏]]が元氏となったように、鮮卑本来の姓から漢式に改められていた姓を、鮮卑固有の姓に戻した。
* 領内の漢人に対しても鮮卑風の姓へ改姓する措置がとられた。
といった政策が取られた。

兵制は、軍の要職として八柱国・十二大将軍を置き、その20人に宇文泰の出身地である武川鎮（現在の[[内蒙古自治区]]にあった北魏の軍事基地）の出身者を多くあてた（[[武川鎮軍閥]]）。隋の楊氏は十二大将軍、[[唐]]の李氏は八柱国の家系である。さらにその下に二十四開府を置き、この24軍団が府兵制軍団を構成していた。ただし、八柱国、すなわち宇文泰を含めた8名の柱国大将軍という編制は宇文泰の在世時、すなわち西魏末期の状態の示すもの<ref>山下将司は「唐初における『貞観氏族志』の編纂と[八柱国家]の誕生」（『史学雑誌』第111巻2号（2002年））にて「八柱国」は唐代の創作とする説を出している。これに対し、前島佳孝は（十二将軍の子孫である）隋の時代に八柱国の称号が忌避されていた可能性を指摘して山下説に問題点がある事を示す一方で、[[元子孝]]・[[宇文護]]が西魏期に柱国大将軍に任ぜられて八柱国の範疇に加えられ、北周成立後に柱国大将軍になった将軍の中にも八柱国と同格扱いされていた者がいた事が指摘されその流動性の存在を指摘しており、山下説が成立する可能性を認めている（「西魏八柱国の序列について」（初出:『史学雑誌』第108編第8号（1999年））/加筆・所収:前島『西魏・北周政権史の研究』（汲古書院、2013年） ISBN 978-4-7629-6009-3 ）。</ref>であり、北周に入ると新たに柱国大将軍に任じられるものが次々と現れてその価値は低くなり、575年には柱国大将軍の上に上柱国大将軍が任ぜられるようになった<ref name=maejima>前島佳孝「柱国と国公」（初出:『九州大学東洋史論集』第34号（2006年）/所収:前島『西魏・北周政権史の研究』（汲古書院、2013年） ISBN 978-4-7629-6009-3 ）</ref>。

また、北周では皇帝の称号が廃止されて「天王」と称されたために、諸侯の王は設けられず、国公が諸侯の最高の爵位になった。国公に任ぜられたのは、当初は宗室と八柱国・十二将軍クラスの功臣およびその子孫（将軍に就けない文官で建国の功によって国公に任ぜられたのは[[斛斯徴]]のみとされる）が占められた。また、後に北斉が滅びるとその関係者にも国公が与えられた。ところが、559年に天王の称号が皇帝に戻されたのを機に諸侯王復活が論じられ、574年には諸侯王（国王・県王・郡王）が設けられ、宗室は王に昇り、諸侯は国公を最高の爵位とする原則は後世に引き継がれた。だが、一方で皇帝が寵愛する家臣に功績もないのに国公に叙せられるなどの問題が生じるようになった<ref name=maejima/>。

== 宗教 ==
武帝は廃仏を行ったことで知られる（[[三武一宗の廃仏]]の第2）<ref name="中華の崩壊279">川本『中国の歴史、中華の崩壊と拡大、魏晋南北朝』、P279</ref>。これは廃仏を通じて[[道教]]と[[仏教]]の2宗教の教団を無くして通道観という寺院を設けて[[儒教]]・仏教・道教の3教を国家権力の下で統一して宗教の上に存在する皇帝権力の確立を目指すためと、当時の仏教の堕落に対して引き締めを図るために行なわれた<ref name="中華の崩壊279"/>。

== 北周の皇帝一覧 ==
# [[孝閔帝]]（宇文覚、在位[[556年]] - [[557年]]） - 宇文泰の3男
# 世宗[[明帝 (北周)|明帝]]（宇文毓、在位[[557年]] - [[560年]]） - 先帝の兄
# 高祖[[武帝 (北周)|武帝]]（宇文&#37013;、在位[[560年]] - [[578年]]） - 先帝の弟
# [[宣帝 (北周)|宣帝]]（宇文贇、在位[[578年]] - [[580年]]） - 先帝の子
# [[静帝]]（宇文闡、在位[[580年]] - [[581年]]） - 先帝の子

* 宣帝は579年に静帝に譲位し、天元皇帝と称した<ref name="新十八史略247">駒田『新十八史略4』、P247</ref>。

=== 系図 ===
{{familytree/start|style=font-size:90%;}}
{{familytree | KOU | | | | | | | | | | | | GNK |KOU=（徳帝）<br>[[宇文肱]]|GNK=広平王<br>[[元懐]]<br>（北魏） }}
{{familytree | |)|-|-|-|-|-|.| | | |,|-|-|-|(| | }}
{{familytree | KEI | | | | TAI |y| GEN | | KOB |KEI=邵国公<br>[[宇文顥]]|TAI=（文帝）<br>[[宇文泰]]|GEN=[[文帝元皇后|平原公主/<br>馮翊公主]]|KOB=[[孝武帝 (北魏)|孝武帝]]<br>元脩<br>（北魏） }}
{{familytree | |!| | | |,|-|^|-|#|-|-|-|.| | | | }}
{{familytree | GOS | | MEI | | KBN | | BUT | | |GOS=晋国公<br>[[宇文護]]|MEI='''[[明帝 (北周)|明帝]]'''<br>宇文毓<br>②|KBN='''[[孝閔帝]]'''<br>宇文覚<br>①|BUT='''[[武帝 (北周)|武帝]]'''<br>宇文邕<br>③ }}
{{familytree | | | | | | | | | | | | | |!| | | | }}
{{familytree | | | | | | | | | | | | | SEN | | |SEN='''[[宣帝 (北周)|宣帝]]'''<br>宇文贇<br>④ }}
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{{familytree | | | | | | | | | | | | | SEI | | |SEI='''[[静帝]]'''<br>宇文闡<br>⑤ }}
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== 北周の元号 ==
#[[武成 (北周)|武成]]（[[559年]] - [[560年]]）
#[[保定 (北周)|保定]]（[[561年]] - [[565年]]）
#[[天和 (北周)|天和]]（[[566年]] - [[572年]]）
#[[建徳 (北周)|建徳]]（[[572年]] - [[578年]]）
#[[宣政]]（[[578年]]）
#[[大成 (北周)|大成]]（[[579年]]）
#[[大象 (北周)|大象]]（[[579年]] - [[580年]]）

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
=== 引用元 ===
<references/>

== 参考文献 ==
* [[川本芳昭]]『中国の歴史05、中華の崩壊と拡大。魏晋南北朝』（[[講談社]]、[[2005年]][[2月]]）
* [[駒田信二]]ほか『新十八史略4』（[[河出書房]]新社、[[1997年]][[7月]]）
* 『[[周書]]』

== 関連項目 ==
*[[宇文部]]
*[[鮮卑]]

{{DEFAULTSORT:ほくしゆう}}
[[Category:鮮卑]]
[[Category:魏晋南北朝時代の王朝]]