公立学校

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公立学校(こうりつがっこう)とは、主に日本の地方公共団体が設立した学校のこと。広義には国立学校も含める。

概要

公立学校の設置者は大きく分けて都道府県立、市町村立、組合立(特別地方公共団体の組合による設立)がある。地方独立行政法人である公立大学法人が設置する大学も公立学校に含まれる。

国立学校(国、文部科学省)や私立学校(民間、学校法人株式会社個人)と区別する時に用いる用語である。地方公共団体の教育委員会教育庁が管理を行う。これには、幼稚園小学校から大学までが含まれる。ただし、公立大学(短期大学を含む)の管理及び執行については地方公共団体の長(都道府県知事、市町村長、一部事務組合の管理者)が行い、教育委員会は関与しない。

公立学校では特定の宗教、教派に依拠した宗教教育は行ってはならないが、クリスマス行事程度であれば容認される場合が多い。

幼稚園

公立幼稚園の管理・運営は基本的に市町村教育委員会が行う。都道府県の教育委員会が管理・運営する幼稚園はほとんど見られない。

  • 公立幼稚園の教職員については当該公立幼稚園を設置する市町村教育委員会、都道府県教育委員会が採用(任命)し給与を負担する。

小学校・中学校・高等学校・中等教育学校

公立小学校中学校高等学校中等教育学校の管理・運営は各地方公共団体の教育委員会が行う。

  • 基本的に小中学校は市町村教育委員会、高等学校は都道府県教育委員会が管理・運営をするが、中高一貫の中学校では都道府県立の場合もある。
  • 高等学校については基本的に都道府県教育委員会が管理・運営を行うが、市町村教育委員会でも設置・運営することができる。
  • 公立小中学校・中等教育学校の前期課程に勤務する教職員校長教頭教諭・助教諭・養護教諭・養護助教諭・学校栄養職員事務職員)の任命権者は都道府県教育委員会であり給与を負担している(→県費負担教職員を参照)が、用務員、給食調理員などの単純労務職員については市町村教育委員会が任命権者であり、市町村が給与負担者である。また、市町村によっては小中学校に県費負担の事務職員のほかに市町村費の事務職員を置いているところもある。
  • 市町村立の中等教育学校の後期課程、高校の教職員については基本的に市町村教育委員会が任命権者であり、給与の負担者であるが、定時制課程の教員については都道府県教育委員会が任命権者であり給与負担者である。
  • 県立中等教育学校・高校の教職員については都道府県教育委員会が任命権者であり、給与の負担者である。

ほとんどの公立小中学校は入学試験が無く、学齢に達した日本人には住民票と連動して就学通知が送られ、地元の公立小学校に入学できる。公立中高一貫校では作文や実技、適性検査などによる試験が課される場合が多い。

公立高校は入試で内申書が重視されたり、地域によっては総合選抜学校群制度(グループ制)や学区制などがあるため、希望した学校に進学できなかったり通学区域が制限されたりするなどの特徴があった。それを嫌った受験生の敬遠により、1970年代ごろから都市部にある公立高校の多くが難関大学合格者数を落とした。近年では学区撤廃や筆記試験重視、独自入試の導入などの改革が急速に進んでいる。率先して行なった都立高等学校では難関大学の合格者が大幅増加するなどして改革が高く評価されており、他の都道府県もそれを追うようにして改革が進められている。

特別支援学校

基本的に、公立特別支援学校の設置・管理・運営は都道府県教育委員会によるが、市町村教育委員会でも設置・管理・運営することができる。

  • 都道府県立・市町村立いずれの場合でも、特別支援学校の教職員は都道府県教育委員会が任命権者であり、給与の負担者である。但し、市町村立特別支援学校に勤務する単純労務職員については市町村が任命権者・給与負担者である。

公立大学

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公立学校を巡る議論

学力についても、私立学校に比べて十分にのばすことができず、公私で格差があるという意見がある[1]。2007年に行われた全国学力調査では

平均正答率(小学6年)を比べると、基礎力を試す算数Aは公立82.1%に対し、私立は10ポイント高い92.1%。応用力を試す算数Bは公立63.6%、私立77.1%で、差は13.5ポイントと大きく開いた。国語も同じ傾向。私立は上位校の多くが参加していない。[1]より引用

と私立学校の生徒の方が正答率が高かったことへの指摘がある[1]。私立学校がある都市部はともかく、そもそも私立学校を選択肢として考慮できない地方部もあるため、公立学校の教育能力の「立て直し」を求める意見もある[1]

一方で、教育学者の藤田英典はこうした意見に疑問を呈し、批判の為の批判を繰り返すマスコミの論調の影響を指摘した上で、日本の義務教育は「制度・機能・実践の全ての面で、国際的に見て非常に高い水準にある」としている。また藤田は、日本の公教育の水準の高さは諸外国にも認められており、日本の公教育に学ぶべき点は多いと考えられていると指摘している。なお藤田によると、特に日本の公教育において諸外国から高く評価されているのは授業研究による絶え間ない教育技術の自己研鑽、教師集団の協働性、公立学校のコミュニティ性とケア機能であるとされる[2]

また「陰山メソッド」で知られ、教育再生会議中央教育審議会の委員を歴任した陰山英男は、平成17年の中教審義務教育特別部会において、教育で世界一と言われることもあるフィンランドが家庭での教育機会が多い一方で日本はそういった状況となるのは難しくその分を教師が補っていると述べている。そして財務省が「義務教育費国庫負担金が増えている」という意見に対し「私は、この財政審に、大丈夫です、給与に見合っただけの仕事を教職員はしているということを申し上げたい」と発言している[3]

生徒の学力向上については学習塾をあてにせざるを得ないという意見もあるが[4]リクルート出身の民間人校長藤原和博はこの問題について、生徒の学力を1から5までの五段階に分けると、そもそも1と5(最低と最高)の生徒を学校だけで教えることは無理があると指摘し、1の生徒については従来ならば地域社会が面倒を見て来たけれども、近年の社会情勢の変化によってそれが難しくなっている、また5の生徒は塾に行ってくれというのが教員の本音だろうと話している。また藤原は前出の陰山とともにフィンランドの教育事情を視察し、「フィンランドは教員の数が多い」「うち(和田中)でも教員があと7人、8人居れば(フィンランドのような教育は)出来る」とコメントしている[5]

カリキュラムについては、知識の応用や自分で考える力といった、ゆとり教育の目玉の一つでもあった総合的な学習の時間については、ゆとり教育の不安を煽っていた日能研などの学習塾が、「総合的な学習の時間」を学べるサービスの提供を始めているなど、状況は混沌としたものとなってきている[1]。この背景には、私立学校などの入学試験が知識の応用等を求める内容になってきたという状況があるとも指摘されている[1]

その他

テンプレート:Main テンプレート:Main 公立学校では授業料及び給食費の未払いも問題となっている。

脚注

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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 『「総合学習」進化する塾 公教育のもたつき尻目に先へ』 産経新聞、2008年2月18日。
  2. 藤田英典 『義務教育を問いなおす』 筑摩書房、2005年7月6日。ISBN 9784480062437
  3. 義務教育特別部会(第20回)議事録・配付資料
  4. テンプレート:Cite web
  5. 『「教育格差の助長」か「フェアな教育機会の提供」か 和田中 藤原和博校長』『論座』2008年5月号、朝日新聞出版。

関連項目

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