公共放送

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公共放送(こうきょうほうそう)は、公共企業体によって運営される放送局による放送のことである。運営形態による分類であり、放送される番組が公共的かどうかとは無関係(そもそも何を以て「公共的」とするかの定義がない)。

概説

一般に電波は国民の財産であることから、民間放送も公共性が高いとも考えられるが、事業存続のために営利を目的としていることから、民間放送は「商業放送」と呼んで区別される。また、公共放送は基本的に営利を目的としないことから広告CM)を放送しない、あるいは広告による収入割合や広告の挿入・表示方法などに商業放送以上の制限がかけられる場合が多い。

財源はテレビ所有者から徴収する受信料、TVライセンス料などである。国によっては政府や地方自治体からの補助金交付金があったり、企業・団体・個人の寄付金などで賄われていたりすることもある。日本では特殊法人日本放送協会(NHK)と特別な学校法人である放送大学学園および地方自治体等が実施するエリア放送が該当する。

ただし、実際にはNHK放送文化研究所でさえも明確に定義し切れていない[1]

公共放送「3つの柱」(ヨーロッパメディア研究所より)

  • 誰でも好きな番組を自由にみることができること(視聴者に番組をみる自由を提供)
  • 文化の担い手であって、そこに住む人々の心の絆を強めること
  • 視聴者との対話を進め、人々に指針を提供することにより、社会の重要な構成要素となること

各国の主な公共放送

受信料のみで賄われているもの

デンマーク
TV 2
スウェーデン
SVT
ノルウェー
NRK
フィンランド
YLE
財源は受信料と一定規模の年収のある商業放送企業者によって支払われる事業運営許可料。政府所有の株式会社となっており、国会が選出した委員の運営委員会によって監督されている。

受信料+政府負担で賄われているもの

日本
NHK(日本放送協会)
イギリス
BBC(英国放送協会)

受信料+広告料で賄われているもの

韓国
KBS(韓国放送公社)
受信料は電気料金に含まれており、未払い問題は発生していない。
ドイツ
ARD,ZDF
第二次世界大戦後、イギリスをモデルに放送局が再編された。西ドイツは公共放送体制、東ドイツ国営放送ドイツテレビジョン放送)体制をとった。西ドイツでは各地方の公共放送局の連合体 (ARD) と、全国で単一の放送局 (ZDF) の2つの公共放送ネットワークが作られた。1990年東西ドイツの統一では旧西ドイツの放送体制がそのまま受け継がれ、旧東ドイツの国営放送は各地域の公共放送 (ARD加盟) へと改編された。一定の時間帯に限ってテレビ・コマーシャルが放送されている。
フランス
フランス・テレビジョン - France 2,France 3,France 4,France 5
株式会社が公共放送を担っている。政府が全額出資者であり、運営・財政面等で政府からの強い統制を受ける。テレビ所有者から「テレビ受信機使用権料」という名目で受信料を徴収している。2005年からは住民税に受信料を上乗せする形で徴収する形態に変わった。
イタリア
RAI
テレビ・ラジオの所有により受信料が課せられるが、日本と同様に罰則もなければ遅延利息もないのが特徴である。
アイルランド
RTE
アイスランド
RUV
スリランカ
SLRC, ITN

交付金+広告料で賄われているもの

オーストラリア
SBS(特別放送サービス
多言語放送。
スペイン
RTVE, SEPI
ニュージーランド
TVNZ
かつては受信料により運営していたが、財政状況悪化により1987年以降は商業放送形態のTVNZ(Television NewZealand)となった。TVNZは公共放送時代のニュージーランド放送協会のテレビ部門を引き継ぎ、1988年、政府の規制緩和政策により株式会社組織となる。株式は100%政府所有。ニュース、ドキュメンタリー、ドラマなどの総合編成。地上波のTV One、TV2ともに広告を入れて放送している。
台湾
TBS(台湾公共放送機構
1998年7月1日に政府からの交付金により運営するPTS(公共テレビ)が設立された。運営は国家通信放送委員会の監督を受ける。2006年7月1日にCTS(華視)政府が出資する商業放送)と合併、TBS(Taiwan Broadcasting System 中国語名:台湾公共広播電視集団)という新しい公共放送機関となった。将来的に方言テレビ局(客家テレビ:Hakka TV)、原住民言語テレビ局(原住民テレビ)、国際放送テレビ局などもTBSにより吸収される予定。
ベルギー
RTBF
かつては受信料制度を導入していたが極度の赤字を抱えたため、政府がほぼ100%株主の商業放送形態となっているところが多い。

広告料のみで賄われているもの

イギリス
チャンネル4
広告収入をITVと分け合う時期もあった。

交付金や寄付金などで賄われているもの

アメリカ
公共放送サービス(PBS), 公共放送機構(CPB), ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)
1960年代頃より発足。主に教育放送を目的としたものが多い。PBSは企業寄付団体のCMを放送する(個々の商品の広告ではなく企業を紹介する広告)。
オーストラリア
オーストラリア放送協会(ABC)
連邦政府交付金で運営されている。
カナダ
カナダ放送協会(CBC)
増大していたアメリカのラジオ放送の影響を懸念する動きから、カナダ政府が1936年に設立した。
インドネシア
TVRI
国内にある5つの民放局が広告収入の12.5%をTVRIに納めることにより賄われている。5つの民放局はTVRIが放送する国家行事、定期ニュースを中継する義務を負う。
タイ
ThaiPBS(タイ公共放送)
2008年よりTITVから局名変更させて放送する東南アジア初の公共放送局。以前は、1996年よりITVと2007年はTITVで放送された局。この局の資産は一部の酒税・たばこ税と前時代TITVの資本金から受け取る。

公共放送を全く持たない国

ナウル
国営放送のナウルテレビがその役割をしている。

その他

日本
放送大学学園
授業料と政府からの補助金(運営費用の過半数)で賄われている。運営費用の過半数が政府から拠出されているため、国営放送ととらえられることもある。なお、旧法人は政府が全額出資する特殊法人だったため、事実上は国営放送であった。
エリア放送
2011年(平成23年)の放送法令改正により地上一般放送の一種としてエリア放送が制度化された。基幹放送と異なり国や地方自治体も放送事業者となれる。次の地方自治体、国立大学法人および国立高等専門学校機構が開設している。

地方自治体

国立大学法人

国立高等専門学校機構

2014年(平成26年)2月19日現在

脚注

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関連項目

  • 「NHK改革 公共放送の将来を語れ」 『東京新聞』 2007年10月1日