光線銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Otheruseslist 光線銃(こうせんじゅう)とは光線(またはに近い波長域の電磁波)を投射する装置である。

概要

これらは主に携帯に適する大きさ・形である物を指すが、遊戯銃玩具)あるいは競技ビームライフルとして単純に光線を出すだけの物と、強いエネルギーを持つ光線を照射して、照射対象を破壊する物とが挙げられる。ただし後者は、携帯に適したサイズの兵器としての光線銃は現存しないため、主に架空の兵器である。

ただレーザー(メーザーを含む)は工業において加工技術に、低出力半導体レーザーレーザーポインターのような「物品を指し示す道具」として、光線を使って何らかの働きを行わせるものというアイデアを具体的に実現させたものは存在している。ただそういった諸々のレーザー活用事例に関して、本項では兵器・軍事利用以外は割愛する。レーザーの項を参照して欲しい。

遊戯銃

遊びに用いる光線銃は、古くはストロボライトやフラッシュバルブ等を使った物があり、ある程度強い可視光線を発生させるものが任天堂から「光線銃」というシリーズで1970年に発売されている。またゲームセンター用のアーケードゲームエレメカ)には、ナムコの“シューターウェイ”や“コスモスワット”などがある。ただこれらは、強い可視光線を発する事で、顔に光線を受けた場合に目が眩む程であった(ストロボを目の前で焚くような物である)ため、専ら標的に付けられた光センサー太陽電池フォトレジスタなど)を狙い撃つ物であった。アメリカ製のごく初期のテレビゲーム機“オデッセイ”では、銃の方に光センサーをつけ、引き金を引いた時にテレビ画面上の光に反応するゲーム[1]もあった。このタイプのものは厳密には遊戯用光線銃と仕組みは異なり「受光銃」とでも呼ぶべきものであるが、「光線銃」と呼ばれているようである。なおこの光線銃の製造は、ファミコンを発表する以前の任天堂に発注された[2]

1980年代に入ると、赤外線を発射する事でセンサーを動作させ、音や光・振動などで赤外線が当たった事を知らせる玩具が米国で発売、本来はサバイバルゲームに用いるエアソフトガンはまだ危なくて持たせられない児童らに手軽にサバイバルゲームを楽しんでもらう製品だったはずが、高校生や大学生の間でも(エアガンの弾が散乱しないで済む)玩具として爆発的な流行を見せ、日本でも1987年に前後してセガよりジリオンシリーズ(同玩具のヒットを狙って同名アニメーション作品が放映された)が、トミーからはサバイバーショットシリーズが発売され、一部筋では後片付けを考えなくていい簡易サバイバルゲーム用玩具として人気を博した。

なおこれらは、センサーと銃が2台セットとなっている対戦用のものと、センサー部と銃がワンセットになった一人遊び・または多人数用(人数分だけ同セットを買えばよい)パッケージが存在し、これは現行製品でも変わっていない。一人遊びでは、セット内のセンサー部を好みの場所に置いて、これを狙い撃って遊ぶ事が出来る。

なおジリオンシリーズは胸に付けたバッジ(音と光で命中を表す)をお互いに狙いあう物だったため正面からしか当てられなかったが、サバイバーショットシリーズでは頭に付けたヘッドギア(360度どの方向から撃たれても、当たると音と振動で知らせるが、ヘッドギア=頭全体が振動するため、よりリアルな命中感を味わえる)を狙って撃つというものだった。

2005年の現在ではサバイバーショットのみ継続機種が出ている模様だが、射程距離(センサー受信範囲)15m程度と安価な電動エアガン並みの扱いが出来、また命中はセンサーで記録されてマイコンで表示するため、サバイバルゲームで度々発生する「当たったかどうかで揉める問題」も無いため、熱狂的愛好者もある模様だ。現行機種ではリロードやロックオンなどのギミック(仕掛け)を持っており、小学生から大の大人まで年齢を問わず遊べる玩具となっている。

これら遊戯用光線銃では、エアソフトガンで問題視される「BB弾散らかし放題」という問題が無い利点がある事も、突発的に場所を選ばずプレイ出来るとして、人気の一因に挙げられよう。勿論、センサーをつけていない無関係な人に赤外線が当たっても、なんら迷惑と成らない点も評価されている。これは水鉄砲銀玉鉄砲にも無い利点である。流石に室内で水鉄砲を使って遊ぶ人はいないが、同種玩具なら「水濡れしない場所でなら何処ででも」遊ぶ事が可能である。

問題点としてはマイコン搭載の電子機器であるため、他の同程度の遊びに利用出来る製品よりやや高価(それでも電子機器類としては安価な部類に入るが)である事や、水濡れなどの故障が起こりうる事、また乾電池が無ければ遊べない事であるが、ランニングコストは乾電池のみとなるため、比較的安いと言える。

なお、陸上自衛隊でも、戦車や隊員などに「交戦訓練装置」などの名称で呼ばれる、類似のレーザー銃(プロジェクター)と標的(ディテクタ)をつけて、演習を行う事がある(→レーザー交戦装置)。こちらは光線が命中すると損害を集計、集団での交戦訓練において両集団の損害状況を評価できるよう設計されている[3]

関連現象

アニメーション作品やコンピュータゲームの製作で知られているガイナックスでは、「サバイバーショット世界王座決定戦」と題した大規模なサバイバルゲームを主催していた。1997年6月に行われた第一回大会開催では、1980年代末に発売されて長らく製造終了となっていたにも関わらず、サバイバーショット(旧型)を持参したメディア業界関係者ら8社10チーム計90名が押し掛け、1998年の第三回大会(それ以降は開催されて居ないが、同大会の影響も在ってかトミーから再発売されたサバイバーショットの特別仕様を掛けて行われた)にて参加者300名という規模で、ほぼ終日業界関係者らによる撃ち合いが演じられたという[4]

架空の武器

架空の物では可視光線やレーザー光線などでも、殺傷力を持つ程のエネルギーを有した光線を発する機構の物とされ、登場する作品によってはレーザー光を使う事から「レーザーガン」とも呼ばれる。この場合の銃は、必ず拳銃の形を取る物ではなく、『スタートレック』シリーズのフェイザーのように、テレビ受像機のリモコンを連想させるような形状の物も想定されている。携帯サイズで光を一定方向に発する物として描かれる。なお電子を発射する物は光線銃ではなく電子銃と呼ぶ。

これらはSFやそれを題材とする映画・テレビドラマなどでも拳銃の形をした物が登場するが、映像的には余り電子銃やプラズマガン・其の他ビーム兵器との明確な区別がされないことも多い。「光線」を発射する銃ではないが、人間が携帯できるサイズの荷電粒子砲のことも光線銃と呼ぶこともある。SF物の漫画・アニメ作品でも以前は未来的な兵器として多数登場したが、最近はリアリティが重視されてSF物でも実弾銃が登場することが多い。

主に登場する作品

主人公・星野鉄郎が使用する銃・戦士の銃が登場。その他の松本作品でも登場する。
セガが既に発売していた遊戯銃販促の意図を兼ねたアニメーション作品(1987年放映)で、日本のアニメーション業界としては、超合金シリーズやプラモデルシリーズ以外としては最初期のメディアミックス企画作品である。作中では遊戯銃側のデザインをそのまま利用したほか、玩具としてストロボ発光機構が連射性に欠けたり電池の持ちが良くない点を逆に物語を盛り上げる要素とするなど、遊戯銃の機能や性能をアニメ作品内の設定に生かしている。
ただ、当時のアニメ番組は児童向けの媒体という面が強く、アニメ作品としてはファンに評価されるなど一定の成功を見たほか、テレビ放映途中で遊戯銃側のモデルチェンジが行われ、これに伴ったストーリーの変更など、セガ側の意向を作中に無理なく取り入れていたが、遊戯銃の販売と言う目的では米国での(玩具としての)光線銃ブーム主推進役となった高校生や大学生を巻き込むには些か力不足だった模様で、日本では同遊戯銃に関して余り明確なブームが起こらずに失敗している。
  • AKIRA』(漫画・アニメ映画)
単独作品であるが、同作(漫画版・映画版共に)中に日本軍がバズーカ型のレーザー銃を装備、銃弾をも防ぐ超能力者に対抗しようとした。ただし一応の効果はあったものの必ずしも決定打にはならなかった。主人公の金田も暴走した鉄雄を倒すために数度(最初の金田による試作兵器の盗用で、超能力者への有効性が実証されたため配備された模様)に渡って利用したが、最終的には決定打を与えられぬまま電力ケーブルが破損(最初はバッテリー切れ・映画版では二度目もバッテリー切れ)、結果としてレーザー発振装置が鈍器(棍棒)として利用されたという不遇の武器である。なお同作品のレーザー発射中は建造物すら両断するという描写は、後に他の作品(別の著作者による)にも大きな影響を与えた模様である。
一般的な銃器として登場するが、実際にはプラズマ兵器でブラスターと呼ぶのが正しい。
フェイザーの項参照。
未来の世界で一般的な銃器として登場。
Qの南米事務所で実験が行われている。後に米軍やドラックス達が宇宙ステーションでの戦闘の際に使用する。
ゴルゴが狙撃手段として何度かレーザーを使用している。ただしあくまで現実のテクノロジーに準拠しているため人命を奪う様な強力な物は登場せず、機密文書を窓の外からレーザー照射して消却したり、照準用レーザーで遠方からターゲットの眼を照射して視力を奪うといった内容だった(それでも定格外の出力だったため、どちらも一回の発振のみで発振器が破損している)。また逆に敵がレーザー照射でゴルゴの視力を奪おうとした事もある。
アーノルド・シュワルツェネッガーが使用した。拳銃の形で、現実の拳銃のマガジンのようなバッテリ(?)を使用する。

実用化

実用化には至っていない。破壊力のあるレーザーを発振するための発振装置や、それを稼動させる動力源を十分に小型化出来ていないからである。

ただし、光線を投射する事でなんらかの破壊的な効果を求める過去の・または現用の兵器は存在する。例えば、イギリス軍は第二次世界大戦中の1942年秋、スエズ運河防衛の際に特殊改造を施したサーチライト21基を設置、爆撃大隊を仕立てて攻撃してきたドイツ軍機パイロットの目を眩ませて撃墜を行っている。同様のものに、歩兵の近接戦闘にて敵に照射して動きを封じる、Surefire等の「タクティカル・フラッシュライト」が存在する。1980年代後半には中国で歩兵用レーザー銃テンプレート:仮リンクの開発が始まったとされる。これは敵の失明や、兵器の光学機器の破壊を目的としていた。1990年代にはレーザー光照射装置を用いて航空機の操縦席を狙う事で、パイロットの視力を奪う兵器が開発されたが、視力を永遠に失わせる可能性もある事から非人道的だとして採用は見送られている。 1995年10月には、特定通常兵器使用禁止制限条約の議定書IV「失明をもたらすレーザー兵器に関する議定書」にて禁止された。なぜなら、失明という治療不可の重症を負わせる兵器を、低い技術力で安価かつ大量に生産する事が可能であり、このような兵器の開発は懸念されるべきだと考えられたからである(→規制が議論されている兵器)。

開発中・または試験段階の物

アメリカはイスラエルでの実験で、レーザーでのミサイルロケット弾)撃墜に2000年6月7日に成功したとしている。戦術高エネルギーレーザー(Tactical High Energy Laser; THEL)と呼ばれるこの兵器は、主に短距離ロケット砲や低空飛行している巡航ミサイルを迎撃するための物である。この設備は、巨大な照射レンズを使用して連続的にレーザー光線を照射・加熱して目標を破壊する。将来的にはトレーラーに積載するなどして、パトリオットミサイルでは迎撃しきれない高速飛行目標を追尾して破壊する、施設防衛用の設備としての効果が期待されている。テンプレート:Main しかし、これはSFなどで見られる「光線銃」や「レーザーガン」等とはおよそ掛け離れた大規模な施設である。 また、アメリカではAL-1Aと呼ばれる、弾道ミサイル迎撃用にレーザーを搭載した航空機を開発している。既に開発段階から試験段階に移行し、2007年3月15日にはYAL-1A「エアボーン・レーザー」が化学レーザーの発射を行い、照射実験に成功したと報じられている[5]テンプレート:Main

アメリカの戦略防衛構想で計画されたものとして、γ線レーザー発射装置がある。基本的な構造はレーザー発振装置そのもので、これを衛星軌道に配備して運用する。エネルギー源は原子爆弾であり、発射すると発射装置は爆発して失われる。発射された高エネルギーのγ線は攻撃目標である弾道ミサイルの電子装置を破壊できるものと考えられている。宇宙空間における核兵器の使用は実験を含めて条約で禁止されている事から、配備はもちろん、実験もいまだ行われていない。テンプレート:Main

脚注

  1. [1]
  2. [2]
  3. 防衛庁資料2005年
    AC-TESC訓練
  4. サバイバーショット世界王座決定戦/インターネットアーカイブのキャッシュ
  5. ボーイング、Airborne Laserの高出力レーザー照射実験に成功 - Technobahn

関連項目

fr:pistolet laser