停止位置目標

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テンプレート:複数の問題 テンプレート:Mbox 停止位置目標(ていしいちもくひょう)は、主に鉄道駅の線路脇に設置してある、運転士列車を停車させる位置を示す目標物。この目標物には、列車の編成を示す数字が表示されている。略して停目(ていもく)とも呼ばれる。停止位置目標は線路配線、有効長、駅舎・ホームの構造と長さ、その他運転上の理由によって決定される。

ここでは主に日本のJRのものについて述べるが、私鉄についてもよく見られるもの、特徴的なものについては記している。また私鉄では系列会社関係にあったり、系列でなくとも地理的に近い場合、複数の鉄道会社で同じデザインを使用するケースが見られる。

設置位置

以下の二種類に大別される。各鉄道会社では原則としてどちらか一つの方式を採用するが、特に重要なターミナル駅や、運転士から見て停止位置がわかり難い駅では、どちらも設置している。JR四国京浜急行電鉄阪急電鉄阪神電気鉄道などではどちらかに固執せず、必要に応じてどちらかを使用するという、柔軟な方針が見られる。

横置き式

進行方向左側(ホームなどがある場合は右側)の線路脇に棒を立て、その先に電車・気動車の場合は型、機関車牽引列車の場合は型の停止位置目標を付ける。かつては混合列車用の型も存在した。進行方向左側のホームの屋根などから棒を下げて、その先に目標を付ける方法もあるが、これも同じ方式の一種と捉えてよい。

  • 長所
    • 降雪時でも目標が隠れない。この為豪雪地帯ではかなり上に目標を設置する。
    • 停止位置目標で停止しても、乗務員室の側窓などから運転士が停止位置目標を比較的確認しやすい。

JRは原則としてこの方式である。進行方向左側の屋根の無いホーム上や、線路の外側に余裕がある場所に設置する場合には、逆L字型の棒の先に目標を付け、運転士の目線の高さになるようにしている。また線路の間など建築限界に余裕の無い場所の場合は、棒の太さにあわせた小さい停止位置目標が設置されている場合もある。私鉄にも存在するが、関西など西日本には◇でなく長方形を使う私鉄もある。

下置き式

線路の間、枕木の上に四角形の停止位置目標を置く。

これは私鉄の一部、関東大手では京王電鉄とそれより北に位置する西武鉄道東武グループ京成グループで、関西大手では近畿日本鉄道などで使用されている。

  • 長所
    • 線路が並んでいても、どちらの線路の停止位置目標かすぐ判る。横置き式でこの状況になった場合は、番線表示や朱色の矢印で左右どちらかを示したり、またどちらかの線路が待避線の場合は、待避線側の目標の上や中にと書かれたものをつけることになる。
    • 線路の両側をホームやトンネルの壁に挟まれても、設置に余裕がある。この為地下駅や地下鉄は殆ど全てこちらの方式のみである。
    • 運転士から見て比較的中央に位置する為、感覚的に把握し易い。

数字・記号の表記方法

ファイル:Stop position sign at Yaga Sta.jpg
東海旅客鉄道御殿場線谷峨駅の停止位置目標。数字が書いてあるもの(2から6まで)はその両数の列車、一番奥の「○」は7両編成以上の列車に対する目標となる

目標の中に1つの数字が書かれていて、手前にある目標の数字を超え、書かれた数字以下の両数の列車が停止する。またその駅に停車できる一番長い列車の目標には、数字ではなく×印が書かれている(例:4・8・×と目標が設置してある場合、4の位置には1 - 4両編成の列車が、8の位置には5 - 8両編成の列車が停車する。9両以上の列車は×の位置に停車する)。1つの棒に、それぞれに違う数字の書かれた複数の標識が付いている場合もある。全ての編成が同じ位置に停車する場合、最も多い表記は無記載、つまり◇か□である。次に多いのが○印であるが、鉄道会社により以下の表記も使われている。

車体長の異なる複数の形式(例えば18m車と20m車)が混在して運用されている場合

  • 短い車体の編成両数に赤い◇の縁取り表示をする(名鉄犬山線など)
  • 「中」(中型)や「S」(Short)、「Z」(ズームカー)の文字を添える
  • 長い車体の編成両数に○印をつける
  • 形式によって色を変える(近鉄奈良線は赤と黄、阪神本線阪神なんば線は白と緑、名鉄は白と青等、他にJR九州など)
  • 特定の形式専用の停止位置を別に用意する(京成スカイライナー車両用、JR西日本特急形電車の一部など)

などの方式がある。ただし大都市近郊の路線では、使用される車両のサイズが路線全体で共通化される傾向があり、こうした補助表記は少なくなっている。

その他の補助表記・例外など

特定の系列で他の車両と編成長が異なるために同じ両数でも停車位置が変わる場合、その車両の系列名や車両愛称を記すことが多い。

  • 東北・上越新幹線
    • 編成ごとに編成長や両数が異なっているため、車両数の数字の枠が車両のラインカラーに近い色の電飾で光るものを採用している。また、山形・秋田新幹線対応車両用の(在来線区間は共通で)・事業用車両 (East i) 用の・試験車両(E6系等)用のと書かれた停車目標を採用している駅もある。
  • 東海道・山陽新幹線
    • 500系16両W編成が使用するWの表示と、300系・700系・N700系が使用する×の表示が10cmほどずらして設置されていた。さらに新大阪駅岡山駅など固定式の安全柵のある駅では、500系8両V編成が使用するVの表示が、他の8両編成の車両(700系・N700系)が使用する8の表示とずらして設置されている。しかし、山陽新幹線区間のその他の駅では、16両編成の車両は16と表示されたものを、8両編成の車両は8と書かれた標識を共通で使用している。これは山陽新幹線区間のほとんどの駅には安全柵がなく、可動式の柵のある駅(新神戸駅等)の場合でも柵と車両の間に人が通れる余裕があり、同じ標識を共通で使用して多少ドアの位置がずれても乗降が可能なためである。
  • 京成電鉄
    • スカイライナーAE100形およびAE形(2代))は他の車両と車体長が違う事から、「AE S」と書かれた専用の停止位置が用意されている。尚1991年から1993年まではAE車(初代)が在籍していた事から、AE車の停止位置を青地で「AE 」とし、AE100形の停止位置を白地で「AE N」としていた駅もあった。
  • 小田急ロマンスカー
    • 料金制特急専用車両では運転台が高い位置にあり、通常の横置き式や下置き式では大変見えにくい為、運転台にあわせた高い位置に専用の目標を設置する事が多い。また、LSE・HiSE・VSE専用停止位置目標として、菱形の中に各車種の頭文字として「LHV」と書かれている。
  • 名古屋鉄道
    • 名古屋駅では列車の行き先、種別、編成によって停止位置を変えるようにしている。また急行型車両を使用する場合、乗車位置が変わることから線路脇に別の標識を設けている。過去には小田急同様、名鉄パノラマカー専用の位置が高い停止目標もあった。
  • 阪神電気鉄道近畿日本鉄道
    • 相互直通運転を行っている近鉄と阪神では車両長が異なるため、それぞれの駅で他社用の停車位置目標が設置されている。阪神線内では阪神・山陽兼用の標識が白地に黒文字の「2」「4」「6」「8」「10」(ないし表示無し)であるのに対し、阪神線内での近鉄車に対する停止位置目標は、緑地に白文字の「近6」「近8」「近10」「近」、近鉄線内では近鉄・京都市営地下鉄兼用の標識が赤地に白文字の「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」「10」(ないし表示無し)であるのに対し、阪神車に対する停止位置目標は黄色地に黒文字の「H6」「H8」「H10」で表す。なお阪神では一部の駅を除き、横置き式から下置き式に変更している。
  • えちぜん鉄道
    • 勝山駅三国港駅夜間滞泊用の停止位置目標が設置されている。車止めから順にA・B・C・Dと続いていて、ホームから続いている線路を留置線として使用している。

車両側の目印

JRの場合在来線では、停車位置目標に車両の先頭部を合わせて停車することがほとんどである。しかし新幹線では先頭部が張り出しており、また系列により張り出している部分の長さも異なっているため、在来線の方式では停車位置を合わせることは困難である。このため新幹線の場合は、運転席の左右の窓枠の内側に目印がつけてあり、その部分を停車位置目標に合わせることによりどの系列の車両でもドアの位置を合わせて停車することができるようになっている。

JRの在来線で車両側に停止位置目標を装備した例としてはお召し列車牽引用機関車のEF58形60・61号機がある。運転台側窓の直下に停車位置基準板が収納設置されており、お召し列車運転時には基準板を引き出してホーム側の停車目印に合わせて停車させている。

車掌用の停車位置目標

編成途中の車掌室の位置や最後部の乗務員室の位置にも、ドア開閉に伴う停車位置確認用の停車位置目標が記されている事業者がある。これは特にホーム側に安全柵があり、安全柵と車両の間に人が通れる余裕がない場合、停止位置がずれると乗客が乗降できなくなるため、車掌がドアを開ける際、乗降に支障のない位置に停車したかどうかを確認する必要があるためである。

東海道新幹線では、300系(緑)・500系(青)・700系(白)・N700系(橙)の色別の形式ラインがあり、ラインの中ほど(正確に停車した場合の車掌室ドアの位置)に赤い●が描かれている(下の画像参照)。この場合、停車した際に車掌室ドアがライン内にあれば、多少位置がずれていても安全柵が邪魔にならずに乗客の乗降は行える。

同様に山陽新幹線でも色別の形式ラインがある。16両編成以外では、4,6,8両のそれぞれの編成に対応した形式ラインが設置されている。すでに0系WR編成は廃車となっているが、WR編成用の形式ラインが残っている駅もある。

車掌用の停車位置目標はホームに描かれている場合が多いが、車掌の視野や積雪等を考慮し、目標の壁への貼り付け・天井からのつり下げ・旗の設置等をしている場合もある。例えば東武鉄道では円形板を表示する方式で統一している為、屋根の無いホームでは標識のためだけに柱が建てられている。

関連項目