三冠 (野球)

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テンプレート:Redirect 野球における三冠(さんかん、英語:Triple Crown)とは、NPBにおいては首位打者最多本塁打最多打点のタイトルを取得することであり[1]、MLBにおいては首位打者最多本塁打最多打点のタイトルを取得すること[2]、もしくは、最多勝最優秀防御率最多奪三振のタイトルを取得することである[3]。三冠を達成した選手を三冠王(さんかんおう)と呼ぶ。

また、ここから派生して、その他のタイトルやリーグトップの記録を含めて○冠王と呼称される場合があるが、あくまでもNPBおよびMLBにおける公式の定義は上記のものである。

歴代三冠王

日本プロ野球

打者部門

年度 選手名 所属球団 打率 本塁打 打点 その他リーグ1位の項目
1938年秋 中島治康 東京巨人軍 .361 10 38 安打・長打率
1965年 野村克也 南海ホークス .320 42 110 得点・安打・塁打・敬遠
1973年 王貞治 読売ジャイアンツ .355 51 114 試合・得点・安打・塁打・四球・敬遠・出塁率・長打率
1974年 王貞治 読売ジャイアンツ .332 49 107 試合・得点・塁打・四球・敬遠・出塁率・長打率
1982年 落合博満 ロッテオリオンズ .325 32 99 安打・二塁打・塁打・出塁率・長打率
1984年 ブーマー・ウェルズ 阪急ブレーブス .355 37 130 安打・塁打
1985年 ランディ・バース 阪神タイガース .350 54 134 安打・塁打・出塁率・長打率
1985年 落合博満 ロッテオリオンズ .367 52 146 試合・得点・塁打・四球・出塁率・長打率
1986年 ランディ・バース 阪神タイガース .389 47 109 安打・塁打・四球・敬遠・出塁率・長打率
1986年 落合博満 ロッテオリオンズ .360 50 116 得点・四球・出塁率・長打率
2004年 松中信彦 福岡ダイエーホークス .358 44 120 得点・安打・塁打・出塁率・長打率

また、1995年にイチローが首位打者・打点王・盗塁王・最多安打・最高出塁率の打者5冠王に輝いている(本塁打もトップに3本差)。三冠王獲得者のうち、3部門の数字が全て、他方のリーグのタイトル獲得者と比してもなおかつ1位であるのは1973年の王貞治と、1984年のブーマー・ウェルズのみである。

なお、3部門ともタイトルを獲得しているが、(同年ではないため)三冠王ではない選手として、以下の12名がいる。
川上哲治青田昇小鶴誠藤村富美男長嶋茂雄山本浩二松井秀喜アレックス・ラミレス中西太山内一弘小笠原道大トニ・ブランコ

投手部門

年度 選手名 所属球団 勝利 防御率 奪三振 その他リーグ1位の項目</th>
1937年春 沢村栄治 東京巨人軍 24 0.81 196* 勝率・完投数・完封数
1938年秋 ヴィクトル・スタルヒン 東京巨人軍 19 1.05 146* 勝率・完投数・完封数・無四球試合数・投球回数
1943年 藤本英雄 東京巨人軍 34 0.73 253* 勝率・登板数・先発数・完投数・完封数・投球回数
1948年 中尾碩志 読売ジャイアンツ 27 1.84 187*
1954年 杉下茂 中日ドラゴンズ 32 1.39 273* 勝率・登板数・完封数・投球回数
1954年 宅和本司 南海ホークス 26 1.58 275* 投球回数
1958年 金田正一 国鉄スワローズ 31 1.30 311* 完封数
1958年 稲尾和久 西鉄ライオンズ 33 1.42 334* 登板数
1959年 杉浦忠 南海ホークス 38 1.40 336* 勝率・先発数・無四球試合数
1961年 稲尾和久 西鉄ライオンズ 42 1.69 353* 勝率・登板数・投球回数
1961年 権藤博 中日ドラゴンズ 35 1.70 310* 登板数・完投数・完封数・投球回数
1978年 鈴木啓示 近鉄バファローズ 25 2.02 178* 先発数・完投数・完封数・無四球試合数・投球回数
1980年 木田勇 日本ハムファイターズ 22 2.28 225* 勝率・完投数・投球回数
1981年 江川卓 読売ジャイアンツ 20 2.29 221* 勝率・完投数・完封数
1985年 小松辰雄 中日ドラゴンズ 17 2.65 172*
1990年 野茂英雄 近鉄バファローズ 18 2.91 287 勝率・完投数・投球回数
1999年 上原浩治 読売ジャイアンツ 20 2.09 179 勝率・無四球試合数
2006年 斉藤和巳 福岡ソフトバンクホークス 18 1.75 205 勝率・完投数・完封数・投球回数
2010年 前田健太 広島東洋カープ 15 2.21 174 完投数・投球回数
「*」は当時連盟表彰対象外の項目

投手○冠という場合の項目はマスコミ等でも統一されていないため、連盟表彰になったことのある勝率タイトルを含めて四冠王と呼ぶこともある。パ・リーグ投手の勝率は表彰規定により1986年以降は13勝以上の者だけを対象としている(セ・リーグと1985年以前のパ・リーグは規定投球回到達者を対象)。

メジャーリーグベースボール

打者部門

パンチョ伊東のエッセイによると、打点がリーグの記録として公表されるようになったのは1907年からであり[注釈 1]、当時は打点の定義がリーグによって微妙に違いがあったため、それを統一して公式記録となったのは1920年からであるという[注釈 2]。さらに当時の本塁打の多くは「ランニング・ホームラン」であったので、ほとんど注目されておらず、本塁打は三塁打の延長程度に考えられていた[注釈 3]。従って、1910年代までの打撃の「三冠王」とは、打率・安打数・得点数の部門を制した選手を指していた[注釈 4][注釈 5]

打撃6部門制覇は1909年にタイ・カッブが記録している。

監督兼任での達成は1925年のロジャース・ホーンスビーが記録している。

名前が太字の選手は打率、本塁打、打点がMLB全体でもトップ(達成時に1リーグであった選手も太字とする)。チーム名の太字は選手兼任で達成。年齢は達成年度の年齢。リーグは達成した時に所属していたリーグ。NLはナショナルリーグ、AAはアメリカン・アソシエーション、ALはアメリカンリーグ。不明は記録不明。()はランニング本塁打の本数(判明している数のみ。走本0本の場合は未記載)、走本はランニング本塁打の意。守備位置は達成年に最も守ったポジション。外野手は右翼手など詳細が判明している場合は記載。盗塁の太字はリーグトップ。

年度 年齢 選手名 リーグ 所属球団 守備位置 打席 打率 本塁打(走本) 打点 盗塁 備考
1878年 23歳 ポール・ハインズ NL プロビデンス・グレイズ 外野 .358 4(1) 50 不明 メジャーリーグ初の三冠王
1887年 29歳 ティップ・オニール AA セントルイス・ブラウンズ 外野 .435 14(1) 123 30 本塁打数に加え、安打数、二塁打数、三塁打数も1位
1894年 27歳 ヒュー・ダフィー NL ボストン・ビーンイーターズ 外野 .440 18 145 48

三冠王、MLB歴代最高打率記録

1901年 26歳 ナップ・ラジョイ AL フィラデルフィア・アスレチックス 二塁 .426 14(4) 125 27 二塁手史上初の達成。近代野球初の三冠王、近代野球以降でのMLB歴代最高打率
1909年 22歳 タイ・カッブ AL デトロイト・タイガース 外野 .377 9(9) 115 76 三冠に加え盗塁数・安打数・出塁率もMLB全体で1位、三冠王唯一の全てランニング本塁打。打撃三冠王の史上最年少記録
1922年 26歳 ロジャース・ホーンスビー NL セントルイス・カージナルス 二塁 .401 42(4) 152 17 二人目の二塁手での達成
1925年 29歳 ロジャース・ホーンスビー NL セントルイス・カージナルス 二塁 .403 39(1) 143 5 史上初の二度目の三冠王。投手も含め唯一の監督兼任での達成。
1933年 25歳 ジミー・フォックス AL フィラデルフィア・アスレチックス 一塁 .356 48 163 2 一塁手史上初の達成、初の両リーグから打撃三冠王誕生
1933年 28歳 チャック・クライン NL フィラデルフィア・フィリーズ 右翼 .368 28(1) 120 15 二人目の盗塁王経験者の達成
1934年 31歳 ルー・ゲーリッグ AL ニューヨーク・ヤンキース 一塁 .363 49(1) 165 9

二人目の一塁手での達成。三冠王の最多打点記録

1937年 25歳 ジョー・メドウィック NL セントルイス・カージナルス 左翼 .374 31 154 4
1942年 23歳 テッド・ウィリアムズ AL ボストン・レッドソックス 左翼 .356 36 137 3
1947年 28歳 テッド・ウィリアムズ AL ボストン・レッドソックス 左翼 .343 32 114 0 メジャー最多タイ記録の二度目の三冠王
1956年 24歳 ミッキー・マントル AL ニューヨーク・ヤンキース 中堅 .353 52 130 10

スイッチヒッター史上初の達成、現在でも史上唯一。三冠王の最多本塁打記録

1966年 30歳 フランク・ロビンソン AL ボルティモア・オリオールズ 右翼 .316 49 122 8 黒人選手として史上初、現在でも史上唯一の三冠王
1967年 27歳 カール・ヤストレムスキー AL ボストン・レッドソックス 左翼 .326 44 121 10
2012年 29歳 ミゲル・カブレラ AL デトロイト・タイガース 三塁 .330 44 139 4 三塁手史上初の達成、メジャーリーグ45年ぶり

参考記録 フレッド・ダンラップ 打率.412 本塁打13 打点不明

1884年にユニオン・アソシエーションでの記録。安打数 (185)、得点 (160)、本塁打 (13)、打率 (.412)、出塁率 (.448)、長打率 (.621)はいずれもリーグトップ。ユニオン・アソシエーションにおける個人の打点数は現在も判明していないが、他の部門の成績から見て、この年のユニオン・アソシエーションの「三冠王」になっていたと思われる。

投手部門

投手5部門制覇は1884年にチャールズ・ラドボーン、1930年にレフティ・グローブが記録している。

名前が太字の選手は勝利、防御率、奪三振がMLB全体でもトップ(達成時に1リーグであった選手も太字とする)。両リーグからの達成はUAAANLなどの3リーグ以上ある場合の2リーグから誕生も含む。セーブの太字はリーグトップ。

年度 年齢 選手名 リーグ 所属球団 投球 勝利 防御率 奪三振 セーブ 備考
1877年 21歳 トミー・ボンド NL ボストン・レッドキャップス 40 2.11 170 0 初の投手三冠王
1884年 28歳 ガイ・ヘッカー AA ルイビル・カーネルズ 52 1.80 385 0

初の両リーグ(3リーグ時に2リーグ)から投手三冠王誕生、投手三冠王で唯一の首位打者獲得経験者

1884年 29歳 チャールズ・ラドボーン NL プロビデンス・グレイズ 60 1.38 441 2

勝率、セーブ数も1位、投手三冠王、MLBの最多勝利記録、投手三冠王の最多奪三振記録

1888年 31歳 ティム・キーフ NL ニューヨーク・ジャイアンツ 35 1.74 335 0
1889年 27歳 ジョン・クラークソン NL ボストン・ビーンイーターズ 49 2.73 284 1
1894年 23歳 エイモス・ルーシー NL ニューヨーク・ジャイアンツ 36 2.78 195 1
1901年 34歳 サイ・ヤング AL ボストン・アメリカンズ 33 1.62 158 0 近代野球初の投手三冠王
1905年 24歳 クリスティ・マシューソン NL ニューヨーク・ジャイアンツ 31 1.28 206 3

両リーグから投手三冠王

1905年 28歳 ルーブ・ワッデル AL フィラデルフィア・アスレチックス 27 1.48 287 0
1908年 27歳 クリスティ・マシューソン NL ニューヨーク・ジャイアンツ 37 1.43 259 5

セーブ数も1位、初の二度目の投手三冠王

1913年 25歳 ウォルター・ジョンソン AL ワシントン・セネタース 36 1.14 243 2 投手三冠王の最高防御率記録
1915年 28歳 グローバー・アレキサンダー NL フィラデルフィア・フィリーズ 31 1.22 241 3
1916年 29歳 グローバー・アレキサンダー NL フィラデルフィア・フィリーズ 33 1.55 167 3

初の二年連続投手三冠王、完封数の三冠王、MLB歴代最多記録

1918年 30歳 ヒッポ・ボーン NL シカゴ・カブス 22 1.74 148 0

両リーグから投手三冠王

1918年 30歳 ウォルター・ジョンソン AL ワシントン・セネタース 23 1.27 162 3
1920年 33歳 グローバー・アレキサンダー NL フィラデルフィア・フィリーズ 27 1.91 173 5

最多記録の三度目の投手三冠王

1924年 33歳 ダジー・ヴァンス NL ブルックリン・ドジャース 28 2.16 262 0 両リーグから投手三冠王
1924年 36歳 ウォルター・ジョンソン AL ワシントン・セネタース 23 2.72 158 0

最多タイ記録の三度目の投手三冠王

1930年 30歳 レフティ・グローブ AL フィラデルフィア・アスレチックス 28 2.54 209 9

勝率、セーブ数もMLB全体で1位

1931年 31歳 レフティ・グローブ AL フィラデルフィア・アスレチックス 31 2.06 175 5

最多タイの二年連続投手三冠王

1934年 25歳 レフティ・ゴーメッツ AL ニューヨーク・ヤンキース 26 2.33 158 1
1937年 28歳 レフティ・ゴーメッツ AL ニューヨーク・ヤンキース 21 2.33 194 0
1939年 30歳 バッキー・ウォルターズ NL シンシナティ・レッズ 27 2.29 137 0
1940年 21歳 ボブ・フェラー AL クリーブランド・インディアンズ 27 2.61 261 4
1945年 24歳 ハル・ニューハウザー AL デトロイト・タイガース 25 1.81 212 2
1963年 27歳 サンディー・コーファックス NL ロサンゼルス・ドジャース 25 1.88 306 0
1965年 29歳 サンディー・コーファックス NL ロサンゼルス・ドジャース 26 2.04 382 2
1966年 30歳 サンディー・コーファックス NL ロサンゼルス・ドジャース 27 1.73 317 0

42年ぶりの最多タイの三度目の投手三冠王、35年ぶり最多タイの二年連続投手三冠王

1972年 27歳 スティーブ・カールトン NL フィラデルフィア・フィリーズ 27 1.97 310 0
1985年 20歳 ドワイト・グッデン NL ニューヨーク・メッツ 24 1.53 268 0 投手三冠王の史上最年少記録
1997年 34歳 ロジャー・クレメンス AL トロント・ブルージェイズ 21 2.05 292 0
1998年 35歳 ロジャー・クレメンス AL トロント・ブルージェイズ 20 2.65 271 0

33年ぶりの二度目の投手三冠王、32年ぶりの最多タイの二年連続投手三冠王

1999年 27歳 ペドロ・マルチネス AL ボストン・レッドソックス 23 2.07 313 0
2002年 38歳 ランディ・ジョンソン NL アリゾナ・ダイヤモンドバックス 24 2.32 334 0
2006年 27歳 ヨハン・サンタナ AL ミネソタ・ツインズ 19 2.77 245 0
2007年 26歳 ジェイク・ピーヴィー NL サンディエゴ・パドレス 19 2.54 240 0
2011年 28歳 ジャスティン・バーランダー AL デトロイト・タイガース 24 2.40 250 0

87年ぶりの両リーグから投手三冠王

2011年 23歳 クレイトン・カーショウ NL ロサンゼルス・ドジャース 21 2.28 248 0

韓国プロ野球

打者部門

年度 選手名 所属球団 打率 本塁打 打点 備考
1984年 李萬洙 三星ライオンズ .340 23 80
2006年 李大浩 ロッテ・ジャイアンツ .336 26 88
2010年 李大浩 ロッテ・ジャイアンツ .364 44 133 最多記録となる2度目の打者三冠王

投手部門

年度 選手名 所属球団 勝利 防御率 奪三振 備考
1986年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 24 0.99 214
1989年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 21 1.17 198
1990年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 22 1.13 189
1991年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 19 1.55 210 最多記録となる4度目の投手三冠王
2006年 柳賢振 ハンファ・イーグルス 18 2.23 204
2011年 尹錫珉 起亜タイガース 17 2.45 178

台湾プロ野球

打者部門

年度 選手名 所属球団 打率 本塁打 打点 備考
1998年 Jay Kirkpatrick 興農ブルズ .378 31 101

投手部門

年度 選手名 所属球団 勝利 防御率 奪三振 備考
1999年 渡辺久信 嘉南勇士 18 2.34 201 TMLで達成
2002年 宋肇基 中信ホエールズ 16 2.13 183
2006年 林恩宇 誠泰コブラズ 17 1.73 209

「三冠王」という訳語

日本プロ野球においては、中島治康が打撃三冠を達成した当時は「打撃三部門を獲得した」ことへの認識は薄かった[4]。戦後、1953年から1958年にかけて西鉄ライオンズの強打者中西太は4度にわたって僅差で三部門獲得を逃したが、それをめぐる報道の中で「トリプルクラウン」として取り上げられるようになり、「トリプル冠」「三重勝」といった表現の試行を経て、1958年頃から「三冠王」という訳語がマスコミで定着した[4]。この事実を紹介した日本経済新聞の記事では、先に存在していた競馬の「三冠馬」という言葉の影響を受けた可能性が強いと指摘している[4]

脚注

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注釈

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参照

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参考文献

  • http://www.npb.or.jp/history/list_triplecrown.html
  • http://mlb.mlb.com/mlb/history/rare_feats/index.jsp?feature=triple_crown
  • http://mlb.mlb.com/mlb/history/rare_feats/index.jsp?feature=triple_crown_p
  • 4.0 4.1 4.2 「三冠王」定着の陰に伝説の強打者 - 日本経済新聞2011年10月18日「ことばオンライン」

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