ヴィオール属

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ヴィオール属(ヴィオールぞく、テンプレート:Lang-en)は、擦弦楽器に関する括りの一つ。

「ヴィオール (Viole) 」というフランス語は、イタリア語のヴィオラ Viola と同様古くは擦弦楽器の総称であったとの見解もある。だがこの語は17~18世紀フランスにおいては、イタリア語のヴィオラ・ダ・ガンバと同じ楽器を指した。この意味でのヴィオール属の解説は「ヴィオラ・ダ・ガンバ」の項目を参照。

「~属 (Family) 」 とは、本来、いくつかの音域からなる一つの(同じ構造の)楽器に用いられる表現である。しかし今日、実際には、ヴィオールと似ている、あるいは何らかの関係があると考えられる他の擦弦楽器も含めて「ヴィオール属」と呼ぶことが多い。これは、擦弦楽器の総称としての「ヴィオール」(当然ヴァイオリン属も含む)とは別の用法であり、しばしばヴァイオリン属との対比の意味で用いられる。フランス語圏や英語圏(ヴァイオル Viol)ではこのような用法は見られない。

「ヴィオール属」とされることの多い楽器

以下に、「ヴィオール属」とされることの多い主な楽器について、ヴィオール(=ヴィオラ・ダ・ガンバ)との関係を述べる。

コントラバス

コントラバスは今日一般にヴァイオリン属とされるが、歴史的にはヴィオラ・ダ・ガンバ属の最低音域であるヴィオローネ(イタリア語で「大きなヴィオラ」の意味)が前身で、後にヴァイオリン属の特徴を取り入れたと考えられている。なで肩の形状、平らな裏板、4度調弦、弓の持ち方(ジャーマン式)などに、ヴィオラ・ダ・ガンバ属の特徴を留めている。

ヴィオラ・ダモーレ

共鳴弦をもつヴィオラ・ダモーレがしばしばヴィオール属とされる理由としては、なで肩の胴体、響孔の形(f 字形ではない)、弦の数が多いこと(弓で弾く弦が6本または7本)、柔らかい音色、フランス語名のヴィオール・ダムール Viole d'amour、ヴィオラ・ダ・ガンバ属の高音域楽器が前身との説、などが考えられる。しかし、腕で支えること、フレットがないことはヴァイオリン属と共通で、しかもヴィオラ・ダ・ガンバの最も重要な特徴と一致しない。

バリトン

ヴィオラ・ディ・ボルドーネとも呼ばれ、ハイドンが仕えたエステルハージ侯が愛用したことで知られるバリトンは、バスのヴィオラ・ダ・ガンバに多数の共鳴弦を加えることにより成立したと考えられている。また、棹の裏側が開いており、弾きながら親指で共鳴弦を直接はじくことも出来た。

リラ・ダ・ガンバ

リローネテンプレート:Enlinkとも呼ばれるこの楽器は、時代や地域により形態や弦の数・調弦法が様々であるが、一般にバスのヴィオラ・ダ・ガンバよりやや小さく、糸倉がなくて、糸巻きは指板の延長上にある平板の上で板の面に対して直角に並ぶ。弦の数はヴィオラ・ダ・ガンバよりかなり多く、調弦法はきわめて変則的。おそらく弦一本だけを弾くことはとても難しく、和音奏法の楽器だったと考えられる。

カントン

フランス語で「5つの音」を意味するカントンテンプレート:Enlinkは、5弦のヴァイオリンである。パルドゥシュ・ド・ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ属の最高音域、後期バロック時代にフランスで独奏楽器として愛好され、特異なレパートリーを形成した)のための作品を、ヴァイオリン奏者が弾いて楽しむために考案された。

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その他

稀に、ヴィオラ・ダ・ブラッチョ、ヴィオラ・ポンポーサ、ヴィオラ・ダ・スパッラ(またはヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)がヴィオール属とされることがあるが、これらはすべてヴァイオリン属であり、ヴィオール属(=ヴィオラ・ダ・ガンバ属)とは異なる。

外部リンク

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