レントゲン (単位)

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:Infobox レントゲン(röntgen または roentgen)は、かつて使われていた照射線量(照射した放射線の総量)の単位である。記号はRX線の発見者であるヴィルヘルム・レントゲンにちなんで命名されたもので、1928年に導入された。単位記号は当初小文字のrが当てられていたが、人名由来の記号は大文字から始めるという原則に基づき1962年Rに変更された。

空気中に放射線(X線やγ線)を照射すると原子イオン化(電離)される。1レントゲンは、放射線の照射によって標準状態(STP)の空気1立方センチメートル(cm3)あたりに1静電単位(esu)のイオン電荷が発生したときの、放射線の総量と定義される。1静電単位のイオン電荷は、2.08テンプレート:E個の正負のイオン対に相当する。

レントゲンはCGS単位系(CGS静電単位系)の単位であり、国際単位系(SI)には採用されていない。そのため日本では1989年(平成元年)4月の国際単位系への切り替え以降使わない方向で進んでいる。ただし、JIS Z8203:2000によると「当分の間、使用することがCIPMで認められている」と記載されている。

SIとの「換算」

SIにおける照射線量の単位はクーロンキログラム(C/kg)である。1静電単位は約 3.3356テンプレート:E- C、標準状態の空気1 cm3の質量は1.29テンプレート:E- kg なので、1 R = 3.3356テンプレート:E-/1.29テンプレート:E- = 2.58テンプレート:E- C/kg となる。

ただし厳密には、R と C/kg は電荷÷体積から電荷÷質量次元が変わっており、異なる物理量を表す単位なので、単純な換算はできない。R と C/kg の「換算値」は実際は単位同士の換算比率ではなく、標準状態の空気の密度を表す数値である。

空気は平均で約34電子ボルトのエネルギーで電離しイオン対を一組作るので、照射線量1 C/kgのときの空気の吸収線量は約34 J/kgとなる。すなわち照射線量 1 R の放射線の吸収線量はおよそ 2.58テンプレート:E-×34 Gy = 8.77 mGy である。

レントゲンは、X線やγ線の照射線量の計量よりむしろ、様々な放射線に対する被曝量の計量に用いられた。放射線の種類による人体に対する影響の違いによって値を調整した"röntgen equivalent man"(rem、レム)という単位が使用されていた。SIにおいては、レムはシーベルトに置き換えられている。

レントゲンによる値の例

自然界における放射線の量は、場所によって異なる。低い所では17 µR/h で、高い所では1100 µR/hに達する。一般に、都市部では高い値を示す。人が一生の間に被曝する自然放射線の量は約16レントゲン(160ミリシーベルト)である(寿命を60年とし、自然放射線の量を 30 µR/hとして計算)。

人間が500レントゲンの放射線を5時間程度の短時間に浴びると致命的である。

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