レコードプレーヤー

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テンプレート:複数の問題 レコードプレーヤーテンプレート:Lang-en)は、アナログレコードを再生する音響機器である。フォノグラフ(アメリカテンプレート:Lang-en)、グラモフォン(イギリステンプレート:Lang-en)とも。古くは蓄音機と称した。今日における用語としては、電気を利用しないものを蓄音機、駆動と音声信号の再生に電気を利用するものをレコードプレーヤーと呼んでいる。

基本構造としては、レコードを載せて回転させるターンテーブル、レコード表面の音溝の振幅を拾う(ピックアップする)ピックアップ(電気信号に変換する機能も含む)、ピックアップ部が取り付けられたトーンアーム、電気信号をアンプし外部に出力する機構が一体化されている。

概要

レコードプレーヤーから出力される信号は微弱であるため、オーディオアンププリアンプパワーアンプ)で増幅して、最終的に人間に聞こえる音圧レベルの音声信号としてスピーカーヘッドフォンなどに出力する。

現代のレコードプレーヤーとは前述のように、コンポの一機器として、アンプに微弱な信号だけを出力するだけのものを指すが、イコライザアンプ(後述)を含むプリアンプを備え、カセットデッキなどの出力信号と同等の強さの信号を出力するものもあった。

また、かつてコンポなどがなかった頃は、プレーヤーといえば、パワーアンプとスピーカを備え、単独でレコード再生できる一体型機器を指した。これらは、可搬型のものをポータブル(プレーヤー)と呼んでいたが、未だSP盤が健在だった1960年代初頭あたりまでは、電蓄(電気蓄音機の意)と呼ばれることも多かった。

2007年現在、レーザー光で音溝を読み取る非接触型のレコードプレーヤーも商品化されている。但し、プレーヤー自体が高価であるため、日本国外の公共機関が使用している他は、一部のオーディオマニアに愛用されている程度で、一般的ではない。

現在、日本を含む主要先進国では一般向けに新譜レコードが(一部を除き)ほとんど市販されていないため、プレーヤーも主に古いレコードの再生を目的とした一部のオーディオマニア向けの製品か、通信販売などで見られるような極安価な製品、DJ向けにピッチコントロールなどを搭載したほぼ楽器に近い製品などが市販されている。近年ではヒップホップDJのスクラッチプレイのために、音楽の再生という本来の目的よりも完全に楽器として設計された機種なども登場している。

構成

ファイル:Record player.jpg
(1) ターンテーブル、(2) トーンアーム、(3) ピックアップ

レコードプレーヤーは次のような主要部分からなる。

  1. ターンテーブル
  2. トーンアーム
  3. ピックアップ
  4. 筐体

ピックアップは、交換可能なモジュールになっているカートリッジ式であることが多いため、もっぱらカートリッジと呼ばれる。それに倣い、以下、カートリッジとする。慣用的に、トーンアームと一体になっていて交換できないものもカートリッジと呼ばれることが多い。

ターンテーブル

レコード盤を水平に載せて一定速度で回転する回転台。一般に使われる回転数は、33 1/3(LP盤)・45(EP盤)・78(SP盤r.p.m.である(但し78回転のSP盤対応機は少なく、普及機や上級機の多くはLP盤とEP盤にのみ対応。さらにSP盤対応機の中にはLP及びEP盤とは別のSP専用カートリッジに交換しないとSP盤を再生出来ない機種もある)。フォノモータとも称した。

モーター(電動機)で駆動するが、レコード盤を一定速度で回転させるためにモーターの回転数を規整しなければならない。初期には電力会社の供給する交流電源の商用電源周波数 (50/60Hz) を基準として、同期モーターで一定回転を得ていた。この場合は電源周波数の異なる東日本/西日本を移動する場合に、回転数の変化に応じた調整改造を受ける必要があった。以後、モーターサーボ回路やPLLなどの電子技術によって独自にモーターの回転数を制御できるようになり、回転数の安定とレコード盤に応じた回転数切り替えなどもモーター側で行えるようになった。

回転をターンテーブルに伝えるための方法として次のような方式がある。

アイドラー方式(アイドラードライブ)
モーター軸(プーリー)→ゴム製の円盤(アイドラー:減速機構も兼ねる)→ターンテーブル内周に回転を伝える
この方式の多くは、モーター軸に段状に直径の違う速度切り替え用スリーブを取り付けておき、メカ的にアイドラーの接する位置を切り替えることで減速比を変えて、必要な回転数に対応する。また同期モーター時代は、そのスリーブも交流電源周波数に応じて2種類用意されていて、周波数の違う地域への引っ越し時には交換する必要があった。構造が簡単なため安価な機器で使われていたが、モータの不要な振動音(「ゴロ」あるいは「ランブル」と称した)を拾ってしまうという欠点もあった。しかし高級品は最高の音が聴けるとマニアの憧れの存在になっており現在ヴィンテージとして取引されている、舶来ではトーレンス・ガラード・EMT、国産ではトリオが有名。
ベルト方式(ベルトドライブ)
モーター軸(プーリー)→ゴムベルト→ターンテーブルと回転を伝える(減速も兼ねる)
アイドラー方式と同様に段付きプーリーを用いて回転数を切り替え、電源周波数への対応も同じ手法を用いる物が存在したが、後のモーター側で回転数制御を行なう物にはベルト掛け替え機構は無い。
ゴムベルトが中間に入るためモーターの振動をターンテーブルに伝えにくいという特長があり高級ターンテーブルでも利用された。ターンテーブルの慣性モーメントが大きいほど回転むらが減るため重量級の製品がマニアに愛好された。
この方式の欠点としてはゴムベルトが伸びる、硬化するなどの経年劣化により回転むらが起きやすくなる、回転速度が変わるということがある。
ベルト方式の一種として、伸び縮みの少ない糸を使った「糸ドライブ」が一部の高級機種に使われている。
直結方式(ダイレクトドライブ
最終回転数で回転するモーターの軸に直接ターンテーブルを結合する。あるいは、ターンテーブルそのものがモーターの一部になっている方式である。減速機構に起因する機械的振動や劣化は軽減できたが、低速で回転するモーターの回転を滑らかにするため回転子・固定子の極数を増やす、ターンテーブルの質量を増やして慣性による平滑化をはかる、サーボ制御に起因するジッタを低減するなどの工夫を要しコストが高いため、比較的高級なプレーヤーにだけ用いられたが、後年では比較的安価な製品にも用いられるようになった。部品点数が他の機構に比べて少ないのもその一因である。モーターにはACモーターとDCモーターの二種類が使われ、前者はコギング(ジッタ、細かなトルク変動)が少ないことが利点であり、後者は起動トルクが大きいことが利点である。後にDCモーターもコギングの発生しないスロットレス・モーターが主流になっていく。また、DJ用のモデルでは、そのDJプレイの上で強力なトルクとすばやい立ち上がりが必要とされる上に、他の方式ではアイドラーやベルトなどの駆動力伝達機構を破損する危険があるため、ほとんどの機種がダイレクトドライブを採用している。

トーンアーム

カートリッジをレコード盤に対して適切な位置関係で保持しつつ再生する溝に追従してレコードの外周から内周に動かす機構で、針を溝に対して適切な力(針圧)で接触させる機構も有する。カートリッジ取り付け部と反対側の一端に設けた回転軸を中心にスイングする方式が主流だが、レコードの半径方向に直線状に移動させるリニアトラッキング方式と称する方式もある。

また、針圧の調整にバネなどの能動的な圧力を使用する物をダイナミックバランス型、錘の調節により重力で針圧を得る物をスタティックバランス型と呼ぶ。

トーンアームで溝をトレースしつつ、針は溝の振動を拾うため、溝の内周への動きに相当する周波数をカートリッジで拾ってしまうとアームが溝をトレースできなくなる。レコード盤の反りに対しても対応が求められる。従って、カートリッジで再生できる周波数には下限があり、カンチレバーを含めた振動系のコンプライアンス(振動系の「柔らかさ」の指数)とアームのそれを適切に設定する必要がある。このため、ナイフエッジ形状や受軸やオイルによる制動機構など様々な工夫がある。

スイングアーム方式

回転軸を中心に水平・垂直方向にスイングするアームにより針の盤面への接触と音溝への追従を行う。回転軸の抵抗を小さくすることは容易であるため、高級機から廉価品まで大多数の製品がこの方式である。

アームの形状は「S字」「J字」「ストレート」に大別される。J字やS字の形状はそのアームの形状により先端カートリッジ中心軸をトーンアーム中心軸に対して若干内側に向けるためである。ストレート型でもヘッドシェル部分が角度を持ってカートリッジを取付けるものが一般的である。この角度をオフセット角という。また、針先の位置はアーム支点からターンテーブル中心よりも遠くにオーバーハングする位置に調整され、オフセット角とともに後述するトラッキングエラーを軽減する働きがある。

トラッキングエラー
スイングするトーンアームによってカートリッジは音溝に対する相対角度がアームのスイングする角度分変化することになる。正しい角度との差をトラッキングエラー角という。
トラッキングエラーにより再生信号に歪みが生じるため前述のオフセット角とオーバーハングにより軽減するものが一般的である。より完全な対策として、カートリッジが常に音溝の接線方向を向くように専用の回転軸を持たせる方法も考案されている。
インサイドフォース
オフセット角及びオーバーハングによりアームがターンテーブル内側、即ち中心方向へ過剰に引き寄せられる力がかかり正しいトラッキングの妨げとなる。この力をインサイドフォースと呼ぶ。トーンアームには錘又はバネの力によりこれを打ち消す機構が備わっているものがあり、この機構をインサイドフォース・キャンセラーまたはアンチ・スケーターと呼ぶ。

リニアトラッキング方式

カートリッジをレコードの半径方向に直線的に平行移動させる方式である。タンジェンシャル方式、または日本語で「直線追従方式」ともいう。

スイングアーム方式に比較して、音溝に対する相対角度が変化せずに平行移動するためトラッキングエラーが無く、この対策のオーバーハングもオフセット角によるインサイドフォースの発生も無いという利点がある。

スライド移動部分をレコード盤面上に設置することにより、本来の意味のトーンアーム部分を比較的短くもしくは殆ど無くすことが出来る。これはスライド質量を減らし動きやすくする効果もある。

アームの移動方法はモーターにより能動的に駆動するものと音溝によって受動的に行うものに分けられる。

受動型
スライド移動に対する摩擦抵抗を十分に低く抑えることで針先が音溝に導かれる力でアームも共に移動する。摩擦抵抗を減らすために、特に高精度のベアリングや空気浮上式のエアベアリングなどが使用される。
能動型
センサーにより位置検出を行いアームを能動的に駆動するサーボ機構により音溝に追従する。アームが傾くことによる機械的スイッチによるものからレーザーセンサーによるものまでその精度は様々である。高精度になるほど理想的なトラッキング位置を保つことが出来るが、レコード盤の偏心に過敏に反応しないような調整も必要になる。

カートリッジ

レコード表面の音溝の振幅を、電気信号に変換する装置である。フォノカートリッジともいう。音溝をトレースする「針先(スタイラスチップ)」と、これを支える「カンチレバー」、カンチレバー後端に置かれる発電コイル、信号出力用の接点(ピン)で構成される。なお、ステレオの場合は、出力ピンが4本 (L+/L-/R+/R-)、モノラルの場合は2本 (+/-) になる。

スタイラスチップ(針先)は、ダイアモンドルビーサファイアなどの硬度の高い物質で作られており、断面の形状は、円形、楕円形、ラインコンタクト等がある。特にラインコンタクト1954年フランスのレコード・メーカーパテ・マルコーニ(Pathé-Marconi:現在のフランスEMI)で考案された「深さ方向に大きい曲率と、小さな実効針先曲率で音溝に接触させて諸特性を改善する」といった提案思想が、柴田憲男の4チャンネル針で初めて実現化され、チャンネル・セパレーションや周波数特性で大幅な性能向上、およびスタイラスの長寿命化を実現した[1](4チャンネル方式(後述)では、30kHzをキャリアとするFM方式の差分信号を多重しているため、通常のレコードでは全く必要が無いような高周波まで伸びた特性が必要であるため)。

スタイラスチップの大きさはレコード盤の種類に合わせて適切なものを用いる。大きさによる種類では、SPレコード用(約3mil程度)、モノラルレコード用(約1mil程度)、ステレオレコード用(約0.7mil程度)の3種類がある[2][3]

スタイラスチップの寿命については、判定の基準として「曲率の変化、変化比を基準とする。再生歪みを基準とする。磨耗面の幅を基準とする。」方法が考えられるが、針先の形状や使用状況によって磨耗の状況が異なってくることから一概に「寿命は何時間程度」と定義するのは難しい[1]。レコード盤面に接触するため機械的な摩耗や摩擦熱などにより消耗・摩滅する。消耗が進んだ針の使用はレコード盤を傷める原因となるため、一定時間おきでの交換が推奨される。

カンチレバーは、先端にスタイラスチップを装着した細長い棒で、スタイラスチップと反対側に発電機構を備える。スタイラスチップをレコード音溝に押し付ける機能と、音溝の振幅に正確に追従し電気信号に変換する2つの機能を持つ重要な部品である。カンチレバーの形状には、無垢棒、アングル、パイプ、テーパー形状などがある[1]。カンチレバーのおもな材料は安価で加工が容易なアルミニュウムジュラルミンなどの軽合金が用いられるが、高級品には高度な加工技術を必要とするが音響特性に優れたボロンベリリウムが用いられる。

発電方式によって、MM (Moving Magnet) 型とMC (Moving Coil) 型に大きく分けられる。

MM型
カートリッジ内部に差し込まれたカンチレバー後端部分に永久磁石を取り付け、この永久磁石の振動によりその周囲に置かれたコイルに発生する起電力を再生出力とする方式。古くはマグネチック型と称した。
MC型
カートリッジ内部に差し込まれたカンチレバー後端部分にコイルを取り付け、その周囲に永久磁石を置く。このコイルの振動によりコイルに発生する起電力を再生出力とする方式。

MC型のほうが繊細で高音質とされる(製品によって傾向は異なる)。実際の製品では、MC型は出力電圧がMM型の1/10程度(0.2 - 0.5mV程度)のため、モノラル専用機含め特に高出力を謳った製品でない限りはイコライザアンプ(後述)の前段に低雑音の前段増幅器(ヘッドアンプ)または昇圧トランスを必要とする。また、スタイラスチップが磨耗した場合に、構造上MM型がスタイラスチップとカンチレバーを含めた「レコード針」のみの交換であるものが多い(一部高級品に全体交換のものもあり)のに対し、MC型はカートリッジ全体の交換となるため、交換時の費用はMC型のほうが大きくなる。このように、コスト的にはMMに分があるため、一般用の製品は殆どMM型である。

かつてはMC型でも、MM型と同様に針交換が出来る機種があったが(オーディオテクニカ「AT-30E」等)、構造が複雑となるためかその種類は少なかった。

写真のカートリッジは、本体 (1) がシェル (3) に取り付けられている。(2) がカンチレバーとレコード針(スタイラスチップ)の部分。シェルは (4) のコネクタ部分でトーンアームに取り付ける。(5) は指掛けである。

そのほか、安価なプレーヤー用には、圧電素子を用いるセラミックカートリッジやクリスタルカートリッジもあり、これらは出力が大きく、素子が容量性の特性をもつことからイコライザアンプを省略することができるため、アンプの製造コストを下げられるという利点がある(但し、高音域の特性が劣ること、温度や湿度の影響が大きい、歪みが多いなどの問題点もあり、最近では一部の廉価な機器以外は全く用いられなくなった)。また、(スタックスより商品化されていた)スタイラスの振動に伴う静電容量の変化を用いたコンデンサ型や、(audio-technicaの製品に見られる)磁気抵抗の変化を検出するIM (Induced Magnet) 型、MI (Moving Iron) 型も作られた。あまり知られていないようだが1960年代末頃に、光電素子を用いた発電方式のカートリッジがトリオやシャープなど各社から発売されていた。

普及型レコードプレーヤーなどで、カートリッジ(レコード針)がメーカー指定品しか使えないか、そもそもトーンアームと一体となっているものもある。この場合はユーザーが自由にカートリッジを交換することは出来ない。

レコード針生産の縮小

2000年代からレコード針を生産するメーカーが激減し[注 1]、消耗品である針(を含むカートリッジ)の入手は「ナガオカトレーディング[注 2]で生産・販売する少数の製品や、放送局で使われるDENON製MC型カートリッジ「DL103」[注 3]、など一部数機種[注 4]を除き困難になっている。マニア向け一部高級品の流通在庫が細々と一部の販売店やインターネットオークションで販売されている状況となり、一時期、普及型のプレーヤーの針は入手が絶望的な状況とさえ言われた。現在、レコード専門店のアーピス・ジャパン[注 5]が、互換針・針一体カートリッジの製造・販売を行っている。なお、1970年代の一時期に生産されていた4チャンネル針(考案者の柴田憲男の名からシバタ針とよばれる[1])は非常に入手困難である。なお1982年並木精密宝石によってマイクロリッジ針という4チャンネル針が開発されたが、カートリッジメーカにおいては一部の高級品にしか採用されていない。

これらのことなどから、かつてレコードを大量に再生していた放送局などでは、レコードを含む過去のアナログ音源をデジタル化する作業が進められている。また、今後も聴くのであれば、デジタル化する(MDSDCD-Rなどにダビングする)か、カセットテープなどにダビングすることもできる。しかしながら音質の劣化は避けられず、多くのレコード愛好家は、高価なアナログ機器にこだわっている。

4チャンネル方式

(詳細は4チャンネルステレオ#CD-4を参照)1970年代前半の一時期に流行した4チャンネルステレオの方式の一部に、差分信号を30kHzをキャリアとしてFM方式でレコードに多重記録する方式があり、これの再生のためには、通常のレコードでは全く必要が無いような高周波まで伸びた特性が必要であった。

レーザーターンテーブル

テンプレート:Main 1990年代に入るとレーザー光を利用してアナログレコードの再生を行うプレーヤーが登場した。基礎開発は米国シリコンバレーのベンチャー企業だったが、資金難により研究を放棄。その後、日本の企業エルプがパテントの全ての権利を買い取り開発を継続、実用化に成功。各世界の放送局や図書館、又は愛好家が利用している。針を盤面に接触させないので磨耗がなく、多少痛んだ盤面や、保存状態が悪く、レコード針ではハムノイズや音とびしてしまうような大幅に反った盤でも再生が可能であり、回転数も任意に調整可能でLP・SP・ドーナツ盤の別なく再生可能であるメリットはあるが、レーザー光を透過してしまう青盤赤盤は掛けられない。

筐体

ターンテーブルとトーンアームを保持する箱。外部からの振動による針飛びや、スピーカーからの音声が回帰することによるハウリングを防止するために、メカニズムをばね等で浮かす方式や、逆に重量のある頑丈な筐体にしっかり固定して振動を押さえ込む方式などがあり、また筐体底面の足には防振ゴムやばね機構などを複合したインシュレータを設置するなど様々な工夫がされる。

付属機構

  • トーンアームの上げ下げには、レコードの溝を傷つけないようにコツが要るが、その扱いを少しでも容易にするために、モーター制御でアームを自動的にレコード盤の最外周に降ろしたり、再生終了あるいは任意の時点でアームを上げて元の位置に戻す機構(オートリターン)を備えたプレーヤー(オートプレーヤー)も多かった。オーディオマニア用には、余計な機構は好まれないため、アームの上下だけを行うメカニズム(アームリフタ)のみを装備するのが普通であった。
  • ほとんどのプレーヤーがターンテーブルの回転数を切り替える仕組みを持つが、回転数が電源周波数に影響される機種では、使用する地域によってモーター回転数を補正するための機構を持っていた。さらに、回転数の微調整(ピッチコントロール)が可能な機種もある。モーターに加える電圧や発振周波数を変化させることによるものが一般的だが、一部の機種には機械的に微調整を行うものもあった。
  • 1960年代後半まで(一部のメーカーでは1980年代まで)は複数のレコードを連続演奏することが可能な機種も存在した(オートチェンジャー)。業務用のジュークボックスにおいてはアームによりレコードを交換する機構が用いられ、一般家庭向けの製品では特殊な長いスピンドルを装着してレコードを宙に浮かせるように重ね合わせ、演奏が終了するごとに1枚ずつターンテーブル上に落下させる機構が用いられた。

関連機器

イコライザーアンプ

機械的な振動を用いるレコードでは、自然の音声の周波数分布において、高音域は音圧レベルが低く、記録波形の振幅も小さくなり、ホコリの影響や電気的ノイズに記録音声が埋もれてしまいやすい。一方、低音域の音圧レベルは高く、波形の振幅が過大であると隣接する音溝にも影響し、盤面の溝の送りピッチを大きくする必要が生じて、収録時間が短くなる。そのため、レコードでは原盤のカッティング時に、低音域を減衰させ高音域を強調して記録し、再生時に記録時と逆の周波数特性をもつ補正増幅器、すなわちイコライザアンプを通して再生することで、再生される周波数特性が平坦になるような手法を用いた。イコライジング特性は、当初レコードレーベルごとに統一性のないものが用いられたが、後にRIAAの定めたカーブに統一された。この、RIAAの定めたレコード用のイコライザの特性のカーブを「RIAAカーブ」と呼ぶ。

前述のように、圧電素子を用いるセラミックカートリッジやクリスタルカートリッジは、この再生時に必要な補正特性を持つので、それらを使う安価なポータブル電蓄などでは、カートリッジから適正な入力インピーダンスで信号を受け取れば、イコライザアンプは必要としなかった。テンプレート:要出典範囲

コンポーネントステレオのプレーヤーなど、MM型ないしMC型の電磁的なカートリッジを使う場合は、イコライザアンプが必要となる。そのため、レコード時代のアンプでは、このイコライザアンプを内蔵し、「PHONO(Phonographの略)」というレコードプレーヤー専用の信号入力端子と、ピックアップのシールド線を接続するアース端子を設けるのが、単体プリアンプ・プリメインアンプ問わず一般的だった。

レコードからCDへの移行が進むと、ミニコンポなどはイコライザアンプを省略した。そのため、以前のプレーヤーをそのまま接続できなくなった。そこで、イコライザアンプはプレーヤーに搭載するようになった(スイッチでON/OFFを切り替えられる)。同じ理由でパソコンにも直接接続できないため、プレーヤー側でデジタルデータ化までやってしまうUSB端子を備えたモデルも登場した[注 6]

なおアンプの「PHONO」端子は再生音が小さい(増幅機能=フォノイコライザアンプ非搭載の)レコードプレーヤー専用端子で他機器入力端子より高感度であるため、レコードプレーヤー以外の機器を「PHONO」端子に繋ぐと大音量が出てスピーカーを破損する恐れがある(フォノイコライザアンプ内蔵プレーヤーをPHONO端子に繋ぐ場合、必ずプレーヤーに付いているイコライザスイッチを「切=PHONO」位置にしておく)。さらにPHONO端子の入力感度は最も一般的な普及タイプである「MM型カートリッジ」を使用した場合に合わせているため、カートリッジを交換可能な高級レコードプレーヤーでMC型カートリッジを使用する場合は(プレーヤーとアンプの間に)市販の昇圧トランスを繋がないと音が小さくなる(カートリッジ切替スイッチ付アンプにMCカートリッジ使用プレーヤーを繋ぐ場合は昇圧トランス不要。MCカートリッジ使用プレーヤーを直接繋いだ場合は「MC」に合わせ、MMカートリッジ使用プレーヤー及び昇圧トランス経由でMCカートリッジ使用プレーヤーを繋いだ場合は「MM」に合わせる)。メーカーによってはPHONO端子にレコードプレーヤーを繋がない時は端子を塞いで他機器の誤接続を防ぐための「ショートピンプラグ」がアンプに付属されている(工場出荷時にPHONO端子にはショートピンプラグ装着済みで、レコードプレーヤーを繋ぐ時のみ外す。但しショートピンプラグをPHONO以外の入力端子や録音出力及びプリアウト=パワーアンプ出力端子に挿入するとアンプ回路故障や誤動作の原因)。

大半のレコードプレーヤーとPHONO端子付きアンプはアース線とアース端子を搭載しているが、これは一般家電製品に搭載されている(感電・漏電事故防止のための)安全アースではなく、雑音防止のためのものである(普及型レコードプレーヤーの中にはアース線無しの機種もある)。さらに各種ケーブル類(電源コード、アナログ音声ピンケーブル、アース線、カセットデッキ等とのシンクロ録音用コンピュリンクケーブル)はプレーヤー本体からの直出し式となっている機種が殆どで、一般AV機器に多い(プレーヤー本体側が)プラグ式となっているケーブルを採用しているレコードプレーヤーは一部上位機とミニコンポタイプ(EXEMODE及びAudio Comm製レコードプレーヤーやDENON「音聴箱=おとぎばこ」シリーズなどのラジオCDプレーヤー・カセットデッキ・SD/USBレコーダー併載機)のみである。またレコードプレーヤー単体機はヘッドホン端子非搭載なので、ヘッドホンや外部アクティブスピーカーはアンプ等を経由して接続する形となる(ミニコンポタイプはプレーヤー本体にもヘッドホン端子を搭載)。

DJコントローラ

2000年代以降、主にDJ用途として、CDやMP3などのデジタル音源をレコードプレーヤー感覚で操作できるようにした製品が出回りつつある。

一般的にはDJミキサーとレコードプレーヤーのターンテーブル部に見立てたコントロール部を一体化させた製品が多く、俗に「DJコントローラ」「デジタルターンテーブル」等と呼ばれることが多い。中にはコントロール部がレコードプレーヤー同様にモーター駆動で回転する製品もあり(Technics SL-DZ1200など)、レコードプレーヤーでアナログレコードをスクラッチするのと似た感覚の操作を実現する。

逆に、既存のレコードプレーヤーをPCと接続することで、レコードプレーヤーをコントローラとして使用するタイプの製品もある(スクラッチライブなど)。この種の製品では、レコードプレーヤーに「コントロールバイナル」と呼ばれる特殊なレコードをセットし、このレコードが発する音をPC側にインストールしたソフトが検知することで、レコードプレーヤー側で行ったピッチコントロールやスクラッチ・頭出しなどをPC側に反映させる。

主要メーカー

現行メーカー

撤退メーカーないしはブランド

参考文献

脚注

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注記

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関連項目

テンプレート:ウィキポータルリンク

外部リンク

  • 1.0 1.1 1.2 1.3 テンプレート:Cite book
  • JIS S8601『ディスクレコード』、JIS S8516『スタイラス』、IEC PUB 98
  • テンプレート:Cite book

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