レイピア

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1580-1600年頃のレイピア。モルジュスイス)の博物館所蔵
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17世紀前半のレイピア

レイピア (rapier) とは、細身で先端の鋭く尖った刺突用の片手剣である。16-17世紀頃のヨーロッパで、主に護身あるいは決闘の際の武器として用いられた。

外観

幅は2.5cmかそれ以下、全長1.2m前後のものが標準的。重量は1.5kgほどあり、見た目よりも重い。多くの場合、装飾を施したや、手の甲を覆う湾曲した金属板などが取り付けられている。しばしばフルーレと混同されるが、レイピアは細身ではあっても基本的には両刃であるため、刃を落として主に練習用に使われていたフルーレとは異なる。ただし後のレイピアには、三角形の断面形状を持った片刃のものや、刃が付けられていないものも存在する。刃の付いたレイピアでは切ることも可能であるが、レイピアによる剣術の基本は、相手を突くことである。刀身が細すぎる為、普通に斬っても、下手に突いても、曲がったり、折れたりする事が多く、それ故、擦り斬りなどの刀身に負担が掛からない剣術が発達した。

歴史

レイピアの前身はエストック(両手突き剣)といわれることがあるが、こちらは甲冑を着た相手のチェインメイルを刺しぬくもので構造も扱い方も異なる。15世紀中頃にフランスで「エペ・ラピエル」(当時のフランス語の綴りで espee は剣、rapiere は刺突を意味する)と呼ばれる刺突用の剣が生まれ、これがレイピアの語源とされている。その後スペインで「エスパダ・ロペラespada ropera)」という名前で発展し、イタリアで「ストリッシャstriscia)」という名前を経て、17世紀の初めにフランスに戻って広まった。移行期にはワイドレイピアと呼ばれる身幅の広いものもあった。この時代、ヨーロッパでは「三銃士」に見られるようにの発達にともない鎧は廃れていったため、剣による攻撃と防御の技術が発展した。戦場ではブロードソードサーベルが使われ、レイピアが使われたのは主に街中の護身用あるいは決闘の武器としてであった。レイピアはヨーロッパに広く流行したが、1700年頃になるとレイピアをさらに発展させたスモールソードがその後継として広まっていった。その後レイピアは貴族の間で(他の多くの剣もそうであるように)騎士道精神の象徴や、華麗な装飾を施された芸術品として扱われた。

実戦での使用

マンゴーシュとの併用

レイピアを使う際は、もう一方の手でパリーイング・ダガーと呼ばれる敵の攻撃を受け流す短剣を用いることが一般的であった。 多くの場合左手で扱ったため、フランスでは左手を意味する「マンゴーシュmain gauche)」と呼ばれるようになり、日本でもその名前が使われている。

スウェプト・ヒルト

レイピアの特徴の一つである複雑な柄は「曲線状の鍔をもつ柄」という意味のスウェプト・ヒルト(Swept Hilt)と呼ばれる。ダガーにも同様のものが見られるが、十手のようにフックがついたものや、柔らかなカーブを描いた∫のには、相手の剣を絡めとり折ってしまう目的があった。

関連項目

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