ボート競技

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ボート競技(ボートきょうぎ)は、ローイング漕艇(そうてい)、端艇(たんてい)、競漕(きょうそう)とも呼び、座席(シート)が前後に動きオールを使って脚力で進むでレースをする競技である。

ボート競技が盛んに行われている地域は発祥の地である欧米諸国である。日本では、学生や実業団の競技が主流である。

歴史

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交通戦争の手段として考えると、ボート古代にまでその歴史をさかのぼることができる。その頃からスポーツとしての性格は現れてきていたようで、紀元前1430年のエジプトのある碑文には、アメンホテプ2世はボート選手としての功績も有名であったと記録されている。近代ボート競技の始まりは1716年にロンドンで行われたDoggett's Coat and Badge Race と言われているが、14世紀ゴンドラを使ったレースがヴェネツィアで行われたという記録もある。オリンピックにも第1回アテネ大会(男子)、第21回モントリオール大会(女子)から採用されており、歴史は古い(ただし、第1回アテネ大会では悪天候により競技は実施されなかった)。日本に輸入されてきたのは1866年で、横浜山下町に外人ボートクラブが創立されたのが始まりといわれている[1]

競技内容

水上でボートに乗って、ある一定の距離をオールを使って漕ぎ順位を競う。ルールは単純であるが、競技の特性上自然条件・天候などに大きく左右されやすく奥が深い。競技大会はレガッタともいう。レガッタは、ヨットなど水上スポーツ大会を指す言葉としてももちいられ、語源はゴンドラの競漕に由来する。

種目

ボートにはさまざまな種類がある。大きく分けて、大きいオールを一人一本持って漕ぐスウィープ種目と、小さいオールを一人二本持って漕ぐスカル種目の2つがある。一般に、同じ漕手数の艇の場合、スウィープよりスカルのほうが高速。

また、体重によって軽量級とオープン種目に分かれる。

エイト (8+)
スウィープ艇で、8人の漕手と1人の舵手が乗る。ボート競技の中では最大の人数で、最も高速。
フォア (4−, 4+)、クォドルプル (4×, 4×+)
4人で漕ぐ種目には、スウィープ艇として舵手付きフォア (4+)、舵手なしフォア (4−)、スカル艇では舵手付きクォドルプル (4×+) と舵手なしクォドルプル (4×) の4種目がある。高校生の競技では舵手付クォドルプルがもっとも人数が多い。舵手付きクォドルプル (4×+)は日本独自の種目である。
ペア (2−, 2+)、ダブルスカル (2×)
2人で漕ぐ種目にはスウィープ艇として舵手なしペア (2−)、舵手付きペア (2+)、スカル艇としてはダブルスカル (2×) がある。
シングルスカル (1×)
1人で漕ぐ、ボート競技の中で唯一の個人種目。

上記で、「+」は舵手つき種目、「−」は舵手なし種目、「×」はスカル種目を指す。

距離

国際大会では2000メートルにて競われる。日本国内では1000メートルでのレースも多いが、これは直線距離2000メートルを河川湖で確保することが困難であることが事情として挙げられる。また、国内で最も有名な早慶レガッタは3000メートルで行われているが、コースは自然の河川を利用して行われており、ヘッド・レースと呼ばれている。

クルー(ポジション)

クルーとはいわゆるチームのことである。またチームの中で使う場合は選手一人一人を指す。ここでは、後者の使い方をする。

バウ(Bow、舳手、記号B)
船首に最も近い漕手。漕手全員の方を向いているので、声をかけて盛り上げたり、アドバイスをしたりと、クルーをリードする。艇の上下動が最も激しく、また漕ぎのタイミングを合わせるのも難しいため、技術に長けた者が置かれる。
ミドルクルー(Middle Crew、記号2–7)
ストロークとバウにはさまれた漕手。船首に近い方が数字が小さい。エンジンルームとも呼ばれ、最も筋力や持久力のある選手が置かれる。
ストローク(Stroke、整調、記号S)
船尾に最も近い漕手。漕手全員がストロークのオールの動きを見るので、クルー全体の漕ぎのピッチをコントロールする重要な役割。経験豊富な者が置かれる。
コックス(Cox、舵手、記号C)
最後尾で前向きに乗り、(外国艇などでは一番前に乗ることもある)最短距離で航走できるよう舵を取る選手。ただし舵を切ると抵抗になるため、各クルーが左右バランスよく漕げるよう指示することも重要。その他、ピッチ(レート、ペース配分)を考えてクルーに指示したり(舵手の指示は絶対である)、タイムを計ったり、スパートを入れたりしてクルーを引き締め盛り上げる、艇のリーダー的な役割。少しでも重量を減らすため、小柄な者が置かれることが多い。

複数の選手をまとめて呼ぶこともある。

バウペア・ストロークペア
それぞれ船首・船尾に近い漕手2人
バウフォア・ストロークフォア
それぞれ船首・船尾に近い漕手4人
アウトペア[エッジペア、エンドペア]
船首・船尾に最も近い漕手2人(整調・バウ)

用具

ボート競技には以下のような用具が不可欠である。 現在、日本国内の製造メーカーは桑野造船(滋賀県大津市)とデルタ造船所(茨城県稲敷市)がある。その他、ボート関連用具の販売店(輸入販売含む)は次の通り。

  • エイティズ
  • ザーグ・プロジェクト
  • シーピーシー研究所
  • スターラインジャパン
  • ストローカージャパン
  • デルタジャパン
  • トーリン
  • 西村ローイングシェル工房
  • 日本サイクス
  • フラットウォーター
  • ボートハウスジャパン
  • ボートハウスミネルバ
  • ロングレンジ
  • J2 ローイングセンター
  • ローイング・ビート

競技用の艇は公園にある手漕ぎボート等に比べてかなり細く、長い。このような艇はシェル艇と呼ばれる。ただしナックル艇(後述)と区別する必要があるとき以外はわざわざシェル艇と呼ぶことは少ない。速度が出る反面、ナックル艇に比べて安定性が悪く、特に一番安定性が悪いシングルスカルはバランスを崩すと容易に沈(艇が転覆・浸水すること)に至る。艇の種類は大まかに

  • 漕手の数:1、2、4、8
  • 舵手の位置:舵手なし、トップコックス(船首に舵手が乗る。エイト、ナックル以外では一般的)、スタンコックス(船尾に舵手が乗る)

で分けられる。漕手の数が2、4人の艇は、リガーを付け替えることによってスウィープ種目とスカル種目の両方に使用できる構造のものが多い。

日本独自に生まれた艇としてナックル艇がある。これは船底が公園などの手漕ぎボートに近い角張った形をしており、シェル艇に比べて速度が出ない反面、安定性が高い。一般的には初心者の練習用に使用される。ナックル艇はシェル艇に比べて格段に重いため、運搬にはクルー以外の補助を必要とする。

なお、種目ごとに最低重量の基準が設けられている[2]

オール

競技用のオールは3メートル弱の長さであり、50センチメートル程度のブレードをもつ。ブレード形状は左右非対称のビッグブレード型が一般的。スカル競技のオールはスウィープ競技のものに比べて短く、ブレードも小さい。

オリンピックと世界選手権

オリンピックボート競技世界ボート選手権参照。

それぞれ開催されている種目の数が違う(オリンピックが14種目、世界ボート選手権が23種目)。ボート界ではオリンピックに重きがおかれていることが多い。

ボートの団体

日本のボート

欧米諸国に比べると、競技人口は少ない。しかし、近年ボートを題材にしたテレビドラマやテレビ番組が放映されたことなどから、認知度は上がってきている。また、2005年8月には岐阜県長良川でアジア初の世界選手権が開催された。

大学のボート

大学のボート競技は盛んで、大学生の選手はさまざまなレースに参加している。毎年戸田漕艇場で開催されている全日本級の大会(全日本軽量級選手権・全日本大学選手権・全日本選手権・全日本新人選手権)には、全国各地から多くの大学が参加する。8月の全日本大学選手権には約80校の大学がエントリーしている。

大学間の対校戦の歴史は古く、応援合戦も凄いと云われる。代表的なものでは早稲田大学慶應義塾大学の対校試合である「早慶レガッタ」があり、これは三大早慶戦と言われ、隅田川の春の風物詩としても有名である。また、最も歴史がある対校戦は開成高等学校筑波大学附属高等学校が行っているもので、1920年(大正9年)から行われている。以来2010年(平成22年)で82回を迎えた。その他、毎年6月に開催される名古屋大学大阪大学の対校競漕大会「名阪戦」(大阪大学では「阪名戦」と呼ぶ)は、2012年で第66回を迎え、早慶戦に次ぐ歴史を持ち、2012年6月現在両校ともに33勝33敗という両校とも一歩も譲らない成績となっている。4月に開催される東京大学一橋大学の対校試合「東商レガッタ」(一橋では「商東戦」と呼ぶ)も2008年(平成20年)で第60回を数えた。通算成績では東大が一橋を大きくリードしており、一橋が盛り返した時期もあるが、近年再び東大が優勢に立っていた。しかし第61回(2009年度)においては一橋大が大会記録(エイト)を叩き出し4年ぶりの勝利をおさめている。 また、現在最強の大学である日本大学、古豪復活を目指す明治大学、立教大学の日立明三大学レガッタも有名である。 1991年から4月29日(現昭和の日-元みどりの日)に因んで「グリーンレガッタ」と呼ばれる中央大学日本体育大学法政大学東京経済大学の4大学対抗戦が戸田漕艇場で毎年実施されている。大会は第22回(2012年度)を数え、日体大が総合優勝を勝ち取った。

伝統校と呼ばれる大学が活躍していた時代と現在では大きく勢力図が変わってきている。早稲田大学や慶應大学は現在でも強豪校であるが、一橋大学も、かつてのような強さを取り戻しつつある。東京大学はかつて、全日本選手権4連覇など輝かしい成績を残した時代があったが1987年の全日本大学選手権優勝以来、軽量級を除いてはエイトのタイトルから遠ざかっている。反対にこの20年あまりで最も力を伸ばしてきた大学が中央大学・日本大学日本体育大学法政大学などの私立大学である。特に中央大学はエイトにおいて、1983年の全日本大学選手権及び全日本選手権の初優勝以来、全日本選手権の優勝が5回、そして全日本大学選手権での優勝は4連覇、3連覇を含む13回を数える。さらに1983年以来、現在に至るまでの23年間に渡って、全日本大学選手権のエイトでは優勝13回、準優勝9回、3位1回と連続して表彰台に上がるという驚異的な実績を残している。しかし近年では日本大学を破ることが優勝するということを意味するようになっているところ、伝統校と呼ばれる学校も巻き返しに躍起である。早稲田大学では豊富な資金と学校のネームバリュー、そして、スポーツ推薦制度の強化・スポーツ科学部(体育系学部)の新設で超高校級の一流選手を毎年、獲得している。慶應義塾大学は附属高校のボート部強化に努め、高校大学と一貫した指導体制で効果を上げている。2003年はこうした努力が実を結び中央大学を破り栄冠を手にした。最近では新興勢力の台頭も著しく仙台大学は創部4年目で早くも全日本大学選手権のエイト決勝に駒を進めてきた。

このように私立大学が優勢であるが、国立大学勢では一橋大学東北大学京都大学がここ数年優勝に絡む活躍をしている。なお、東北大学においては、2005年2006年と2年連続エイト準優勝を果たすほどの実力をもつ。強豪私立大学とは違い、入学時のほとんどの部員はそれまでオールを握ったことはなく、そのようなハンディを背負いながらも全国制覇を目指す彼らの姿からは、学ぶべき事が多い。エイトは典型的な「東高西低」であり、西の方の大学はおおむね分が悪いが、小艇では中部以西の大学から上位入賞することもある。

高校のボート

中学校に設置されているボート部が少ないので、競技を始める段階での選手間の実力差は少ない。ただし、大学付属校以外の強豪高校は中学生のチームを持つところが多い。主要な大会は全国高等学校総合体育大会(インターハイ)や全国高等学校選抜ボート大会(全国選抜、3月に天竜川で開催)であるが、対校戦に重きを置いている高校も少なくない。距離はインターハイが1000メートル、全国選抜が2000メートル(地方大会には1000メートルや2000メートルのものがある)であったりと色々である。

2001年からは、競技からスウィープ種目が消え、舵手つきクォドルプル、ダブルスカル、シングルスカルの3つのスカル種目のみとなった。

主なボートコース

川、湖、ダム等の中に作られたものがある一方、人工のものもある。

扱った作品

(映画 監督/原田眞人 販売元/ポニーキャニオン 1996年 日・米・加合作)

関連項目

脚注

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外部リンク

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  • 日本ボート協会ホームページ
  • http://www.jara.or.jp/about/