ボノボ

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ボノボテンプレート:Snamei)は、動物界脊索動物門哺乳綱サル目(霊長目)ヒト科チンパンジー属に分類されるサル。以前はピグミーチンパンジーと呼ばれた。

ボノボは、チンパンジーに比べて上半身が小さく、それに比例して脳容量も小さい。赤ん坊はか細く、頼りない状態が長く続く。チンパンジーよりよく直立2足歩行する。黒田末寿は、これがボノボの母親依存と言語獲得能力に関係しているのではないかと見ている[1]

分布

コンゴ民主共和国中西部[2][3]固有種

形態

体長オス73-83センチメートル、メス70-76センチメートル[3]体重オス39キログラム、メス31キログラム[3]。体型は細い[2][3]。頭部の体毛は中央部で左右に分かれる[3]。側頭部の体毛が直立し、外観では耳介が不明瞭[2][3]

顔の皮膚は黒い[2][3]。四肢は細長い[2][3]

メスは発情すると性皮が膨張しピンク色になる[3]

生態

低地にある熱帯雨林に生息する[3]。樹上棲だが、前肢の指関節外側を接地して地表を四足歩行(ナックルウォーク)することもある[3]昼行性で、夜間になると樹上に日ごとに違う寝床を作って休む[3]。22-58平方キロメートルの行動圏内で生活し、1日あたり1.2-2.4キロメートルを移動する[3]。複数頭の異性が含まれる50-120頭の群れを形成して生活するが、複数頭の異性が含まれる6-15頭の群れに分散することが多い[3]。父系社会でオスは産まれた群れに留まるが、メスは思春期を迎えると別の群れに移動する[3]。個体間で緊張が高まると擬似的な交尾行動、オス同士で尻をつけあう、メス同士で性皮をこすりつけあうなどの行動により緊張をほぐす[3]

食性は雑食で、植物の葉、芽、蜂蜜昆虫ミミズ、小型爬虫類、小型哺乳類などを食べる[3]

授乳期間は4年。生後8-11年で思春期を迎え、生後14年で初産を迎える[3]。寿命は40年と考えられている[3]

人間だけが行うと考えられていた正常位での性行動をボノボも行うことが発見されている。チンパンジーよりも直立二足歩行が得意で、食物を運ぶときなどに数十メートル二足で歩くことがある[4]。チンパンジーとは異なりボノボ同士の闘争はほとんど観察されていないため平和的な動物であると考えられることが多いが、雑食性で小動物や他種のサルを狩ることはある[5]

野生のボノボ研究は、保護を目的とした生態学的な研究が行われている。しかし加納隆至が調査をはじめたコンゴ民主共和国(旧ザイール)の赤道州ワンバでは、直接観察による多様な研究が行われている。内戦の影響で調査が中断することもあったが、現在でも黒田末寿古市剛史伊谷原一らによって、20年以上にわたる長期研究が続けられている。

ボノボは動物園での飼育も行われているが、野生に比べると毛の抜け落ちたボノボが多い。原因は健康状態やストレスによるものと考えられている。

知性

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枝を使い、シロアリを釣り上げるボノボ
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クンニリングスするボノボの性行動は人間のそれに近いことで知られる

本種の知性はチンパンジーよりも高いと考えられているが、野生での道具使用は報告されていない。2000年2月13日に放送された、『カンジとパンバニーシャ 天才ザルが見せた驚異の記録』(NHK総合)ではボノボに言葉を教えるプロジェクトが米ジョージア州立大学言語研究所のスー・サベージ・ランボー博士らにより行われており、カンジと、その妹のパンバニーシャという2頭のボノボは英語を理解することが確認されたNHKスペシャル『カンジとパンバニーシャ 天才ザルが見せた驚異の記録』(NHK総合、2001年8月26日) プロジェクトで飼育したボノボは以下の事を自ら、若しくは人間に声のみによる指示を受け行う。

  • 薪を集め、マッチで火をつけ、たき火をする。
  • そのたき火でマシュマロを焼く。
  • 特殊なキーボードを使い、人間と会話する。
  • ルールを正確に理解し、パックマンビデオゲーム)で遊ぶ。など[6]

「パックマン」のルール上では、普段はパックマンが敵に触れるとアウトになってしまうのに対し、「パワーエサ」と呼ばれるアイテムを取ってから一定時間の間は敵に触れることでボーナス点を取ることができる。つまり条件によって自分と敵との強弱の立場が逆転する。ボノボはこの複雑なルールを理解し、普段は敵から逃げ、パワーエサを取ってから一定時間敵を追いかけることができる。

人間との関係

種小名テンプレート:Snameiは属名と同義で、ギリシャ神話の神パンに由来する[2]

生息地では食用とされることもある。例外的にワンバ地区では食用とすることが禁忌とされていたため、保護区に指定された[3]

開発や内戦による生息地の破壊、食用の狩猟などにより生息数は減少している[3]

本種は1928年に初めて発見された。興味深いことに発見地は生息地であるアフリカではなく、ヨーロッパであった。ドイツ人の動物学者エルンスト・シュヴァルツ(Ernst Schwarz)が、ブリュッセル近郊テルヴューレン(Tervuren)にあるベルギー領コンゴ博物館(現在の王立中央アフリカ博物館)のチンパンジー標本を比較していた際に、これが従来のチンパンジーとは異なる新種であることを発見した。

画像

脚注

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参考文献

  • 黒田末寿『ピグミー・チンパンジー/未知の類人猿』筑摩書房、1982。新版:以文社、1992。
  • 黒田末寿『人類進化再考/社会生成の考古学』以文社、1999。
  • サベージ=ランバウ『カンジ/言葉をもった天才ザル』NHK出版、1993。

関連項目

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外部リンク

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  1. 黒田末寿『人類進化再考/社会生成の考古学』以文社、1999、pp.262-3.
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 岩本光雄 「サルの分類名(その4:類人猿)」『霊長類研究』Vol.3 No.2、日本霊長類学会、1987年、126頁。
  3. 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 3.14 3.15 3.16 3.17 3.18 3.19 3.20 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』、講談社2000年、30、148頁。
  4. NHKスペシャル『アフリカ・ザイール 謎の類人猿 ボノボ』(NHK総合1996年1月7日出典
  5. テンプレート:Cite news
  6. NHKスペシャル『カンジとパンバニーシャ 天才ザルが見せた驚異の記録』(NHK総合2000年2月13日テンプレート:出典無効テンプレート:要高次出典