ホームライナー

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「湘南ライナー」

ホームライナーは、着席を提供することを主な目的として運行されている料金徴収形の普通列車快速列車)である[1]。「通勤ライナー[2]などとも呼ばれる。

概要

ホームライナーは主に、通勤時間帯に着席乗車のニーズに応える目的で設定されている列車である。快速列車と同様に主要駅のみ停車する列車が多い。列車愛称は路線や運転時間帯によって「ホームライナー○○」や「○○ライナー」などのバリエーションが存在し、利用には乗車整理券(ライナー券)が必要とされる。日本の大都市圏や一部の地方都市圏で運転されてきたが、後述するように数を減らしつつある。

基本的に朝ラッシュ時は郊外ベッドタウンから企業の集中する都心に向かって運行され、帰宅時間帯となる夜間は逆に都心から郊外に向かって運行されることがほとんどであるが、地方都市圏においては静岡地区や新潟地区のように、都市間を比較的長距離にわたって運行される列車もある。

また、東海旅客鉄道(JR東海)中央本線(中央西線)の「セントラルライナー」のように収益確保・近距離利用客との分離を図るため日中に設定された列車や、同社静岡地区で臨時に設定される定員制のウォーキングイベント列車「さわやかウォーキングライナー」のような行楽・イベントを目的とした列車も存在する。

JR旅客各社におけるホームライナー

JRグループにおいては、種別としては普通列車となるが、過去には団体専用列車として運転された列車も存在する。

登場の経緯と現状

都心に到着した優等列車郊外の車両基地まで回送する代わりに営業列車とした早い例としては、1968年(昭和43年)10月1日ダイヤ改正で設定された総武本線気動車による快速列車がある。新宿駅に到着した房総方面からの急行列車の折り返しで、御茶ノ水駅発20時台に千葉駅行(停車駅は秋葉原駅船橋駅の2駅)として2本運行された。ただし特別料金は徴収せず、回送列車のダイヤを踏襲したため所要時間も各駅停車と変わりなかった[3]

「ホームライナー」として運行されたものの初出は、前身である日本国有鉄道(国鉄)が1984年昭和59年)6月1日東北線上野駅 - 大宮駅間で回送する特急用電車を活用したものとされる。これは、当時私鉄各社で運行されていた通勤時の特急列車をヒントとして生まれたものであった。同列車は同年7月23日に「ホームライナー大宮」と命名され、次いで同日には総武快速線で「ホームライナー津田沼」が、同年9月からは阪和線で「ホームライナーいずみ」の運行が開始された[4][5]

運転開始当時は1編成のうちの数両で客扱いを行っており、この際にはグリーン車を普通車扱いとしていた。1編成すべての客扱いを取り扱うようになったのはそれから数年を経過してからである。1986年(昭和61年)11月1日に運行を開始した東海道線の「湘南ライナー」、阪和線の「はんわライナー」では、回送ダイヤの流用ではなく単独の列車運用を持つようになった。

以降、その盛況により国鉄末期からJR各社発足後の1990年代にかけて、JR旅客各社が受け持つ各都市圏で設定された。これまでに東日本旅客鉄道(JR東日本)の首都圏をはじめ、同社の新潟・長野・仙台地区、北海道旅客鉄道(JR北海道)の札幌地区、東海旅客鉄道(JR東海)の静岡・名古屋地区、西日本旅客鉄道(JR西日本)の近畿圏アーバンネットワーク)、九州旅客鉄道(JR九州)の福岡・宮崎・鹿児島地区で設定されてきた。

その後、特急列車や追加料金不要の快速列車普通列車への置き換え、さらには首都圏においては一般の快速・普通列車へのグリーン車連結による利用者の減少などによって、数を減らしていくこととなる。近畿圏や九州からは2011年3月までに全廃され、また首都圏や名古屋地区においても本数が減少傾向となっている。

なお四国旅客鉄道(JR四国)では徳島地区で一時期に試験的に運行されていたが、定期列車化には至らなかった。

乗車制度

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ホーム上に設置されているライナー券専用自動券売機。上部に各乗車口の残席数が表示されている。(東京駅)

ライナー列車に乗車するには、乗車券定期券を含む)のほかに乗車整理券またはライナー券(列車によって異なる)を必要とする。基本的に座席分の枚数しか発売されないため、着席が保証されるいわゆる座席定員制であるが、静岡地区と札幌地区では乗車整理券の発売枚数に制限はなく、着席保証はない[6]。座席を指定しない列車もあるが、近畿圏では車両や座席の列などが指定されるものもあり、名古屋地区のライナーはすべて座席指定となっている。

多くの場合は着席が保証されるため、到着前に整理券類が完売するほど人気のある列車もある。一部のライナー列車にはグリーン車が連結されているが、列車によりグリーン車としてグリーン料金を要するもの[注 1]と、普通車扱いとしてグリーン料金を必要としないものが存在する。かつて静岡地区で運用された371系のようにグリーン車を締切扱いとしたケースもある[7]

乗車整理券またはライナー券を発売していない停車駅を「降車専用駅」の扱いとし、原則として乗車を認めない列車が一部存在する。

この列車の扱いは普通列車であることから、特別企画乗車券特急急行列車に乗車できない「青春18きっぷ」などでも乗車整理券またはライナー券を購入すれば乗車可能とされている。「フルムーン夫婦グリーンパス」や「ジャパンレールパス」などの特急・急行列車に乗車可能な特別企画乗車券を所持する場合でも、乗車整理券またはライナー券を必要とする。

使用車両

元々、車両基地まで回送される特急列車の車両を使用したことから、一般に特急列車の車両が使われることが多い。

特に利用者の多い東海道本線東京口の「湘南ライナー」では、特急用車両のほかに、全車2階建車両215系を使用して混雑緩和が図られている。また、日中に運行される中央西線の「セントラルライナー」では、この列車のために近郊形車両である313系8000番台が新造された。

自社の車両が運用されることが多いが、JR東海の東海道線名古屋地区のホームライナーには、JR西日本の「しらさぎ」用683系2000番台金沢総合車両所配属)も用いられている。過去にはJR東日本の「ホームライナー古河」「ホームライナー鴻巣」でJR西日本の車両が、逆にJR西日本の「びわこライナー」でJR東日本の車両が用いられていたことがある[4][5]

運行概況

詳細な運行状況は各運行路線・個別記事で記載されているため、本節では運行される線区での概要のみを記載するにとどめる。乗車整理券料金は特記がない限り310円(1989年4月1日の消費税導入以前は300円)である。

札幌地区

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キハ261系
「ホームライナー」

札幌駅を中心とした札幌地区の函館本線では、国鉄時代の1985年8月12日に手稲駅 - 札幌駅間で「ホームライナー」の運行が開始され、国鉄では4例目となった。JR発足後の1988年3月13日から小樽駅→札幌駅の列車も加わった[8]。2013年11月1日のダイヤ改正から運休となっていたが、2014年8月1日から運行再開した。乗車整理券は小樽駅 - 銭函駅が310円で、手稲駅 - 札幌駅間は割安な100円とされ現在に至るまで料金の変更はない。運行当初は会員制で、旅客が会員証を提示することにより11枚セットの「特急回数乗車整理券」(1,000円)が発行された[9]

列車は全て号数が付いておらず、時刻表上は全て「ホームライナー」と表記されている。

停車駅

小樽駅 - 南小樽駅 - 小樽築港駅 - 銭函駅 - 手稲駅 - 札幌駅

車両は、手稲駅 - 札幌駅は785系電車789系1000番台電車キハ261系1000番台気動車キハ281系気動車キハ283系気動車で、小樽駅→札幌駅は785系電車・789系1000番台電車が使用されている。 テンプレート:-

首都圏

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首都圏ホームライナー運行路線図

首都圏では東京都心の山手線上の各ターミナル駅(東京駅上野駅新宿駅)と埼玉県千葉県神奈川県茨城県多摩地区の各ベッドタウンとの間で、これまでに大きく分けて6系統の列車が運行されてきた。列車愛称は朝時間帯に運行されるものに「おはようライナー○○」、夜時間帯に運行されるものに「ホームライナー○○」と名付けられている線区が多い。○○には郊外側の駅名が入るが、例外として「おはようライナー新宿」は都心側の駅名を採ることで東京駅方面の「湘南ライナー」との区別がなされている。

運行開始当時は300円(のち310円)の「乗車整理券」での乗車制度となっていたが、1999年3月1日より500円に改定され、名称も「ライナー券」と改められた。朝ラッシュ時に運行される「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「おはようライナー逗子」では、1か月分のライナー券が1枚になった「ライナーセット券」が発売されている[9]

ここでは設定された年代順に記載する。使用車両はすべて電車である。

[10][4]

東北線(宇都宮線)・高崎線
詳細は「ホームライナー古河・鴻巣」を参照
1984年6月1日に国鉄・JR最初のホームライナーとして上野駅→大宮駅間で運行が開始され、「ホームライナー大宮」と命名された。その後運行区間が宇都宮線古河駅高崎線鴻巣駅まで延伸されて「ホームライナー古河」「ホームライナー鴻巣」となった。運行開始以来夜間のみの運行で、新宿駅発の列車も設定されていたことがある。
2014年3月15日改正において特急「スワローあかぎ」の置換えなどにより全列車が廃止された[11][12]
車両は185系189系485系・489系が用いられた。
総武快速線
詳細は「ホームライナー千葉」を参照
総武快速線では、1984年7月13日に国鉄で2例目のホームライナーとして東京駅→津田沼駅間の「ホームライナー津田沼」として運行が開始され、翌年には新宿駅発列車も設定された。その後運行区間が千葉駅まで延伸されて現在の名称「ホームライナー千葉」となった。朝の列車は一時期のみ「おはようライナー津田沼」が設定されていたが、現在は夜間のみ運行される。
車両は房総特急で使用される255系E257系500番台を使用。過去には183系が使用された。
東海道線
詳細は「湘南ライナー」を参照
東海道線東京口では1986年11月1日に小田原駅平塚駅 - 東京駅間で「湘南ライナー」の運行が開始された。1988年からは走行ルートとして東海道貨物線が活用され、新宿駅発着の「湘南新宿ライナー」も新設された。この「湘南新宿ライナー」は後に「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」と名称が変更されて現在に至っている。運行規模はJR全線区中最大を誇り、最盛期には朝12本・夜間13本、現在も朝10本・夜間11本が運行されている。
車両は特急「踊り子」などで使用される185系251系のほか、ライナー用に製造された215系が使用されている。かつては中央本線特急用の183系・E351系・E257系0番台も用いられていた。
常磐線
常磐線では1989年3月11日に「ホームライナー土浦」、翌1990年3月10日に「おはようライナー土浦」がそれぞれ上野駅 - 土浦駅間で運行が開始された。車両は485系を使用。1998年12月8日に特急「フレッシュひたち」に置き換えられる形で廃止された。
横須賀線
横須賀線では1990年3月10日に東京駅 - 逗子駅間で「おはようライナー逗子」「ホームライナー逗子」の運行が開始され、現在まで継続されている。車両は当初は183系、現在はE257系500番台を使用。
中央線・青梅線
詳細は「中央ライナー・青梅ライナー」を参照
中央線青梅線では、1991年3月16日に高尾駅 - 新宿駅間で「おはようライナー高尾」「ホームライナー高尾」、新宿駅 - 青梅駅間で「ホームライナー青梅」の運行が開始された。2001年には全車座席指定制とするとともに運行区間を東京駅 - 高尾駅・青梅駅に改め、名称を高尾駅発着は「中央ライナー」、青梅駅発着は「青梅ライナー」に改められた。「えきねっと」加入者向けに携帯電話を使用した予約サービスが行われていることが特徴[8][13]
車両はE257系0番台・E351系を使用。過去には183系・185系が使用された。

長野地区

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189系
「おはようライナー」

長野地区では、1989年3月より信越本線に通勤ライナーが設定された。この列車は1997年長野新幹線開業に伴う信越本線のしなの鉄道移管後も継承され、「しなのサンライズ」「しなのサンセット」として運行されている(以降は後述の「#しなの鉄道」の節を参照)[8]

また2004年10月16日からは篠ノ井線松本駅 - 長野駅間に「おはようライナー」の運行が開始され、翌2005年には塩尻駅 - 長野駅間に区間が延長された。乗車整理券は300円で、車両は183系・189系電車を使用。

新潟地区

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485系
「らくらくトレイン信越」

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新潟駅を中心とした新潟地区では、1994年に信越本線新潟駅→長岡駅間で夜間に運行開始。2004年3月13日に白新線羽越本線新潟駅→村上駅間の「らくらくトレイン村上」が新設され、従来の列車は「らくらくトレイン長岡」と改称された[8]。「らくらくトレイン長岡」はさらに2012年に「らくらくトレイン信越」と改称され、新潟駅→直江津駅間での運行となった[14]。「らくらくトレイン」は夜間に運行され、乗車整理券は300円。女性専用車を設定していることが特徴である。

また直江津駅→新潟駅間では朝に「おはよう信越」が2012年より運行されているが、これは全車指定席であり、普通車の利用は乗車整理券やライナー券ではなく指定席券が必要とされている[14]

車両はすべて485系電車を使用し、毎日運転される。

静岡地区

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373系
「ホームライナー静岡」

静岡県内の東海道本線では、1991年3月16日よりホームライナーの運行が開始された。同県3大都市の沼津駅静岡駅浜松駅の相互間で運行されており、列車名は終着駅名を採り「ホームライナー沼津」「ホームライナー静岡」「ホームライナー浜松」となっている。かつては三島駅発浜松駅行きの設定もあり、この列車の走行距離は営業キロで136.4キロメートルと、歴代ホームライナーの中では最長である[注 2]

車両はすべて373系電車の3両・6両編成だが、設定当初から2012年まで「あさぎり」用の371系電車も運用されていた。

テンプレート:要出典範囲

なおこの地区ではホームライナー設定以前の1989年7月から、乗車整理券方式の「花の木金号」が週末深夜に311系電車を使用して各駅停車で運行されており、この列車は後に「ホームライナー」に吸収された。

[8]

名古屋地区

名古屋地区では名古屋駅を中心として東西南北4方向に路線が伸び、その全方向に対してホームライナーが設定されたが、現在は中央本線と東海道本線大垣方面の2方向のみの設定となった。列車愛称は朝・夜の列車とも郊外側の発着駅名を採って「ホームライナー○○」としている。[15]

中央本線
中央西線では、国鉄民営化直前の1987年3月23日に名古屋駅→中津川駅間で設定されたのが最初である。その後「ホームライナー中津川」のほか、「ホームライナー多治見」「ホームライナー瑞浪」も登場した。車両は「しなの」用の383系電車、および313系8000番台電車が使用される。1990年3月からはキハ85系気動車を使用した太多線直通の「ホームライナー太多」(名古屋駅 - 美濃太田駅間)も設定されていたが、2012年3月のダイヤ改正で廃止されている。
また、この線区では日中にホームライナーと同様の乗車制度を採用した「セントラルライナー」が、名古屋駅 - 中津川駅間に1999年12月から2013年3月まで、313系8000番台電車を使用して運行され、これが日中に運行されたライナー列車の唯一の例である。
東海道本線
名古屋地区の東海道本線では、1988年3月に「ホームライナーながら」が名古屋駅 - 大垣駅間で設定されたのが最初である。その後同列車は「ホームライナー大垣」と改称され、現在はこのほかに「ホームライナー関ヶ原」が運行されている。かつては名古屋駅 - 豊橋駅間にも設定があり、「ホームライナー豊橋」「ホームライナー岐阜」「ホームライナー蒲郡」「ホームライナー岡崎」が運行されていた。
車両は「しらさぎ」用の683系2000番台電車が使用されている。過去には485系電車・キハ85系気動車・373系電車も使用されていた[16]
関西本線
関西本線名古屋口では、1996年3月から2011年3月まで、四日市駅→名古屋駅間に「ホームライナー四日市」がキハ85系気動車で運行されていたが、快速「みえ」に代替される形で廃止された。

近畿圏

近畿圏では、大阪環状線内の大阪駅天王寺駅を中心として大阪府南部 - 和歌山県方面・滋賀県方面・奈良県方面・兵庫県東部(丹波)方面の4線区で設定されていたが、2000年代以降の特急の通勤時間帯への拡充などにより、現在は運行されていない。各線区ごとに列車愛称が異なっていた。[5]

阪和線
阪和線では、国鉄時代の1984年9月に国鉄3例目、近畿圏では初のホームライナーとして「ホームライナーいずみ」が天王寺駅 - 日根野駅間で設定された。その後1986年11月に天王寺駅 - 和歌山駅間に運行区間が延長され、列車名も「はんわライナー」に改称。最盛期には朝3本・夜5本が運行され、近畿圏では最大の運行規模となったが、特急の増発に伴ってライナーの減便が行われ、2011年3月のダイヤ改正をもって全列車が廃止された。車両は「くろしお」用の381系電車が使用された。
東海道本線(琵琶湖線・JR京都線)
琵琶湖線JR京都線では、1987年10月より米原駅 - 大阪駅間で「びわこライナー」1往復が運行された。車両は「雷鳥」用の485系電車を使用。2003年6月に特急「びわこエクスプレス」に置き換えられる形(同時に車両も681683系電車に置き換え)で廃止された。
関西本線(大和路線)
大和路線では、1988年3月の加茂駅 - 木津駅間電化にあわせ、「やまとじライナー」の運行が開始された。運行区間は朝が木津駅→湊町駅(現在のJR難波駅)間、夜が大阪駅→加茂駅間であった。車両は381系電車を使用。2011年3月のダイヤ改正をもって区間快速に代替される形で廃止された。
福知山線(JR宝塚線)
JR宝塚線では、1988年3月より篠山口駅 - 大阪駅間で「ほくせつライナー」が運行された。車両は「北近畿」用の485系・183系電車のほか、「エーデル北近畿」用のキハ65形気動車改造車も用いられた。2002年10月に特急「北近畿」(現在は「こうのとり」に改称)に置き換えられる形で廃止された。

九州地区

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485系
「ホームライナー」

JR九州では「エアポートライナー」を除き、朝の列車は「さわやかライナー」、夜の列車は「ホームライナー」の列車名で運行されていた。福岡都市圏と、鹿児島支社管内の宮崎地区・鹿児島地区の合計3地区で設定されたが、現在は運行されていない。各地区とも車両は主に485系電車が使用された。[8]

これらのライナーは「エクセルパス」で乗車する場合、乗車整理券を不要としていた[注 3]

福岡地区
博多駅を中心とした福岡地区の鹿児島本線では、1987年6月より門司港駅 - 博多駅間で「エアポートライナー」「ホームライナー」の運行が開始され、2001年3月に特急「きらめき」に置き換えられるまで運行されていた。また、博多駅 - 大牟田駅でも設定されたが、こちらは1995年4月のダイヤ改正をもって廃止された。
宮崎地区
宮崎駅を中心とした宮崎地区の日豊本線では、まず1990年3月に西都城駅→宮崎駅間に1本設定され、1992年7月には宮崎空港へのアクセス列車を兼ねて延岡駅 - 宮崎駅間において朝と夜に設定された。1996年7月の宮崎空港線開業後は延岡駅発着列車が同線宮崎空港駅まで延長された。車両は485系のほかに783系電車も使用されたが、2011年3月に特急「ひゅうが」「きりしま」に置き換えられて廃止された。
鹿児島地区
鹿児島地区では西鹿児島駅(後の鹿児島中央駅)を中心として、鹿児島本線と日豊本線で運行された。
鹿児島本線では、1989年3月に川内駅 - 西鹿児島駅間に設定され、後に運行区間が出水駅 - 西鹿児島駅・鹿児島駅間に延長されたが、2004年3月の九州新幹線部分開業とともに川内駅以北が経営分離されたのに伴い、再び川内駅 - 鹿児島中央駅間に短縮。2011年3月に特急「川内エクスプレス」に置き換えられ、廃止された。
日豊本線では、1990年3月より国分駅 - 西鹿児島駅間で運行されていたが、 2004年3月に特急「きりしま」に置き換えられて廃止された。

特急列車・快速列車との関連

前述したように、ホームライナーは特急列車や快速列車への置き換えによって数を減らしつつある。特急に格上げされたケースとしては常磐線の「フレッシュひたち」の一部や琵琶湖線JR京都線の「びわこエクスプレス」、鹿児島本線の「川内エクスプレス」などが存在する。

地区によっては元からホームライナーを設定せず、代わりに同様の性格を持つ特急(いわゆる通勤特急)を運行しているケースもある。JR西日本北陸地区の「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」、JR四国の「ミッドナイトEXP」「ホームエクスプレス阿南」、JR九州の「かいおう」などが該当する。また、ホームライナーを運行している路線であっても、JR東日本の総武快速線やかつての高崎線のように、並行して通勤特急も運行し両者を共存させることにより、短距離利用はホームライナー・長距離利用は特急(または新幹線)と振り分けることで利用客の遠近分離が図られている線区もある。[8][10]

JR西日本の山陰地区や広島地区では「通勤ライナー」を名乗るホームライナーと同様の性格の列車が運行されているが、こちらは追加料金を要しない一般の快速列車である。山陰地区ではかつて特急形車両が運用されていた。

私鉄・第三セクターにおけるホームライナー

JR以外においても、ホームライナーに相当する列車を運行している鉄道事業者が存在する。私鉄などでの列車種別はJRと異なるため一概にホームライナーと定義することは難しいが、ここではJRのライナーと同様に着席通勤を目的として座席定員制で運転されるものを中心に記載する。

なお、ライナー列車としての固有種別の形をとってはいないが、小田急電鉄東武鉄道伊勢崎線日光線系統)・西武鉄道名古屋鉄道近畿日本鉄道では通勤輸送向けに有料特急列車が設定されている。これらの列車は種別・運行形態こそ基本的に日中の特急列車と変わらない[注 4]が、利用実態はホームライナーに比較的近く、かつて国鉄がホームライナーを設定するにあたってのヒントともされた[4]。ただし、東武線浅草駅南栗橋駅間で運行している特急「きりふり」285号は途中の春日部駅から先は料金不要の一般列車となり、東武動物公園駅から杉戸高野台駅幸手駅と各駅に停車するという特異な運行形態がとられている[17]

これらについては、「ホームウェイ (列車)」(小田急電鉄)、「しもつけ (列車)」「りょうもう」「きりふり (列車)」(以上東武鉄道)、「レッドアロー」(西武鉄道)、「名鉄特急」、「近鉄特急」も参照。

京成電鉄

テンプレート:Main 京成電鉄では、朝に上り「モーニングライナー」、夜間に下り「イブニングライナー」を運転している。これらは「スカイライナー」用のAE形(2010年7月16日まではAE100形)が充当され、ライナー券は座席指定でなく車両指定で、乗車整理券扱いとなっている。

停車駅は「スカイライナー」より多く設定され通勤客の利便が図られているが、「シティライナー」が停車するJR総武線との乗換駅である京成船橋駅は通過としてあくまでも都心まで・都心からの乗り通しを前提としている。これらの運行時間帯には「スカイライナー」が運転されないため、空港アクセス列車としても利用される。

京浜急行電鉄

テンプレート:Main 京浜急行電鉄では、1992年4月から平日の夕方以降に座席定員制の「京急ウィング号」を運行している。列車は全席クロスシート車両である2100形が充当され、京急川崎駅横浜駅を通過し、途中停車駅からの乗車は料金不要といった特徴を持つ。

東武鉄道(東上本線)

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東武東上線
「TJライナー」

テンプレート:Main 東武東上線では2008年6月14日のダイヤ改正で着席乗車目的の座席定員制「TJライナー」を夕方以降の時間帯に運転開始。本列車には50090系を新製充当。途中停車駅からの乗車は料金不要である。

しなの鉄道

テンプレート:Main しなの鉄道では、1997年の転換以前より運行されていた「ホームライナー」の使用車両を譲渡された169系に変更して、運行時刻などはそのままの形で運行してきた。しかし、169系が国土交通省令によりJR線への乗り入れが不可能となったことから現在では「しなのサンライズ」は189系で、「しなのサンセット」は115系で運行されている[18]。乗車整理券に発売枚数の上限が設けられておらず着席保証はない[19]

列車名は朝の小諸発長野行が「しなのサンライズ」、夜の長野上田行が「しなのサンセット」。両列車とも上田 - 長野間の途中駅は全て通過。

JRの運行開始以前に運行されたホームライナーに相当する列車

名古屋鉄道が過去にホームライナーに相当する列車を運行していた。愛称は「ディーゼル特急」で、特急「北アルプス」の間合い運用で名鉄キハ8000系気動車によって運行されていた。徳田耕一の文献によると、設定開始は昭和40年12月30日のダイヤ改正で、区間は豊橋 - 新名古屋間。一等車であったキロ8100型も連結されており、運行開始当初は一等110円、二等50円の線内特急料金を要したが[20]、座席が完全に指定され、なおかつ定期券での乗車が可能だったため好評だったという。翌昭和41年春のダイヤ改正で夕方に1往復増発され、さらに昭和45年秋の改正で昼間に4往復増発された。運行終了時期は定かではない[21]

注記

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出典

参考文献

脚注 テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister


テンプレート:日本における列車種別一覧
  1. 大塚良治「通勤輸送向け着席保証列車の可能性―企業価値向上と利用客の満足度向上の両立に向けて―」『湘北紀要』第32号、2011年3月、p.110。
  2. RP2004-6。
  3. 佐藤信之「総武・中央緩行線をめぐり--記憶に残しておきたい5つの話」『鉄道ピクトリアル』590号、1994年、58頁。
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 RP2004-6 52-55頁 「首都圏の国鉄-JR 通勤ライナー運転変遷史」
  5. 5.0 5.1 5.2 RP2004-6 20-23頁 「JR各社のライナー輸送 歴史と概況 JR西日本アーバンネットワーク」
  6. 大塚良治、前掲稿、p.112およびp.118。
  7. テンプレート:Cite book
  8. 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 8.6 RP2004-6 44-51頁 「「通勤ライナー」 その生い立ちと現状」
  9. 9.0 9.1 RP2004-6 41-13頁 「全国 JR通勤ライナー 乗車整理券便覧」
  10. 10.0 10.1 RP2004-6 10-15頁 「JR各社のライナー輸送 歴史と概況 JR東日本東京圏」
  11. テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2013年12月20日付、同月22日閲覧。
  12. テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道高崎支社プレスリリース 2013年12月20日付、同月22日閲覧。
  13. ライナー券携帯電話予約サービス - 東日本旅客鉄道ウェブサイト、2012年1月20日閲覧。
  14. 14.0 14.1 テンプレート:PDFlink
  15. RP2004-6 16-19頁 「JR各社のライナー輸送 歴史と概況 JR東海名古屋圏」
  16. テンプレート:Cite web
  17. 当該列車の春日部駅から先の停車駅は、無料優等種別である急行・区間急行の停車駅と同一である。
  18. しなの鉄道ホームページhttp://www.shinanorailway.co.jp/
  19. 大塚良治、前掲稿、p.118。
  20. 当時の名鉄特急はこのディーゼル特急と初詣時の臨時特急以外原則として料金不要で乗車することが可能であった。
  21. 徳田耕一「名鉄パノラマカー」 P.41


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