フォレスト・ガンプ/一期一会

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テンプレート:Infobox Filmフォレスト・ガンプ/一期一会』(フォレスト・ガンプ いちごいちえ、Forrest Gump)は、1994年公開のアメリカ映画。 日本公開は95年で配給収入38億円のヒット作品[1]

「フォレスト・ガンプ」は主人公の名前。ちなみに "gump" はアラバマ州方言で、「うすのろ」「間抜け」「愚か者」の意である[2]

キャッチコピーは、劇中にセリフとしても登場する「人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない」。このセリフは、『アメリカ映画の名セリフベスト100』において第40位となっている。

概要

1985年ウィンストン・グルームが発表した小説Forrest Gump』をエリック・ロスが脚色して製作された映画。監督はロバート・ゼメキス、主演はトム・ハンクス

人より知能指数は劣るが、純真な心と周囲の人々の協力を受けて数々の成功を収めていく"うすのろフォレスト"の半生をアメリカ歴史を交えながら描いたヒューマンドラマ

第67回アカデミー賞作品賞ならびに第52回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞受賞作品。

ストーリー

物語はフォレスト本人が過去を回想する形で、バスを待つ人々に話しかけることで進行する。

幼少期
アラバマ州グリーンボウに住むフォレスト・ガンプは、足の矯正器を付けた知能指数の低い少年だった。母親はフォレストを普通の子供と同じように育てたいと考え、公立の小学校に入学させる。フォレストはジェニーという女の子と友達になるが、小学校ではいじめの標的となる。ある日、父親に怒鳴られるジェニーを見たフォレストは、その手を握って畑の中を走り去る。翌日、父親が性的虐待を行っていたことが発覚し、父親は警察に捕まり、ジェニーは親戚に引き取られることになる。
学生時代
高校生になってもいじめられていたフォレストだが、追いかけてくる同級生の車から逃げ切り、そのままアメフトの試合中のコート内に進入してしまう。その俊足を見込まれ、フォレストはアラバマ大学に入学し、フットボールチームに入る。試合ではいつも好成績を収め、全米代表選手に選ばれるまでになり、ケネディ大統領に面会する機会を得る。その後無事に大学を卒業する[3]
軍隊時代
大学卒業後はアメリカ陸軍に志願した。入隊早々、フォレストは新兵訓練所行きのバスの中で怒鳴られるが、一方でエビ漁師になる夢を持つバッバ(あだ名)という同郷のアフリカ系アメリカ人と知り合い、共に訓練を受ける。命令に対して「はい」とだけ答え、命令されたことだけをこなせばよい陸軍の生活はフォレストに向いており、俊足もあって優秀な兵士になる。訓練後、ストリップ劇場で働いていたジェニーに別れを告げ、ベトナム戦争に出征。戦地では河が入り組んだメコンデルタ地域を担当する第9歩兵師団に送られ、ダン中尉指揮の小隊に配属される。進撃するうち、小隊は敵の待ち伏せを受け、窮地に追いやられてしまう。フォレストは負傷した戦友を探し出し安全な場所へと運び出すが、バッバは死んでしまう。また、ダン中尉は両足を失う。
卓球全米チーム
フォレストはダン中尉とともに軍病院で手当てを受ける。そこで卓球と出会い、才能を発揮する。フォレストは卓球全米チームに入るために帰国し、母親の見守る中で、戦友を救った勇敢な行為に対し、ジョンソン大統領より議会栄誉勲章を送られる。その後、ブラックパンサー同盟の一員として反戦活動を行うジェニーに再会。フォレストはジェニーに自分の思いを伝えるが、相反する立場のジェニーはフォレストの前から去っていった。数年後、フォレストは「ピンポン外交」の主役となり、卓球で世界大会に出場。テレビ番組でジョン・レノンと共演するまでになった。
会社設立
除隊後、フォレストは卓球で得た資金で「バッバ・ガンプ・シュリンプ」を設立。バッバとの約束だったエビ漁を始める。設立後しばらくしてダンも加わるが、漁果は芳しくない。ある夜、ハリケーン・カルメンに巻き込まれ、港に留まった周りの漁船がすべて大破するが、フォレストの漁船だけは無事に生還する。やがて「バッバ・ガンプ・シュリンプ」は知らぬ者はいないほど大きな会社に成長する。
そこで得た資金を、ダンはフォレストの言う「果物の会社」(ベンチャー企業時代のアップル インコーポレイテッド)へ投資し、後に同企業が上場したことで億万長者になった。あり余るほどのお金を手に入れたフォレストは半分をバッバの残した家族に渡し、残りも様々なところに寄付をした。しかし、たった1人の家族だった母親が亡くなり、フォレストは孤独な日々を過ごす。
ジェニーとの再会
ある日、家にジェニーが現れ、数年ぶりの再会を果たす。ナイキのシューズをプレゼントしてもらい束の間の幸せを過ごすフォレストだったが、ジェニーはすぐに去っていった。数日後、フォレストは「ただ走りたかったから」外へ飛び出し、走り始める。何往復もアメリカ横断を繰り返す彼の姿を見て、大勢の人々がフォレストの後を追うように走り始める。いつしか彼は「平和を願って走る男」とアメリカ中の話題になる。やがてフォレストは走るのを止めるが、テレビでそれを知ったジェニーから、彼の元へ手紙が届く。
バスを待っていたのはジェニーに会うためだった。老婆に行き先が近くだと教えられたフォレストはジェニーに再会する。そこにフォレストと同じ名前のジェニーの息子が帰宅し、ジェニーはフォレストとの子供であると告げる。その後ジェニーから「不治の病」に罹っていることを知らされる。フォレストたちはアラバマのフォレストの家に帰り、結婚式を挙げる。ダンも祝福のためにやってくる。ダンは義足をつけ、アジア系の女性と婚約していた。
その後、ジェニーは亡くなり、フォレストは幼少の頃一緒に過ごした木の下に彼女を埋葬する。フォレストが息子をスクールバスに乗せるところで物語は幕を閉じる。

キャスト

日本語吹替

役名 VHS・DVD・BD版 日本テレビ版 フジテレビ版
フォレスト・ガンプ 江原正士 山寺宏一 江原正士
ミセス・ガンプ 土井美加 野沢由香里 鈴木弘子
ジェニー・カラン 佐々木優子 勝生真沙子 名越志保
ダン・テイラー 有本欽隆 樋浦勉 鈴置洋孝
バッバ・ブルー 福田信昭 酒井敏也 屋良有作
フォレスト(子供時代)
フォレストJr.
近藤玲子 大谷育江 矢島晶子
ジェニー(子供時代) 麻見順子 潘恵子 増田ゆき
ルイーズ 喜田あゆ美 伊倉一恵
医者 宝亀克寿 稲垣隆史 富田耕生
校長 石波義人 水野龍司
ドロシー・ハリス 佐藤しのぶ 堀越真己 佐藤しのぶ
アール 小野健一 平田広明
ジェニーの父 仲野裕 秋元羊介 小室正幸
ウォレス知事 宝亀克寿 沢木郁也
ベンチの子連れの女性 野沢由香里 湯屋敦子
ケネディ大統領 石波義人 仲野裕 古田信幸
ドリル軍曹 水野龍司
ベンチの太った男 石波義人 塩屋浩三 後藤哲夫
ジョンソン大統領 宝亀克寿 北村弘一 千田光男
アビー・ホフマン 仲野裕 納谷六朗 大川透
ウェスリー 小野健一 仲野裕 青山穣
ブラック・パンサー 喜多川拓郎 坂東尚樹
ディック・カベット 天田益男 納谷六朗 千田光男
ジョン・レノン 水野龍司 津田英三 大塚芳忠
カーラ 野沢由香里 沢海陽子 小林優子
レノア 佐藤しのぶ 速見圭 佐藤しのぶ
ニクソン大統領 水野龍司 大川透
バッバの母 佐藤しのぶ 水原リン 磯辺万沙子
タクシー運転手 伊藤栄次
いじめっ子 津村まこと 小林優子
エルヴィス・プレスリー 小野健一 荒川太郎
  • 日本テレビ版:初回放送(ノーカット) 1998年4月24日(金)21:03-23:44「金曜ロードショー
他のキャスト:翠準子竹村叔子小山武宏加藤正人白岩裕之
他のキャスト:京田尚子上田敏也斎藤志郎長島雄一大滝進矢星野充昭小形満真殿光昭落合弘治喜田あゆみ樫井笙人遠藤純一田尻ひろゆき

スタッフ

作品解説

監督候補はテリー・ギリアムバリー・ソネンフェルドの名前が挙がっていた。

配役

主人公であるフォレスト・ガンプは実際に演じたトム・ハンクスのほかにビル・マーレイチェヴィ・チャベスなどにも出演依頼がなされていた。また、ババ・ブルー役にはデイヴィッド・アラン・グリアジョン・トラヴォルタが予定されていた。

演出

フォレストがウォーターゲート事件を目撃したり、無名時代のエルビス・プレスリーが自宅に下宿していたり、当時の事件や著名人が多数登場する。

本作の重要なモチーフとなっている羽が舞うシーンだが、この撮影には巨額の費用がかかったことで知られる。映画監督の北野武の弁では、「あれ(羽が舞うシーンにかけた費用)だけで自分の映画が一本撮れる」ほどの金額だという。

フォレストがただひたすら走り続けるシーンでは、頻繁にハンクスの弟がボディダブル(吹替え)として兄の代役を務めた。

VFX

ILMが担当したVFXは主演のトム・ハンクスを、ジョン・レノンジョン・F・ケネディリチャード・ニクソンといった故人と共演させ話題になった。

ゲイリー・シニーズ演じるダン・テイラーが足を失った後のシーンは、撮影時にシニーズの両足へ青い特殊な縫い物を充て、編集段階でコンピュータにより当該箇所の削除が行われた。

撮影

フォレストらがベトナム戦争に赴いた際のベトナムシーンは、実際はサウスカロライナ州ゴルフコースで撮影された。

音楽

この映画は、背景の時代に合わせて、その時代に流行した音楽が登場することでも有名である。またこの映画のサウンドトラックは約1,800万枚という大ヒットを記録した。

原作と映画との相違点

『フォレスト・ガンプ/一期一会』の原作は1985年アメリカ作家であるウィンストン・グルーム (Winston Groom) が発表した小説『Forrest Gump』であり、映画はこの小説のストーリーに沿って製作されているが、小説では主人公が宇宙飛行士プロレスラーチェスのチャンピオンになるなど映画版では大幅にカットされたエピソードが含まれている。

登場人物も、バッバとは大学ですでに知り合っている、ダン中尉とは病院で出会い、しかも元教師など設定に差異がある。またガンプの相棒としてオランウータンが活躍したり、サッダーム・フセインが主人公の友人として登場する部分もある。この物語は湾岸戦争終結まで続く。

受賞/ノミネート

ババ・ガンプ・シュリンプ(テーマレストラン)

1996年、劇中に登場する「ババ・ガンプ・シュリンプ」をモチーフにしたシーフードレストランババ・ガンプ・シュリンプ・カンパニー」が設立された。2012年現在アメリカを中心に世界で20店舗を展開。

日本の支店は、東京後楽園ラクーア内「ババ・ガンプ・シュリンプ東京」と、大阪ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに隣接したユニバーサル・シティウォーク大阪内「ババ・ガンプ・シュリンプ大阪」と、東京・江東区豊洲のららぽーと豊洲内の3店舗である。

パロディ

エピソード

  • 『フォレスト・ガンプ/一期一会』では、映画の舞台であるアラバマ州の訛りの強い方言や、2012年現在では使用されていない英語が頻繁に用いられているため、殊に英語に耳慣れない日本人に字幕無しでのセリフの解釈は困難なものであった。一方吹替え版では、ビデオ版の江原、日本テレビ版の山寺ともスローな崩した発音でガンプの訛りに対応。山寺の演技は真に迫り過ぎ、日本テレビに苦情が寄せられるほどであった(WOWOW「シネマ・ポチョムキン」による)。最後発のフジテレビ版では江原のしゃべり方は至って健常で、ガンプの訛りは全く意識されていない。
  • アメリカンフットボールの試合で一直線に走り抜けるシーンの撮影中にハンクスはインフルエンザに侵された。
  • サリー・フィールドはハンクス演じるフォレストの母親役として出演しているが、ハンクスとの年齢差は10歳しかない。
  • 少年時代のフォレストがスクールバスで少年の隣に座ろうとするが拒否される。その拒否した少年は監督であるロバート・ゼメキスの息子である。また、同じバスの中の赤い髪の毛をした少女はハンクスの娘である。
  • トム・ハンクスゲイリー・シニーズは、次作アポロ13でも競演することになるが、1971年大晦日のニュー・イヤー・カウントダウン・パーティー会場におけるガンプとダン小隊長の会話に、「おまえがシュリンプボートキャプテンになれるなら、オレは宇宙飛行士だ」という、次作の予告もしくは伏線とも思えるセリフがある。

脚注

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外部リンク

テンプレート:ロバート・ゼメキス監督作品 テンプレート:アカデミー賞作品賞 1981-2000 テンプレート:ゴールデングローブ賞 作品賞 (ドラマ部門) 1981-2000 テンプレート:Asboxテンプレート:Link GA テンプレート:Link GA

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  1. 日本映画製作者連盟1995統計
  2. ゆえに原題の「Forrest Gump」は、主人公の姓名という以外に「うすのろフォレスト」「間抜けフォレスト」の意にも取れる。
  3. この作品のストーリーにおけるモデルは、大学フットボールの名門アラバマ大学クリムゾンタイドで、アラバマ大学フットボール部監督ポール・”ベア”・ブライアント(監督通算323勝は長い間歴代1位だった。)である。