フェイズシフト装甲

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テンプレート:複数の問題 フェイズシフト装甲(フェイズシフトそうこう、Phase Shift Armor)は、アニメ機動戦士ガンダムSEED』及び『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する架空の装甲技術である。

本稿ではトランスフェイズ装甲ヴァリアブルフェイズシフト装甲の概要も記述する。

概要

フェイズシフト装甲PS装甲Phase Shift Armor)は、一定の電圧電流を流すことで相転移する特殊な金属でできた装甲である。このことから相転移装甲とも呼ばれ、相転移した装甲は一定のエネルギーを消費することにより、物理的な衝撃を無効化する効果がある[1]。この金属は相転移にともない装甲面の分子配列が変わり、も変化する性質がある。通電することにより非通電時のディアクティブモードといわれるメタリックグレーの装甲色が有彩色化する。また。相転移時の色は装甲に掛けられた電圧によって決まる。装甲を相転移させることを「フェイズシフトを展開する」と表現することもある。

PS装甲を持つモビルスーツ (MS) の防御力は、砲熕兵器としては最大の貫通力を有するレールガン(=リニアガン)の直撃や、数百万Gの加重にも耐える程であり、実体弾であればほぼ完全に無力化することができる。また、耐熱性も向上し、MSであれば大気圏突入時の熱や威力の低いビームマシンガンなどのビーム兵器の直撃に耐えることができるが、これは通常の装甲でも可能なため、アドバンテージはあまりない(大気圏突入の場合、CEでは突入時の熱より突入後の機体速度の減速が可能な推進力を持っているかが重要である)。

欠点・弱点

一方、装甲の相転移(=防御力)を維持するためには装甲に電流を流し続ける必要があり、搭載機のエネルギー消費が早くなり稼働時間を大幅に短縮してしまう。特に被弾の瞬間は平常時以上に電力を消費し、被弾回数に応じて機体の稼働時間も短縮される。機体のエネルギーが切れて相転移を維持出来なくなると装甲の色もメタリックグレーに戻ってしまう。この状態をフェイズシフトダウンと呼び、それにより外見からエネルギー切れが露呈してしまうという欠点もある。

大気圏突入時の熱にも、コクピット内や機体内部の温度上昇までは抑えられるわけではなく、機体の姿勢制御や着陸に失敗すれば大気圏突入時の熱や落下時の衝撃でパイロットの死亡や機体の大破を招く危険がある。関節部分や推進器の基部、カメラなど、構造上装甲で覆うことが不可能な部分までカバーできない点は従来の装甲と同様である。それゆえ、バスターのように高高度からの落下により背面から地面に叩きつけられるなどした場合、装甲は破損せずとも関節部が破損して稼動不能に陥ることもありうる。同様にミサイルや剣など実体兵器による攻撃でも装甲の破損は防げてもその内部に与える衝撃までは相殺できない。

また、上記のようにビームに対しては熱耐性により通常装甲と同じ程度の耐性を持つが、G兵器のビームライフルのような高出力のビーム兵器の直撃に耐えることはできない。対ビーム対策としては、ザフトがセカンドステージのアビスの両肩部シールドにて、VPS装甲と対ビームコーティングの両立に成功している(MS本体への適用は不可能だった模様)。後付けではあるがレールガンすら超える物理的攻撃ならば破壊も可能であり、試験レベルでは、グフクラッシャーのインパクトバイスによる粉砕、ネロブリッツの可変アームユニットによる握砕が可能とされている。実戦ではライゴウガンダムのコクピットVPS装甲がアストレイ ブルーフレームサードの大型ソードによって初めて破壊された(インパルスのエクスカリバーレーザー対艦刀によるフリーダム破壊時はシンの操縦技術により、切っ先にビームを出力しているためビーム破壊である)。また、フリーダムのレールガンによるアビスの推進器破壊時に一緒にノズル部分のVPS装甲が拉げており、PS素材が薄いと破壊まで至らなくても変形を起こしてしまうことがある。

各国での実用化

PS装甲は元々、アドヴァンスト・スペース・ダイナミック社で研究が行われ[2]、『大西洋連邦ヘブンアイランド技術研究所』におけるマリュー・ラミアス大尉の主導のもと開発を進行、大西洋連邦において始めて実用化に成功した。オーブ連合首長国と共同開発したMS・G兵器の装甲として実用化された。理論的には以前から存在していた技術だったが、それまで正式採用されなかった理由は不明。また、装甲材となる金属は無重力、またはそれに準じた低重力環境でしか精製が不可能である[3]

プラントは奪取したG兵器を解析することでPS装甲を実用化し、MSに搭載した。その際、搭載機に核エンジン、及びNジャマーキャンセラーを搭載する事でPS装甲の電源を確保し、搭載機の稼動時間短縮の弱点を解消すると同時にビーム兵器の出力向上などを実現し、MSの総合的な性能向上に繋がった。 また、スペースコロニーサイズの戦略兵器ジェネシスの外装にPS装甲を採用し、高い防御力を実現している。第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦において、ジェネシスがクサナギエターナルのビーム兵器による一斉射撃やローエングリンによる陽電子砲を完全に防いでいた(これはテンプレート:要出典範囲)。なお、PS装甲展開時の装甲の色は水色になっている。

大西洋連邦と共にG兵器を開発したオーブでは秘密裏に大西洋連邦の技術を盗用して国産MSを開発する計画を立てており、その内の1つとしてPS装甲の盗用も試みたが、ブラックボックスであるこの技術の解析、模倣は難航し、結局純国産機での採用は断念した。大戦末期にストライクのデッドコピー機ストライクルージュで実用化にこぎ着けている。

備考

  • ストライクフリーダムは、キラ・ヤマトの卓越した反射能力が発揮される高機動性によって加わる負荷から、機体構造を保護するため、装甲だけではなく機体フレームにもPS装甲材を採用している。並の強度では耐えきれない程の負荷がフレームに加わった場合は、予備電力も活用して瞬間的にフェイズシフトの出力を極大値に引き上げ、フレームが金色に発光し、光子の形で負荷を放散している。この機構はインフィニットジャスティスにも同様の機構が搭載されており、銀色に発光する。また、デスティニーにも人間に近い動きから来る負荷軽減のため、PS装甲技術を転用した特殊素材を使用した、ほぼ同様の機構が搭載されており、アクティブ状態で鈍い金属光に発光する[4]。このほかにもPS装甲材を刀身や槍状装備に転用したアストレイ ゴールドフレーム天アストレイ ミラージュフレーム等も存在し、PS装甲材は防御装甲としての用途以外にも幾つかの派生技術が存在する。

トランスフェイズ装甲

トランスフェイズ装甲(トランスフェイズそうこう、Trance Phase Armor)は、アニメ機動戦士ガンダムSEED』に登場する架空の装甲技術である。

略称はTP (Trans Phase) 装甲。実体弾には圧倒的な防御力を誇るPS装甲であったが、莫大な消費電力やフェイズシフトダウン時の弱体化など、PS装甲そのものが弱点に直結している点も見受けられ、特に外見でエネルギー切れが察知されてしまうというのは致命的であった。

そこで、初期のG兵器の設計が終了した時点で、PS装甲の欠点を補った次世代機の開発が進められた。それがカラミティをはじめとする3機の後期GAT-Xシリーズであり、これらにPS装甲に代わって装備されたのがTP装甲である。

TP装甲は通常装甲の内側にPS装甲を備えた二重構造であり、内側のPS装甲は外装に内蔵されている圧力センサーに反応があった時のみフェイズシフトする。この為従来のPS装甲の様に常に相転移を維持する必要がなく、機体のエネルギー消費量は大幅に軽減されることとなる。また、外側は相転移を起こさない通常の装甲であるため、外見からエネルギー切れが露呈する心配もない。

更に新型GAT-Xシリーズはコクピットやエンジンブロックなどのバイタルパート周辺のみTP装甲を備えることで、更なるエネルギー消費の軽減を図っている。これによりエネルギーに余裕ができたこれらの機体には、先に開発された5機よりも強力な火器や防御システムが搭載され、全体的な性能の向上に繋がっている。

PS装甲は生産コストや稼働時間の短縮という点から制式量産機には採用されていないが、電力消費の欠点を克服したTP装甲もGAT-333 レイダー制式仕様など一部の量産機にしか採用されていない。これは105ダガーの説明において製造コストの問題を解決できなかったことが仄めかされている。

なお、アストレイブルーフレームがセカンドへの改修を施された際にも、コクピットの周辺に同様の二重装甲が組み込まれている。このPS装甲は改修現場で同時に製造中だったストライクルージュ用のものを使用しており、ロウがTP装甲の存在を知らないまま独自に思いついたものである。

ヴァリアブルフェイズシフト装甲

ヴァリアブルフェイズシフト装甲(ヴァリアブルフェイズシフトそうこう、Variable Phase Shift Armor)は、アニメ機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する架空の装甲技術である。

略称はVPS (Variable Phase Shift) 装甲。この装甲の従来とは異なる特徴は、装甲に流す電流の量を変化させることが可能な点である。これによって、装備や状況ごとに装甲へのエネルギー配分を調整・最適化することで電力消費のロスを抑えることができる。PS装甲を搭載するに当たり最も重要な課題は、機体の稼働時間を大幅に圧迫するという点である。エネルギー源に核エンジンを搭載すれば容易に解決できる問題ではあるが、ユニウス条約の締結によりそれも不可能になった。しかし、それがこの技術によって可能となった。なお、この技術を完成させた組織や時期などは作中で明らかとなっていない。

VPS装甲を持つ機体はプラントで多数開発されているが、連合側でも鹵獲されたテスタメントの改修時に量子コンピュータウイルスと共に搭載したり、ストライクノワール等の既存機を改修した一部のMSが搭載している。

VPS装甲の「電圧調整によって装甲の色が変化する」特徴が特に顕著なのは、インパルスガイア、鹵獲改修後のテスタメント、ストライクノワールのベースであるストライクE、及びライゴウである。インパルスは装着するシルエットごとに異なった色に変化し、ガイアはパイロットであるアンドリュー・バルトフェルドの特性に合わせ、カラーリングが元の黒から朱色になるように電圧調整がなされている。テスタメントは通常時は全体的に白系統の色だが、必要に応じて装甲の防御力を高め、それに伴い機体の色が赤く変色する。また、後にパイロットの好みにより白い十字模様が浮き出るように変更された。ストライクEはノワールストライカー装着時(インパルスと違い通常のストライカーでは変化はないが、ストライクE用のアナザートライアルソード・アナザートライアルランチャーストライカーパックであればインパルス同様機体色が変化する)に通常のトリコロールカラーから、全身が黒色に変化しストライクノワールとなる。ライゴウは専用のアナザーストライカー3種を換装することでインパルス同様ストライカーごとに異なった色に変化する。このほかセイバーのテスト機であるプロトセイバーも飛行試験のデータを計測するためにVPS装甲によって機体に白いラインを浮かび上がらせており、さらに鹵獲された後にはパイロットの好みでダークグレーにされている。また、VPS装甲の雛形である改良型PS装甲(パワー・エクステンダーシステム)を搭載するストライクルージュの装甲も電圧調整によって色がストライク同様に変化する。

防御力は装甲に掛かる電圧に比例して向上するとされているが、どの程度変化しているのか劇中表現では変化はない。また、上記のようにパーソナルカラーに変更するために、電圧調整を行うパイロットもいるが、電圧調整に伴い変化する色と防御力との具体的な関係は今の所明らかにされていないテンプレート:要出典範囲。カラーリングの設定はPS装甲では、装甲の分割ごとなど大まかに色を設定できる程度だったが、VPS装甲では装甲分割や形状に囚われる事なく、装甲表面に自由にマークや色を指定することが出来、一種のカモフラージュにも使用できるほど多彩である。

民生品

本来、PS素材は生産に大規模な施設が必要な上に生産コストが高いため、軍用以外には使用されていなかったが、ザフト軍のジェネシスαを接収して本部にしたジャンク屋組合が、ジェネシスαの外壁に使われていたPS装甲を加工して民生品として売り出している。

脚注

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  1. データコレクション「機動戦士ガンダムSEED 上巻」より。
  2. プラモデルキット『MG エールストライクガンダム』解説より
  3. プラモデルキット「PG ストライクルージュ」解説より
  4. MGデスティニーガンダム エクストリームブラストモード インストより。

関連項目

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