フェイザー

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テンプレート:特筆性 フェイザー(Phaser。フェーザーとも呼ばれる)とはアメリカのSFドラマ『スタートレック』シリーズに登場する架空の兵器

概要

「位相変換型エネルギー兵器」の総称。「Phaser」は「位相エネルギー整流作用」(PHASed Energy Rectification)の略称とされている。

ノベライズの「宇宙大作戦」シリーズの初期~中期にかけては、「位相光線砲」「位相光線銃」と訳されていた。中期~後期にかけては「位相光線砲」の表記に「フェイザー」の振り仮名が、現在のスタートレック作品では「フェイザー砲」と訳されている。

原理

タージオングルーオンといった原子間核力を伝達する素粒子の一種のナディオンという架空の素粒子を制御することによって起こるRNE(Rapid Nadion Effect)という反応によるものであり、対象物を原子未満のレベルで破壊する。

惑星連邦のフェイザーは、規模により個人携帯用のタイプ1~3、艦載用のタイプ4~12が存在する。艦載用のものにはタレット型(船体表面に設置された球状の可動砲台)・アレイ型(船体表面に設置されたスリットで発射角度はかなり広く同時に様々な方向へ撃てる)・キャノン型(高出力だが特定の一方向にのみ発射可能)がある。

個人携帯用は、ビームタイプの調整が可能で、大きく分けて「麻痺」「加熱」「破壊」の3種類で使用できる。『スタートレックVI 未知の世界』ではクリンゴン艦に乗り込んだゴルコン首相の暗殺犯が「火炎型フェイザー銃」と言う惑星連邦では使用が禁止されているフェイザーでゴルコン総裁を射殺している。しかしこの火炎型フェイザー銃の詳細は不明である。

破壊力

携帯用フェイザー銃(ハンドフェイザー)ですら、最大出力で照射すればビルや巨大な岩石を吹き飛ばすほどの破壊力を持ち、ギャラクシー級の宇宙艦に搭載されるようなタイプ10以上のフェイザー砲にいたっては一撃で惑星表面の広範囲を焼き払うことができ、ビームを収束させれば惑星の地殻をいとも簡単に撃ち抜くことが可能であるという。なおバンク1基当たりの出力は、ギャラクシー級のタイプ10で5.1メガワット、ソヴェリン級のタイプ12で7.2メガワットとなっている。

破壊力は大きくとも防御シールドで防がれやすい。このため戦闘ではまず連射の利くフェイザーを使用しシールドを弱らせる。フェイザーは通過できなくとも、何かの物体が防御シールドを通過できるまでに弱ったところで光子魚雷を発射するのが一般的である。尚、この際の魚雷は1発ではなく3発ほど同時発射している事が多い。

しかし、肝心の劇中描写は単なるか細いビームでしかなく地味である。その上、艦隊の誓いによって発砲はきびしく制限されており、また使用しても敵の防御スクリーンや異星の未知の生命・オーバーテクノロジー相手には効かないことも多い。携行用フェイザーも、麻痺に設定することが多い上に、破壊モードに設定しても標準出力でのエフェクトは実弾式の拳銃程度で、また先手を取られてあっさり取り上げられることも多い。 必殺の武器と言うよりはむしろ、「本来必殺の切り札であるフェイザーが効かない・使えない状況をどう切り抜けるか」という逆説的な演出に用いられることが多い兵器だといえる。

また携行用フェイザーは、手榴弾代わりに、バッテリーをショートさせてオーバーロードさせた状態で投擲・爆発させる、極寒の惑星に取り残されたクルーが岩を熱して暖を採る、修理した機械の動力源としてエネルギーを流用するなど、「ツールとして使用する代わりに、武器を失って丸腰になってしまう」演出にも多用された。

スタートレックVI 未知の世界』では、連邦所属航宙艦内で無許可で殺傷モード以上の高出力で発砲すると全艦に非常警報が自動発報されたりフェイザー銃に安全装置が自動でかかる描写もある。

しかし、麻痺モードであろうとも至近距離で受けると、肉体や臓器が機能不全を起こし死亡に至ることもある。 『スタートレックVI 未知の世界』の作品中で、「連邦所属航宙艦内で無許可で殺傷モード以上の高出力で発砲すると全艦に非常警報が自動発報されたりフェイザー銃に安全装置が自動でかかる」を利用した殺人事件のアリバイのトリックが用いられている。

宇宙大作戦』のエピソード「小惑星衝突コース接近」(小説『宇宙大作戦 小惑星回避作戦』に収録の「小惑星回避作戦」)

有人惑星に接近する、地球の月ほどの大きさの小惑星を破壊するため、スポック副長指揮の下、フェイザー砲を最大出力で小惑星の弱点めがけ、しかもワープ機関が焼損するまで延々と砲撃したが、結局目に見えるほどの損害は与えられなかった。 (参考:フェイザー攻撃前に、エンタープライズの防御シールドと小惑星を接触させ、小惑星の軌道を変える方法がとられたが、出力不足により失敗している。)

スタートレック」(Star Trek The Motion Picture、小説『宇宙大作戦 スター・トレック』)

ワープエンジンの不安定が原因でワームホールに落ち込む事故に遭遇し、隕石(小説ではこの隕石は「山ほどの大きさのある…」と記述されている)と衝突しそうになった際に、カーク艦長は即座にフェイザー発射を命じたが、直後にデッカー副長が「待て!命令を変更する!!」と、命令を変更し、光子魚雷を発射させて隕石を破壊した事例があるが、これはフェイザーが威力不足だったわけではなく、改装されたエンタープライズのフェイザー砲は威力を高めるためにエンジン回路を使用する方式に改良されており、ワープ機関が不調の際はフェイザー砲が停止してしまうためである。カーク艦長は改修の内容を完全に把握しておらず、艦長復帰直後だったこともあってこのことを知らなかった。結局、隕石は光子魚雷によって破壊されたが、歴戦のカーク艦長が真っ先にフェイザー使用を下命していることから、フェイザーもこの程度の隕石を破壊できる威力はあるものと推定される。

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン

ディファイアント級航宙艦には、ワープ機関のすぐ前方に戦闘機の機関砲のように固定された、パルスフェイザー砲も搭載されている。これは連続ビームではなくカメラのストロボのように小刻みに発射するビームであり効率良く密度が高い上にワープ機関に流れるエネルギーを流用する仕組みになっており、破壊力はきわめて大きい。

フェイズ砲

22世紀半ばを舞台とするシリーズ『スタートレック:エンタープライズ』の深宇宙探査艦NX-01エンタープライズには、「フェイズ砲」という兵器が搭載されている。これは(phase modulated energy weapon)といい、フェイザー砲のような位相エネルギー兵器の初歩的なものだと考えられる。

エピソード「言葉なき遭遇」において、NX-01の機関クルーが所属不明の不審船に対抗するために急遽完成させたこの兵器は一砲門あたり500GJ(ギガジュール)の出力を持ち、月に似た無大気の惑星で発射実験を行ったところ、突貫作業のせいでオーバーロードを起こし、マッキンレー山ほどの山(標高6200m)を跡形も無く消し飛ばした。

このフェイズ砲の出力(500GJ)はTNT火薬に換算するとほぼ120t(トン)のエネルギーに相当する。オーバーロードを起こせば10倍の5TJ(テラジュール)の出力であるからTNT火薬に換算するとほぼ1200t(トン)。このフェイズ砲が宇宙船に3門搭載されているため総出力は1.5TJ(テラジュール)。オーバーロードすれば10倍の15TJ(テラジュール)の出力。これは広島型原爆(55TJ《テラジュール》)のほぼ27%に相当するエネルギーである。つまり初期のフェイザー兵器であるフェイズ砲は(設定上は)決して脆弱ではない。

しかし、劇中では不審船にはまったく効かず、人為的にオーバーロードを起こしてさえ不審船を損傷避退させるのがやっとであった(後発エピソードでは改修され、通常のフェイザー砲と同程度の演出効果を発揮している)。

関連項目

素粒子ナディオンの名称は上記作品名に由来。
軟X線、紫外域、可視光線、遠赤外域まで幅広い波長の光を取り出すことができ、兵器として実用化を目指す研究も行われている。

外部リンク

テンプレート:スタートレックcs:Phaser