ピピンアットマーク

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テンプレート:Infobox コンシューマーゲーム機 ピピンアットマーク(Pippin atmark、Pippin @. )とは、バンダイ・デジタル・エンタテイメントがアップルコンピュータと共同開発したMacintosh互換のマルチメディア機。日本では1996年3月下旬発売[1]

概要

標準でモデムを搭載し、ダイヤルアップ接続インターネットに接続できるマルチメディア機。

Mac OS(7.5.x)と互換性を持つpippinOSとCD-ROMドライブを搭載し、ピピンアットマーク用ゲームの他にMacintosh用ゲームも遊べるが、ハードディスクは有さず、代わりにフラッシュメモリを記憶装置として搭載していた。

1996年3月から、日本およびアメリカ合衆国にて販売された。当初は電話注文か、加盟店での販売のみであったが、1996年6月15日からはモデムを別売りにした廉価版が、各種周辺機器と同時に一般店舗で販売された。北米では「pippin@WORLD」(ピピンアットワールド)という名称で販売されており、本体とコントローラーの色がダークグレーとなっているほか、パッケージも非常に簡素なものとなっている。

「廉価なMacintosh」「パソコンへの入門機」という側面を強調していきたいバンダイに対し、アップル社側が全く非協力的であり、販売台数は振るわず、1997年3月期には65億円の赤字を生み、1997年5月12日には製造を中止、1998年3月13日付で事業担当子会社(BDE:バンダイ・デジタル・エンタテインメント)を解散し、予定していた次世代機も出ないまま事実上撤退した。最終的に全世界で4万2千台を出荷したという[2]。世界一売れなかったゲーム機である[3]

バンダイによるユーザーサポートは2002年12月31日まで続けられていた。

カラオケ店では現在でも稼働中の店がある。

失敗の主な原因として、インターネット接続によるマルチメディア機能の将来像や具体的なユーザー利益が全く提示できなかったこと、アップル社の無理解、等が挙げられる。1990年代前半の開発当時としては先進的なオンラインコミュニティーやボイスチャット機能の開発も行われていたが、日本国内ではダイヤルQ2によるツーショットダイヤルが社会問題化しており「(子供向けの製品が主力の)バンダイの製品がアダルト系サービスに利用されかねない」と危惧した山科社長の判断により開発中止となっている。

本体仕様

マルチメディアアーキテクチャ、Pippinに準じた設計になっている。

  • CPU :PowerPC603 66MHz
  • RAM :6MB(最大13MBまで拡張可能・1MBはビデオ表示(VRAM)に使用)
  • CD-ROMドライブ :4倍速
  • 出力 :VGA,NTSC,PAL
  • モデム :14,400bps
  • ROM:4MB
  • RAMスロット:1基
  • 拡張スロット:PCI準拠スロット、メモリー拡張スロット
  • インターフェイス:VGA出力、S映像出力、ビデオ出力、ステレオサウンド入出力(L/R)、プリンターポート、モデムポート(Geo Port)、ステレオPHONE端子、ADB端子
  • 映像サイズ:640×480ドット(最大3万2768色)
  • サウンド:16ビットステレオ入出力
  • サイズ:H89×W228×D257/重さ:約3.5kg
特別ネットワークセット¥64,800(税別)
本体、付属コントローラー、専用モデム、Pippin用CD-ROMソフト4本
ピピン@アットマークセット¥49,800(税別)
本体、付属コントローラー、Pippin用CD-ROM(テレビワークス、PEASE)

オプション

  • ATMARKモデム(¥18,800):データ転送速度 14,400bps(サイズ:H26×W71×D91/重さ:約0.3kg)
  • ATMARKキーボード(¥9,800):A6サイズのタブレット付き専用ボード(サイズ:H24×W270×D330/重さ:約1.1kg)
  • ATMARKフロッピーユニット(¥12,000):1.44MB高密度FDD内蔵(サイズ:H45×W271×D280/重さ:約2.0kg)
  • ATMARKコントローラ(¥5,800):追加コントローラー(サイズ:H51×W157×D95/重さ:約0.3kg)
  • ATMARKワイヤレスコントローラ(¥11,800)
  • ATMARKアダプタ
    • ATMARKアダプタA(¥2,000):ATMARK→ADB
    • ATMARKアダプタB(¥2,000):ADB→ATMARK
ADB規格対応のキーボードやマウス等が相互接続可能な変換アダプタ
  • ATMARKメモリーカード:拡張容量2MB(¥11,800)/4MB(¥?)/8MB(¥21,800)(サイズ:H6×W51×D51/重さ:0.1kg)
  • DOCKING TURBO(¥49,800)オリンパス製230Mバイト/128Mバイト対応3.5インチMOドライブ[4]
  • 対応プリンタ:Apple Color StyleWriter 1500, 2200, 2400, 2500 Apple StyleWriter II, 1200
作成したテキストやイラストをプリントアウト可能。

サービス

  • インターネット接続サービス
バンダイ・デジタル・エンタテインメント運営の「アットマークチャネル」に入会すると、ピピンアットマークを使用してインターネット、各通信サービスの利用が可能。
基本料金:2,000円(但し、1月間に10時間以上利用した以降は1分毎に10円の超過料金が掛かる。また、最寄りのアクセスポイントまでの電話料金は別途必要。) 
キャプテンシステムへの接続も可能であった。

対応ソフト

  • たまごっち CD-ROM Pippin/Macintosh版」 (育成シミュレーション)¥2,800
バグ騒動
このソフトには確実に発生し、なおかつ防ぐ事の出来ない「2回目の病気によるパラメータバグで、育成4日目に入る瞬間に突然異常動作し、キャラが死亡してしまう事がある」「スクリーンセーバーが起動しない」等の大量のバグが存在した。
そのため、「内服薬」と呼ばれる「Macintosh用プログラムver.1.2向けアップデート用フロッピーディスク」が希望者のみに配布された事があるが、あくまで「難易度が高かった為における、希望者への低難度化ディスク配布」としてバグとは表明せずにもみ消しが行われた結果、一般への発表・告知等のしかるべき対応が全く行われなかった。
さらにこれはver.1.1やver.1.3には非対応であり、またpippin用プログラム(全バージョン)への対応が全くなされていない、という奇妙な状態に陥っていた。[5]
上記の通りソフトの回収は一切なされていない為に、場合によっては未だに店頭に並んでいる場合もある為に注意が必要。
また、各バージョンはパッケージ上やディスクレーベルでは識別できず、1.1以降のみディスクケースにシールとして貼付けられている為に、ケースを紛失した場合は確認が非常に困難となる。
  • 「Racing Days for Pippin」(エンタテインメント)¥6,800
  • 「GUNDAM VIRTUAL MODELER LIGHT」(デジタルホビー)¥5,800
  • GUNDAM TACTICS MOBILITY FLEET0079」(シミュレーション)¥5,800
  • GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH」(シミュレーション)¥8,800
  • 「機動戦士ガンダム 第13独立部隊 ホワイトベース」(シミュレーション)¥8,800
  • SDガンダム外伝」(カードバトルゲーム)¥6,800
  • 「ジオン軍ミリタリーファイル」(デジタルホビー)¥6,800
  • 「SDガンダム ウォーズ」(シミュレーション)¥6,800
  • 森高千里CD-ROM 渡良瀬橋」(音楽)¥4,800
  • EGWORD PURE for Pippin」(実用)¥7,800
  • 「Tunin'Glue」(音楽)¥5,800
  • 「アニメデザイナードラゴンボールZ」(エンタテインメント)¥5,800
  • 「Victorian Park」(エンタテインメント)¥5,800
  • 「AI将棋」(エンタテインメント)¥5,800
  • 「ごきげんママのおまかせダイアリー」(実用)¥5,800
  • 「SeesawC1」(エデュテインメント)¥3,800
  • 「LULU」(エンタテインメント)¥4,800
  • ウルトラマン デジタルボードゲーム

その他

  • 名前の「ピピン」は林檎の一品種。
  • 日本では、発売当時"@"(アットマーク)のなじみが薄く、ピピンアットマークで @ の読み方を知ったという人もいた。
  • バンダイの山科誠社長(当時)は本製品への思い入れが深く、後に携帯型ゲームワンダースワンが発表されると、「ワンダースワンはピピンアットマークの後継機」と言ったという。もちろん、両者に互換性は全くない。強いて共通点をあげるなら、ワンダースワンはオプションでインターネットへの接続が可能な仕様であった。
  • 発売当時、漫画雑誌月刊少年ギャグ王にて大々的な販売告知キャンペーンがおこなわれた。
  • アップルの代表的な失敗例としてニュートンと共にピピンアットマークの名前が取り上げられることがあるが、アップル自体がゲーム開発やネットワークのインフラ提供、バンダイDEの販売戦略などに関わっていたわけではない。
  • ピピンアットマークに提供されたQuickTimeの一部の機能はQuickTimeがHyperCardとの統合を計画していた時代に拡張されたインタラクティブ機能の流用である。
  • ピピンアットマークは世界で最も売れなかったゲーム機として紹介されている。(4万2000台)(アメリカ調べ)[1]

関連項目

出典

  1. ピピンアットマーク、店頭販売開始(「PCウォッチ」1996年5月28日
  2. バンダイ、ピピンから撤退。BDE清算、PC watch、1998年2月27日
  3. テンプレート:Cite news
  4. オリンパス、ピピンアットマーク用MOドライブを発表(「PCウォッチ」1996年9月24日
  5. 「謎の急死現象」に関する情報

外部リンク

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