ニュース系列

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テンプレート:Redirect3 ニュース系列(ニュースけいれつ、ニュースネットワーク)とは、日本の民間放送テレビ局間における、ニュース取材および情報の相互流通を行う放送局系列関係をいう。

日本のニュース系列

左が系列名で、( )内は在京キー局/在阪準キー局/在名基幹局

NHKは、1926年以来全国で同一事業者であり、全国47都道府県でテレビニュースが完全視聴出来る関係もあって、ニュース系列とは言い難い面があるため、この項では解説を割愛する。

歴史

前史

1958年6月、当時東京ラジオ東京(現・TBSテレビ)が、大阪大阪テレビ放送(現・朝日放送)・名古屋中部日本放送(現・CBCテレビ)・福岡のラジオ九州(現・RKB毎日放送)・北海道北海道放送との間にテレビニュースネットワーク協定を締結。ラジオ東京の「東京テレニュース」を各局でタイトルや一部内容を差し替えて放送し、また自社取材のニュースをラジオ東京経由で流した。

一方、同年7月、共同通信社を中心に、NHKフジテレビ、日本教育テレビ(NET。現・テレビ朝日)等が出資した共同テレビジョンニュース社(現・共同テレビジョン)が発足。当初は同社がテレビニュースの制作を行い、出資各局が同社から番組を購入して放送することとしたが、結局業務開始までにNHKとNETが降り、事実上のフジテレビ系列として11月に「共同テレニュース」がスタートした。

共同テレビジョンニュース社から抜けたNETは、親会社であった東映朝日新聞社と提携して朝日テレビニュース社(現・テレビ朝日映像)を発足させ、同社が制作した「NETニュース 朝日新聞制作」を購入して放送することとなり、1959年よりNETと九州朝日放送で放送開始。ただし、既にラジオ東京との協定を結んでいた朝日放送ではこの番組を放送せず、1960年から大阪地区では毎日新聞系の毎日放送がこの番組を放送し取材制作に携わったことから、「腸捻転」ネットとして問題になった。(1975年3月30日に解消。ネットチェンジの項を参照のこと。)

先発局ながら、こうした系列化で後れをとった日本テレビは、姉妹局・読売テレビや自社資本が入った札幌テレビテレビ西日本1964年10月ネット解消)の他、後述するJNNに加盟しなかったラ・テ兼営局を対象に「NTVニュース」や「日本テレニュース」、「きょうの出来事」といったニュース番組を配信していった。ただし、これらは系列各社の取材協力はあったものの、あくまでも日本テレビの番組であった。

本格的なニュース系列の発足

1959年8月1日、ラジオ東京は、同年4月に放送した皇太子(現・天皇)ご成婚特番でネットワークを組んだ前述4社を含めた計16局と、ニュース協定のJNNを締結。これがニュース系列の嚆矢とされる。

その後、1966年4月1日に日本テレビ系列がNNNを、8月1日にはフジテレビ系列がFNNをそれぞれ発足させ、これまでの日本テレビや共同テレビが制作したニュース番組を購入して放送する形式を改め、JNNと同様のスタイルを採ることとなった。1974年4月1日にはNETテレビ系列もANNというニュース協定を締結した(「ANNニュース」そのものは上記「NETニュース 朝日新聞制作」を改題した形で1970年1月1日よりスタートしていた。)。

テレビ東京キー局となっているTXNは「TXNニュース協定」を1991年に締結して以降、ニュース系列と番組供給系列(1982年発足)を兼ねている[2]

特徴

東京を中心とした関東広域圏放送対象地域とするキー局にとって、地方のニュース取材は負担が重い。また、系列局にとっては東京でのニュースを必須とする。さらに、ニュースネットワークのない状態で各局がやりとりすると全国ニュース番組においての統一性に欠ける恐れがある[3]。この事情から、

  • 系列間でニュース映像の交換(配信)を行う。
  • ニュース系列名を冠したニュースは全国での放送とする。
  • 系列外へのニュース配信を行ってはいけない(JNN排他協定)。

の3点を目的とした局間ネットワークが組まれていった。JNN排他協定は他系列が混じることによる品質の低下を防ぐためにJNNが当初から盛り込んでいたもので、ほかのニュース系列では盛り込まれていないものもある。その地域の放送局が少なく複数の系列に属する場合は「クロスネット」というが、平成に入ってから新たに開局した放送局が増えたため少なくなっている。

またニュース以外のドラマなどの各種番組についても、このニュース系列のネットワーク各局で放送されることが多い(フジテレビ系列の番組供給ネットワークはFNS・日本テレビ系列の番組供給ネットワークはNNSという別名称で呼ばれている)。

なお、JNN基幹局などを見てもわかるように、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡のテレビ局(NNN、FNNでは仙台・広島も含む)はその系列の基幹局であり、ニュース系列で大きな力を持つ。

批判

本来は、独立した放送局として、ニュースの相互配信を目的とするものであったが、現在では地方局は、番組制作までもキー局に深く依存し、地方局の番組製作は停滞し、ただ東京の番組を放送させるだけで電波料・ネットワーク費が貰え、番組を制作しなくても収入になる。もはやこれは共生ではなく寄生で癒着であると、放送局の在り方として批判されている。しかし今まで総務省がキー局を優遇(関東広域免許での全国放送の黙認など)してきた経緯もあり、単に地方局を切り捨てることもできない状況にあり、情報の格差論とも呼応する。また現行の放送制度で全国放送を活用したい企業の思惑もある。

全国紙との関係

上掲の通り、独立した放送局がニュースの相互配信を目的として発足したものだが、日本テレビは読売新聞社との関係が開局当初から強く、またNETテレビに至っては朝日新聞制作のニュースをそのままネットワークニュースとしてきたことから、やがてニュース系列と特定新聞社(言い換えれば、全国紙)との関係は強くなってきた。

日本テレビをキー局とするNNNは、地方新聞社が設立した局も多く加盟しているため読売新聞とは一応別物と位置付けられているが、日本テレビと読売テレビは読売グループに属し、STVテレビやミヤギテレビ、讀賣テレビ、広島テレビ、福岡放送などいくつかのNNN基幹局・系列局にも読売新聞の資本が入っていることもあり、読売新聞の関係が全く無いとは言えない。

一方テレビ朝日をキー局とするANNは、発足当初MBSが系列基幹局に加わっていたこともあり、名称も「朝日ニュースネットワーク」の略ではなく、「オールニッポンニュースネットワーク」の略となっているが、1975年3月31日に腸捻転解消に伴うネットチェンジでANNの準キー局がMBSから朝日放送(ABC)に変更して以降、現在はテレビ朝日、ABCメ~テレも含め、全加盟局が朝日新聞社の関係会社であるため[4]、ANNもまた朝日新聞系のテレビニュースネットワークに位置付けられている。

これらに対し、JNNはTBS・MBS・RKBといった基幹局が毎日新聞社の友好会社となってはいるが、歴史的経緯から、この3局が現在では資本面では毎日新聞社の系列というよりも同社と対等な関係にあり、またCBCは中日新聞、HBCは北海道新聞、TBCは河北新報、RSKは山陽新聞、SBSは静岡新聞、BSNは新潟日報、RCCは中国新聞、RKKは熊本日日新聞といったように有力系列局の多くは地元新聞社を背景に設立されたものが多く、毎日新聞との関係が希薄な局も多い。このためJNNと毎日新聞は完全に別物であるといえるが[5]、TBS制作の情報番組の解説者には毎日新聞記者が多く起用されている。

FNNはフジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス産業経済新聞社の大株主であり、フジテレビと産経新聞は報道面で協力関係にあるが、東海テレビは中日新聞、TNCは西日本新聞、uhbは北海道新聞と関係が深く[6]、また産経新聞自体が全国紙とは言い難い取材発行体制にあるため、FNNが産経系のニュースネットワークであるとは言い切れない。ただし、産経新聞紙面には時折「FNN・産経新聞共同世論調査」が掲載されていたり、FNNの解説者として産経新聞記者が登場するなど関係は深い。フジテレビでは「FNNスピーク」に「協力 産経」のクレジットが入り、(但し、「FNNスピーク」制作・幹事局のフジテレビのみ。)「産経テレニュースFNN」の放送もある。なお、東海テレビではFNNニュースを「FNN東海テレニュース・協力 中日新聞」とTNCでは「TNC NEWS FNN 協力 西日本新聞(またはTNC 西日本新聞)」(一部時間帯)とそれぞれ系列局名を冠した番組名に差し替え、協力する新聞社のクレジットを入れている。しかし、FNNはTHKやTNCだけに限らず、他のFNN系列局でもFNNニュースのタイトル差し替え番組が数多く存在する。

TXNは、地元の山陽新聞社が筆頭株主となっているテレビせとうちを除いた5局が日本経済新聞社持分法適用会社となっており、またニュース取材においても日本経済新聞社との提携関係にある。

脚注

  1. 厳密ではニュース系列の名称ではない
  2. NHK放送文化研究所年報、2010年、第54集「民放ネットワークをめぐる議論の変遷」村上聖一、21ページ。
  3. 岩波ジュニア新書『テレビは変わる』岡村黎明著より
  4. 瀬戸内海放送(KSB)は加藤汽船・毎日新聞社・MBSが主体となって設立された経緯から、系列局中で唯一、朝日新聞社が上位10社以内に入っていない少数株主となっている。
  5. ただし東海広域圏のCBCや北海道のHBCは毎日新聞のテレビCMをスポット放送している。これは毎日新聞中部本社毎日新聞北海道支社が置いてある関係である。
  6. 中日新聞、西日本新聞、北海道新聞と産経新聞は相互に編集協定を結んでいるものの、論調は産経の右寄りに対しブロック三紙の左寄りと正反対である。また、産経新聞東京本社発行版と中日新聞東京本社発行の東京新聞産経新聞九州・山口特別版と西日本新聞が競合関係にある。

関連項目

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