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[[数学]]あるいは[[物理学]]において'''ドット積'''(ドットせき、''dot product'')あるいは'''点乗積'''(てんじょうせき)とは、[[ベクトル]]演算の一種で、([[デカルト座標]]の入った)[[ユークリッド空間]] '''R'''<sup>3</sup>(あるいは '''R'''<sup>''n''</sup>)において標準的に定義される[[内積]]のことである。 == 定義 == 3 次元[[実数|実]][[ユークリッド空間]] '''R'''<sup>3</sup> の幾何学的ベクトル([[直線|有向線分]]から位置の概念を取り除いたもの) '''a''', '''b''' に対して、 '''a''' · '''b''' を :<math>\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = |\mathbf{a}|\,|\mathbf{b}|\cos \theta</math> と定めるとこれは一つの実数を定める。ただし θ はベクトルを有向線分と見なしたときに '''a''', '''b''' の成す角であり、|·| は'''ベクトルの大きさ'''(対応する有向線分の長さ)である。これはすなわち、有向線分 '''b''' を '''a''' 方向へ[[射影|正射影]]したものの大きさと '''a''' の大きさとの積である。これを '''R'''<sup>3</sup> における'''ドット積'''あるいは'''標準内積'''という。 また一方で、ベクトルを '''a''' = (''a''<sub>''x''</sub>, ''a''<sub>''y''</sub>, ''a''<sub>''z''</sub>), '''b''' = (''b''<sub>''x''</sub>, ''b''<sub>''y''</sub>, ''b''<sub>''z''</sub>) のように成分表示した場合、(第二)[[余弦定理]]を用いることで :<math>\mathbf{a}\cdot\mathbf{b} = a_x b_x + a_y b_y + a_z b_z</math> が成り立つことが示される。ゆえにこちらを定義とすることもある。 == ノルム == ベクトルの自分自身とのドット積の(正の)[[平方根]] :<math> ||\mathbf{a}|| := \sqrt{\mathbf{a}\cdot\mathbf{a}}</math> を'''ベクトルのノルム'''という。具体的にベクトルを '''a''' = (''a''<sub>''x''</sub>, ''a''<sub>''y''</sub>, ''a''<sub>''z''</sub>) と成分表示してやれば :<math> ||\mathbf{a}|| = \sqrt{a_x^2+a_y^2+a_z^2}</math> と書くことができる。これはベクトル '''a''' の "大きさ" である。 ドット積とノルムを使えば、2 つのベクトル '''a''' = (''a''<sub>''x''</sub>, ''a''<sub>''y''</sub>, ''a''<sub>''z''</sub>), '''b''' = (''b''<sub>''x''</sub>, ''b''<sub>''y''</sub>, ''b''<sub>''z''</sub>) のなす角は :<math>\cos\theta = \frac{\langle\mathbf{a}, \mathbf{b}\rangle}{||a||\,||b||}</math> から求めることが可能である。逆に[[ベクトルのなす角]]をこの式で定義すれば、その角はベクトルを[[有向線分]]と見なした場合のそれらの成す角そのものと一致する。 したがってドット積は(ノルムを通して)、通常のユークリッド空間における長さ、[[角度]]に一致する計量を矛盾なく定めるものである。つまり、'''R'''<sup>3</sup> でユークリッドの幾何学を考えることと、ドット積を定めることとが等価であることがわかる。 == 性質 == ドット積について # '''a''' · '''a''' ≥ 0, # '''a''' · '''a''' = 0 となることと '''a''' の成分がすべて零であることとが[[同値]]である。 # '''a''' · '''b''' = '''b''' · '''a''', # 任意の実数 ''k'', ''l'' に対し、(''k'''''a'''<sub>1</sub> + ''l'''''a'''<sub>2</sub>) · '''b''' = ''k''('''a'''<sub>1</sub> · '''b''') + ''l''('''a'''<sub>2</sub> · '''b''') なる性質が満たされる。ゆえにドット積は[[内積]]の一種であり、ベクトルのノルムは[[ノルム]]の一種である。 == 応用例 == [[力学]]において、物体に一定の[[力]] ''F'' [N] が作用して、''F'' と角度 θ だけずれた方向に物体が ''x'' [m] 移動したとき、なされた[[仕事 (物理学)|仕事]]は ''Fx'' cos θ [N.m] となる。これは力と変位を幾何学的なベクトルと見なした場合のドット積である。 == 関連項目 == * [[ベクトル解析]] * [[クロス積]] [[Category:ベクトル解析|とつとせき]] [[Category:初等数学|とつとせき]] [[Category:物理数学|とつとせき]] [[Category:数学に関する記事|とつとせき]]
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