ドキシサイクリン

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テンプレート:Drugbox ドキシサイクリン塩酸塩(doxycycline hydrochloride, DOXY)は、テトラサイクリン系に属する抗生物質である。グラム陽性菌・グラム陰性菌やリケッチアに対して優れた抗菌力を示す。その作用は、細菌体内におけるタンパク質合成阻害によるものである。マラリア原虫に対してもある程度の効果があり、予防内服、あるいは他の抗マラリア剤と併用して治療に用いられることもある。

腎不全があっても投与量を変更する必要のない唯一のテトラサイクリン系薬剤である。

経口投与による吸収は非常に速やかで、最高血中濃度到達時間は約3時間前後、血中濃度半減時間は12時間前後と長く、1日1回投与が可能である。食事により吸収は若干遅れるが、阻害されることはない。つまり、食事による最高血中濃度の低下はないということである。

禁忌:小児には歯牙黄染、骨・エナメル質形成不全を来たす為、原則禁忌。

肝障害のある人に対しては慎重投与が必要である。また、経口摂取時に食道に付着停滞することがあり、その場合まれに食道潰瘍を来すことがあるため、十分な量の水とともに服用することを心がけること。高齢者では、特に食道停留がおこりやすいので就寝前の服用は避ける方が望ましい。

ペニシリンセフェム系薬剤などのような殺菌的抗生物質とは異なり、ドキシサイクリンは他のテトラサイクリン系薬剤と同様に静菌的抗生物質である。患者の抵抗力・免疫力が十分でない場合には、殺菌的抗生物質との併用や切り替えが望ましい。

最近、ドキシサイクリンには抗生物質としての抗菌作用以外の作用も発見されている。一つは、変形性関節症(Osteoarthritis, OA)に対して軟骨厚の減少抑制効果が認められている。また、ドキシサイクリンは経口血糖降下薬であるスルフォニウム尿素薬(SU薬)の効果を増強するため、SU剤との併用は注意が必要であることが能書に明記されているが、これはドキシサイクリンがSU剤の効果を増強するとされるためである。これについて最近では、ドキシサイクリンがインスリン半減期を延長させたりエピネフリンの作用を阻害することにより間接的にインスリンの効果を増強させるためと考えられており、SU薬への直接的な相互作用ではなく間接的な増強作用とされている。また、膵外作用として末梢組織でのインスリン感受性を増強し糖代謝を改善させることも推測されている。

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