トルートンの規則

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トルートンの規則(トルートンのきそく、テンプレート:Lang-en-short)とは液体蒸発熱沸点の間に成り立つ法則のことである。アイルランド物理学者フレデリック・トーマス・トルートン (Frederick Thomas Trouton) が発見した。

液体の蒸発熱(1 モル当たりの蒸発エンタルピー)ΔH vap、沸点を絶対温度で表した値 T boiling とすると、ΔH vap/T boiling ≈ 85 J/(mol · K) となるというものである。

沸点においては気相液相平衡にあるから、1 モル当たりの蒸発ギブズエネルギー ΔG vap は 0 である。 すなわち、1 モル当たりの蒸発エントロピーを ΔS vap とすると、ギブズエネルギーの定義 G = H - TS より、

<math>\frac{\Delta G_\textrm{vap}}{T_\textrm{boiling}}

= \frac{\Delta H_\textrm{vap}}{T_\textrm{boiling}} - \Delta S_\textrm{vap} = 0</math> であるから、トルートンの規則は液体の種類によらず蒸発モルエントロピーが 85 J/(mol · K) と一定の値を示すことを意味している。

しかし、や低分子量のアルコールカルボン酸などのように強く水素結合している液体ではそれによって秩序だった構造が存在するため液体のエントロピーが低く、そのような秩序がない気相への相転移には余分にエントロピーの増加が必要となる。またメタンのように慣性モーメントの小さい分子では回転運動のエネルギー準位の間隔が広いために気体のエントロピーが低く、気相への相転移のエントロピーの増加は普通の液体に比べて少なくてよい。このような種類の液体はトルートンの規則が成立しない例外となる。


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