ディレクTV

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ディレクTV(DirecTV、ディレクティービー)は、主に北中南米地域においてサービスを行っている衛星放送サービス。ディレクTVグループ(The DIRECTV Group, Inc. テンプレート:Nasdaq)が運営している。会長はリバティメディアリバティ・グローバル会長で当社の議決権24.2%を保有する[1]ジョン・マローン

2014年5月18日、AT&TがディレクTVを485億ドルで買収することで合意したと発表した[2]


概要

2009年3月末の加入世帯数はアメリカ合衆国で1808万世帯、ディレクTVラテンアメリカが178万世帯(ディレクTVグループが93%を出資する「スカイ・ブラジル」、同じく41%を出資する「スカイ・メキシコ」と合わせて581万世帯)。

アメリカ国内では、95チャンネルの高精細度テレビジョン放送(2008年5月現在)や全米143地域の地上波ローカル局再送信(その地域のローカル局が視聴できない場合、追加料金を支払うことでニューヨークまたはロサンゼルスの系列局が視聴できる)を含む非常に多数のチャンネルを放送(w:List of DirecTV channels参照)している。そのため、5つの異なる経度、2つの周波数帯(Kuバンド、Kaバンド)の直接放送衛星を使用している。

現在でも圧倒的にMPEG-2のチャンネルが多いが、帯域の節約のために近年放送開始されたチャンネルはH.264で放送している。これに対応するためには5つのLNB(Low-noise block converter)を装備した18×20インチのパラボラアンテナと対応するチューナーが必要である。

MPEG-2で放送しているチャンネルはDSSという独自の放送方式を採用している。H.264で放送しているチャンネルについてはDVB-S2を採用している。

パッケージ

日本のCS放送とは異なり、ケーブルテレビ同様、基本パッケージに含まれているチャンネルは1チャンネル単位での契約はできず、追加契約が必要な有料放送(ペイテレビ)を契約したい場合も、基本パッケージへの加入が必要となる(外国語放送契約者向けにテレビショッピングなど最小限のチャンネルしか含まないものもある)。

NFLサンデーチケット

ディレクTVは開局当初より日曜午後に行われるNFLの全試合を視聴可能なパッケージ「NFLサンデーチケット」を提供している。アメリカ国内ではディレクTVがNFLと独占契約を結んでおり、ライバルのディッシュ・ネットワーク(Dish Network)やケーブルテレビにはない目玉サービスとしてアピールしている。2009年3月、NFLと2014年までの契約延長に合意した。

同様のパッケージとして、「MLBエクストライニング」(MLB)、「NBAリーグパス」(NBA)、「NHLセンターアイス」(NHL)、「NASCARホットパス」(NASCAR、ディレクTV独占)、「ESPNゲームプラン」(カレッジフットボール)、「ESPNフルコート」(カレッジバスケットボール)、「MLSダイレクトキック」(MLS)などがある。

沿革

日本展開と撤退

日本においては「株式会社ディレク・ティービー」がアメリカ・ディレクTV本社と、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ、松下電器産業(現・パナソニック)、大日本印刷三菱電機三菱商事徳間書店などが出資して設立され、1997年12月1日に本放送を開始した。番組の伝送には宇宙通信(現・スカパーJSAT)のSUPERBIRD C号機が利用された。この関係で、1998年9月30日に放送終了したアナログCS放送のスカイポートの加入者を引き継いでいる。

特色としては、番組と連動するデータ放送機能(インタラクTV)やプログレッシブ走査方式(映像信号参照)を標準で用意し、また映画スポーツアダルト分野などでディレクTVでのみ放送されるチャンネルも存在した。独立テレビ局東京メトロポリタンテレビジョンテレビ神奈川がディレクTVで全国に向けて同時放送していたのも特筆すべき点である。

経営面では、番組を供給する各チャンネルが自ら委託放送事業者の免許を取得して衛星のトランスポンダを借りる形態を取っているスカパー!と異なり、基本的にはディレク・ティービーに出資する大株主各社がそれぞれ委託放送事業者として100%出資の子会社を設立し、同子会社が番組供給会社からコンテンツを買い付ける形態を取っていた(ただしスター・チャンネルなど、スカパー!同様の放送形態を取っていたチャンネルも一部存在する)。

この形態ではプラットフォーム会社であるディレク・ティービー側が事実上の番組編成権を握ることができるため柔軟なチャンネルの入れ替えが可能になるほか、番組供給会社側にとっても番組販売の形を取るため、通常チャンネル立ち上げ当初(加入者数が損益分岐点を越える以前)に必要となる初期資本が不要となり経営リスクや参入障壁が低くなるという利点があった(スカパー!プレミアムサービスでも、2008年10月に放送を開始したハイビジョン放送を含めたH.264圧縮放送チャンネルでは、全てのチャンネルでスカパー・ブロードキャスティングスカパーJSATホールディングス子会社)が電気通信役務利用放送事業者として番組供給会社から供給を受けて放送している。また、スカパー!でも一部のチャンネルを除いてスカパー・エンターテイメントや在京キー局の子会社などが衛星基幹放送事業者として番組供給会社から供給を受けて放送している)。一方で、中間に入る形になる子会社は加入者数が伸びなかった場合にトランスポンダ料金等の経費負担による赤字をもろに被る形になるため、ディレクTV並びに大株主各社にとってはハイリスク・ハイリターンといえる形態だった。

株主系委託放送事業者
  • ディレク・ティービー・ジャパン株式会社(ディレク・ティービー43.4%、ディレク・ティービー・インターナショナル・インク16.98%、カルチュア・コンビニエンス・クラブ16.98%、松下電器産業5.66%、徳間書店5.66%)
  • シー・シー・シー・コミュニケーションズ株式会社(カルチュア・コンビニエンス・クラブ100%)※のち「プラネット・コミュニケーションズ株式会社」に社名変更
  • ワンダーウェーブ株式会社(松下電器産業50%、三菱商事50%)
    • ワンダーキャスト株式会社(松下電器産業100%)と株式会社スペースウェーブ(三菱商事100%)が合併
  • スーパーデジタル放送株式会社(徳間書店50%、三菱電機50%)
    • 徳間デジタル放送株式会社(徳間書店100%)、株式会社スーパーウェイ(三菱電機100%)が合併
  • ヒューズ・ジャパン・ブロードキャスティング株式会社(大日本印刷50%、ヒューズ・エレクトロニクス・ジャパン40%、ゼット10%)
    • (旧)ヒューズ・ジャパン・ブロードキャスティング(ヒューズ・エレクトロニクス・ジャパン80%、ゼット20%)と株式会社ギャラクシー・コミュニケーションズ(大日本印刷100%)が合併

※株主比率は1997年10月31日付[3]および1998年11月20日付[4]の旧郵政省による委託業務認定のリリースより

しかし、受信装置(IRD)が先行していたスカパー!と共有できず(当時電波産業会(ARIB)において共用受信機の仕様検討作業が進められ、一応規格は成立していた[5]ものの、実際には共用受信機は製品化されなかった)、またチャンネルの大半もスカパー!と同じであった上に、スカパー!の主要株主(ニューズ・コーポレーションソニーフジテレビジョン伊藤忠商事)系列の人気チャンネル(SKY sports(現J SPORTS)、FOX、フジテレビ721+739(現フジテレビONETWO)、アニマックス、Viewsic(現MUSIC ON! TV)、スペースシャワーTVなど)が提供されなかった事、無料チャンネルがガイドチャンネル一つのみで「スカパー大開放デー」のようなノースクランブルキャンペーンが極端に少なく契約してみないと判断出来ない敷居の高さ等の要因から加入者数は伸び悩んだ[6]

インフラ面でも、都内並びに大阪に複数のアップリンクセンター(地上局)を持っていたスカパー!に対し、ディレクTVでは宇宙通信の茨城県那珂郡(現・常陸大宮市)にある地上局1ヶ所で全てのアップリンクを賄うシステムとなっていたため、同地上局まで映像を伝送するための伝送設備や光ファイバ回線等の費用負担が重くのしかかった。さらに前記の番組供給形態が仇となり、大株主各社が被ることになる赤字も大きく膨らんだ。

これらの要因から、2000年3月、アメリカ・ディレクTVの当時の親会社ヒューズ・エレクトロニクスは事業継続を断念。スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現・スカパーJSAT)に出資するとともに、契約者をスカパー!に移管させ事実上統合、2000年9月30日をもってサービスを終了し、同年10月2日をもって廃局した。会社は清算され、全従業員は解雇。出向者は親会社への復帰となった。また、契約者のうちの希望する者にはスカパー!のチューナー・アンテナが無償提供された。

これに先立ち、2000年7月には郵政省(当時)がディレクTVの独自チャンネルをスカパー!に移行する事業者に対して委託放送業務の認定を行っている[7]

2000年7月に認定された委託放送事業者

日本におけるディレクTVの広告活動

1997年秋から1999年末にかけて、ディレクTVのテレビCMが日本の地上波民放テレビ局などで大量オンエアされていた。サービス開始時のCMキャラクターはアーノルド・シュワルツェネッガーであった。

このうち1999年夏から秋にかけて放送された「一家クギづけ編」(父、母、娘、祖父の4人家族がディレクTVで一人ずつ異なった自分の趣味にあったチャンネルを楽しみ「おとうチャンネル」「おかあチャンネル」等と順に紹介していくもの)が強烈なインパクトを残しているが、このCMについては、かつて福岡放送(FBS、日本テレビ系)が自局のキャンペーンCMに「おとうチャンネル」「おかあチャンネル」などとついた物を流していたことがあり、自局との混同を避けるため、FBSではこのディレクTVのCMの放送を断った事例がある。なお、一部ディレクTV参加チャンネルでも放映されたが、ディレクTVに参加しなかったスペースシャワーTV(音楽専門、当時はスカパー!のみ)でもCMが放送されていた。

また、スカイマークエアラインズ(当時)の旅客機にもディレクTVのロゴが張られていたことがあり、こうした広告活動がよく行われていた。

末期は地上波テレビ・ラジオの番組に提供してCMを流していたが、冠スポンサーになっていた「Across The View」(J-WAVE)では撤退のニュースが流れた当日もCMが流れていた。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Asbox
  1. Materials for DIRECTV Special Meeting on November 19, 2009
  2. テンプレート:Cite news
  3. http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/housou/971031j704.html
  4. http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/housou/981120j701.html
  5. ARIB STD-B16「CSデジタル放送用標準共用受信機」。現在[1]より仕様書(PDF)がダウンロード可能。
  6. TSUTAYAを中心に携帯電話のような機器を格安販売若しくは無料提供といった所謂「タダ配り」も展開したが、やはり番組内容は契約しないと判断出来ないため起爆剤とはならなかった
  7. 当時の郵政省のリリース