テンゲン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンゲン(Tengen Inc.)は、アメリカのコンシューマーゲームメーカー。社名は「アタリ」同様、囲碁用語の天元よりとられているが、アタリの創設者であるノーラン・ブッシュネルとは関係がない。

アメリカ本社

Tengenはアメリカのアーケードゲーム会社・アタリゲームズのコンシューマ部門を担当する子会社として1985年に設立された。アタリゲームズ社は元々アタリ社という名前で、アーケード部門とコンシューマ部門の両方を持っていたが、赤字続きのコンシューマ部門をアタリコープとして別の会社に売却し、アーケード専業メーカーアタリゲームズとなった際、一時的にコンシューマから撤退することになっていた。経営を立て直した後、新たにアタリゲームズのコンシューマ部門として設立した子会社がTengenである。

1986年、任天堂がNintendo Entertainment Systemを引っ提げてアメリカ市場に進出すると、テンゲンは直ちに参入を決定。『ガントレット』など、親会社の人気ゲームの移植作を投入しようとした。

しかし製造ロット数などを巡って米国任天堂(Nintendo of America. NOA)との確執が生じ、テンゲンはNESのリバースエンジニアリングを行って、独自にNES用ソフトを販売。実際には特許当局からNESチップのコードを盗用していた。これに対してNOAも契約違反やコード盗用などを挙げての訴訟に踏み切り、『テトリス』の販売権なども絡んで、対立は90年代前半まで続いた。これは結局任天堂に有利な条件で和解する。アタリショックから立ち直ろうとしたアタリゲームズはこれで再度傾き、挙句にはセガメガドライブ用に準備していた『テトリス』がお蔵入りになるという波紋も呼んだ。

1994年、アタリゲームズの親会社・タイムワーナーの方針で、コンピューターゲームなどのインタラクティブ・メディア部門が「タイムワーナー・インタラクティブ」(TWI)の名称の下にグループ化される際、テンゲンはアタリゲームズに吸収された。

日本法人

日本において「テンゲン」という場合、Tengen Inc.の日本法人「株式会社テンゲン」(Tengen Ltd.)を指す。

ゲーマーに注目されたのは、1990年、『ハードドライビン』でメガドライブに参入してからである。その最大の理由はマニュアルにあった。取扱説明の任務を果たしつつも、どこかでギャグや軽口を入れずにはおけないテンゲンの砕けたマニュアルは、無味乾燥な文章が当たり前だった従来のマニュアルの常識を覆した。『Insert a Coin』というメッセージを、『ハードドライビン』では『コインをいれよ 1クレジット』、『スタンランナー』(S.T.U.N.Runner)では『コインいっこいれる』と訳すなど、直訳的かつどこか外した日本語テロップに愛着を抱くアタリゲームズ製業務用機のファンや、メガドライバーと呼ばれる、他より一風変わっていることを美徳とする熱狂的ユーザーから支持を集めた。特に絶頂期にはほぼ月1本に近いペースでメガドライブ用ソフトを発売しており、マニュアルに読者コーナーが存在した事は特筆に値する。

もちろん、マニュアルやテロップの面白さだけに頼る事はなく、メガドライブ時代には『ハードドライビン』、『ガントレット』、『マーブルマッドネス』、『V・Ⅴ』など、ゲーマーを納得させる作品が居並んでいた。とりわけ『ガントレット』と『マーブルマッドネス』は日本法人が直接移植に携わっており、今日でもメガドライブの名作ソフトに名を連ねる。

1994年、テンゲン日本法人は社名を「株式会社タイムワーナーインタラクティブ(TWI)」に改めると共にセガサターンプレイステーションに参入。日本オリジナル作品の制作も開始した(第1作は『TAMA』)。しかし、1997年、『モータルコンバット』のミッドウェイやピンボールの老舗メーカー・バリーを傘下に持つWMSインダストリーズがタイムワーナーに代わってアタリゲームズの親会社となった。同社は「日本に開発拠点を置くメリットがない」としてTWI日本法人を解散した。最終作はアクションゲーム『心霊呪殺師太郎丸』。開発中だった『レイディアントシルバーガン』はトレジャーが引き継いで完成させた。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ