テアニン

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テンプレート:Drugbox テアニンL-Theanine)は、に多量に含まれるアミノ酸の一種でグルタミン酸誘導体

植物の中でもチャノキCamellia sinensis)とそのごく近縁種、そしてキノコ(菌類)の一種であるニセイロガワリBoletus badius)にしか見つかっていないアミノ酸であり[1] [2] 、茶の旨味成分の一つである。テアニンは乾燥茶葉中に1~2%含まれ、特に上級なお茶に多く含まれている。また、テアニンは茶の等級に関わらず、全遊離アミノ酸の約半量を占めている。

1950年に京都府立農業試験場茶業研究所(現在の京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所(宇治茶部))の所長酒戸弥二郎により玉露から発見された[3]のち分離精製されて構造が明らかになり、日本では1964年7月に食品添加物として指定された。テアニンはお茶に含まれるアミノ酸であることから、茶の旧学名”Thea sinensis”にちなんで“Theanine(テアニン)”と命名されたといわれている。

テアニンは茶葉が含有する窒素の過半を占めており、チャノキが、吸収したアンモニア態窒素を植物体にとって安全な形態にして、蓄積するために合成している物質と考えられている。茶でテアニンは根で生成され、幹を経由して葉に蓄えられる。テアニンに日光があたるとカテキンに変化する。特にテアニンを多く含有する玉露の原料となる茶葉は、収穫の前(最低二週間程度)日光を遮る被覆を施される。これにより、煎茶の旨味の原因とされるテアニンなどのアミノ酸が増加し、逆に渋みの原因とされるカテキン類(いわゆるタンニン)が減少する[4](例・玉露碾茶抹茶)。

生理効果

テアニンは臨床試験において、様々な効果が確認されている。

テアニンを摂取することにより、リラックスの指標であるα波の発生が30-40分後に確認されている。50mg摂取では不安傾向の低い人に、200mg摂取では不安傾向の高い人においてもリラックス効果が認められている[5]

抗ストレスについても同様に効果が確認されている。人にクレペリン型暗算課題でストレスをかけ、ストレス負荷により変動する心拍数、唾液中の免疫グロブリンA、主観的ストレス感をみたところ、テアニン摂取でストレスの抑制が認められている[6]

睡眠に関しては、テアニン摂取により睡眠の質の改善が報告されている。中途覚醒の減少が認められたほか、被験者へのアンケートにより起床時の爽快感、熟眠感、疲労回復感の改善が認められている[7]

月経前症候群(PMS)に関しては、PMS時のイライラ、憂鬱、集中力の低下等の精神的症状を改善することが報告されている[8]。 その他にもカフェイン拮抗作用、血圧降下作用、記憶学習能力の向上、制癌剤の増強効果、脳血管障害に対する効果などが報告されている。

テアニンは、血液脳関門を通過でき[9]、精神に影響を与える作用がある[10]。また精神や肉体的ストレスを減少させ、カフェインとの相乗効果もあいまって認知活動や気分の改善もみられる[11]

構造的にはグルタミン酸(興奮性の神経伝達物質)と関係はあるものの、テアニンのシナプス後部細胞のグルタミン酸レセプタとの親和性は低い。むしろ主な効果は抑制神経伝達物質のGABAを増加させているように見受けられる[12]。 テアニンは脳内のドーパミンレベルを上昇させ、グルタミン酸レセプタ(AMPA型NDMA型)、カイニン酸レセプタへの親和力性は低い。[13]

セロトニンにかかわる影響は、学者の中でも議論となっている。同様な実験法を用いるにもかかわらず、研究によって脳内で増加を示したり、減少を示すからである[9][14][15]。 高血圧マウスを用いて注射した研究では、著しく5-ヒドロキシインドール類(セロトニンの分解物)が減少していたことが明らかになった[16]

研究者は、テアニンがグルタミン酸の興奮毒性を防ぐかもしれないとも予測している[13]。また、テアニンは脳内のアルファ波の生成を促進する[10]

ラットの研究を通じて、非常に高濃度テアニンを繰り返し使用しても心身ともに無害であることが明らかにされている[17]アメリカ食品医薬品局 (FDA)は、食品添加物としてテアニンをGRAS (一般に安全と認められる)に分類している。[18] 一方、ドイツの連邦リスク評価研究所 (BfR) は単離されたテアニンを飲料に添加することに反対している。[19]

またあるラットの実験では神経系の変性・衰退を防止する効果が見られた。テアニンは、脳梗塞を繰り返すことで引き起こさせたラットの記憶障害を防止するという。[20]

統合失調症の治療において、投薬中の抗精神病薬にテアニンを併用することで、いくつか症状が減少することが、プラセボ対照試験で示されている[21]

免疫系への効果について、テアニンはガンマ・デルタT細胞の防衛機能を増強することで、感染に対する生体の免疫反応を助けるかもしれない。この研究は、被験者は4週間にわたって毎日600ccのコーヒーまたはお茶をのむものである。結果、血液の分析では抗菌タンパク質の産生はお茶を飲む群のほうが5倍高まっており、より高い免疫反応を示すものであった。[22]

利用

ガムやキャンディーなどの菓子類、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルトなどの冷菓清涼飲料水やニアウォーターなどの飲料、およびサプリメントや美容食品などに応用されている。また、テアニンは緑茶の呈味改善剤として使用されているが、緑茶以外の様々な食品の苦味やえぐ味も抑えるので、風味の改善に用いられている。

サプリメント利用

日本国外の飲料メーカーではテアニンを含む飲料を販売しているが、その宣伝は精神集中を助けると謳うもの、リラックス・鎮静を謳うもの、まちまちである。

日本国外のサプリメントとしてのL−テアニン原料として、日本の太陽化学[23]の製造しているサンテアニンがよく用いられる。原料表示にL-Theanine (Suntheanine) と記載されていることが多い[24]。 製造過程では、チャノキ由来の原料は用いず、微生物(Pseudomonas nitroreducens)の作るグルタミナーゼ酵素を利用した発酵によって合成されている。[25]

脚注

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外部リンク

  • テンプレート:Cite journal
  • アマゾンの熱帯雨林に生育するセイヨウヒイラギ の仲間、en:Ilex guayusaもテアニンを含むという。
  • 茶業研究所のあゆみ、京都府農林水産技術センター 農林センター 茶業研究所(宇治茶部)
  • L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響 、小林 加奈理ほか、日本農芸化学会誌、Vol. 72 (1998) No. 2
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  • 9.0 9.1 テンプレート:Cite journal
  • 10.0 10.1 テンプレート:Cite journal
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  • 13.0 13.1 テンプレート:Cite journal
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  • Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T. Effect of theanine, γ-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats. Neurochem Res. 1998;23(5):667-73.
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