トゥキディデス
トゥキディデス(古典ギリシア語の母音の長短を考慮して音訳するとトゥーキューディデース。その他、トゥキュディデス、ツキジデスなどとカナ表記される。希:Θουκυδίδης、ラテン文字表記:Thukydides/Thucydides、紀元前460年頃 - 紀元前395年)は、古代アテナイの歴史家で、オロロス(Olorus)の子である。
代表作はペロポネソス戦争を実証的な立場から著した『戦史(ペロポネソス戦争の歴史)』(テンプレート:Lang-grc)である。トゥキディデスはこの戦争に将軍として一時参加したが、紀元前422年のトラキア・アンフィポリス近郊での失敗により失脚、20年の追放刑に処された。このためスパルタの支配地にも逗留したことがあり、この経験によって双方を客観的に観察することができたとも言える。
なお今もって理由は不明だが、トゥキュディデス『戦史』の記述は紀元前411年の記述で止まった(それ以降も彼は生き続けたので、少なくとも中断は死によるものではない)。後に哲人ソクラテスの弟子クセノポンが、中断部分から筆を起こし紀元前362年までを記録した『ギリシア史(ヘレニカ)』(テンプレート:Lang-grc)を著し、ペロポネソス戦争の記録を完成させた。
トゥキディデスは先人の歴史家ヘロドトス『歴史(ヒストリア)』(テンプレート:Lang-grc)と対比される。特徴として同時代の歴史を扱った著作では、特定の国家を贔屓(ひいき)せず中立的な視点から著述していること、政治家・軍人の演説を随所に挿入し歴史上の人物に直接語らせるという手法を取っており、なかには裏付けがあるとは思えない演説や対話も入っていることが挙げられる。演説では、開戦一年目の戦没者合同追悼式に際し、ペリクレスによる演説が最も名高い。
日本語訳
- 『トゥーキュディデース 戦史』 久保正彰訳、岩波文庫(上中下)、1966年-1967年、復刊1997年、2014年ほか
- 『トゥーキュディデース 歴史』 小西晴雄訳、筑摩書房〈世界古典文学全集 11〉、1971年、復刊1982年、2005年ほか
- 改訂版 『トゥキュディデス 歴史』 ちくま学芸文庫(上下)、2013年10月
- 『トゥキュディデス 歴史 (I・II)』 藤縄謙三訳(I)、城江良和訳(II)、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2000年-2003年
伝記研究
- 田中美知太郎 『ツキュディデスの場合 歴史記述と歴史認識』 筑摩書房、1970年
- 『田中美知太郎全集 第12巻 (増補版)』 筑摩書房、1988年-解題柳沼重剛
- F.M.コーンフォード 『トゥーキューディデース 神話的歴史家』
- 後半部に、「ツキジデス<戦史>における叙述技法の諸相」