チューリッヒ工科大学

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スイス連邦工科大学チューリッヒ校(スイスれんぽうこうかだいがくチューリッヒこう、テンプレート:Lang-de)は、スイス連邦チューリッヒ市にある自然科学と工学を対象とした単科大学である。1855年に創設され、これまでに21名のノーベル賞受賞者を輩出している。

名称

一般にはチューリッヒ工科大学などと呼ばれることが多い。地元チューリッヒ(ドイツ語圏)では、Poly (ドイツ語での旧称であるEidgenössisches Polytechnikumに由来) や、ETH、ETH Zürich (いずれも現在のドイツ語の名称に由来) などとと呼ばれることも多い。とくに、ETH (ドイツ語では「エーテーハー」に近い発音になる)という呼称は大学の公式HPなどでも広く使われている。便宜上、本記事でもスイス連邦工科大学チューリッヒ校を指してETHの語を用いることにする。

概要

ETHはヨーロッパ有数の工科大学であり、さまざまな大学ランキングの上位に入ることが多い[1]。また、フランス語圏のローザンヌには姉妹校であるスイス連邦工科大学ローザンヌ校 (EPFL)がある。ETHはIDEAリーグ国際研究型大学連合の創設時のメンバーであり、Top Industrial Managers for Europe の一員でもある。 建築学科、土木工学科、機械工学科、化学科、林学科に加えて、多目的学科(数学・自然科学・文学・社会学・政治学を包括)があり、レントゲンアインシュタインなどが学んだ。アインシュタインは、大学に残って助手になりたがったが採用されなかった(後に教授職についている)。

また、ソルトレイクシティオリンピックで男子スキージャンプ・ノーマルヒルとラージヒルで金メダルを獲得したシモン・アマン2006年より在学している。

沿革

ETHは1854年にスイス連邦共和国政府によって設立され、教育機関としてはその翌年から機能しはじめた。創設時の名称はEidgenössische Polytechnische Schuleである(「国立技術専門学校」という意)。当初は建築学科、都市工学科、機械工学科、化学科、林業学科、多目的学科(数学、自然科学、文学、社会=政治学を包括)の6つの学科より構成されていた。ETHは国立の単科大学であり(スイス政府の直属の付置機関でもある)、チューリッヒ市街地のキャンパスのすぐ隣には州立のチューリッヒ大学が立地している。 ETH設立の際には、その妥当性を巡って議論が分かれた。自由主義者は「国立大学」の設立を政府に要求した。一方、保守的な勢力は自由主義者の考えには妥協せず、スイス国内のすべての大学は州立であるべきだと主張した。設立当初、ETHはチューリッヒ大学内の建物に間借りしていた。

1909年に、ETHの教育課程は大学のものに沿った形に再構成され、博士号授与の権利が与えられた。1911年に現在の名前になった。1924年にはもう一度学科の再編成が行われ、12の学科に再編された。現在、ETHには16の学科がある。

1993年からは、ETHとEPFL、そのほか4つの国立研究所をあわせてETH領域という政府直属の付置機関となった。

評価

ETHは常に世界のトップレベルの大学に位置づけられる。有名な大学ランキングでは毎年スイス国内の大学としては最上位に位置づけられ、ヨーロッパ圏の上位5校、全世界の25校にランク入りすることが多い (参考: 2008年の上海交通大学のランキング)。また、SwissUP Ranking スイス国内の大学ランキングドイツ語圏の大学ランキングにおいても、ETHは常に自然科学分野・コンピューター分野で1位になることが多い。

ETHはこの5年連続で、タイム誌の大学ランキングで50位以内に入った。現在のところ、工学とIT分野では10位、自然科学の分野では12位につけている。去年までのタイム誌の大学ランキングの中でのETHの順位の変動は以下の通りである。

Year 総合順位 (変動)
2005 10位
2006 24位 (テンプレート:Decrease 14)
2007 42位 (テンプレート:Decrease 18)
2008 24位 (テンプレート:Increase 18)
2009 20位 (テンプレート:Increase 4)

上海交通大学が作成する世界研究大学ランキングでは、ETHはヨーロッパ圏の大学では4位に、全世界の大学で化学分野では6位、数学・自然科学分野では9位にランクされている[2]

歴史的に、ETHは化学、数学、物理学の分野で評判が高かった。これまでに、卒業生・教官のなかから21人のノーベル賞受賞者を輩出している。最近のノーベル賞受賞者は、2002年に化学賞を受賞したクルト・ヴュートリッヒである。最も有名なETH出身の受賞者はアルバート・アインシュタインであろう。その他の著名な受賞者にはレントゲンKhoranaフォン・ノイマンなどがいる。

西ヨーロッパにおけるフィールド生物学、化学、物理学、数学の分野の大学院教育についての調査では、ETHは突出して優れた大学院教育を行う3校のうちの1校に選ばれた(ほかはインペリアル・カレッジ・ロンドンケンブリッジ大学の2校)。また2009年度には、ETHは最先端の研究のための助成金を13億スイスフラン(およそ12億ドル) 獲得している。

入試と教育

スイスの他の公立大学と同様に、ETHは学部生を選抜する入試を行わない。スイス国内の大学入学資格をもつすべてのスイス市民に対して門戸を開放している。また、GCSEなどの試験で一定の成績をあげたり、一定の学力を持った留学生に対しても門戸を開放している。しかし、ほとんどの留学生は簡略入学試験 (Reduced entrance exam)か総合入学試験 (Comprehensive entrance exam)のどちらかに合格する必要がある。とくに総合入学試験は「高等学校卒業」などの学歴がない志願者でも受験することができる[3]

1年度は2つのセメスターに分けられる。入学初年度の学生には試験はまったく課せられない。しかし、初年度の第2セメスター終了後の夏に各コースが定めるBasisprüfung(「基礎試験」の意)と呼ばれる試験に合格しなければならない。この試験で平均点に届かなかった学生は留年して再び翌年の基礎試験を受けなければならない。初めて基礎試験を受けた学生のうち50%以上が不合格となる。そして、そのほとんどはそのまま退学してしまう。高年次の試験も基礎試験と同様のシステムで行われるが、合格率は比較的高い。学部課程の規定の在学期間は6セメスター、修士課程の在学期間は3セメスターであり、各課程の最終セメスターでは論文を執筆しなければならない。

ETHは数学教育に力を入れており、すべての学科において論理力を鍛えるための大量の数学教育が施される。また、学部生の授業は主にドイツ語で行われるが、修論生と卒論生の教育は英語で行われる。

キャンパス

ETHは2カ所のキャンパスを持つ。大学本部はチューリッヒ市街地に1860年代に建てられた。その後、ETHの発展とともに敷地は拡大していった。 その中心部はチューリッヒ市街地に点在する多くの建物と研究所よりなる。大学本部は道を挟んで、チューリッヒ大学のまさに目と鼻の先にある。

地理的な制約のために、ETHの拡大につれて中心市街では手狭になっていった。そこで、1964年から1976年にかけて、チューリッヒ郊外のヘンガーベルクに新しいキャンパスを造成した。最近では2003年に、キャンパスの大規模な増築がなされた。そして、ヘンガーベルクには 物質科学建築学都市工学物理学生物学化学などの学科の建物がある。

学生生活

ETHの学生たちはスイスで高等教育を受ける学生の中で最も忙しい学生であろう。[4]学部生の過密なカリキュラムはスイスの他の大学に比べておよそ2倍の授業数からなっている。ETHには100を越える学生組合があり,学生組合はさまざまなイベントを企画する。隣のチューリッヒ大学のイベントにはよくETHの学生たちが参加し,同様にETHのイベントにもチューリッヒ大学の学生が参加する。ETHの学生組合でも有名なVSETHはPolyball(工科大学球技大会の意)やPolyparty(工科大学学祭の意)、Erstsemestrigenfest(第一長期休暇フェスティバルの意)など、ひろく一般から参加者を募る大規模なイベントを開催している。Erstsemestrigenfestなどはとりわけ規模の大きい会場で開かれることもあり(チューリッヒ空港など)、多くの若い学生がイベントを楽しむ。

学術スポーツ組合(ASVZ)は80もの運動部からなっている。最大のスポーツイベントはSOLA-Stafetteという14区間からなる120km以上を走る駅伝である。2009年のSOLA-Stafetteには780チームが参加した。[5]

姉妹校


著名な卒業生

脚注

  1. "Times Higher Education" テンプレート:En iconテンプレート:出典無効
  2. "ETH moves up a rank" テンプレート:En icon
  3. "Entry for international students" テンプレート:De icon
  4. "Willkommen auf Students.ch" テンプレート:De iconテンプレート:出典無効
  5. SOLA-Stafette 2009

関連項目

外部リンク

テンプレート:国際研究型大学連合テンプレート:Link GA