ターザン

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ターザン(英:Tarzan)は、アメリカ小説エドガー・ライス・バローズが創造した架空のキャラクター。小説ターザン・シリーズ、及び映画化作品の主人公を務めるが、脇役として登場する事もある

本項では、まず小説版について説明する。映画版については、#映画、TVのターザン以降を参照。なお、日本語表記はハヤカワ文庫特別版SFに準じる。


小説版(オリジン)

小説版は多くの映画と違い、知的な面を持っている(端的には、複数の言語を自在に操る)。また、文明批判の目も厳しい。

本名はグレイストーク卿ジョン・クレイトン。イギリス人であり、その称号の示す通り貴族である(ただし、命名されていないため、本名は父親の名をそのまま受け継いでいる)。

なお、脇役として登場するのは、外伝的作品『石器時代から来た男』と、第4巻『ターザンの逆襲』、少年ものの『ターザンの双生児』2作("Tarzan and the Tarzan Twins"と"Tarzan and the Tarzan Twins with Jad-Bal-Ja, the Golden Lion")である。

特徴

ターザンは野生児として育ったが、由緒正しい貴族の生まれである。彼の特徴は、外見(外面)と内面の両方に渡る。詳細は後述

外見、能力の特徴
筋骨たくましい半裸の男性であり、怒ると額の古傷が赤く浮かび上がる[1]。もっとも、傷の存在は初期に顕著なものの、次第に忘れられていく。
超人的な戦闘力を持ち、ナイフロープだけ、あるいはナイフだけでライオンを倒す。素手で類人猿を殺したこともある。
視覚、嗅覚、聴覚が鋭い。味覚に関しては独特で、調理済みの肉(つまり料理)よりも生肉を好み、味には無頓着である。
複数の言語(人間以外の言語を含む)に通じているほど、頭脳が明敏である。
内面
野性と文明社会のそれぞれに惹かれつつも、そのどちらにも馴染みきれない、という部分を持っている(「イギリス貴族の息子にして野生児」という部分が、既に魅力と矛盾を秘めている)。

当初は彼と家族に成長(経年)が訪れていたが、孫息子の登場(第10巻『ターザンと蟻人間』(1924年))を境に、ターザンから経年(老化)の兆候が見られなくなり、不老長寿、あるいは不老不死の様相を示してくる(両親の船出が1888年5月[2]、結婚がその3ヶ月前[3]である事から、ターザンの生年は1889年、ないしは1888年である。後述フィリップ・ホセ・ファーマーは1888年説を採っている模様)。肉親の出番も見られなくなっていく。

なお、ターザンのモデルについては、ロムルスレムスローマ帝国の建国にかかわる兄弟で、「狼に育てられた」という伝説を持つ)が、参考作品としては『ジャングル・ブック』(ラドヤード・キップリングの小説)が挙げられている。詳細はターザン・シリーズ#参考作品を参照。

2大シリーズとの対比

他のバローズの長期シリーズである火星シリーズ(1912年~)、ペルシダー・シリーズ(1914年~)[4]の場合、主人公はその世界を紹介する側面がある。このため、ジョン・カーター(火星(バルスーム)大元帥)、デヴィッド・イネス(ペルシダー皇帝)は、性格や思考は保守的(中立的)であり、物語の中では読者の分身として驚き役を示している[5] 。これに対し、ターザンは彼自身が驚異として読者の前に登場する(つまり、タイトル通り、各シリーズの主役はバルスーム、ペルシダー、アムター(金星)、ターザン、といえる)。ただし、第8巻以降は、ほぼ「秘境もの」に転換し、読者の前には新たな世界が驚異として登場する。

また、ヒロインとの関係も象徴的である。3大シリーズの場合、物語は初期において一度完結する(火星は3部作、本シリーズとペルシダーは2部作)。火星、ペルシダーの第1巻では、ヒーローとヒロインは心を通わせるものの、何らかの物理的な要因で引き裂かれてしまう(火星の場合は事故、ペルシダーの場合は狡猾なライバルの邪悪な企み)。しかし、ターザンとジェーンは心を通わせあうものの、それぞれの思惑(心理的要因)によって別れることになる(ジェーンには迷いがあり、ターザンは相手を愛するが故に別れを選ぶ)。この辺りにも、ターザンというキャラクター(物語)の持つ複雑さが表れている。

とはいえ、火星、ペルシダーは最後までデジャー・ソリス、ダイアンがヒロインで有り続けたのに対し、ジェーンの登場はほぼ第10巻までで、以後は『ターザンと女戦士』(1936年~1937年)に「妻」が短い出番を与えられているのみ、となっている(名前すら明記されていない)。余談ながら、バローズは離婚を経験している。

経歴・交友関係

ターザンの能力や家庭、友人、血縁など。

能力

身体能力
ジャングルに適応した、超人的な体力・技術を有する。視覚、聴覚、嗅覚は鋭く、野生動物並みである。また、木立を伝って移動する、という「猿人」に相応しい能力を持つ。
ライフルなどの近代武器よりも、原始的な武器を好む。具体的には、狩猟ナイフ、ロープ、弓矢が、標準的な装備である(先の2点は18歳未満から使用しており、後の2点は18歳から使用。結果、成人後に会得した銃火器よりも馴染んでいるため、信頼性が高い)。
10歳の時点で、既に腕力は並みの男性と互角であり、運動神経はスポーツの達人クラスに達していた(例えば、木立から木立へ7メートルも飛ぶ)。
言語
まず、類人猿の言語(口語)を習得。この言語は、他の類人猿の部族でも使われている他、オパルの住民(アトランティスの植民地の末裔)や、ペルシダーのサゴス族(ゴリラ人間、と呼ばれる類人猿的存在)も使用している。
次に英語(文語のみ)を独学で習得(父が年単位ので滞在を見越して、子供の教育用に絵本を用意し、また書物や辞書も残っていたため)。活字体は覚えたが、筆記体は未習得。相手がいないため、口語も習得していない。なお、父親の日記はフランス語で書かれていたため、読めなかった。
成人後、フランス語の口語をポール・ダルノー中尉(フランス海軍所属)から教わる。その後、英語(口語)を習得したが、この時点では英語の口語は不得手だった(以上、第1巻)。
以後、ラテン語[6]アラビア語[7]、ドイツ語[8]の他、スワヒリ語などアフリカの原住民の複数の方言など、数カ国語を習得する。

出自

父は英国貴族、グレイストーク卿ジョン・クレイトン(Lord Greystoke, John Clayton)。母はアリス・ラザフォード(結婚時、まだ10代だった)[9]。夫妻は赴任先である英領西アフリカに向かう途中、船員の反乱に遭遇し、アフリカの西海岸に置き去りにされた。

ターザンは夫妻が海岸に作りあげた小屋で生まれ、彼が1才になった時に母親は亡くなった。父は類人猿カーチャク(Kerchak)に殺されたが、ターザンは類人猿カラ(Kala)に救われた。カラは子供を亡くしたばかりであり、群れのリーダーであるカーチャクに逆らい、ターザンの養母となった[10][11][12]。ちなみに、「ターザン」とはカラがつけた名前で、類人猿の言葉で「白い肌(White-Skin)」を意味する。成人後、指紋鑑定でグレイストーク卿の息子と判明(第1巻終盤にて)、第2巻終盤以降は父の名を受け継いだ。

なお、第1巻冒頭では、「主要人物には架空の名前を用いる」と宣言されている[13]

ターザンの家庭

グレイストーク卿ジョン・クレイトン(故人)。
アリス・ラザフォード(故人)。
養母
カラ(類人猿。死別)。
ジェーン・クレイトン(旧姓ポーター)。アメリカ人。第1巻で登場し、第2巻で結ばれる。
息子
ジャック・クレイトン。シリーズでは第3巻『ターザンの凱歌』から登場し、第4巻『ターザンの逆襲』では主役を務める(正確には、シリーズの外伝的な作品『石器時代から来た男』の第1部が初出である)。
成長後は、コラク(類人猿の言葉で「殺し屋」)と呼ばれる勇ましい戦士となった。メリームを妻としている。
息子の妻
メリーム。初登場時は第4巻のヒロイン。本名はジャンヌ・ジャコー(ただし、結婚前の姓名)。
アラブ人の養女としてジャックと知り合い、恋に落ちる。実は7歳の時に誘拐されたフランス人(フランス王家の血筋にあたる)。
第10巻『ターザンと蟻人間』に登場。ジャックとメリームの子供。男の子、というだけで名前は不明[14]
ライオン
名前はジャド・バル・ジャ(パル・ウル・ドンの言語で「黄金のライオン」)。第9巻『ターザンと黄金の獅子』から登場。
幼い頃、ターザンに拾われて養育され、心強い友人として成長した。ターザンの命令には忠実に従う。パル・ウル・ドンからの帰路に拾ったため、ターザンはその言語で名前をつけた。
家政婦
筆頭はエスメラルダ。大柄な黒人女性で、第1巻で初登場。この時はポーター家の家政婦であり、ジェーンの母代わりといえる存在だった(ジェーンの実母は、幼少時に死亡)。
ジェーンの結婚後は、グレイストーク家の家政婦となり、ジャック誕生後は乳母となっている[15]。第3巻では、ターザンとジェーンが不在のため、機転を利かし、独断でジャック誘拐事件を解決へ導いている。
部下の部族
ワジリ族。勇敢で知的な黒人の一族で、第2巻から登場。ターザンと意気投合し、共闘した仲。
前族長(ワジリ)の死後、ターザンを族長として迎え入れ、忠実な部下となった。

ターザンの親類、縁者

ディックとドック
ディック、ドックとも、ターザンの遠縁にあたるが、ドック自身とターザンに直接の血縁関係はない。「ターザンの双生児 (The Tarzan Twins) 」と呼ばれる少年たちで、実際は従兄弟同士。双子ではないが、双子のようによく似ている(彼らの母親が、アメリカ生まれの双生児だった)。
ドックの母はアメリカで結婚し、ディックの母はイギリス人(ターザンの遠縁に当たる)と結婚してイギリスに移り住んだ。2人は、同年同日生まれの子供たちを同じ学校で教育を受けさせようとし、彼らが14歳になった時、イギリスの名門校に入学させた。
髪の色の明るいドックは「ターザン・タル(白)」、髪の色が黒いディックは「ターザン・ゴ(黒)」と呼ばれる[16]
少年向け短編2編("Tarzan and the Tarzan Twins"と"Tarzan and the Tarzan Twins with Jad-Bal-Ja, the Golden Lion")で主役を務める。アメリカではターザン・シリーズには含めないが、ハヤカワ文庫版では第11巻『ターザンの双生児』として刊行されている(2編とも収録されている)。
ウイリアム・セシル・クレイトン
ターザンの従兄弟。第1巻、第2巻に登場。彼の父はグレイストーク卿(ターザンの父)の弟で、グレイストーク卿失踪後、その後継者となっていた。父の死後、彼がグレイストーク卿を引き継いでいる。ターザンの恋敵でもあった。
13世紀のグレイストーク卿
未訳の『トーンの無法者』("The Outlaw of Torn")に登場。ターザンの先祖にあたる。
『トーン~』はバローズの第2作であり、第3作がターザン・シリーズの第1巻である。

友人

前述のダルノー中尉は、第1巻で親友となった。交際は以後も続き、第4巻『ターザンの逆襲』ではフランス海軍の提督となっており、メリームと親族の再会に一役買っている。しかし、『ターザンと禁じられた都』(1938年)で久しぶりに登場した際は、海軍大尉だった。

石器時代から来た男』には、アメリカ人バーナード(バーニー)・カスターと、その妹のヴィクトリア・カスター、彼らの友人でルータ王国(バローズの創り出した架空の国家)の軍人であるバッツォー中尉が登場した。ヴィクトリアは当該作のヒロインであり、バーニーは『ルータ王国の危機』の主人公である。

『石器時代から来た男』でのターザン

全2部で構成されている『石器時代から来た男』は、ターザン・シリーズの第2巻と第3巻の間に位置している(実際に登場するのは第1部のみ。第2部は、第3巻の後で発表された)。

ターザンとジェーンが結ばれたのは、第2巻のラストだが、ここではそれから1年ほどが経過していると見え、愛息子ジャックが誕生し、エスメラルダが乳母を務めている。 ターザンは「かつて猿人ターザンと呼ばれた」[17]と説明され、ターザンと書かれている場面[18]は少なく、ほぼ「グレーストーク(もしくはグレーストーク卿)」[19]や「クレートン」[20]と呼ばれ、それに相応しい衣服を身にまとっている。一方で、ジェーンは「グレーストーク夫人」[21]と表現され、家庭に収まっており、あまり目立たない。また、悪漢の討伐に際しても、ターザンは半裸になることも単独行動を取ることもなく、集団でライフルを抱えて行動している[22]。さらに、自分の感覚よりも「常識」を優先して判断している[23]、など、現役の猿人(第2巻までと、第3巻以降)とは違った描写がなされている。

しかし、第2部のラスト(15.洞窟の秘密)にてドンデン返しがあり、第1部のほとんどは「なかったこと」にされている。なお、リチャード・A・ルポフによると、『石器時代から来た男』の主人公である原始人ヌーは、猿人ターザンの同類(分身)である[24]

ターザンの「伝記」

本節は、『恐怖王ターザン』に寄せた森優の解説、「ターザンは実在する?」による[25]

アメリカのSF作家フィリップ・ホセ・ファーマーは、ターザンの伝記として『実在するターザン─グレイストーク卿の決定的伝記』を執筆、ダブルディ社から出版された。これは、「バローズの作品(ターザン・シリーズ)はフィクションとして綴られ、資料が少ない部分は想像で補ったため、矛盾などの不備がある」とし、「この伝記では、彼の切り捨てた資料等で補遺している」、というスタンスである。また、「実際にターザンに会い、インタビューした」とも書かれている。

インタビューの場所は、ガボンのリバーヴィルにあるホテルで、「写真も撮らず、録音もしない」と条件がつけられていた。インタビュー当時、ターザンは80歳であったが(当該作では、生年は1888年とされている模様)、35歳くらいにしか見えなかったという。この若さは、1912年1月にウガンダで助けたまじない師から渡された秘薬によるもの、と説明されている。

また、ファーマーがターザンの家系を8世分、遡って調査したところ、血縁にシャーロック・ホームズパーシー・ブレイクニー准男爵ドック・サヴェジネロ・ウルフピーター・ウィムジイ卿、ブルドッグ・ドラモンドらがいることが判明した。彼ら英傑の由来としては、1795年にイギリスに落ちた隕石による突然変異、と説明されている。

なお、本作は早川書房が版権を取得し、「ハヤカワ版(TARZAN BOOKS)完結の暁には、シリーズ別巻として刊行される」、と予告されていたが、未訳のままである(2011年9月現在)。

映画、TVのターザン

映画のターザンは、陽性のヒーローとして登場する(ただし、『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』(1983年Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes のような、原作重視の例外も存在する)。ジャングルの王者として君臨し、密猟者や秩序を乱す猛獣に鉄槌を下す。また、多くの場合、言語に不自由で、片言しか(英語、ないしは人間の言葉を)喋れない。マスコットとしてチータ(チーター)というチンパンジーを連れている場合もあるが、原作には登場していない(そもそもチンパンジーが登場しない)。ただし、それに類する小猿は登場しており、ンキマという小猿が複数回、登場している。

エルモ・リンカーンが主演したサイレント映画『ターザン』(1918年)を皮切りに、数多くの映画が製作され、ターザンの名は一躍有名になった。中でも『類猿人ターザン』(1932年)をはじめとするジョニー・ワイズミュラーのターザンは有名である。ワイズミュラーは水泳金メダリストであり、元は俳優ではなかったが、そのぎこちなさ故に、野生児としてのターザンはハマリ役だった[26]

ワイズミュラー映画で有名な「アーア・アー」というターザンの雄叫びは、の鳴き声など十数種の音源をミックスしてMGMの特殊効果部が作り上げた。

なお、ワイズミュラーは1971年世界SF大会(に参加した、バロウズ・インコーポレイテッド[27]の)主催の昼食会に主賓として招かれたが、70歳を過ぎている[28]にも関わらず若々しく(ただし、髪は白髪になり、顔はシワが増えていた)、矢野徹から「ターザン・シリーズ日本での翻訳が開始された」と知らされると、非常に喜んでいた[29]

映画化への道のり

ロバート・フェントンによると、1914年春、バローズが妻とカルフォルニア州サンディエゴで休暇がてら第3作『ターザンの凱歌』を執筆していた時、ニューヨークのジョゼフ・W・スターン商会から連絡があり、映画化の話が持ち上がったのがきっかけである[30]

この企画は流れたが、バローズは自作の映画化への可能性を知る。シカゴへ帰った彼は、ニューヨークのオーサーズ・フォトプレイ・エージェンシーに『類猿人ターザン』の映画化への売込みを依頼した。また、出版社A・C・マックラーグとは、劇化・映画化の際の著作権が著作者に帰属する契約書を交わしている(ただし、第2作『ターザンの復讐』以降分)[31]

しかし、映画化の話は思うように進まず、バローズは直接行動に出る。ウィリアム・N・セリグ大佐(シカゴにある、セリグ・ポリスコープ・カンパニーの社長)に、『類猿人ターザン』と、未発表の原稿1本(『砂漠のプリンス』 (The Lad and the Lion))を送りつけたところ、セリグは『砂漠のプリンス』に興味を示し、500ドルで映画化権を購入する(1915年1月)[32]

バローズはさらに2本ほどセリグに送り、ユニヴァーサル・フィルムズやアメリカン・フィルム・カンパニー等にも打診するが、全て断られてしまう。「小説としては面白いが、映画には向かない」と酷評も受ける[33]

1916年6月、シカゴのウィリアム・パーソンズと『類猿人ターザン』の映画化権に関する契約を取り付ける。しかし、パーソンズは映画業界の素人であり、計画は頓挫しかける。10月末、なんとかパーソンズの会社が設立され、映画完成への目途がつく[34]

1917年4月、セリグ・プロの映画『砂漠のプリンス』(主演、ヴィヴィアン・リード)が公開され、好評を得る。ただし、原作者の意向が無視されたため、バローズは複雑な思いだった[35]

映画(第1作)のエピソード

本節はエドガー・ライス・バロウズ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、300-301頁による。

撮影
主としてルイジアナ州で行われた。
実際の動物のシーンやジャングルのシーンは、ブラジルで撮影されたものが使用された。
類人猿のシーンは着ぐるみを使用し、ニューオルリーンズの体育クラブのメンバーを雇った。枝から枝へ飛び移るシーンの他、カラ(養母)が幼いターザンを養育するシーンも、彼らが行っている。
主演
当初はウィンスリー・ウィルスンが演じる予定だった。しかし、パーソンズが資金繰りに困っている間に徴兵され、第一次世界大戦に出兵した。エルモ・リンカーンは、代役である。
エルモ・リンカーン
エルモは役に相応しい、強い男性だった。また、彼は非常に毛深い男性であり、日に2回は体毛を剃らないと、類人猿に見間違われそうだった(子役としてターザンの少年期を演じた、ゴードン・グリフィスによる回想)。
映画は大ヒットし、本作で大スターとなった。
ストーリー
ほぼ原作通り。ただし、以下の2点で大きく異なる。
  • 会話を教わるのはフランス軍人のダルノー中尉ではなく、ビンスという船員(両親の友人で、イギリス人)。教わる言葉も、フランス語ではなく英語である。
  • ジェーンと結ばれる。
宣伝、成績
チンパンジーをシルクハットタキシードで正装させ、一流ホテルのロビーに登場させた。これが新聞で大きく報道され、映画も大ヒットとなった。
新聞・雑誌(ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・ジャーナル、モーション・ピクチャー・マガジンなど)の反応も良く、興行収入は100万ドルを突破した。「最初に100万ドルを突破した6作品」のひとつとして数えられる。

原作者の不満

映画『ターザン』は、自身の意向が反映されず(バローズはパーソンズの会社の重役であるにも関わらず)、さらには支払いのトラブルにより、パーソンズとの仲が冷えてしまった[36]。映画のターザンは自分のイメージと違っていたため、落胆した、とも言われている[37]

MGMのターザン映画に不満だったバローズは自ら映画会社を興し、ハーマン・ブリックス主演の連続活劇を製作した。

ターザン映画・TVの一覧

()内はターザン役。

  • ターザン (1918) Tarzan of the Apesエルモ・リンカーン (Elmo Lincoln))
  • 続編ターザン (1918) The Romance of Tarzan (エルモ・リンカーン)
  • ターザンの復讐 (1920) The Revenge of Tarzanジーン・ポラー (Gene Pollar))
  • ターザン第二世 (1920) Son of TarzanP・デンプシー・タブラー (P. Dempsey Tabler))
  • 大ターザン (1921) The Adventures of Tarzan (エルモ・リンカーン)
  • 獅子王ターザン (1927) Tarzan and the Golden Lionジェームズ・ピアース (James Pierce))
  • 巨人ターザン (1928) Tarzan the Mightyフランク・メリル (Frank Merrill))
  • 猛虎ターザン (1929) Tarzan the Tiger (フランク・メリル)
  • 類猿人ターザン (1932) Tarzan the Ape Manジョニー・ワイズミュラー (Johnny Weissmuller))
  • 蛮勇タルザン (1933) Tarzan the Fearlessバスター・クラブ (Buster Crabbe))
  • ターザンの復讐 (1934) Tarzan and His Mate (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザンの新冒険 (1935) New Adventures of Tarzanハーマン・ブリックス(ブルース・ベネット) (Herman Brix - Bruce Bennett))
  • ターザンの逆襲 (1936) Tarzan Escapes (ジョニー・ワイズミュラー)
  • 大ターザン (1938) Tarzan's Revengグレン・モリス (Glen Morris))
  • 鉄腕ターザン (1938) Tarzan and the Green Goddess (ハーマン・ブリックス)
  • ターザンの猛襲 (1939) Tarzan Find's a Son (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザンの黄金 (1941) Tarzan's Secret Treasure (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザン紐育へ行く (1942) Tarzan's New York Adventure (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザンの凱歌 (1943) Tarzan Triumphs (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザン砂漠へ行く (1943) Tarzan's Desert Mystery (ジョニー・ワイズミュラー)
  • 魔境のターザン (1945) Tarzan and the Amazons (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザンと豹女 (1946) Tarzan and the Leopard Woman (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザンの怒り (1947) Tarzan and the Huntress (ジョニー・ワイズミュラー)
  • 絶海のターザン (1948) Tarzan and the Mermaids (ジョニー・ワイズミュラー)
  • ターザンと魔法の泉 (1949) Tarzan's Magic Fountainレックス・バーカー (Lex Barker))
  • ターザンと密林の王女 (1951) Tarzan's Peril (レックス・バーカー)
  • ターザンの憤激 (1952) Tarzan's Savage Fury (レックス・バーカー)
  • ターザンと巨象の襲撃 (1955?) Tarzan and the She-Devil (レックス・バーカー)
  • ターザンと消えた探検家 (1957) Tarzan and the Lost Safariゴードン・スコット (Gordon Scott))
  • ターザンの激闘 (1958) Tarzan's Fight for Life (ゴードン・スコット)
  • ターザンの決闘 (1959) Tarzan's Greatest Adventure (ゴードン・スコット)
  • 類猿人ターザン (1959) Tarzan, the Ape Manデニー・ミラー (Denny Miller))
  • ターザン大いに怒る (1960) Tarzan the Magnificent (ゴードン・スコット)
  • ターザン (1961) Tarzanテューダー・オーウェン(Tudor Owen)声優として)
  • ターザンと猛獣の怒り (1962) Tarzan Goes to Indiaジョック・マホニー (Jock Mahoney))
  • ターザン三つの挑戦 (1963) Tarzan's Three Challenges (ジョック・マホニー)
  • ターザン (1966~1969) TarzanTVシリーズ) (ロン・エリー (Ron Ely))
  • ターザンと黄金の谷 (1966) Tarzan and Valley of Goldマイク・ヘンリー (Mike Henry))
  • ターザンと断崖の怒り (1967) Tarzan and the Great River (マイク・ヘンリー)
  • ターザンの大逆襲 (1968) Tarzan and the Jungle Boy (マイク・ヘンリー)
  • 類猿人ターザン (1981) Tarzan the Ape Manマイルズ・オキーフ (Miles O'Keeffe))
  • グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説 (1983) Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apesクリストファー・ランバート (Christopher Lambert))
  • ターザン ニューヨークへ行く (1989) Tarzan in Manhattanジョー・ララ (Joe Lara))
  • ターザン (1991~1994) TarzanTVシリーズ) (ウルフ・ラーソン (Wolf Larson))
  • ターザン・リターンズ (1996) Tarzan: The Epic Adventures (ジョー・ララ)
  • ターザン 失われた都市 (1999) Tarzan and the Lost Cityキャスパー・ヴァン・ディーン (Capser Van Dien))
  • ターザン(アニメ映画) (1999) (トニー・ゴールドウィン (Anthony ("Tony") Howard Goldwyn)声優として)
  • ターザン&ジェーン(アニメ映画) (2002) - 上記の続編。
  • Tarzan (3Dアニメ)(2013) Tarzan ([[]] (Kellan Lutz))

脚注

作者の日本語表記については表記ゆれがあり、早川書房ハヤカワ文庫)は「エドガー・ライス・バロズ」、東京創元社創元推理文庫創元SF文庫)は「エドガー・ライス・バロズ」となっている。 テンプレート:Reflist

外部リンク

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テンプレート:エドガー・ライス・バローズ
  1. エドガー・ライス・バロウズ 『類猿人ターザン』 高橋豊訳、早川書房ハヤカワ文庫特別版SF〉、1971年、370頁。同書148頁で受けた傷。
  2. 『類猿人ターザン』 13頁。
  3. 『類猿人ターザン』 13頁。
  4. 金星シリーズは開始時期が遅く(1932年~)、またバローズも作家として成熟しているため、ここでは比較から除外した。
  5. デヴィッド・イネスは「ボクシング投球の得意な、若き鉱山主(富豪の息子)」であり、ジョン・カーターの超人的な跳躍力・腕力は、火星の弱い重力の賜物である(ただし、ジョン・カーターの星間移動能力は、超能力のレベルを超えたものであり、十分に驚嘆すべきである。しかし、彼がそれを行使するのは、物語の本筋には関係ない部分、すなわち、「地球にいるバローズに、物語を教える」場面に留まっている。また、彼は不老長寿、あるいは不老不死である)。なお、ペルシダーには時間経過の概念がないため、デヴィッドらに老化の兆候は見られない
  6. エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンと失われた帝国』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1974年、73頁。
  7. エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンの復讐』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1971年、162頁。
  8. エドガー・ライス・バロウズ 『野獣王ターザン』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1972年、156頁。
  9. 『類猿人ターザン』 208頁。
  10. 『類猿人ターザン』 62頁では、カーチャクとカラ。
  11. エドガー・ライス・バロウズ 『地底世界のターザン』 佐藤高子訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1971年、77頁では、ケルチャックとカーラ。
  12. エドガー・ライス・バローズ 『ターザン』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1999年、59頁では、カーチャクとカーラ。
  13. 『類猿人ターザン』 11頁。
  14. エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンと蟻人間』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1973年、10頁。
  15. エドガー・ライス・バローズ 『石器時代から来た男』 厚木淳訳、東京創元社創元推理文庫〉、1977年、28頁。
  16. エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンの双生児』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1976年、13頁
  17. 『石器時代から来た男』 21頁。
  18. 『石器時代から来た男』 43頁。
  19. 『石器時代から来た男』 21頁、42頁、44頁、48頁、53頁-56頁、58頁、65頁、74頁、75頁、83頁、86頁、87頁、89頁、95頁、103頁、272頁、274頁、原文ママ。
  20. 『石器時代から来た男』 24頁、56頁、原文ママ。
  21. 『石器時代から来た男』 26頁、28頁、39頁、41頁。
  22. 『石器時代から来た男』 86頁、103頁。
  23. 『石器時代から来た男』 43頁、83頁。
  24. リチャード・A・ルポフ 『バルスーム』 厚木淳訳、東京創元社、1982年、234頁。ただし、主人公名は明記されていない。
  25. エドガー・ライス・バロウズ 「ターザンは実在する?」『恐怖王ターザン』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、325-328頁。
  26. エドガー・ライス・バロウズ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、294-295頁。
  27. バロウズの著作権を管理する法人。
  28. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 296頁より、原文ママ。しかし、1904年6月2日生まれなので、実際は、まだ60代であった。
  29. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 294-296頁。
  30. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 296-297頁。
  31. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 297頁。
  32. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 297-298頁。
  33. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 298頁。
  34. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 298-299頁。
  35. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 299-300頁。
  36. 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 300頁。
  37. エドガー・ライス・バロウズ 「史上最大最高の冒険ヒーロー」『類猿人ターザン』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、森優、1971年、383-384頁。