スマートメディア

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スマートメディア(SmartMedia)は、東芝が開発したメモリーカードフラッシュメモリメディアの通称。

概要

ファイル:Smartmedia.svg
スマートメディア

東芝オリンパス富士写真フイルム(当時)・東京エレクトロンセガの5社で結成したSSFDCフォーラムによって規格策定され、1995年から市販された。1987年に東芝の舛岡富士雄が開発したNAND型フラッシュメモリを用いている。これはCFSDなどでも幅広く採用されている。

正式名称はSSFDCSolid State Floppy Disk Card: 半導体フロッピーディスクカード)である。「SmartMedia」の商標から、SMと略される。

サイズは(長さ)45.0mm×(幅)37.0mm ×(厚さ)0.76mm、重さは2グラム。データ容量は1997年までに500KB・2MB・4MBの製品が出荷され、1998年に16MB、1999年に32MB、2000年に64MB(SMIDのみ)、2001年に128MB(SMIDのみ)が市販化・発売された。

コンパクトフラッシュには無かったライトプロテクト(書き込み禁止)機能があり、カード中央右寄りの○部分に付属品のプロテクトシールを貼付することで、書き込み(追記・消去・フォーマット)アクセスが出来なくなる。

1999年秋には、欧米で商用化が始まった有料音楽配信サイトからダウンロードしたコンテンツを、スマートメディアに移動させてMP3プレーヤーで利用する際の権利者保護のため、全米レコード協会とメジャーレコード5社が策定したSDMIに準拠させるメデイア毎に固有の128ビットIDを付加した「ID付きスマートメディア (Smart Media ID)」が登場した。ID機能を利用しない機器でも下位互換性により問題なく利用できるため、市販化以降、ID無しの製品は市場から姿を消している。SMIDは、1999年12月に発売されたマジックゲートメモリースティックや2000年発売のSDメモリーカードとは異なり、カード自体に著作権保護のための暗号化技術 (CPRM) を備えておらず、固有のIDを接続機器に認識させるのみで、コンテンツ側でIDを基にしたデジタル著作権管理の適用が必要となる。

メディアの終焉

スマートメディアの開発者たる東芝は、1999年8月にサンディスク松下電器産業らと組んでSDメモリーカードを開発し、富士フイルム・オリンパスと袂を分った。セガと東京エレクトロンは1997年以降表立った活動はしていない。

なお、東芝もスマートメディアを採用した各種製品を2002年まで発売していた。2001年には当時世界初のスマートメディアとSDカードに対応(供用)したPCカード型R/Wを発売している。

富士フイルムとオリンパスは2002年に大容量化が可能であるxDピクチャーカードを開発し、市販化以降に発売された両社製品(デジタルカメラ)で記憶メディアの移行が進められた。スマートメディアとは一切互換性が無い。両社は2007年よりxDピクチャーカードとSDカードの共用が可能なデジタルカメラやmicroSDカードをxDカードとして利用できるアダプターカードを発売している。

2005年3月7日、東芝はスマートメディアの生産から一部を除き撤退することを決めた。また、業界団体の「SSFDCフォーラム」も2007年5月で解散。これによりスマートメディアの新規生産は完全にストップしたため、新品メディアは市場流通在庫のみとなっている。富士フイルムとオリンパスではスマートメディアを使用するカメラユーザーのためにネット直販サイトにて修理部品扱いで売り続けているが、在庫限りのため販売量を1ユーザー1枚に限定している。

現在でもスマートメディアを使用する製品は、エレクトーンステージア)に代表される電子楽器を除いて、概ね2002年以前に発売された製品に限られている。

コンパクトフラッシュ・SDメモリーカード・メモリースティックとは異なり、I/Oデバイスを搭載する機能はない。

記憶メディアとして採用された製品

ゲーム・玩具関係

フラッシュパス

3.5インチフロッピーディスクドライブ (FDD) で読み書きが可能になる、フロッピーディスク (FD) 型のアダプタである[1]。動作にはコイン型電池を必要とする。内部の回路を通じてFDの磁気ヘッド部分とSM間でリード/ライトが可能であり、特別なメモリーカードリーダライタなどの追加ハードウェアが要らない利点があった。大容量化に対応できなくなったこと、読み出し・書き込み速度はFD並みであり、他メディアに劣るなどの問題があるため、近年ではFDDを用いた一部の計測器や電子楽器のFDの代用として使われる程度となっている。

構造と問題点

ファイル:Smartmedia 5V.jpg
5Vタイプのスマートメディア

メディア上にコントローラ部分を持たないため、非常に薄い構造になっている。

構造が単純なため、コスト面でも他規格に比べ有利だとされていた一方、コントローラを機器側に内蔵していること、カードと機器のインタフェース部分でフラッシュメモリの特性がむき出しであることから、メディア側の電圧変更や大容量化などで互換性問題を生じることも多かった。具体的には、下記のような事例があげられる。

  • 動作電圧が5Vの物と3.3Vの物とで形状が異なる。5Vタイプのスマートメディアを使う製品では3.3Vのものは使えない。
    1997年に発売された2MBから動作電圧が5Vから3.3Vに変更された。誤挿入を防ぐ意味でスマートメディアの形状も同時に変更された。5Vのスマートメディアは切り欠き部分が左側にある。3.3Vタイプスマートメディアがコンシューマ市場に出たあと速やかに5Vタイプは市場から消えたため、5Vタイプのスマートメディアを使う製品ユーザーの不満が発生した。
  • 製品によって、使用できる容量に制限があり、それより大きい容量のメディアは使えない。
    3.3Vタイプを採用した初期の製品では、2MB - 8MBまでの容量にしか対応できない。後に発売された32MBなど大容量のスマートメディアを入れても扱えなかった。この件でも、大容量のスマートメディアが販売されると小容量のものが入手困難となり、不満が発生した。

スマートメディア陣営では当初、「カードにコントローラを内蔵せず安価で汎用性の高いスマートメディアは、広く使われる『乾電池』のような存在となり、そうでない他の規格は『特殊電池』の地位にとどまるだろう」と豪語していた。特に盟主の東芝は2000年の東京国際ブックフェアなどで、スマートメディアを用いた電子出版事業を提唱しており、いかに量産低価格化に楽観的見通しを抱いていたかが伺える。しかし、実際にはライバルのコンパクトフラッシュの価格は量産効果によりスマートメディアと大差は無かった。

加えて、スマートメディアは上記のような互換性問題が常につきまとい、「機器とメディアが心中を余儀なくされる」という傾向が強かった。

結果として、互換性を保ちつつ順調に容量を伸ばしたコンパクトフラッシュやマルチメディアカードが「乾電池」の地位についたのに対して、スマートメディアは汎用性の低い「特殊電池」の地位に甘んじることとなり、当初の主張とは正反対の結果に終わった。

ユーザーが半導体メモリの扱いに慣れていない早い時期に登場しただけあって、中身のデータを失う事故が多く、評判が悪かった。帯電防止ジャケットに入って販売されていたが、経年劣化するので定期的に交換するほうが良いとされるテンプレート:要出典

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:メモリーカード
  1. テンプレート:Cite web