シーベルト

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シーベルト(sievert、テンプレート:IPA-enテンプレート:IPA-sv、記号:Sv[1])とは、生体被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量[1]、dose equivalence)を表す単位である。SI単位の一つである。

単位として Sv は大きすぎるため、mSv(ミリシーベルト、10-3Sv)やμSv(マイクロシーベルト、10-6Sv)などが用いられる。


定義

線量当量とは、吸収線量放射線から受けるエネルギー)に線質係数[2]を掛けたものである[3]。 その名称は、放射線防護の研究で功績のあったロルフ・マキシミリアン・シーベルトにちなむ[3]

日本の法令上は「グレイで表した吸収線量の値に通商産業省令で定める係数を乗じた値が一である線量当量」と定義している[1]

上記の「通商産業省令で定める係数」は、水中の線衝突阻止能(荷電粒子が水中を進むとき1 μmにつき電子との衝突により失う運動エネルギーが、1 kV電位を電子が移動するときに必要とするエネルギーの何倍に相当するかを表す。)に基づく線質係数として、1から20の数値を定めている[4]

シーベルトとグレイ

ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号 Gy。定義 J/kg)である[3]。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する[3]

  • Sv = 修正係数 × Gy

例えば、等価線量を算出する際には、修正係数として放射線荷重係数が使用される。放射線荷重係数は、放射線の種類によって値が異なり、X線、ガンマ線、ベータ線は1、 陽子線は5、 アルファ線は20、 中性子線はエネルギーにより5から20までの値をとる。これらの係数は無次元量(単位がない)なので、シーベルトはグレイと同じ J/kgでも書ける。

シーベルトとレム

SI単位系に切り換わる以前はレム (rem) が使われており、次のとおりに換算できる。

  • 1 Sv = 100 rem[1] = 100,000 mrem (ミリレム)

シーベルトの単位換算

  • 1 Sv = 1,000 mSv(ミリシーベルト) = 1,000,000 μSv(マイクロシーベルト)

毎時シーベルト

毎時シーベルト (Sv/h) は、1時間あたりの生体への被曝の大きさの単位。日本の法令上は「線量当量率」としてシーベルト毎時で定義している[1]。シーベルトが被曝の総量を表すのに対し、毎時シーベルトは、被曝の強さを表す。1毎時シーベルトは、1時間で1シーベルトの被曝量を受けることに相当する強さ。

(例)

  • 25 μSv/h (毎時マイクロシーベルト) の被曝を2時間にわたって受けると、被曝の総量は 50 μSv (マイクロシーベルト) = 0.05 mSv = 0.00005 Sv になる。
  • 毎時 400 ミリシーベルト (400 mSv/h) の被曝を15分間受けると、被曝量は 100 mSv (ミリシーベルト) = 0.1 Sv になる。
  • 毎時10シーベルト(10 Sv/h)の被曝を30分受けると、被曝量は5 Sv = 5,000 mSv = 5,000,000 μSvになる。

放射線防護とシーベルト

テンプレート:See also 人体が放射線にさらされる事を放射線被曝 (ほうしゃせんひばく) といい、人体は世界平均にして年間およそ 2.4mSv (=0.0024Sv=2,400μSv) の自然放射線にさらされている[3]。大量の放射線は人体に有害であるため、放射性物質を扱う環境にある人は、自分がどの程度の放射線を受けたのかを、常に厳密に管理しなくてはならない。その際に用いられる尺度の一つがシーベルトである。

X線撮影1回分の線量が0.5~4mSv。X線CTスキャンによる撮像1回分の線量は7~20mSv(=0.007Sv~0.02Sv)である[3]

ちなみにX線CTスキャンにおける最大レベルの放射線を全身に浴びると5%の人が死亡し、4Sv (=4,000mSv) で50%、7Sv (=7,000mSv) で99%の人が死亡すると言われている。一方で、0.2Sv (=200mSv=200,000μSv)以下の被曝では、急性の臨床的症状は認められないとされるが、こちらは長期的な影響について議論があり、また低線量の被曝についても「健康被害が生じた」として訴訟が起きている[参考 1]

なお、一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシーベルトではなくグレイが用いられるが、X線ガンマ線による被曝に関しては数値に違いがない。

短時間・大線量被曝でシーベルトが用いられない理由は線量率効果[参考 2]である。なぜなら単位「シーベルト」に求められる性質のひとつは数値の加算可能性であり、ある時点Aでの被曝と別の時点Bでの被曝の影響を全体として評価する場合に、両者の評価数値を加算したものに意味がなければならないからである。同じ放射線を被曝しても線量率によって影響が異なるのであるから、低線量率被曝の評価数値と高線量率被曝の評価数値は加算できない。シーベルトは低線量率の被曝環境下での人体への影響評価を目的とした単位である。

これに加えて、シーベルトはグレイに対して放射線種や対象組織による係数(厳密な数値ではない)を乗じて得る単位なので、たとえ放射線種がX線やガンマ線であってもグレイと同等の厳密さを持つと考えてはならない。SI組立単位に入ってはいるがシーベルトは管理された環境下での人体防護を主眼とした放射線管理・放射線防護目的の単位であり、社会学的な単位とも言える。

脚注

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参考文献

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関連項目

外部リンク

テンプレート:SI units navbox

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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1992年(平成4年)11月18日政令第357号「計量単位令」
  2. 放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさ
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 南茂夫、木村一郎、荒木勉『はじめての計測工学』改定第2版、講談社、2012年12月、ISBN 9784061565111
  4. 1992年(平成4年)11月30日通商産業省令第80号「計量単位規則」


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