シラウオ

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テンプレート:生物分類表 シラウオ(白魚)は、条鰭綱キュウリウオ目シラウオ科テンプレート:Sname)に分類される魚の総称。狭義には、その中の1種 テンプレート:Sname和名である。ただし、時にシロウオと混同される。

東アジア汽水域周辺に生息する半透明の細長い小魚で、食用にもなる。

特徴

体は細長いが、後ろに向かって太くなり尾びれの前で再び細くなるくさび形の体形である。死ぬと白く濁った体色になるが、生きている時は半透明の白色で、背骨や内臓などが透けてみえる。

シロウオとは生態や姿がよく似ていて、料理法もほぼ同じで混同されやすいが、シロウオはスズキ目ハゼ科で分類上は全く別の魚である。区別点は

  • シラウオの口はとがっていて、体型がくさび形をしている。
  • シラウオのうきぶくろはシロウオほどはっきり見えない。
  • シラウオには「あぶらびれ」(背びれの後ろにある小さな丸いひれ)がある。これはアユシシャモワカサギなどと近縁であることを示す。

などがある。

シロウオは他のハゼ類と違い、ほとんど仔魚のような形で成熟するが、シラウオは仔魚の形から変態し、他のサケ類と同じように鰭ができる。このことからシロウオはプロジェネシス、シラウオはネオテニーといえるかもしれない。

の下流域や汽水湖、沿岸域など汽水域底で産卵し、孵化した稚魚は翌年の春まで沿岸域でプランクトンを捕食しながら成長する。冬を越した成体は産卵のために再び汽水域へ集まって産卵するが、産卵した後はオスメスとも1年間の短い一生を終える。シロウオと同じく春に川をさかのぼって産卵するとみられていたが、一生を汽水域で過ごすとの説もあり、詳しい生態の調査が待たれる。

古来より沿岸域へ産卵に集まる頃の成魚が食用に漁獲され、早春の味覚として知られる。かつては全国で漁獲されたが、現在では漁獲が東日本に偏っている。漁はシロウオと同じように四角形の網を十字に組んだ竹で吊るした「四つ手網」がよく使われるが、霞ヶ浦などの大きな産地ではシラウオ用の刺し網定置網などもある。

食材

シロウオは活魚として出回るが、シラウオはシロウオほど死後の味の低下が極端でないとされ、死んだ状態で出回ることが多い。料理は天ぷら、卵とじ、吸い物などで、高級食材として扱われる。日本のみならず、中国東南アジアでも食用にされる。

寿司だねなどとして生で食べる機会も多いが、それほど重篤な症状を起こさないとはいえ横川吸虫の中間宿主でもあるので、注意を要する。

別名

シラオ、シラス、トノサマウオ、シロウオなど。「トノサマウオ」という別名は、野良仕事をしない領主(殿様)のきれいな手をシラウオになぞらえたものという説がある。また、細長く半透明の優美な姿から、女性の細くて白い指を「シラウオのような指」とたとえることがある。

おもな種類

キュウリウオ目シラウオ科の魚は東南アジアから東シベリアまで6属14種類が分布している。なかには体長が15cm以上になる種類もいる。

日本には3属4種が分布するが、アリアケシラウオとアリアケヒメシラウオは有明海周辺だけに分布している。この2種類は分布が極めて局地的な上に絶滅寸前というところまで個体数が減っているため、どちらも絶滅危惧IA類(CR)環境省レッドリスト)に指定されている。

シラウオ テンプレート:Sname
体長8cmほど。東シベリアから朝鮮半島、中国まで分布し、日本でも北海道から九州北部に分布している。
イシカワシラウオ テンプレート:Sname
体長8cmほど。日本の固有種で、北海道から九州北部に分布する。シラウオに似ていて、特にシラウオと区別せずに漁獲・流通がなされている。
アリアケシラウオ テンプレート:Sname
体長15cmほどにもなる大きなシラウオで、有明海朝鮮半島に分布する。有明海沿岸域では漁獲し食用にされていたが、現在は漁獲が激減し、絶滅が心配されている。
アリアケヒメシラウオ テンプレート:Sname
体長5cmほどのシラウオで、丸い頭部とずんぐりした体型をしており、シロウオに似ている。世界でも有明海に注ぐ筑後川熊本県緑川、緑川支流の浜戸川だけにしか分布しない。さらに2つの生息地で体長やひれの大きさなどに差があり、それぞれが独立した地域個体群と考えられている。川の下流域に生息するが、食用にされていないにもかかわらず個体数が減り続けている。減少の理由は筑後大堰などの河川改修や汚染などによる河川環境の変化と考えられている。

関連項目

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