シュレーディンガー方程式

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テンプレート:量子力学 テンプレート:翻訳直後 テンプレート:要改訳 シュレーディンガー方程式(シュレーディンガーほうていしき、テンプレート:Lang-en-short)とは、量子力学における純粋状態(状態ベクトルまたは波動関数で表される)の時間発展を記述する方程式である。

また量子的なハミルトニアン固有値方程式も、シュレーディンガー方程式と呼ばれる。

シュレーディンガー方程式は、1926年にオーストリア物理学者エルヴィン・シュレーディンガー量子力学の一形式である波動力学基礎方程式として提案した。

時間依存するシュレーディンガー方程式

時間発展をシュレーディンガー描像で考えると、状態ベクトル <math>| \psi(t) \rangle</math> の時間発展は テンプレート:Indent で記述される。この方程式をシュレーディンガー方程式と呼ぶ。ここで <math>i</math> は虚数単位、<math>\partial /\partial t</math> は時間に関する偏微分、<math>\hbar = h/2\pi</math> はディラック定数である。<math>\hat{H}</math> は系全体の力学的エネルギーを表す演算子で、ハミルトニアン(ハミルトン演算子)と呼ばれる。ハミルトニアンの具体的な中身は考える系に応じて異なり、対応する古典系のハミルトニアンを正準量子化して求めることが多い。

意味

確率解釈に基づく通常の量子論では時間発展しても確率が保存されなければならない。つまりどんな場合でもすべての事象の確率の合計は 100% (= 1) にならなければならない。この事とボルンの規則による確率の求め方(状態ベクトルとその双対ベクトルの積から求まる)より、状態ベクトルの時間発展はユニタリ変換でなければならないことが分かる。シュレーディンガー方程式を解くことで、「状態ベクトルの時間発展はユニタリ変換である」ということが導かれる。よって量子系の時間発展についての基本的な要請(原理)は、シュレーディンガー描像で記述する場合は、このシュレーディンガー方程式を採用して出発することが多い。しかし他にも「時間発展演算子が満たすべき条件」を基本的な要請として出発することもある[1]

この一般式なシュレーディンガー方程式は、ハミルトニアンに様々な複雑な式を代入することで、ディラック方程式から場の量子論まで量子力学全般で使う事ができる。

波動関数の収縮との関係

ファイル:StationaryStatesAnimation.gif
調和振動子の時間依存型シュレーディンガー方程式の解。左: 実部(青)、虚部(赤)。右: 与えられた状況で、この関数の粒子を見つける確率分布。上 2 つは「定常状態」で、一番下は定常波では「ない」状態の例。右の列の確率密度が変化しない事から定常状態が「定常」と呼ばれる。

シュレーディンガー方程式を解くと、その系の波動関数がどのように時間発展するかがわかる。

しかしシュレーディンガー方程式は、直接的に波動関数が正確に「何であるか」を語るわけではない。量子力学の解釈は全く別問題であり、「波動関数の根底にある現実と実験結果の間にある関係とは何か」というような問題を扱う。 コペンハーゲン解釈では、波動関数は物理系の完全な情報を与える。シュレーディンガー方程式の解は分子、原子、亜原子粒子だけではなく、巨視的な系やあるいは宇宙全体でさえ記述できるとされる。

重要な側面は、シュレーディンガー方程式と波動関数の収縮の関係である。 最初期のコペンハーゲン解釈では、粒子は波動関数の収縮の間を「除いて」シュレーディンガー方程式に従い、波動関数の収縮の間は全く異なる動きをする。 量子デコヒーレンスの出現は、別のアプローチ(エヴェレットの多世界解釈のような)を可能にした。それらではシュレーディンガー方程式が常に満たされ、波動関数の収縮はシュレーディンガー方程式から説明される。

座標表示

状態ベクトルを座標表示した波動関数 <math>\psi(x,t) =\langle x | \psi(t) \rangle</math> を考えると、波動関数の時間発展は テンプレート:Indent となる[2]。 これが座標表示の波動関数に対するシュレーディンガー方程式である。ここでのハミルトニアンは <math>\langle x | \hat{H} | \psi(t) \rangle

= H_x \psi(x,t)</math>として座標表示した波動関数に作用する演算子に置き換えられている。同様に運動量表示した波動関数のシュレーディンガー方程式を考えることも出来る。

座標表示や運動量表示したシュレーディンガー方程式は単純な代数方程式ではなく、線型偏微分方程式である。

代表的な解

後述の非時間依存シュレーディンガー方程式を満たす <math>|\Psi\rangle</math> として、

<math> | \Psi(t) \rangle = \exp \left[ -\frac{i}{\hbar} Et \right] |\Psi(0)\rangle </math>

と選ぶと、これは時間依存するシュレーディンガー方程式も満たしていることが確認できる。

具体例

ファイル:Wave packet (dispersion).gif
V=0の非相対論的シュレーディンガー方程式を満たす波動関数。空間を自由に移動する粒子に相当する。波動関数の実部がここにプロットされている。

シュレーディンガー方程式を適用するには、系を構成する粒子の運動エネルギーと位置エネルギーの和をとったハミルトニアンを、シュレーディンガー方程式に代入する。得られた偏微分方程式を解くことで系の時間変化についての情報を含んだ波動関数が得られる。

最も有名な例は電場中(磁場もある時にはパウリ方程式を用いる)を運動する物体の時間変化を表した非相対論的シュレーディンガー方程式である。

テンプレート:Equation box 1

m は物体の質量V (r ,t ) はポテンシャルエネルギー、∇2ラプラス作用素、Ψ(r ,t ) は波動関数(より正確には「位置空間の波動関数」)である。 ハミルトニアンの中に微分演算子が含まれているため、これは線形偏微分方程式である。これは拡散方程式でもあるが、熱伝導方程式とは違って、時間微分の部分に虚数単位があることによって、波動方程式とも言える。 非相対論的シュレーディンガー方程式は現実を簡略化した近似式であり、多くの場面で非常に正確であるが、相対論の効果が大きな場面では非常に不正確である(相対論的量子力学を参照)。

公式のまとめ

様々なハミルトニアンに対するシュレーディンガー方程式とその形式的な解をまとめる。

1 粒子 N 粒子
一次元 <math> \hat{H} = \frac{\hat{p}^2}{2m} + V(x,t) = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x,t)</math> <math> \begin{align}\hat{H} &= \sum_{n=1}^{N}\frac{\hat{p}_n^2}{2m_n} + V(x_1,x_2,\cdots x_N,t) \\

& = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\frac{\partial^2}{\partial x_n^2} + V(x_1,x_2,\cdots x_N,t) \end{align}</math>

粒子n の位置はxn である。

<math> i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\Psi + V\Psi </math> <math> i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\frac{\partial^2}{\partial x_n^2}\Psi + V\Psi \, .</math>
<math> \Psi = \Psi(x,t) </math> <math> \Psi = \Psi(x_1,x_2\cdots x_N,t) </math>
三次元 <math> \begin{align}\hat{H} & = \frac{\hat{\boldsymbol{p}}\cdot\hat{\boldsymbol{p}}}{2m} + V(\boldsymbol{r},t) \\

& = -\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2 + V(\boldsymbol{r},t) \\ \end{align}</math>

<math> \begin{align} \hat{H} & = \sum_{n=1}^{N}\frac{\hat{\boldsymbol{p}}_n\cdot\hat{\boldsymbol{p}}_n}{2m_n} + V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\cdots\boldsymbol{r}_N,t) \\

& = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\nabla_n^2 + V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2, \dots, \boldsymbol{r}_N,t) \end{align}</math>

<math> i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi = -\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\Psi + V\Psi </math> <math> i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\nabla_n^2\Psi + V\Psi </math>

この最後の方程式は、高次元でのものである[3]。そのため解は視覚化が容易でない。

<math> \Psi = \Psi(\boldsymbol{r},t) </math> <math> \Psi = \Psi(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\dots ,\boldsymbol{r}_N,t) </math>

時間依存しないシュレーディンガー方程式

テンプレート:Main 波動関数を「時間の関数と位置の関数の積」として表し、シュレーディンガー方程式を変数分離すると、非時間依存型シュレーディンガー方程式(時間に依存しないシュレーディンガー方程式)が得られる。それによると、波動関数は定常状態と呼ばれる(原子軌道分子軌道などの「軌道」とも呼ばれる)定常波の形をとる事と予想される。これらの状態はそれ自体がとても大事であるだけでなく、定常状態を分類し理解する事で、任意の状態について時間依存型シュレーディンガー方程式を解きやすくなる。非時間依存型シュレーディンガー方程式は定常状態を記述する式である(ハミルトニアンが時間に依存していないときにのみ使われる)。

テンプレート:Equation box 1

この方程式は、ハミルトニアンを波動関数 Ψ に作用させた結果が、元の波動関数に比例する場合がある、と主張している。この時、波動関数は定常状態と呼ばれ、比例係数E はこの状態のエネルギーになっている。線型代数学では、この式はハミルトニアンの固有値方程式、E はハミルトニアンの固有値、<math>|\Psi\rangle</math> は固有値E に対応する固有ベクトル、また <math>\Psi(\boldsymbol{r})</math> は固有関数と呼ばれる。

ファイル:Wavefunction values.svg
波動関数に関係した量の図表にしたまとめ。ド・ブロイの仮説とシュレーディンガー方程式の発展を使う[4]

ハミルトニアンが時間の陽関数であるなら、方程式は次元と時間の部分に分離できる。すなわち <math>\Psi(x,t)=\psi(x)\tau(t)</math>。そのためエネルギー演算子 <math> \hat{E} = i \hbar \partial / \partial t \,\!</math> はエネルギー固有値E に置き換えられることができる。抽象的な形では、これはハミルトニアン <math> \hat{H}</math> に対する固有方程式である[2]

<math>\hat H \psi(x) = E \psi(x) </math>

時間非依存型方程式の解は、エネルギーE のエネルギー固有状態と呼ばれる[5]

状態の時間依存を見つけるには、初期状態 ψ (r ) と共に時間依存方程式について考える。t = 0 での時間微分は、どこでもその値に比例する。

<math> \left.i\hbar \frac{\partial}{\partial t} \Psi(\boldsymbol{r},t)\right|_{t=0}= \left.H \Psi(\boldsymbol{r},t)\right|_{t=0} =E \Psi(\boldsymbol{r},0) \,</math>

そのため、最初の全体の関数は大きさを変え、時間微分がそれ自身に対して比例であるという特性を維持する。そのためすべての時刻t に対して

<math> \Psi(\boldsymbol{r},t)= \tau(t) \psi(\boldsymbol{r}) \,</math>

Ψ を代わりに使い

<math> i\hbar \frac{\partial \Psi}{\partial t }(\boldsymbol{r},t)

= E \Psi \rightarrow i\hbar \psi(\boldsymbol{r})\frac{\partial\tau(t)}{\partial t } = E \tau(t)\psi(\boldsymbol{r}) \,</math>

ψ(r ) は消し、そのため<math> \scriptstyle \tau(t)\,\!</math>でのこの方程式の解は、初期状態での時間依存方程式の解を意味している[6]

<math> \Psi(\boldsymbol{r},t) = \psi(\boldsymbol{r}) e^{-\frac{iE t}{\hbar}} = \psi(\boldsymbol{r}) e^{-i{\omega t}} \,</math>

この場合は(異なるエネルギーの確率分布の代わりの)一定のエネルギーと状態である、時間依存方程式の定常波解を説明する。物理学では、これらの定常波は基底状態やエネルギー固有状態と呼ばれる。化学では原子軌道分子軌道と呼ばれる。エネルギー固有状態の重ね合わせは、エネルギー準位間の相対位相に従ってそれらの特性を変える。

この方程式から得られるエネルギー固有値は、値の離散スペクトルを形成する。そのため、計算上はエネルギーは量子化されているはずである。より明白に言えば、エネルギー固有値は基礎(いかなる波動関数も離散エネルギー状態の合計、または連続エネルギー状態の積分、または計測量の積分により表現される)を形成する。これは数学スペクトル定理であり、有限状態空間でのエミルート行列の固有ベクトルの完全性と呼ばれるものである。

原子分子の場合、原子の離散スペクトル線が、エネルギーが原子で物理的に量子化されているという証拠であるというスペクトル定理に現れる。特に、原子には、電子原子または分子軌道(定常状態、波動関数)に関連したエネルギー準位がある。観測されたスペクトル線は一定の光の波長であり、上に述べたプランク-アインシュタインの関係とデブロイの関係での、一定のエネルギーと関連している。しかし、これはエネルギー準位の絶対値ではなく、観測された周波数を作るそれらの違いは、原子が放出/吸収した光の光子間の電子遷移が原因である。

具体例

前と同様に電場中(磁場はない)で動く粒子の例が有名で、以下の形になる。

テンプレート:Equation box 1

以下は、異なる状況(時間依存や非依存、一次元と三次元、一つまたはN個の粒子)に対してシュレーディンガー方程式のいくつかの形式である。実際的に、系を構成する粒子は理論で使われる数のラベルを持ってはいない。数学の言語は我々に、粒子の位置に一通りかその他のラベル付けを迫り、さもなければ粒子の変数を表す記号に対して混乱が生じてしまう[7]

式のまとめ

非相対論的ハミルトニアンについて、シュレーディンガー方程式とその形式的な解をまとめる。一次元一粒子の場合、偏微分は通常の微分になることに注意。

1 粒子 N 粒子
一次元 <math> \hat{H} = \frac{\hat{p}^2}{2m} + V(x) = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{d x^2} + V(x)</math> <math> \begin{align}\hat{H} &= \sum_{n=1}^{N}\frac{\hat{p}_n^2}{2m_n} + V(x_1,x_2,\cdots x_N) \\

& = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\frac{\partial^2}{\partial x_n^2} + V(x_1,x_2,\cdots x_N) \end{align}</math>

粒子 n の位置はxn

<math> E\Psi = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{d x^2}\Psi + V\Psi </math> <math> E\Psi = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\frac{\partial^2}{\partial x_n^2}\Psi + V\Psi \, .</math>
<math> \Psi(x,t)=\psi(x) e^{-iEt/\hbar} \, . </math>

さらに制約がある。解は無限に大きくなり、そのため有限なL 2 ノルム束縛状態であるなら)か、ゆるやかに発散するノルム(連続体の一部なら)を持つ必要がある。 [8]

<math>\| \psi \|^2 = \int |\psi(x)|^2\, dx.\,</math>

<math> \Psi = e^{-iEt/\hbar}\psi(x_1,x_2\cdots x_N) </math>

相互作用しない粒子では

<math> \Psi = e^{-i{E t/\hbar}}\prod_{n=1}^N\psi(x_n) \, , \quad V(x_1,x_2,\cdots x_N) = \sum_{n=1}^N V(x_n) \, .</math>

三次元 <math> \begin{align}\hat{H} & = \frac{\hat{\boldsymbol{p}}\cdot\hat{\boldsymbol{p}}}{2m} + V(\boldsymbol{r}) \\

& = -\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2 + V(\boldsymbol{r}) \end{align}</math>

粒子の位置はr = (x, y, z)。

<math> \begin{align} \hat{H} & = \sum_{n=1}^{N}\frac{\hat{\boldsymbol{p}}_n\cdot\hat{\boldsymbol{p}}_n}{2m_n} + V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\cdots\boldsymbol{r}_N) \\

& = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\nabla_n^2 + V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\cdots\boldsymbol{r}_N) \end{align}</math>

粒子n の位置はr n = (xn , yn , zn )で、対応した位置座標を使った粒子n のラプラシアン ∇2 は <math>\nabla_n^2=\frac{\partial^2}{{\partial x_n}^2} + \frac{\partial^2}{{\partial y_n}^2} + \frac{\partial^2}{{\partial z_n}^2}</math>

<math> E\Psi = -\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\Psi + V\Psi </math> <math> E\Psi = -\frac{\hbar^2}{2}\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{m_n}\nabla_n^2\Psi + V\Psi </math>
<math> \Psi = \psi(\boldsymbol{r}) e^{-iEt/\hbar} </math> <math> \Psi = e^{-iEt/\hbar}\psi(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\dots, \boldsymbol{r}_N) </math>

相互作用しない粒子では

<math> \Psi = e^{-i{E t/\hbar}}\prod_{n=1}^N\psi(\boldsymbol{r}_n) \, , \quad V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2, \dots , \boldsymbol{r}_N) = \sum_{n=1}^N V(\boldsymbol{r}_n) </math>

以下は正確な解が知られている例である。詳細は記事を参照。

一次元の例

自由粒子

ポテンシャルがないV = 0 の場合、粒子は自由であり、シュレーディンガー方程式は[9]

<math> - E \psi = \frac{\hbar^2}{2m}{d^2 \psi \over d x^2}\,</math>

E > 0(C n は任意定数)の場合、振動解を持ち、

<math>\psi_E(x) = C_1 e^{i\sqrt{2mE/\hbar^2}\,x} + C_2 e^{-i\sqrt{2mE/\hbar^2}\,x}\,</math>

E < 0 の場合、指数解を持つ。

<math>\psi_{-|E|}(x) = C_1 e^{\sqrt{2m|E|/\hbar^2}\,x} + C_2 e^{-\sqrt{2m|E|/\hbar^2}\,x}.\,</math>

指数的に増大する解は無限ノルムを持ち、物理的ではない。この解は有限の空間における周期的境界条件や固定境界条件では許されない。

一定なポテンシャル

ポテンシャルが一定V = V 0 の場合、シュレーディンガー方程式の解はエネルギーが古典的に許されるかどうかによって異なり、E > V 0 のときは振動解E < V 0 のとき指数解になる。振動解では粒子は古典的に許されたエネルギーを持ち、解は実際の古典的な運動に対応する。一方で指数解では粒子は古典的に許されないエネルギーを持ち、トンネル効果のため、古典的に許されない領域へも波動関数が滲むことを記述する。ポテンシャルV 0 が無限に大きい場合、運動は古典的な有限の領域に制限される。つまり、全ての解は充分遠方で指数的になる。減少的な指数解によりエネルギー準位は、allowed energies許容準位)と呼ばれる離散集合に制限する[5]テンプレート:-

調和振動子

ファイル:QuantumHarmonicOscillatorAnimation.gif
古典力学(A-B)と量子力学(C-H)での調和振動子。(A-B) では、バネのついた球が前後に振動する。(C-H) は量子力学における 6 つの解である。横軸は位置、縦軸は波動関数の実数部(青)と虚数部(赤)。定常状態エネルギー固有状態は時間に依存しないシュレーディンガー方程式の解として得られる。図では C,D,E,F は定常状態だが G,H は非定常状態である。

テンプレート:Main 調和振動子のシュレーディンガー方程式は

<math> E\psi = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{d x^2}\psi + \frac{1}{2}m\omega^2x^2\psi </math>

注目すべきこととして、この量子系は解が厳密に求まり(しかしエルミート多項式のために複雑)、また、振動する原子や分子[10]やまた格子上の原子やイオン[11]、あるいは平衡点近傍で近似したポテンシャルを持つ系など、他の幅広い系を記述し、あるいは近似することができる。このことはまた量子力学における摂動論の基礎を成している。

調和振動子のシュレーディンガー方程式の解は、一般にエルミート多項式を用いて表される。位置表示の波動関数については以下のように与えられる。

<math> \psi_n(x) = \sqrt{\frac{1}{2^n\,n!}} \cdot \left(\frac{m\omega}{\pi \hbar}\right)^{1/4} \cdot e^{

- \frac{m\omega x^2}{2 \hbar}} \cdot H_n\left(\sqrt{\frac{m\omega}{\hbar}} x \right). </math>

ここでn = 0,1,2,... であり、関数Hnエルミート多項式である。

三次元の例

水素原子

テンプレート:Main シュレーディンガー方程式の形式は、水素原子に応用ができる[4][12]

<math> E \psi = -\frac{\hbar^2}{2\mu}\nabla^2\psi - \frac{e^2}{4\pi\epsilon_0 r}\psi </math>

e電気素量で、r電子の位置(r = |r | は位置ベクトルの大きさで、原点からの距離を表す)、ハミルトニアンのポテンシャル項はクーロンの法則を表し、ε0真空の誘電率

<math> \mu = \frac{m_em_p}{m_e+m_p} </math>

は、質量mp水素原子核(プロトン)と質量me電子の二体換算質量である。陽子電子は逆の電荷を持つから、ポテンシャルの項に負符号が現れる。電子質量の代わりに換算質量が使われるのは、電子と陽子が互いに共通の質量中心の周りを運動しているためであり、解くべき問題は二体問題になる。ここでは主に電子の運動に興味があるので、等価な一体問題として、換算質量を使った電子の運動を解くことになる。

水素に対する波動関数は電子の座標の関数で、実際にはそれぞれの座標の関数に分離できる[13]。普通はこれは球面座標系でなされる:

<math> \psi(r,\theta,\phi) = R(r)Y_\ell^m(\theta, \phi) = R(r)\Theta(\theta)\Phi(\phi)</math>

<math>\scriptstyle R(r)</math> は動径関数で、<math>\scriptstyle Y_{\ell}^{m}(\theta, \phi ) \,</math> は次数 ℓ と位数m球面調和関数である。水素原子はシュレーディンガー方程式が厳密に解かれる唯一の原子である。多電子原子は近似方法を必要とする。解の仲間は[14]

<math> \psi_{n\ell m}(r,\theta,\phi) = \sqrt {{\left ( \frac{2}{n a_0} \right )}^3\frac{(n-\ell-1)!}{2n[(n+\ell)!]} } e^{- r/na_0} \left(\frac{2r}{na_0}\right)^{\ell} L_{n-\ell-1}^{2\ell+1}\left(\frac{2r}{na_0}\right) \cdot Y_{\ell}^{m}(\theta, \phi ) </math>

ここで

<math> \begin{align} n & = 1,2,3 \cdots \\

\ell & = 0,1,2 \cdots n-1 \\ m & = -\ell\cdots\ell \end{align}</math>

ニ電子原子またはイオン

中性のヘリウム原子(He, Z = 2)や、陰性の水素イオン(H, Z = 1)、陽性のリチウムイオン(Li+, Z = 3)のような、いかなる二電子系に対する方程式は[15]

<math> E\psi = -\hbar^2\left[\frac{1}{2\mu}\left(\nabla_1^2 +\nabla_2^2 \right) + \frac{1}{M}\nabla_1\cdot\nabla_2\right] \psi + \frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\left[ \frac{1}{r_{12}} -Z\left( \frac{1}{r_1}+\frac{1}{r_2} \right) \right] \psi </math>

r 1 はひとつの電子の位置(r 1 = |r 1| はその大きさ)で、r 2 はもうひとつの電子の位置(r2 = |r 2| はその大きさ)である。r 12 = |r 12| はそれらの間の距離の大きさであり、r 12 は以下で与えられる。

<math> \boldsymbol{r}_{12} = \boldsymbol{r}_2 - \boldsymbol{r}_1 \,\!.</math>

μ は再び質量M の原子核に対応した電子の二体換算質量であり、ここでは

<math> \mu = \frac{m_e M}{m_e+M} \,\!</math>

そして、Z は元素に対する原子番号である(量子数ではない)。

2 つのラプラシアンの交差項

<math>\frac{1}{M}\nabla_1\cdot\nabla_2\,\!</math>

は、mass polarization term として知られ、原子核の運動が原因で現れる。波動関数は 2 つの電子の位置の関数である。

<math> \psi = \psi(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2). </math>

この方程式に対する閉形式解はない。

解の物理的意味

シュレーディンガー方程式とその解は物理学を飛躍的に進歩させた。シュレーディンガー方程式の解からは当時は予想できなかった結論が得られた。

量子化

シュレーディンガー方程式は、物理量は量子化される(離散的な値だけが現れる)事があると予測する。例としてエネルギーの量子化があり、原子中の電子のエネルギーは常に離散的になる。これを表したのがエネルギー準位であり、これは原子分光分析で確認されている。また他の例として角運動量の量子化がある。これは初期のボーアの原子模型の時には仮定であったが、シュレーディンガー方程式から導出されるものである。

ただしすべての測定値が量子化されるわけではなく、例えば、位置運動量時間エネルギーは、連続した範囲の値を取り得る。

観測と不確実性

テンプレート:Main 古典力学では、粒子は常に定まった位置と運動量の組を持つ。これらの値はニュートン力学一般相対論に従って、決定論的に変化する。しかし量子力学では、粒子は定まった物理量を持たず、観測するたびにある確率分布に従ってランダムに測定結果が決まる。シュレーディンガー方程式はその確率分布を予測するが、本質的に個々の観測の正確な結果を予想することは出来ない。不確定性原理は量子力学が本来的に持つ不確実性の有名な例である。それは、より正確に粒子の位置を確認すると運動量が曖昧になり、その逆も同様となることを主張している。シュレーディンガー方程式は、粒子の波動関数の決定論的な時間発展を説明する。しかし波動関数が厳密に分かったとしても、その波動関数に対して行われる具体的な観測の結果を決める事はできない。

トンネル効果

テンプレート:Main 古典物理学では、ボールをゆっくりと山の頂上に向けて転がすと、やがてボールは止まり、転がって戻ってくる。これはボールが山の頂上に辿り着き反対側へ行くのに必要なエネルギーを持っていないためである。しかしシュレーディンガー方程式は、ボールが頂上へたどり着くのに十分なエネルギーを持っていなくても、山の反対側へ到達する小さな可能性が存在することを予想している。これがトンネル効果と呼ばれている。これは不確定性原理に関係している。ボールが山のこちら側にいるように見えても、その位置は不確実であり、反対側で確認される可能性がある。

テンプレート:Multiple image

粒子の波動性

テンプレート:Main

ファイル:Double-slit experiment results Tanamura 2.jpg
二重スリットにおいてスクリーンに到達した電子の個数が時間変化する様子。日立製作所・外村彰らによる実験。

非相対論的なシュレーディンガー方程式は波動方程式とも呼ばれる偏微分方程式の一種である。そのためよく粒子は波として振る舞うのだと言われる。現代の多くの解釈ではこの逆に、量子状態(つまり波)が純粋な物理的実在であり、ある適切な条件の下では粒子としての性質を示すのだとされる。

二重スリット実験は、通常は波が示す、直感的には粒子と関連しない奇妙な振る舞いの例として有名である。ある場所では二つのスリットから来た波同士が打ち消し合い、別の場所では強め合うことで、複雑な干渉縞が現れる。直感的には1個の粒子のみを打ち出した時には、どちらかのスリットのみを通り両方のスリットからの寄与の重ね合わせにならないため、干渉縞は現れないように感じられる。

ところが、シュレーディンガー方程式は波動方程式であるから、一粒子のみを二重スリットに打ち出した時にも同じ干渉縞が「現れる」(左図)。なお、干渉縞が現れるためには実験を繰り返し何度も行う必要がある。このように干渉縞が現れるという事は個々の電子が「両方」のスリットを同時に通る事を示している[16][17][18]。直感と反する事ではあるが、この予言は正しく、この考えで電子回折中性子回折をよく理解でき、科学や工学で広く使われている。

回折の他に、粒子は重ね合わせ干渉の性質を示す。重ね合わせの性質によって、粒子は古典的には異なる 2 つ以上の状態を同時にとる事ができる。例えば、粒子は同時に複数のエネルギーを持つことや、異なる場所に同時にいる事ができる。二重スリットの実験の例では 2 つのスリットを同時に通ることができるのである。古典的なイメージに反する事ではあるがこの重ね合わせ状態は一つの量子状態のままである。

テンプレート:Multiple image

線型性と平面波

最も単純な波動関数は平面波である:

<math> \Psi(\boldsymbol{r},t) = A e^{i(\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}-\omega t)}\,.</math>

ここでA は平面波の振幅k波数ベクトル、ω は角振動数を表す。一般には、純粋な平面波だけで物理系を記述することはできないが、一般に重ね合わせの原理が成り立つため、すべての波は正弦の平面波の重ね合わせによって作られる。シュレーディンガー方程式が線型なら、平面波の線型結合も解として許される。従って、重ね合わせの原理が成り立つならば、シュレーディンガー方程式は線形微分方程式になる必要がある。

波数k が離散的な場合には、&Psiの和は平面波の重ねあわせである:

<math> \Psi(\boldsymbol{r},t) = \sum_{n=1}^\infty A_n e^{i(\boldsymbol{k}_n\cdot\boldsymbol{r}-\omega_n t)}. \,\!</math>

波数k が連続的な場合には和は積分で表され、波動関数 Ψ(r , t ) は波数空間の波動関数のフーリエ変換となる[5]

<math> \Psi(\boldsymbol{r},t)

= \frac{1}{(\sqrt{2\pi})^3}\int\Phi(\boldsymbol{k})e^{i(\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}-\omega t)}d^3\boldsymbol{k} \,\!</math>

ここでd 3k = dkx dky dkz は波数空間での微小体積であり、積分は波数空間の全体にわたって行われる。運動量波動関数 Φ(k ) が被積分関数として現れているが、これは、位置の波動関数と運動量の波動関数が互いのフーリエ変換であることから生じる。

エネルギー保存則との整合性

粒子の全エネルギーE は、運動エネルギーT位置エネルギーV の和である。この和は古典力学では、ハミルトニアンH を表すためにもよく使われる。

<math>E = T + V =H \,\!</math>

明示的に、一次元の粒子について、位置をx質量m運動量p 、位置と時刻t によって変化するポテンシャルエネルギーV (x , t ) とすると

<math> E = \frac{p^2}{2m}+V(x,t)=H.</math>

三次元では、位置ベクトルr と運動量ベクトルp が使われる。

<math>E = \frac{\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{p}}{2m}+V(\boldsymbol{r},t)=H</math>

この形式は任意の一定数の粒子の集まりにまで拡大できる。つまり、系の全エネルギーは全ての粒子の運動エネルギーと、系のポテンシャルエネルギーを足しあわせたものであり、またハミルトニアンでもある。しかし、粒子間には相互作用多体問題)がある可能性があるため、系のポテンシャルエネルギーV は全粒子の空間的な配置の変化と、あるいは時間によって変化する。一般的には系のポテンシャルエネルギーは、それぞれの粒子の持つ位置エネルギーの合計ではなく、粒子のすべての空間位置の関数である。明示的に書くと、

<math>E=\sum_{n=1}^N \frac{\boldsymbol{p}_n\cdot\boldsymbol{p}_n}{2m_n} + V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2\cdots\boldsymbol{r}_N,t) = H. \,\!</math>

シュレーディンガー方程式の導出

テンプレート:Main

シュレーディンガー方程式は、その解がのような動きを表現する関数であるので、数学的には波動方程式と言える。

普通、物理学での波動方程式は他の物理的法則から導かれる。例えば弦や物体の自然振動の波動方程式はニュートンの法則から求められ、そこでは波動関数は物質の変位を表す。電磁波マクスウェルの方程式から導かれ、そこでは波動関数は電場磁場を表す。

その一方で、シュレーディンガー方程式の基礎は粒子のエネルギーと、量子力学の仮定である。すなわち、波動関数は系の記述である。シュレーディンガー方程式はそれゆえ、ファインマンが言うように、それ自身の新しい概念である。

テンプレート:Cquote この方程式は、古典的なエネルギー保存則に立脚する線型微分方程式という構造を持ち、ド・ブロイの関係と整合的である。その解は波動関数 Ψ であり、それは系について知りうる全ての情報を含んでいる。コペンハーゲン解釈では、Ψ の絶対値 |Ψ| は、粒子がある瞬間にある空間配置にいる確率に関係する。方程式を解いて波動関数 Ψ を得れば、具体的なポテンシャルの影響下で粒子が互いに影響し合いながらどのように振る舞うかが予測できる。

シュレーディンガー方程式は原理的には、波動方程式が粒子を記述し得るという、ド・ブロイの仮説を基に成り立ち[4]、後述する方法で構成される[15]。より厳密なシュレーディンガー方程式の数学的導出については例えば [7] を参照。

ド・ブロイの関係との整合性

アインシュタイン光電効果仮説(1905年)によれば、光子のエネルギーE は、光の対応する光量子波束周波数 ν(もしくは角周波数 ω = 2πν)に比例する。

<math>E = h\nu = \hbar \omega \,\!</math>

同様に、ド・ブロイの仮説(1924年)によれば、どのような粒子も波と関連付けることができ、その粒子の運動量p は、波数ベクトルk に比例する:

<math>\boldsymbol{p} = \hbar \boldsymbol{k}\;.</math>

特に、1 次元の運動では波数ベクトルk の絶対値は波長 λ に反比例する (k = 2π/λ)。従って、1 次元の運動に限定すれば、上の式は波長 λ を使って以下のように書くこともできる:

<math>p = \frac{h}{\lambda}</math>

プランク-アインシュタインの関係とド・ブロイの関係

<math>E=\hbar\omega, \quad \boldsymbol{p}=\hbar\boldsymbol{k} </math>

は、運動量空間時間エネルギーの間の深い関係を照らしており、波動性と粒子性の二重性を表している。ħ = 1 となるような自然単位系を用いて、方程式 を以下の恒等式 にするとより明白となる。

<math>E=\omega, \quad \boldsymbol{p} = \boldsymbol{k}. </math>

このような単位系の下では、エネルギーと角振動数時間逆数として同じ次元を持ち、運動量波数は長さの逆数の次元を持つ。したがって、エネルギーと角振動数、運動量と波数は互いに同じものとして入れ替えて使うことができる。自然単位系を用いることによって文字の重複を防ぎ、現れる物理量の次元を減らすことができる。しかしながら自然単位系は馴染みがないため、本稿では以降もSI単位系を用いる。

1925年の終わり、シュレーディンガーの見識は、平面波位相は以下の関係を使って複素数力率として表した。

<math>\Psi(\boldsymbol{r},t)

= Ae^{i(\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}-\omega t)} = Ae^{i\frac{\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{r}-Et}{\hbar}}. </math> そして空間に対する一次偏微分

<math> \nabla\Psi(\boldsymbol{r},t) = \dfrac{i}{\hbar}\boldsymbol{p}Ae^{i\frac{\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{r}-Et}{\hbar}} = \dfrac{i}{\hbar}\boldsymbol{p}\Psi(\boldsymbol{r},t) </math>

そして時間に対して

<math> \dfrac{\partial \Psi}{\partial t}(\boldsymbol{r},t)
= -\dfrac{i E}{\hbar} Ae^{i\frac{\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{r}-Et}{\hbar}}
= -\dfrac{i E}{\hbar} \Psi(\boldsymbol{r},t)</math>

導関数を示す

<math>

\begin{cases} -i\hbar\nabla\Psi(\boldsymbol{r},t) = \boldsymbol{p}\Psi(\boldsymbol{r},t)\\ \dfrac{\partial \Psi}{\partial t}(\boldsymbol{r},t) = -\dfrac{i E}{\hbar} \Psi(\boldsymbol{r},t) \end{cases} \rightarrow \quad \begin{cases} -\dfrac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\Psi(\boldsymbol{r},t) = \dfrac{1}{2m}\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{p}\Psi(\boldsymbol{r},t) \\ i\hbar\dfrac{\partial \Psi}{\partial t}(\boldsymbol{r},t) = E \Psi(\boldsymbol{r},t) \end{cases}</math>

もう一つの量子力学の仮定は、すべてのオブザーバブルは波動関数に作用する自己共役線型演算子で表され、その演算子の固有値はオブザーバブルの取り得る値になる。前の導関数は、時間微分に対応するエネルギー演算子と

<math>\hat{E}= i\hbar\dfrac{\partial}{\partial t} </math>

空間微分(ナブラ)に対応する運動量演算子を導く。

<math>\hat{\boldsymbol{p}}= -i\hbar\nabla</math>

ハット (^) は、観測量が演算子であることを示す。演算子は通常の数では表されず、運動量やエネルギーの演算子は微分演算子で表されるが、位置やポテンシャルエネルギーの演算子に関してはただの掛け算演算子になる。面白い点は、エネルギーは時間に関して対称性で、運動量は空間に関して対称性であり、そしてそれらの対称性はエネルギーと運動量の保存則が成り立つ理由である。ネーターの定理を参照。

エネルギー方程式に Ψ を掛け、エネルギー・運動量演算子を置換する。

<math>E= \dfrac{\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{p}}{2m} + V(\boldsymbol{r}) \rightarrow

\hat{E}\Psi(\boldsymbol{r},t) = \dfrac{\hat{\boldsymbol{p}}\cdot\hat{\boldsymbol{p}}}{2m}\Psi(\boldsymbol{r},t) + V(\boldsymbol{r})\Psi(\boldsymbol{r},t)</math>

すぐにシュレーディンガーに彼の方程式を導く。

<math>i\hbar\dfrac{\partial \Psi}{\partial t}(\boldsymbol{r},t)

= -\dfrac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\Psi(\boldsymbol{r},t) + V(\boldsymbol{r})\Psi(\boldsymbol{r},t)</math>

これらの方程式から、粒子と波の二重性について次のような評価が与えられる。運動エネルギーT運動量p の二乗に関係する。粒子の運動量が増えれば、運動エネルギーはより早く増加する。しかし波数k が増加するため、波長 λ が減少する。

<math> \boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{p} \propto \boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{k} \propto T \propto \dfrac{1}{\lambda^2}</math>

そして運動エネルギーは二次空間微分に比例するから、波の曲率の強さにも比例する。

<math> \hat{T} = \frac{-\hbar^2}{2m}\nabla\cdot\nabla \propto \nabla^2 \,.</math>

曲率が増えるごとに、波の振幅はより速く交互に正負を動き、波長を短くする。運動量と波長の逆比例の関係は粒子の持つエネルギーに整合し、すべての数式で、粒子のエネルギーは波と結び付けられる[4]

古典力学との関係

テンプレート:Multiple image

シュレーディンガーが要求したのは以下のようなことである: 位置がr の近くであり, 波数ベクトルがk の近くであるような波束を表す解は, k (従って速度)の広がりがr の広がりを顕著に増やすようなことがないくらいに十分に短い時間内で, 古典力学で決定される曲線を描く。

与えられたk の広がりに対して、速度の広がりはプランク定数に比例するから、プランク定数をゼロに近似したとき、古典力学での方程式は量子力学から導出されると言われる[19]。その極限がどのように取られるか、またどんな状況でかという点で細心の注意が払われる必要がある。

短波長極限はプランク定数をゼロに近似することと等価である。なぜならこれは、波束の局在性を極限まで強め, 粒子を特定の位置に局在化させることだからである(右図を参照)。ハイゼンベルクの不確定性原理を位置と運動量に対して使うと、位置の不確定性と運動量の不確定性の積は、ħ → 0に従ってゼロとなる。

<math> \sigma(x) \sigma(p_x) \geqslant \frac{\hbar}{2} \quad \rightarrow \quad \sigma(x) \sigma(p_x) \geqslant 0 \,\!</math>

ここでσ は観測量の偏差二乗平均平方根であり、位置x と運動量pxyz についても同様)がこの任意の精度で知られるのはこの極限においてでしかない、ということが示唆される。

シュレーディンガー方程式の一般式

<math> i\hbar \frac{\partial}{\partial t} \Psi\left(\boldsymbol{r},t\right) = \hat{H} \Psi\left(\boldsymbol{r},t\right) \,\!</math>

ハミルトン-ヤコビ方程式

<math> \frac{\partial}{\partial t} S(q_i,t) = H\left(q_i,\frac{\partial S}{\partial q_i},t \right) \,\!</math>

と密接に関連している。

ここでS作用H は古典力学におけるハミルトニアン関数演算子ではない)。ハミルトン-ヤコビ方程式で使われる一般化座標系qi (i = 1,2,3) は、r = (q 1, q 2, q 3) = (x, y, z ) としてデカルト座標系の位置に置き換えられる[19]

代入式

<math> \Psi(\boldsymbol{r},t) = \sqrt{\rho(\boldsymbol{r},t)} e^{iS(\boldsymbol{r},t)/\hbar}\,\!</math>

ここで ρ(r , t ) はシュレーディンガー方程式に対する確率振幅である。この波動関数を代入した方程式で極限 ħ → 0を取り、ハミルトン-ヤコビ方程式を導く。

関わりあいは、

  • 粒子の動き(シュレーディンガー方程式の(短波長)波束解で説明される)は、動きのハミルトン-ヤコビ方程式により説明される。
  • シュレーディンガー方程式は波動関数を含み、そのため波束解は(量子)粒子の位置が、波面にあいまいに広がることを示している。それどころか、ハミルトン-ヤコビ方程式は、定位置定運動量の(古典的)粒子に適用され、その代わり(軌道上の)位置や運動量は決定論的で、同時に知られる。

古典力学と量子力学の時間発展

古典力学における運動方程式ニュートン力学運動の第2法則であり、これと等価な式としてオイラー=ラグランジュ方程式正準方程式(ハミルトン方程式)がある。これらの方程式は、力学系の運動を解き、初期条件や系の配置を指定した時に任意の時間に力学系がどのように振る舞うかを数学的に予測するために使われる。

他方で量子力学では、量子系(通常原子分子亜原子粒子のような自由か束縛されているか局在しているもの)のシュレーディンガー方程式が、古典力学における運動方程式に対応し、状態の時間発展を記述する。 ニュートンの運動の第2法則のように、シュレーディンガー方程式はヴェルナー・ハイゼンベルク行列力学や、リチャード・P・ファインマン経路積分のような等価な別の表現に書き換えることができる。

解法

テンプレート:Multicol 一般的な方法

テンプレート:Multicol-break

特殊な場合の方法

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相対論とシュレーディンガー方程式

ニュートンの運動方程式と同じように、シュレーディンガー方程式における時間の扱いは、相対論的な記述にするには不都合である。この問題は行列力学では波動力学ほど深刻ではなく、経路積分の方法では全く問題にならない。シュレーディンガー方程式は、通常の波動方程式偏微分し、ド・ブロイの仮説から、波の波長を粒子の運動量で置き替えることで導かれる。

歴史的背景と発展

マックス・プランクの光の量子化(黒体輻射を参照)にしたがって、アルベルト・アインシュタインは、プランクの量子光子(光の粒子)であると説明し、光子のエネルギーはその波長に比例すると提案している(これが波動と粒子の二重性の最初の現れ)。エネルギー運動量特殊相対性理論波長波数と同じ方法で関係しているから、光子の運動量p が波数k と比例関係にあることがわかる。

<math>p = \frac{h}{\lambda} = \hbar k.</math>

ルイ・ド・ブロイは、粒子が電子のようなものでも、すべての粒子に対してこの式が正しいと仮説を立てた。 ド・ブロイは、物質波がそれと対応する粒子に伴って伝搬すると仮定すると、電子は定常波を形成する、つまり原子核のまわりで離散的な回転周波数のみが許されることを示した[20]。 これらの量子化された軌道は不連続なエネルギー準位に対応し、ド・ブロイはボーアの原子模型がエネルギー準位を形成することを再現した。ボーアの原子模型は角運動量の量子化の仮定の上で成り立っている。

<math> L = n{h \over 2\pi} = n\hbar.</math>

ド・ブロイによれば、電子で表現され、波長の数は電子の軌道の円周上にぴったり収まらねばならない。従って、

<math>n \lambda = 2 \pi r.</math>

このアプローチは本質的に、電子の波を半径r の円周軌道に沿った一次元に限定して考えている。

1921年、ド・ブロイに先立ち、シカゴ大学のアーサー・C・ランが、今で言うド・ブロイの関係を導くために、相対性理論四元運動量の完成を基にした同様の主張を使った[21]。ド・ブロイと違って、ランはさらに進んで、現在シュレーディンガー方程式と呼ばれるところの微分方程式を定式化し、水素原子のエネルギーの固有値を解いた。不幸にもこの論文はフィジカル・レビューに却下されてしまった。Kamen はこの詳細を述べている[22]

ド・ブロイの理論が登場すると、物理学者ピーター・デバイは即座に、もし粒子が波として振る舞うなら、それらは何らかの形の波動方程式を満たすべきだと論評した。デバイの見解に刺激を受け、シュレーディンガーは電子の適切な 3 次元波動方程式を見つけようと決意した。シュレーディンガーは、光学力学を結ぶウィリアム・ローワン・ハミルトン類推に導かれた。それは、波長を 0 にする極限では光学系は力学系に似るという考え方である(ゼロ波長極限での光の経路は、フェルマーの原理に従った明確な軌跡を描く。光学におけるフェルマーの原理の力学における対応物は最小作用の原理である)[23]。彼の論証を現代的な表現で以下に記述する。彼の発見した方程式は[6]

<math>i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\Psi(\boldsymbol{r},t)=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\Psi(\boldsymbol{r},t) + V(\boldsymbol{r})\Psi(\boldsymbol{r},t).</math>

しかしそのとき既に、アルノルト・ゾンマーフェルト相対論補正を使ってボーアの原子模型を改良していた[24][25]。シュレーディンガーは相対性理論のエネルギーと運動量の関係を使って、現在ではクーロンポテンシャルにおけるクライン-ゴルドン方程式として知られるものを見つけようとした:

<math>\left(E + {e^2\over r} \right)^2 \psi(x) = - \nabla^2\psi(x) + m^2 \psi(x).</math>

彼はこの相対論的方程式において定常波を発見したが、相対論補正はゾンマーフェルトの公式と一致しなかった。落胆して彼は計算をやめ、1925年12月、彼は人里離れた山小屋に引きこもってしまった[26]

山小屋でシュレーディンガーは、初期の非相対論的計算は発表に値する新しさがあると認め、将来にわたって相対論的修正の問題から手を引くことを決めた。水素原子におけるシュレーディンガー方程式の解の難しさ(後に彼は友人の数学者ヘルマン・ワイルに助けられている)にもかかわらず、シュレーディンガーは1926年に発表した論文で、彼の非相対論的な波動方程式は水素の正しいスペクトルのエネルギーを導出することを示している。 その方程式で、シュレーディンガーは水素原子の電子を波 Ψ(x , t ) として扱い、陽子によって作られるポテンシャルの井戸V の中で動くとした上で、水素スペクトル系列を計算した。この計算はボーアの原子模型エネルギー準位を正確に再現した。論文でシュレーディンガーは自分でこの方程式を以下のように説明している。

テンプレート:Cquote

この1926年の論文はアインシュタインに熱狂的に支持された。アインシュタインは物質波を自然の直感的な表し方として見ており、ハイゼンベルク行列力学をあまりに形式的だと非難していた[27]

シュレーディンガー方程式は波動関数 Ψ の振舞いの詳細を述べるが、その本質について何も述べない。シュレーディンガーは 4 報目の論文で、これを電荷密度として理解しようとしたが、失敗した[28]1926年、シュレーディンガーの 4 報目かつ最後の論文が発表された数日後、マックス・ボルンは波動関数 Ψ を確率振幅(その絶対値の二乗 |Ψ|2確率密度に等しい)として解釈することに成功した[29]。しかしシュレーディンガーは常に統計学的、確率的なアプローチと、それに関連した波動関数の崩壊を反対しており(アインシュタインのように、量子力学はその背後にある決定論に関する統計学的近似であると信じていた)、ついにコペンハーゲン解釈と和解することはなかった[30]。 ド・ブロイは後年、比例係数によって複素関数と対応付けられる実数値波動関数を提唱し、ド・ブロイ=ボーム理論を生み出した。

注釈

  1. ラゲールの陪多項式は文献によって異なった定義がなされる。ラゲールの陪多項式水素原子を参照。

参考文献

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  20. テンプレート:Cite journal Translated version.
  21. テンプレート:Cite journal
  22. テンプレート:Cite book
  23. テンプレート:Cite book See introduction to first 1926 paper.
  24. テンプレート:Cite book
  25. For an English source, see テンプレート:Cite journal
  26. テンプレート:Cite book
  27. テンプレート:Cite journal
  28. テンプレート:Cite book
  29. テンプレート:Cite book
  30. It is clear that even in his last year of life, as shown in a letter to Max Born, that Schrödinger never accepted the Copenhagen interpretation (cf. p. 220). テンプレート:Cite book

関連項目

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