ゴナ
ゴナは、写研のゴシック体。手動写植機のほか、電算写植・専用組版機に対応したフォント製品。書体デザインは中村征宏による。
概要
写研からの依頼をうけ、書体デザイナーの中村征宏(ナールの作者)がデザイン、1975年にこれまでになかった“超太ゴシック体”として「ゴナU」がリリースされた。書体名は「ナカムラ」の「ゴシック」が由来とされる。
超太かつ幾何学的なラインで構成され強いインパクトを持つゴナUは、タイトル・見出し用書体として開発されたものであったが、1979年にUより若干細い「ゴナE」が発売された。その後「ゴナM」と「ゴナDB」の試作文字が三菱銀行の制定書体と決まったことから書体ファミリー展開が決定し、当時写研の社員であった鈴木勉をリーダーとするチームに、中村が監修を行う形でラインナップを揃えた[1]。また、白抜きの「ゴナO」、影付きの「ゴナOS」などの装飾書体のほか、組み替え用の仮名などがリリースされた。
モリサワの「新ゴシック体(現在の新ゴ)」、フォントワークスの「ロダン」、リョービイマジクスの「ナウG」などに多大な影響を与えたといわれるが、1993年3月、写研はモリサワの「新ゴシック体U」「新ゴシック体L」は、自社の「ゴナU」「ゴナM」の複製である、として訴えを起こしている。判決では「ゴシック体の範疇を抜けない範囲で制作されたものであるため、ゴナと新ゴシック体が結果的に似てしまうことは避けられない」とし、請求を退けた。なお、モリサワ側は逆にゴナこそ自社の書体「ツデイ」の複製である、と反訴したが、これも同様の理由で棄却されている。この訴訟は現代日本において、書体作家の地位や位置づけを考える上で重要な転換点になったとされている。
DTP黎明期の当時において、この騒動が皮肉にも「新ゴ=ゴナに似た書体」という認識を生むこととなり[2]、一部のグラフィックデザイナーらがDTPを導入するきっかけとなったとも言われる。結果としてDTPの普及が新ゴの隆盛を生み、逆に写植が衰退したことでゴナをはじめとした写研の書体は徐々にその活躍の場を失うこととなるが、書体としてのゴナの評価は依然として高い。
サイン分野では都市高速道路の標識にその使用例が見られる。
特徴
伝統的なゴシック体に比べ、ボディーいっぱいに線を引いているのが特徴のひとつ。したがって、通常のゴシック体と比較して同じ級数の文字でも大きく見え、字間、行間が狭く見える。
また、伝統的なゴシックでは線の端をやや太くする処理を施している(角立て)が、ゴナの場合は線がすべて均等である。他の書体と異なる特徴は、平仮名の「な」に顕著である。すなわち、「な」の右部分(「ナ」以外の部分)の初筆が水平で、その線の左端が縦棒の上端に接続しているのである。
ファミリー構成
- ゴナL (LNAG)
- ゴナM (MNAG)
- ゴナD (DNAG)
- ゴナDB (DBNAG)
- ゴナB (BNAG)
- ゴナE (ENAG)
- ゴナH (HNAG)
- ゴナU (UNAG)
- ゴナO (ONAG) - アウトライン
- ゴナOS (OSNAG) - アウトライン影付き
- ゴナIN (INNAG) - インライン(白線入り)
- ゴナLB (LBNAG)
- ゴナかなO
- ゴナかなW
- ゴナかなC