コイネー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コイネーギリシャ語から転送)
移動先: 案内検索

コイネーテンプレート:Lang-grc)は、アレクサンドロス大王帝国とその後継であるヘレニズム諸国で公用語として使用されたギリシア語。コイネーは「共通の」という意味で、古代ギリシア語アッティカ方言およびイオニア方言を基盤としており、現代ギリシア語の基礎となった。なお、文脈によっては(社会的、地域的その他の)方言が他の方言と影響を及ぼしあうなどして成立し、より広い範囲で通用するようになったことば全般を指すこともある[1][2]。後者の意味でのコイネーについては en:Koiné language も参照。

歴史

コイネーはヘレニズム諸国がローマ帝国に滅ぼされた後も東地中海世界共通語として機能し、新約聖書もこれで書かれた。ローマ帝国分裂後も東ローマ帝国で公用語、通商語として話され、中世ギリシア語(東ローマ帝国時代のギリシア語)を経て現代ギリシア語の基礎となった。

コイネーは後1世紀頃からはじまる音韻構造の移行の特徴を有しており、現代ギリシア語の発音とその語彙形態素はコイネーのそれと基本的に同一のものである。

現代ギリシア語の方言は、このコイネーから派生して、14世紀頃にも、 Le Livre Des Assises のギリシア語訳(キプロス方言の古文献)の語彙・文体にその痕跡が多々みられる。コイネーは、このように中世ギリシア語を束ねて「共通化」した言語体であり、現代ギリシア語の諸方言の生みの親となっている。したがって、該「コイネー」の古アテナイ方言が、現代ギリシア標準語の基礎となっている。ギリシア語の基礎は、したがって、コイネーにあるということができる。 作者として Polybius, Diodorus Siculus, Strabo, Plutarch, Epctetus, Artemidorus, Pseudo-Apollodorus, Vettius Valens など。[3]

聖書との関係

旧約聖書はコイネーの時代に書かれた。さらに、アレクサンドリアで作られた七十人訳聖書と、紀元2世紀前半のキリスト教著作に密接に関連している。

新約聖書のコイネーは、同一時代の文書に比べて文体が異なっているが、文学的でない日常語のパピルス文書とは一致している。さらに、新約聖書はヘブル語アラム語等のセム語の影響を強く受けている。 [4]

通時言語学的な「コイネー」への変遷の音韻変化

アッティカ方言 コイネー、現代ギリシア語 意味
-ττ- -σσ-
γλῶττα γλῶσσα
φυλάττω φυλάσσω 監視する
τέτταρες τέσσαρες
-ρρ- -ρσ-
ρρην ρσην
-εως -αος
νεώς ναός 宮、社
λεώς λαός
Λεώς (複数対格) λαούς 人民を
-αα -αια
ἐλάα ἐλαία オリーブ

脚注

  1. テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite web
  3. W.Bauer,A Greek-English Lexion
  4. グレシャム・メイチェン『新約聖書ギリシャ語原典入門』3-6ページ

関連項目

参考文献

脚注

  1. INTRODUCTION TO ANCIENT AND BIBLICAL GREEK