ジャストインタイム生産システム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カンバン方式から転送)
移動先: 案内検索

テンプレート:出典の明記 テンプレート:国際化 テンプレート:半保護 ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT)は、経済効率を高めるための技術体系(生産技術)である。トヨタ自動車の生産方式(トヨタ生産方式)の代表的な要素としてよく知られている。カンバン方式とも言われる。“必要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産する”こと。アメリカの自動車業界でもJIT(ジット)といえばこのことである。

概要

ジャストインタイム生産方式の最大の狙いは、工程間の仕掛在庫を最少に抑えることである。工程間在庫を最少にする究極の形とは、完全受注生産である。しかし、生産のプロセスを見た場合、オーダーから出荷までの間には数多くの工程が存在し、それが結果としてリードタイムの長時間化をもたらす。ニッチな製品の場合は顧客側も長リードタイムを受け入れる場合が多いが、一般的な大量生産品の場合は長リードタイム化はそのまま販売機会損失に繋がる。そのため、ある程度の見込み生産が発生するが、見込み生産の量が多いことは、資金の投資から回収までの期間を長くするため、キャッシュ・フローを見た場合、損失が大きい。また、販売不振による商品の切り替えが発生した場合、多量の仕掛在庫損失が発生することもある。

工程間在庫の最少化を狙って、生産指示票としてカンバンと呼ばれる帳票を利用する。このカンバンは、後工程に対しては納品書として加工品と共に引き渡される。後工程で加工品が使用されたらカンバンを前工程に戻す。前工程に戻す際は、発注票として渡され、このかんばんの受領をもって前工程では製品の加工を行う。

自工程で使った分だけ前工程に作らせる連鎖を組むことで、工程間仕掛の在庫の最少化を実現することにより生産コストの削減を図るのである。

カンバン方式の連鎖の問題点は、販売側から工場へ入るオーダーのカンバンをどこに投入するかである。カンバンの戻す場所を「店」(MISE)といい、どこの工程にカンバンを戻すかを決めることを「店を構える」という表現を使う。製造の上流側に店を構える場合、工程間の仕掛在庫は最少になるが顧客への引渡しが遅くなる。完成品出庫側に店を構える場合、製造工程数が多い製品になればなるほど製造の源流にカンバンが届くまでの時間を要し、顧客への納期を守るために源流側で見込み生産が発生することがある。店は上流工程から順にアルファベットを用いてつけられA店,B店....と呼ぶ。

電子カンバン

通常用いられるカンバンは、プラスチック製であったりをラミネート(透明フィルムに封入処理)したものが多い。このようなカンバンは、実際に使われているカンバン数を素早く正確に把握することが困難であったり、紛失や長期間使用による損傷などの問題がある。また、製造工程が多工程にわたる場合や、遠隔地に取引企業が有る場合など、現物のカンバンがやり取りされることによる、上流工程へのカンバン伝達の時間的ロスが発生し、最上流部でカンバンに連動しない見込み生産が行われることがある。

カンバンが電子化されることの利点は、

  • カンバン総量の把握が容易となり、生産ボリューム変動に応じたカンバン数の柔軟化が可能
  • 上流工程へのカンバン伝達のジャストインタイム化

が可能となる。

欠点として

  • トヨタ生産方式の一つの柱である「見える化」が滞る可能性がある。

カンバンは「現場作業者」が手扱いで行う必要がある。カンバンは工場内では「お金」として扱われる。電子カンバンはいわば手形取引のようなものになってしまい、現場での商品のやり取りが帳面上の形骸化になる可能性がある。

これを避けるために実際にカンバン自身がなくなることは無く、カンバンにバーコードをつけてそれを読み込ませることで電子化を行ったり、ICチップを埋め込まれて、工場内のどこにあるのかわかるようになっているものもある。

便係数

カンバンの振り出しから納品までのタイムラグを「便係数」と言う。例えば1日に1回の配達で発注してから2日で帰ってくる場合「1-1-2」という言い方をし、「一日一便2回遅れ」と言い方をする。ちなみに1日に14便で前の便で発注したものが次の便で帰ってくる場合は「1-14-1」となる。

この便係数から、その物品が入手できるリードタイムは「便係数の第1項と第3項を掛けたものから、第2項で割る」ことで求められる。先ほどの「1-14-1」の場合は、1×1÷14となり、0.0714となる。稼動時間が1日24時間の場合1.71時間となる。つまり、この物品は1.71時間のリードタイム以下で生産しなければならないこととなる。

デメリット

在庫を持たないため、指示通り部品が納入されない場合、即座に操業が停止するリスクを持つ。東日本大震災が発生した際には被害の大きい東北地方に自動車用部品や電子部品の工場が多かった事が災いし、部品の調達難により、被害のなかった愛知県の堤工場においても3月14~27日までの操業停止を余儀なくされている。

関連項目

外部リンク