オートジャイロ

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ファイル:Pitcairn Autogiro NASA GPN-2000-001990.jpg
NACAのオートジャイロ  三舵で制御している初期のもの
ファイル:Cierva-Duxford.JPG
シェルバ社製のイギリス空軍のオートジャイロ  基本的な構造は第二次世界大戦が終わるまで変わらなかった

オートジャイロ (autogyro / autogiro) とは航空機の一種。ジャイロコプター (gyrocopter / girocopter) やジャイロプレーン (gyroplane / giroplane) とも呼ばれる。通称ではジャイロ (giro) と呼ばれることもある。ジャイロの英語表記はgyroであるものの、発明者が造語のgiroで商標登録をすませたため、こういった表記になった。ヘリコプターフェアリー・ロートダインなどと同様、回転翼機に分類される。

構造と特徴

固定翼の代わりに回転翼を装備し、見た目はヘリコプターにも似ている。しかし構造的には異なっている。ヘリコプターは動力によって回転翼を直接回転させるが、オートジャイロの場合回転翼は駆動されておらず、飛行時にはプロペラなどのほかの動力によって前進する。前進によって起こる相対的な気流を回転翼に受け、回転させて揚力を生み出し飛行する。

オートジャイロの回転翼の付け根には蝶番がついており、回転中の揚力の急な変化や揚力のムラを防ぎ、安定した飛行を実現している。発明されてすぐのころは補助翼方向舵昇降舵の三舵で制御されていた。しかし現在は翼の回転面を左右に傾けることによって旋回をし、回転面の迎え角を増減させることによって上昇と降下を行い、方向舵によって方向を変更するという独特の制御方法を用いている機体が多い。

回転翼には動力がないため、ヘリコプターのようなホバリングは出来ず、無風状態では原理上垂直離陸は出来ない(ヘリコプターのオートローテーションと同じ方法で、滑走距離ゼロの実質的な垂直着陸は可能)が、固定翼機に比べれば短い距離での離着陸が可能である。

また、動力で回転翼を回す(クラッチでON・OFF可能)機構を備えている機体もあり、この場合、回転翼のピッチをゼロにした状態(回転翼に揚力が発生しない状態)でクラッチを繋いで回転翼を回し、回転数が充分に上がった時点でクラッチを切ってピッチをプラスとすれば、回転翼に急激に揚力が発生し、機体が空中に持ち上げられる。同時に前進用プロペラの回転数を上げれば、そのまま水平飛行に移ることが出来るので、実質的に垂直離陸となる。

このオートジャイロ特有の離陸方式を跳躍離陸(ジャンプ・テイクオフ)と呼び、現代のオートジャイロの多くがこの機能を備えている。また、萱場工業の「ヘリプレーン」のように回転翼の先端にラムジェット等をつけ垂直離着陸できる商用機も計画された。

操縦方法

操縦の感覚はヘリコプターよりも飛行機に似ているといわれるが、方式は上述のように根本的に違っている。飛行機のようなアクロバット飛行ができない代わりに、飛行姿勢がそれほど変化せず、安定して飛行できる。また、回転翼の回転面すべてで制御しているので、三舵で制御する飛行機より強力な旋回が可能であるが、ヨーイングは方向舵で行っているのでヘリコプターのような、空中で停止しながらの方向転換(ホバリングターン)はできない。

歴史

古くは軍用や商業用にも使用されていたが現在ではヘリコプターに取って代わられてしまい、オートジャイロはスポーツ用のものがほとんどとなっている。

最初のオートジャイロはスペイン人フアン・デ・ラ・シエルバが開発し、1923年1月17日に初飛行を成功させた。シエルバはその後、イギリスでシェルバ社を設立し、多くの成功機を生み出した。日本でも朝日新聞社がシエルバ社のオートジャイロを購入し、「空中新道中膝栗毛」というコーナーを連載した。イギリスのアヴロ社やアメリカ合衆国ケレット社などで開発が続けられたが、市場は収束の方向に向かい、ヘリコプターなどの生産に移った。

ソビエト連邦

ソ連では1920年代末からオートジャイロ実用化の研究が進められ、シエルバの設計したアヴロ製のオートジャイロをもとにKASKR-1KASKR-2が作られた。これらは成功作とはいえず研究機の域を出なかったが、その後独自の発展型A-7が量産化された。これらの機体は、のちのソ連におけるヘリコプターの発展の基礎を築いた。

日本

日本では、ジェット機時代の到来を予測し無尾翼ジェット機の試作に関心を寄せていた萱場資郎が、ジェット機研究を踏まえて手始めに萱場式オートジャイロの開発にとりかかる。太平洋戦争へ突入する1942年12月にはカヤバ工業(現・KYB)の前身である萱場製作所の仙台製造所にてオートジャイロの生産をはじめる[1]。 太平洋戦争中には、旧日本陸軍の依頼でカ号観測機と呼ばれるオートジャイロを当時の萱場製作所が製造し、陸軍の弾着観測や、海軍対潜哨戒に充てていたことが知られている。

韓国

韓国などでは、高層ビルが林立する都市における防災活動のために、ヘリコプターより小型で値段も安いオートジャイロを使用する消防組織があるが、ホバリングが出来ないこと、消火剤などの積載量がヘリコプターよりも劣ることがオートジャイロの欠点である。

オートジャイロが登場する作品

ファイル:Little Nellie.jpg
「007は二度死ぬ」の「リトル・ネリー」
  • 宮崎駿監督のアニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城』には架空のオートジャイロが登場しているが、回転翼の先端に噴射式エンジンが付いていて垂直離着陸能力があるなど(「フォッケウルフ トリープフリューゲル」の項も参照)、ヘリコプターに近い機体である。
  • 女皇の帝国』/『女皇の聖戦』 ヒロイン・桃園宮那子が、オートジャイロ〈海兎〉を操縦して活躍する。
  • 金城武主演の映画『K-20 怪人二十面相・伝』では、冒頭部で「警務局」のオートジャイロが上空から「帝都」を俯瞰し、劇中で羽柴葉子(松たか子)が操縦する小型オートジャイロが怪人二十面相を助ける。
  • 007は二度死ぬ』 ジェームズ・ボンドが小型オートジャイロ「リトル・ネリー」を操縦して、日本の上空で戦う。
  • マッドマックス2』 小型オートジャイロを操縦する「ジャイロキャプテン」が活躍する。
  • ロケッティア』 ラストで、炎上する飛行船の上に孤立してしまったクリフたちを救出するために、ピーヴィーとハワード・ヒューズが操縦した。
  • 皆川亮二の漫画『D-LIVE!!』 テロリストが橋に仕掛けた爆弾を解体するために、主人公・斑鳩悟が操縦する。

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関連項目

  • 複合ヘリコプター - 垂直上昇用だけでなく、推進用プロペラも併設されたヘリコプター。後部に推進機がある場合、複合オートジャイロ、ジャイロダインとも呼ばれる。

脚注

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  1. テンプレート:Cite journal