エルステッド

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エルステッド(oersted, 記号:Oe)は、CGS電磁単位系・ガウス単位系における磁場(磁界)の強さの単位である。その名前は、1820年電流の磁気作用を発見したハンス・クリスティアン・エルステッドに因む。

1エルステッドは、磁場の方向に沿って1センチメートル隔てた2点間の起磁力が1ギルバートである磁場の強さと定義されている。また、半径1センチメートルの1巻きの円形の閉回路に1/2πアンペアの電流が流れている時に、閉回路の中央に生じる磁場の強さと定義することもできる。

SIにおける磁場の強さの単位はアンペア毎メートル(A/m)である。1ギルバートは10/(4π)アンペア(アンペア回数)に等しいので、1 Oe = 10/(4π) (A/Gb) / 0.01 (m/cm) = 1000/(4π) A/m = 約79.577 A/m となる。

真空中では磁場の強さが1エルステッドのとき磁束密度は1ガウスとなるためCGS単位系ではこれらは同一のものとして扱えるが、物質中では一般的に磁場の強さと磁束密度は異なる。これは電場の強さ電束密度が異なることと同じで、実際にその場で観測される物理量である磁束密度はその場の物体に生じた磁化による影響も含むためである。具体的には、磁場の項にも書かれているように、磁束密度Bと磁場の強さHとの間には

<math>\boldsymbol{B} = \mu_0(\boldsymbol{H}+\boldsymbol{M})</math>

という関係が成り立つ。これは物質が存在する場合の磁束密度は、物質が存在しないときの磁束密度(=μ0H)に、磁化された物質の作る磁束密度(=μ0M)が加算されたものと見なせる。なお、物質の磁化は必ずしも外部磁場の方向と一致しないベクトル量であるため、磁束密度と磁場の強さの方向は一般的には一致するとは言えない。物体の磁化が外部磁場にほぼ比例するような磁場領域では、MHに比例するとして両者をまとめ、

<math>\boldsymbol{B} = \mu\boldsymbol{H}</math>

と表すことが可能であり、このときの比例係数μを透磁率と呼ぶ。

このように本来は磁場の強さの単位であるエルステッドと、磁束密度の単位であるガウスは異なる意味を持つものであるが、磁性体を扱った論文中などでもしばしば両者が混同される事がある。例えば印加した外部磁場に対してBを用いていたり(本来はH)、1/10000テスラを1エルステッドとしていたり(本来両者は異なる物理量を指す)、といった例が散見される。

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