エア・コンディショナー

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エア・コンディショナーテンプレート:Lang-en-short)とは、空調設備のひとつで、部屋内の空気の温度や湿度などを調整する機械である。狭い意味では、冷媒による単段蒸気圧縮冷凍サイクル蒸気圧縮冷凍機のパッケージ・エア・コンディショナーや家庭用のルーム・エア・コンディショナーのうち、水以外の熱媒体でを搬送する装置、つまりヒートポンプを指す。通称エアコン。以降、エアコンと表記。なお「エアコン」は「エアー・コンディショニング」または「エアー・コンディション」の略として使用される場合もある。

歴史

1758年ベンジャミン・フランクリンケンブリッジ大学で化学の教授を務めていたジョン・ハドリーは、蒸発の原理(蒸発熱)を使って物体を急速に冷却する実験を行った。フランクリンとハドリーはアルコールなどの揮発性の高い液体の蒸発を試し、エーテルを使うと物体を氷点下にまで冷却できることを発見した。実験では水銀温度計の球部を冷却対象とし、蒸発を早めるためにふいごを使った。周囲の気温がテンプレート:Convertの状態で、温度計の球部を 7テンプレート:°F(−14℃)にまで冷却することができた。フランクリンは、温度が氷点下になると間もなく温度計の球部表面に薄く氷が張ったことに気づいた。そして 7テンプレート:°F(−14℃)にまで達したとき、氷の厚さは6ミリ(4分の1インチ)ほどになっていた。フランクリンは「この実験で、暖かい夏の日に人間を凍死させられる可能性があることがわかった」と結論付けた[1]

1820年イギリスの科学者で発明家のマイケル・ファラデーは、圧縮により液化したアンモニアを蒸発できるようにすると、周囲の空気を冷却できることを発見した。1842年、フロリダの医師ジョン・ゴリーは圧縮技術を使って氷を作り、アパラチコーラの彼の病院でそれを使い、患者のために病室を冷やした[2]。彼はさらにその製氷機を使って建物全体の温度を調節しようと考えた。そして、都市全体の空調を集中制御するという構想まで描いた。彼の試作品は常にうまく機能するわけではなかったが、ゴリーは製氷機の特許を1851年に取得した。しかし、彼の財政上の後援者が死に、その希望は潰えた。彼はその機械を本格的に開発する資金を集められなかった。ゴリーの伝記を書いたVivian M. Sherlockによれば、ゴリーは製氷で財を成したフレデリック・チューダー(en)が彼の発明を誹謗するキャンペーンを行ったと疑い、チューダーを非難した。ゴリーは貧困の中で1855年に亡くなり、その空調のアイディアは約50年間顧みられなかった。

空気調和の初期の商業利用は、個人の快適さのためではなく、工業生産過程で必要とされる冷気を生み出すのに使われた。最初の電気式エア・コンディショナーは1902年ニューヨーク州シラキュースウィリス・キャリア発明した。印刷工場の製造工程を改善するために設計されており、温度だけでなく湿度も制御できるようになっていた。温度と湿度を低く保つことで、紙の状態が一定となり、インクの付き方が一定になる。その後もキャリアの技術は様々な仕事場の生産性向上に使われ、増大する需要に応えるために The Carrier Air Conditioning Company of America(キヤリア社)を創設した。その後、エア・コンディショナーは住宅や自動車の快適さを向上させる手段として使われるようになっていった。アメリカでは1950年代に家庭用エア・コンディショナーが爆発的に売れるようになった。

1906年ノースカロライナ州シャーロットのスチュアート・W・クラマーは、自身の経営する織物工場内に湿気を追加する方法を探していた。クラマーは同年出願した特許で初めて「エア・コンディショニング(空気調和)」という言葉を使った。これは、織物製造工程として当時よく行われていた "water conditioning" を真似て名付けたものだった。彼は加湿と換気を組み合わせて工場内の湿度を制御し、織物工場に最適な湿度を実現した。ウィリス・キャリアはこの用語を採用し、社名にも組み込んだ。水分を空気中に蒸発させるこの方式には冷却効果があり、現在ではミスト散布として知られている。

初期のエア・コンディショナーや冷蔵庫は、アンモニアクロロメタンプロパンといった有毒または可燃性のガスを使用しており、それらが漏れ出すと死亡事故に繋がる危険性があった。トマス・ミジリーは世界初のフロン類であるフレオン1928年に開発した。この冷媒は人間には安全だったが、後になって大気のオゾン層にとって有害だということがわかった。「フレオン」はデュポン社の商標であり、実際はクロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)といった物質で、商品名(R-11, R-12, R-22, R-134A)には分子構成を示す数が付けられている。住宅などの空調によく使われたものはR-22という商品名のHCFCである。これは2010年までに新製品には使われなくなり、2020年には完全に使用されなくなる予定である。アメリカでは自動車のエア・コンディショナーのほとんどがR-12を使っていたが、1994年にR-134Aに切り替えられた。R-11とR-12はアメリカ合衆国内では既に生産されておらず、廃棄されたエア・コンディショナーから回収したガスをきれいにしたものが売られているだけとなっている。オゾン層に影響しないいくつかの冷媒が代替フロンとして開発されており、例えばR-410Aはブランド名 Puronで販売されている。オゾン層に悪影響を与える主な冷媒はR-22、R-11、R-123である。ただし、R-410A冷媒などの代替フロンは地球温暖化係数が高いため、これに代わる次世代冷媒の開発が行われている。

空気調和テクノロジーにおける技術革新は続き、近年ではエネルギー効率と屋内の空気質の改善が中心テーマとなっている。従来の冷媒の代替として二酸化炭素(R-744)のような自然に存在する物質も提案されている[3]

型式

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気体液化ヒートポンプのしくみ。
1:凝縮器、2:膨張弁、3:蒸発器、4:圧縮機
赤が高温、青が低温。
ファイル:Air conditioner 02.jpg
室外機と室内機を接続する冷媒配管。断熱材で覆われる。

基本機能として冷房専用形と冷暖房兼用のヒートポンプ形がある。

また、次のような形態がある。

ユニットの形態

  • 一体型 - 圧縮機凝縮器蒸発器が一体となったもの。冷媒配管が不要である。家庭用の窓型や鉄道車両用に使われる。
  • リモートコンデンサ型 - 圧縮機・蒸発器が一体となった室内機と、凝縮器のみを内蔵した室外機を冷媒配管で接続したもの。室内側に圧縮機があるためメンテナンスが容易で、カスタマイズ(ヒーター加湿器の取り付けなど)を必要とする工場(設備)用や、業務(ビル)用の一部で使われていたが、室内に圧縮機の騒音振動が発生することや、室内機に圧縮機を内蔵する構造から室内機のバリエーションが限られ(基本的に床置き形のみ)、室内の状況に応じた機器(室内機)の配置がしにくいことなどから、近年では後述するリモートコンデンシングユニット型(家庭用のセパレートタイプまたはセパレート型)やマルチ式(ビル用など)が主流となっている。通称「中コン(なかこん:室内機側に圧縮機(=コンプレッサー)があるため)」または「リモコン型(一部のエアコンメーカー)」。
  • リモートコンデンシングユニット型 - 圧縮機・凝縮器が一体となった室外機と、蒸発器が内蔵された室内機を冷媒配管で接続したもの。家庭用のセパレートタイプはこの方式。
  • マルチ式 - 圧縮機・凝縮器が一体となった室外機と、蒸発器が内蔵された複数の室内機を冷媒配管で接続したもの。業務(ビル)用の主流。家庭用にも販売されているが、実例は少ない。

室内機の形態

  • 床置き型(スタンドスタイル) - 業務(ビル)用の古い(1970年代まで使われた)タイプ。タンス程度の大きさ、あるいは窓際に高さ1メートル程度の上部に噴出し口を持つ室内機が、壁際にむき出しで設置されている。室内機の分、床面積が減るために新規の建物では使われなくなった。現在でも古い地下鉄の駅や工場、事務室などでよく見かける事ができる。韓国では家庭用タイプにおいても室内機が壁掛け型よりも床置き型の方が多い。なお、室外機と一体として、キャスターがついて自由に移動できるものは冷風機として、業務用・家庭用共に販売されている。
  • 壁掛け型 - 家庭用セパレートタイプ。
  • 天井吊型 - 倉庫などのような天井骨組みがむき出しの場合に使われる。
  • 天井埋め込みカセット型 - 通称「天カセ」。表面に吸込口・吹出し口のある蒸発器内蔵ユニットを天井内に埋め込むもの。天井面がフラットになり、床置き形のように床面積も減らないため、店舗やオフィスビルなど業務用で多く用いられている。
  • 床置き型(ファンヒータースタイル) - 家庭用セパレートタイプのバリエーションの1つで、石油ストーブ類似の形態をしている。1980年代頃までは主に和室用に使われたが、冷房能力上の問題点(熱対流上壁掛け型・天井埋め込みカセット型に比べて不利)から急速に数を減らした。しかし完全な消滅には至っていない。また、同様の理由で暖房時は有利という面もある。
  • ダクト接続型 - ユニットとダクトを接続し、任意の場所に吸込口・吹出し口を設けられるもの。大型ビルやホテル用。

冷房専用及び暖房専用機種

冷房または暖房のみを必要とする消費者のために、それぞれに特化した機種がある。長所は、特化することで、価格が安く、消費電力が少なく、室内機や室外機が小さく、操作が簡単なことである。機種によっては、広い場所で使用するために強力な性能を持っている物もある。

家庭用

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蒸発器 (暖房時は凝縮器として働く)

ルーム・エア・コンとも呼ばれる家庭用エアコンには、形態として、圧縮機・凝縮器・蒸発器が一体となった窓型と、圧縮機・凝縮器が一体となった室外機と、蒸発器が内蔵された室内機とで構成されるセパレート型東芝では「スプリット型」という)の2種類がある。セパレート型では、日本などの東アジア圏では壁掛け型が主流である。一方、欧米では横長長方形の窓型がほとんどである。能力によって、2.2kW、2.5kW、2.8kW、3.6kW、4.0kW、4.5kW、5.0kW、5.6kW、6.3kW、7.1kW などがある。使用する電圧も、単相100Vと、単相200Vと、動力の三相200Vがある。通常、エアコン一台に子ブレーカー一個を用意する。なお、家庭用のエアコンは窓型、セパレート型とも、2001年より家電リサイクル法の対象となり、廃棄の際に適正な処理が義務付けられた。

動力の三相200Vエアコンは室外ユニットや室内ユニット共外観上一般の100/200V単相エアコンと同じであるが、省令による規制があるため受電方法が異なる。

電気設備技術基準(経産省令)の規定では家庭で3相200Vを使用できるのは屋外機器のみとされている[4]。そのため動力エアコンは室外電源のみ3相200Vであり室内ユニットの運転および通信制御は別途室内側で受電した単相100/200Vで行われる。従って一部のメーカー(ダイキン工業など室内電源を室外ユニット送り以外で受電不可能な機種)での業務用エアコンを住宅へ設置した場合、電力会社との図面協議で指摘され送電拒否や変更を求められるケースが生じる。

家庭用エアコンは、冷房・暖房・ドライ(除湿)など多様な空気調整が可能な機種が製造・販売の多くをしめる。最近はトップランナー方式による省エネ化が進み、内部の改良とも相まって以前のものよりも消費電力が少なくなっている。日本国内で発売されるセパレート型のエアコンはほぼ全てインバータ制御を内蔵した機種になっている(ただし、窓型エアコンについては非インバータのものが大半を占めている)。インバータエアコンは1981年に当時の東京芝浦電気(現・東芝)が世界で初めて発売した。当初は、圧縮機には誘導電動機を用いていたが、1990年代に高効率なブラシレスDCモータが開発されて以来、現在では、日本で発売される家庭用エアコンに搭載される圧縮機用・ファン用のモータは、ほぼ全てがブラシレスDCモータになっている。日本ではインバータエアコンが主流であるが、世界的に見れば一定速である非インバータエアコンがまだまだ主流である。

また、非インバータエアコンでは商用電源周波数による能力の差があり、50Hz地域では60Hz地域より1 - 2割能力が落ちるが、インバータエアコンではそれがない。そのため、非インバータが主流であった当時のエアコンのカタログは50Hz・60Hz地域で別々に作成していた。現在では、非インバータの窓型エアコンのカタログで、50Hz・60Hzそれぞれの場合の能力が併記されているのが見受けられる。能力の違いは圧縮機に用いる誘導電動機の回転数が電源周波数に依存するためである。なお日本での窓用エアコンでのインバータ採用例は松下電器産業(現・パナソニック)のCW-G18系が空前にして絶後になった。同機種は年毎の僅かなマイナーチェンジのみで20年以上発売され続けた。窓用インバータエアコンは森田電工(現・ユーイング)からも発売されていたが、現在同社はエアコン事業から撤退している。

差別化機能としてマイナスイオンの発生、フィルタの自動清掃機能などをうたったものも存在する。また、空気清浄機機能や換気機能、加湿機能、HA JEMA標準端子-Aが付いたものもある。

シーズンオフには、プラグを抜いたりブレーカーを落とすことにより、待機電力をなくす家庭がある。家庭用での暖房では、「すぐに温風がふき出して欲しい」という需要が高い。そのため、外気温が低い場合は、停止中でも機器を予熱をする機能を持つ機種がある。また、冷媒寝込みを防ぐためのヒーターをもつ機種もある。このような機種では冬場の待機電力は多い。

また、寒冷地など暖房時に外気温が低すぎる場合は、屋外で燃焼をした熱をヒートポンプする「石油エアーコンディショナー」がある。同様にガス[5]の火で熱を発生させ、その熱を室内へ送る「ガスエアコンディショナー」もある。寒冷地で、除霜運転が多いことが予想される場合は有効な選択である。なお、家庭用では、冷房にガスや石油の力はあまり使用されていない。過去にパナソニックや東芝なども石油や都市ガス等を使ったエアコンも販売されていたが[6]、暖房時におけるエアコン自体の性能向上に伴い、採用されるケースが少なくなった。

窓型エアコンは、「ウインドエアコン」とも呼ばれる。長所は、壁掛け型に比べ、小型であり、安く、個人で取り付け(取り外し)ができることである。壁に配管用の穴を開けたり、室内機の固定工事を施す必要が無く、窓さえあれば設置できるため、賃貸物件等でエアコンの設置に制限がある場合にも向いている。

ちなみに海外にも日本と同様の壁掛け型(欧米では窓型の方が主流)のエアコンが普及しているが、日本のエアコンほど機能面では豊富でなく、シンプルな単機能のものが多い。また欧米では暖房としてセントラルヒーティング暖炉などが住宅に備わっているケースもあるため、「air conditioner」というと冷房を前提に話をしているケースが多々ある。

業務用

業務用エアコンは、大型のものや各種原動機を使用したものが存在する。2002年からフロン類を冷媒とする業務用機器は、フロン回収破壊法の対象となり、廃棄する場合、適正な処理が義務付けられた。

ビル用・マルチ・エアコン

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業務用エアコンの室外機
ファイル:Coolingtower.JPG
ビルの屋上に設置してあるクーリングタワー

ビル用・マルチ・エアコンは、一つの室外機で複数の室内機を使用し空調を行うものである。中小規模の建築物で一般に使用されていて、以下の特徴がある。

  • 室内機の個別起動・停止が可能である。
  • 増設が容易に出来る。

大型又は大規模のビルの空調装置は、冷媒に水を使用しており、冷房の場合には、チリングユニット、吸収式冷凍機ターボ冷凍機などの吸収式冷凍サイクル又はヒートポンプ式冷凍サイクルを使用した熱源機器類と冷水槽との間でポンプによる循環を行い、熱源機器類で作られた冷水が冷水槽に溜まる。そこから別のポンプにより、部屋の天井に設置されたファンコイルユニット又はビルの屋上に設置されているエアハンドリングユニットにある熱交換器との間で冷水が循環して部屋の空調を行う。また、熱源機器類の運転時に、冷凍サイクルの凝縮器から発生する熱は、熱交換器で冷却水(水を使用する)と熱交換を行い、ポンプによりビルの屋上に設置してあるクーリングタワーとの間で冷却水が循環して冷却されるシステムとなっている為、広い意味での「エア・コンディショナー」と言える

コンビニエンスストア用

コンビニエンスストア専用の冷凍・空調統合システムが存在し、以下のような特徴がある。

  • 冷凍・空調統合システムであるため冷媒の総使用量が少ない。
  • 冷蔵・冷凍ショーケースの廃熱で暖房するため効率が高い。
  • 冷房時も制御の工夫により最大需要電力・使用電力量とも少なくなっている。

メーカーの発想に違いがあり冷媒回路を空調、冷蔵、冷凍で共有する方式(システムダウン時、どちらも運転不能)や三菱電機のように相互の熱のやりとりを熱交換器ですることで冷媒回路や通信制御が全く独立していて単独で機能するのもある。

ガスエンジンヒートポンプ(GHP)・灯油エンジンヒートポンプ(KHP)

ガスエンジンで圧縮機を駆動し、冷暖房を行うガスエンジンヒートポンプもガス供給会社が当初レシプロエンジンで駆動することを隠したという営業努力により近年普及が進んでいて、以下のような特徴がある。

  • 消費電力が小さく、電力ピークカットの効果も高い。
  • 発電機を搭載した機種も登場、自己消費電力のほとんどをまかなう為、商用の消費電力はごく僅かである。
  • 電動機駆動のものよりエアクリーナー、点火プラグ、エンジンオイルとフィルターといった整備・点検費用が多くかかる。
  • 初期導入費用が電気式より高い(都市ガス用はメーカー系販社と取引があっても都市ガス供給事業者を経由しないと購入できないため割高である)。
  • 室外機の設置スペースまたは高さが電気式に比べ大きく必要(20馬力システムだと電気式と比較した場合占有面積は2割増し、高さは1.5倍、重量は2倍ある)、受電設備を小型化したメリットを帳消しにする。
  • レシプロエンジンでコンプレッサーを駆動するもの(この分野では、レシプロエンジン以外のエンジンが採用された例はない)はモーターに比べ騒音が大きい。またガス燃焼特有の主として窒素酸化物に加えて、燃料ガスの付臭剤TBMに代表される硫黄化合物であれば硫黄酸化物いわゆる亜硫酸ガスによる臭気が発生する(エンジン自体はLPGタクシーCNG車と同じだが、排気ガスに関する厳しい規制が無く野放し状態だったが、2003年現在100ppm、東京都における火力発電所の10ppmより一桁甘い規制がなされ、壊滅状態)。
  • 上記窒素酸化物を含んだ燃焼排気ガスから亜硝酸を含んだドレン排水が発生するが、強酸性であるため中和処置を行わず垂れ流しにするとコンクリートの腐食を誘発する
  • ガスエンジンの廃熱を暖房に利用できるため、寒冷地においても暖房運転の立ち上がりが良い。また暖房時の室外熱交換器の除霜にもエンジン廃熱を用いるため、暖房能力の低下を抑えることができる。
  • エンジンがコスト面から旧式を使っており総合効率は1を少し上回る程度(エンジンが30%程度、ヒートポンプがEER値が3~4の場合システムCOP値は1~1.2)で近年の電気式の省エネ化(特にマルチでなく1:1システムが顕著)でCOP値が4以上と従来機の半分の電気代で運転できる事から、導入費用+保守費用+ガス代を考えてもGHPが割高となるケースがあり、上記排気ガス規制とあいまって新規採用が減少、特に店舗用の小型機器業界は壊滅状態である。
  • エンジン式の構造上、現状では冷媒漏れが避けられない。
  • 燃料(特に都市ガス)の供給が絶たれると運転できない。
  • 安全装置のエネルギー源は電気であり、停電時には運転できない。

LPGは災害時に供給が止まることが少なく、発電機で少量の電気を供給すれば稼動する。けれども運搬に必要な道路のインフラの損傷具合によっては都市ガス同様に復旧が遅くなる事もある。ただし、都市ガスは復旧が遅く長期に渡って空調が使えなくなる。したがって都市ガスが無ければ営業自体ができない店舗(飲食店やガス炊きボイラーの浴場)はともかく、病院や事務所など直接ガスに依存しない施設ではGHPのみに依存すると空調に支障をきたす場合がある。一部の飲食店では厨房の都市ガス器具も撤去され始め、店舗の完全電化が進行している。電力ピークカットを目的とした税優遇措置は、2011年現在も有効である。

車両用

カーエアコン

テンプレート:Main

自動車に取り付けてあるエアコン。基本的な構造は、冷房の場合は通常のエアコンと変わりなく、コンプレッサーを使う方式である。コンプレッサーは電磁クラッチの断続によってエンジンの動力で冷媒を圧縮し、圧縮されて蓄熱された冷媒は、車両前方のラジエーター前などに配置されたコンデンサー(凝縮器)で走行風や電動ファンによる強制空冷で冷却されガス状の冷媒が液化される。液化された冷媒は室内エアコンユニットのエバポレーター(蒸発器)に送られる。エバポレーターにはエキスパンションバルブ(膨張弁)が内蔵されており、ここで液化された冷媒が一気に気化されることにより、冷房サイクルが成立する。冷房を終えた冷媒はコンプレッサーに返送され、一部の余剰の冷媒は必要に応じてレシーバータンク(貯蔵庫)に蓄えられて再液化及び乾燥剤による除湿が行われる。

暖房は建物用エアコンと違い、液冷エンジン水冷エンジン)においてはエンジンを冷却した冷却液(冷却水、クーラント)を室内のヒーターコアに導き、熱交換している。すなわちカーエアコンの暖房は、エンジンの廃熱利用にあたる。

これらの冷温風は電動送風機であるブロワモーターにより室内各所に送風される。カーエアコンはこれらの冷温風により、フロントガラスやサイドガラスの霜取りや曇り取り(デフォッガー/デフロスター)を行う機能も持たせられている。

温度調節はドライバーが手動で任意に行うマニュアルエアコンと、あらかじめ設定した室温に室温センサーなどで自動調節を行うオートエアコンが存在し、今日の日本市場ではオートエアコンが主流である。

クーラーの冷媒には一般的にはR134aが用いられる。かつてはフロン12(R12)が広く用いられていたが、オゾン層破壊が問題になったことにより現在ではR134aに完全に置き換えられている。しかし、R134a冷媒は地球温暖化係数(GWP)が高いことから、欧州F-Gas 規制[7]が制定され、2017年1月までに全ての欧州内の乗用車および軽トラックの新車のカーエアコンに使用される冷媒はGWP が150 以下の冷媒を採用しなければならなくなった。2011年1月から発売される新型車から段階的廃止が始まり、代替冷媒としてCO2やHFO-1234yfが採用される模様である。

近年では花粉症対策などを謡ったクリーンエアフィルタがカーエアコンに装着される事も一般化している。

バスの冷房装置については、機関直結式冷房装置独立機関式冷房装置を参照。

鉄道用

テンプレート:Main2鉄道車両に取り付けてある冷房装置(一部を除き冷房専用であることから、エアコンと呼ばれることは少ない)。基本的には電気で作動するが、気動車ではカーエアコンと同様、走行用エンジンの動力の一部を利用して作動するものが多い。

電車の場合、屋根にコンプレッサー・エバポレーター・コンデンサーが一体化されたものが搭載され、最近のものでは、換気機能を有するものや空気清浄機を内蔵するものがあり、換気や暖房によって天井に上った空気を下へ戻すために冬でも送風を行うものもある。

温度と湿度の調節

相対湿度の低下

冷房は室内機が結露し、その水分を屋外へ排水するため、湿度が下がる。これは、体感温度を下げる助けになる。

しかしインバーターエアコンでは自在に出力を調整出来るため、始動時は高出力運転を行うが、室温が安定した後は低出力の運転を行う。低出力の運転では室内機が結露を起こさないため、室温だけが下がり相対湿度は上昇する。そのためジメジメ感やカビダニの発生の原因になる事があるため、除湿機を併用したり、冷房のかわりに再熱除湿を使用して、湿度の上昇に注意する必要がある。

暖房は室内で燃焼を行わないため、相対湿度が下がる。これは、体感温度を下げる副作用となる。結果、過度な暖房をし、自律神経失調症につながる場合もある。エアコンのみで暖房を行う場合は、加湿器を併用するなど、乾燥に注意する必要がある。

冷房と除湿

冷房運転は室温を設定温度に合わせるものであり、除湿運転は湿度を設定した湿度に合わせるものである。目的で選択することにより快適な状態となる。同じ室温でも湿度が低ければ体感温度が下がり快適に感じるため、日本の夏のような多湿の場合は、室温をあまり下げなくても除湿をすれば快適に感じる場合がある。

除湿運転には二種類あり、弱冷房除湿と再熱除湿がある。弱冷房除湿では弱く冷房をかけて除湿する。そのため温度を下げる能力は冷房運転より低下するため、当然だが消費電力も少なくなる。この方式では湿度と同時に温度も下がるため、だんだん除湿量が低下していきあまり除湿出来なくなる。また梅雨時など室温がそれほど高くない場合は肌寒く感じることもある。次に室温を保ったまま湿度を下げるのが再熱除湿である。しかし、冷房除湿で温度が下がった空気をヒーターで加熱して一定温度に戻す再熱除湿は、冷房運転よりも消費電力は多い。このタイプの再熱除湿は近年の家庭用エアコンでは採用されていないが、一部の鉄道車両用エアコンなどで採用されている。近年の家庭用エアコンで多く採用されている室外機の廃熱をリサイクルする方式の再熱除湿では、冷房に比べて温度を下げる能力が低下する。そのため、昼間など大きな冷房能力が必要なときに使用すると、室温が下がらずに消費電力だけ大きくなる場合もある。機種によっては温度や湿度を監視し、最適なモードに自動的に切り替える物もある。

除湿運転の場合、冷房運転だけでは取りきれない湿度を下げる事が出来るため、設定温度を高めにしても体感温度は下がる場合もあり、実際の消費電力は個々のケースによる。

メンテナンス

ファイル:Air conditioner 03.jpg
室内機の基板(室温の監視、室外機との通信等を行う)

次のようなメンテナンスを行うことが望ましい。

  • エアフィルタの清掃 - 運転時に2週間に一度以上行うことが望ましい。衛生面のみが目的ではなく過負荷運転の防止にもなる。汚損は風量・効率の低下、消費電力の増大をまねき、故障の原因にもなる。近年はエアフィルタの清掃を自動で行う機種もある(2003年富士通ゼネラルより初登場)。低価格帯の商品ではついていないことが多い。クリーニング業者に依頼する際は、同箇所のみならず、室内機内のクロスファンの洗浄も同時に行うことが望ましい。
  • ドレン配管のつまりの点検 - 冷房シーズン前に行う。つまりがあると室内に水漏れをおこすことがある。暖房運転時には室内機側ドレンに水分は発生しない。
  • 凝縮器・蒸発器の洗浄 - 汚染が激しい場合に行う。通電部に洗浄液がかからないような措置を行ってから実施する。また、後洗浄や排水処理を行わないと腐食の原因となる。

問題点

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エアコンのドレン排水管がタンクに接続された和風便器の例
  • 室外機は、特に冬場、暖房にすると音が強くなることがある。
  • エアコンは消費電力が大きく、電力消費は夏期の日中がピークとなっている。節電のため設定温度を上げる、すだれを降ろして直射日光を遮る、部屋を仕切って冷やす空間を最小限にするなどの対策が望まれる。ただし、風量を弱くすることは内部のファンの回転が弱まるだけであり設定温度まで冷却する(または暖める)こと自体に変わりはないので節電・エコの観点から見ると効果は薄い。暖房の場合は設定温度を下げて風量を強くすると、空気循環(サーキュレーション)も出来るため効果的である。冷房時は設定温度を上げて風量を上げると、除湿能力が低下して不快になる場合があるため、設定温度を上げるのみにして風量は自動で使い、送風の補助として扇風機などを利用すると良い。
  • 通常のエアコンは換気能力を備えていないが、仕組みを知らないと「室外機との間で空気の出し入れをしている」と誤解する場合がある。なお、エアコンとはまったく別個の装置として、換気装置を内蔵している機種は存在する。当然ながら換気のためのダクトが別に存在し、直接外気に晒すタイプと、室外機に接続するタイプがある。
  • 家電品の中ではメンテナンスコストと掃除の要求頻度が比較的高い。
  • ドレン排水の配管を取り廻しの関係で水洗便所の便器洗浄のタンクに接続配管される場合があるが、この場合タンクの水を温水洗浄便座に使用する場合は衛生面でバクテリア雑菌による感染症防止やお尻かぶれを防止するために配管を別系統に分ける必要がある。また和式大便器等の温水洗浄便座を使用しない場合でもドレン排水管内からのバクテリアによるスライムミズゴケ類等の藻類がタンク内に流れ込みタンク内やタンクからの便器への管路、便器内の管路に苔や錆、スライムが付着する場合があり、故障を未然に防ぐ為に定期的にタンク内部の点検が必要となる。
  • メンテナンスが不十分な水冷式の屋外機内では、レジオネラが発生し、飛沫による拡散が問題となる可能性がある。2012年、カナダケベックの住民など176人が在郷軍人病を発症し、うち12名が死亡する事件が発生した[8]

エアコンメーカー

日本の主なエアコンメーカー
  • アイシン精機(GHP式) - 過去には室内ユニットは三菱重工製を使用していたが、現在は室内ユニットのみダイキンからのOEM。中型タイプの室外機はパナソニックES産機からのOEM。
  • ヴァレオサーマルシステムズ(自動車向け)
  • 神戸製鋼所(業務用空調)
  • ケーヒン(自動車向け)
  • 小泉成器(ウインド型・千石のOEM)
  • コロナ(基幹部分は東芝製) - 冷房専用機種も販売。
  • カルソニックカンセイ(自動車向け)
  • サンデン(自動車向け)
  • シャープ - 過去に業務用も販売(ダイキン製)
  • 千石(OEM生産のみ)
  • ダイキン工業 - 2010年より空調事業(家庭用・業務用)の世界シェア1位。国内シェア1位のパナソニックと包括提携。GHPの室外機はアイシンからのOEM。
  • デンソー - 自動車向けが中心だが、過去にはオフィス用灯油ヒートポンプ(KHP)タイプも取扱い扱っていた(パナソニックES産機製)。主に同社の工場等で見かける。
  • デンソーエース - 旧ゼネラルエアコンテクニカ、スキニー[9]というブランドでトヨタ系列施設、輸入住宅、コンビニで使用。
  • 長府製作所(基幹部分は三菱電機製、一部機種はダイキンのOEM) 
  • 東芝キヤリア - 東芝とキヤリアとの合弁という形で設立。かつては石油もしくはガスエアコン(いずれも家庭用ならびに業務用)にも手掛けていたが、現在は撤退している。
  • トヨトミ(ウインド型)
  • 日立アプライアンス - 日立の空調と白物家電事業を統合した会社で家庭用からチラーも含めた業務用と幅広い。かつては都市ガス向け家庭用ガスエアコンも手掛けていたが、家庭用からは撤退しており、現在は業務用GHPのみ展開。
  • 富士通ゼネラル - 主に家庭用。パッケージエアコンや業務用エアコンは海外のみで販売。
  • 富士電機 - 業務用ではエアスカットというブランドで販売(三菱重工製)。家庭用は海外向け。現在は富士通ゼネラルのOEM。
  • パナソニック - 家庭用空調機器の国内シェア1位。空調事業世界シェア1位のダイキン工業と包括提携。
  • パナソニックES産機システム - パナソニックの孫会社[10]で三洋の業務用空調事業を引き継いだ会社。これまでパナソニックが取り組んでいなかった業務用GHPやチラーといった大型特殊空調事業にも参入している。
  • 三菱電機 - 一部の業務用エアコンは三菱重工業のOEM。過去に家庭用ガスエアコンも製造していたが、現在は撤退している。
  • 三菱重工業 - 一部のハウジングエアコンは三菱電機のOEM。業務用ガスエアコンの室外機はアイシンもしくはパナソニックES産機からのOEM。  
  • ヤンマーエネルギーシステム(GHP式) - 主に日立(Hタイプ)とダイキン(Dタイプ)からのOEM。
かつて手掛けていた日本のエアコンメーカー
  • 吉井電気(ウインド型)
  • ハイアールジャパンホールディングス(ウインド型)
  • 三協
  • GAC (デンソーエースに統合。わが国で初めて窓用タテ型ウインドエアコンを製造。GEスキニーというブランドで1974年~1983年まで製造・販売された。)
  • ソニー(ダイキン工業のOEM)
  • 松下冷機(パナソニックに吸収された。)
  • 三洋電機 - 2010年モデルから家庭用エアコンは富士通ゼネラルのOEMだったが、パナソニックの完全子会社化に伴い、家庭用からは撤退。業務用もパナソニックES産機システムに引き継ぐ形で撤退。
  • 高木産業(家庭用ガスエアコンのみ販売。パナソニックのOEM。)
  • 東洋キヤリア工業(東芝キャリアに統合。統合前は東芝や三洋からのOEM。)
  • ノーリツ(三洋などからのOEM)
  • 日本電気ホームエレクトロニクス(三洋などからのOEM。)
  • 日本ビクター(現JVCケンウッド)(三菱重工業のOEM。)
  • ブラザー工業(三菱電機のOEM。)
  • 船井電機
  • ホリエ
  • ゼクセル(旧・ヂーゼル機器・自動車向け。ヴァレオサーマルシステムズに社名変更。)
  • ヤマハ発動機(GHP式。室内ユニットは三菱電機製。「リビングメイト」と呼ばれるハウジングモデルは室内・室外共に三洋製が使われた。親会社でもあるヤマハのルートを通じて学校施設への納入が多かった。)
  • ユーイング(ウインド型)
  • リンナイ(LPガスや都市ガスを用いた家庭用ガスエアコン。主に東芝やシャープからのOEM。)

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. Cooling by Evaporation (Letter to John Lining). Benjamin Franklin, London, June 17, 1758
  2. History of Air Conditioning Source: Jones Jr., Malcolm. "Air Conditioning". Newsweek. Winter 1997 v130 n24-A p42(2). Retrieved 1 January 2007.
  3. R744.com - FAQ
  4. 具体的には電技解釈第162条に、住宅の屋内電路の対地電圧は原則として150V以下にする旨定められている。
  5. 都市ガスもしくはプロパンガスを燃料としている。
  6. 主に都市ガス会社へのOEMが中心である。
  7. テンプレート:Lang-en-short
  8. テンプレート:Cite news
  9. 三菱電機や東芝キヤリアからのOEM。
  10. 三洋の子会社という形となっている為である。

関連項目

外部リンク

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