イチイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:出典の明記 テンプレート:生物分類表 イチイ(一位、櫟、学名テンプレート:Snamei)は、イチイ科イチイ属植物。またはイチイ属の植物の総称。常緑針葉樹。別名はアララギ北海道北東北方言ではオンコと呼ばれ、アイヌからはクネニと呼ばれた。同属にヨーロッパイチイ テンプレート:Snameiがある。

属の学名 テンプレート:Snameiはヨーロッパイチイのギリシャ語名 taxosから、種小名 テンプレート:Snameiは「急に尖った」の意味。

分布

本州北海道樺太九州四国千島列島中国東北部朝鮮半島ロシア沿海地方に分布。寒冷地である北海道や北東北では標高の低い地域にも自然分布するが、より温暖な地域では山岳地帯に分布する。庭木としては、沖縄県を除いた日本全国で一般的に見られる。

特徴

雌雄異株で、高さ20mほどの高木になるが成長は遅い。樹型は円錐形になる。幹の直径は50 - 100cmほどになり、樹皮には縦に割れ目が走る。

葉は濃緑色で、線形をし、先端は尖っているが柔らかく触ってもそれほど痛くない。枝に2列に並び、先端では螺旋状につく。

4月ごろ小形の花をつけ、初秋に赤い実をつける。種子は球形で、杯状で赤い多汁質の仮種皮の内側におさまっている。外から見れば、赤い湯飲みの中に丸い種が入っているような感じである。

変種、品種

イチイの変種、品種などとして下記のものがある[1]

キャラボク

イチイの変種であるキャラボク(伽羅木) テンプレート:Snamei var. テンプレート:Snameiは、常緑低木で高さは0.5〜2m、幹は直立せずに斜に立つ。根元から多くの枝が分かれて横に大きく広がる。雌雄異株で、花は春(3〜5月)に咲き、雌木は秋(9〜10月)になると赤い実をつけ、味はわずかに甘い。

本州日本海側の秋田県真昼岳鳥取県伯耆大山の高山など多雪地帯に自生する。鳥取県伯耆大山の8合目近辺にあるキャラボクの群生地は天然記念物のダイセンキャラボクとして知られる。また朝鮮半島にも分布する。

名の由来は、キャラボクの材が、香木キャラ(伽羅)に似ているためだが、全くの別種である。

キャラボクと通常のイチイを比べた場合。全体的にはイチイの方が葉が明らかに大きい。イチイとの最大の違いは、イチイのように葉が2列に並ばず、不規則に螺旋状に並ぶ点である。ただし、イチイも側枝以外では螺旋状につくので注意が必要である。

用途

ファイル:Taxus wood.jpg
樹齢27年のイチイ。外周部は白太、心材と樹心は赤身、濃い放射状の部分は節目である。

植木

耐陰性、耐寒性があり刈り込みにもよく耐えるため、日本では中部地方以北の地域で庭木や生垣に利用される。東北北部と北海道ではサカキヒサカキを産しなかったため、サカキ、ヒサカキの代わりに玉串など神事に用いられ、神社の境内に植えられる。

木材

木材としては年輪の幅が狭く緻密で狂いが生じにくく加工しやすい、光沢があって美しいという特徴をもつ。工芸品や机の天板、天井板、鉛筆材として用いられ、岐阜県飛騨地方の一位一刀彫が知られる。また弾力性に富むことから、アイヌはイチイを狩猟用の弓を作る材料として使用した。

古代日本(一説には仁徳天皇の時代)では高官の用いるを造るのにこの木が使われた。和名のイチイ(一位)はこれに由来するという説もある[2]

心材が赤いため、赤色の染料にも用いられる。

果実

果実は甘く、そのまま食用にしたり、焼酎漬けにして果実酒が作られる。

しかし種子には有毒・アルカロイドタキシン(taxine)が含まれている。種子を誤って飲み込むと中毒を起こし、量によっては痙攣を起こし、呼吸困難で死亡することがあるため注意が必要である。イチイのタキシンは果肉を除く葉や植物全体に含まれる。

葉はかつて糖尿病の民間薬としての利用例があるが、薬効についての根拠はなく、種子と同様有毒であるために絶対に服用してはならない。

保全状態評価

LOWER RISK - Least Concern (IUCN Red List Ver. 2.3 (1994))[3]
ファイル:Status iucn2.3 LC.svg
ワシントン条約の附属書IIに掲載されている[4]

地方公共団体の木

都道府県

市町村

文学

ヨーロッパの文学や神話伝承でしばしば「イチイ」と訳される樹木が登場するが、基本的に、近縁種のセイヨウイチイテンプレート:Snamei)のことである。イチイと訳されるヨーロッパ諸言語(テンプレート:Lang-enテンプレート:Lang-deテンプレート:Lang-fr など)は、広義にはイチイ属を広く意味する。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

  • 米倉浩司・梶田忠(2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 広辞苑』第3版 134ページ 1978年
  • 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「IUCN」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  • CITES species database