アローエンブレム グランプリの鷹

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アローエンブレム グランプリの鷹』(アローエンブレム グランプリのたか)は、東映動画制作のテレビアニメ1977年9月22日1978年8月31日までフジテレビ系列で木曜19:00 - 19:30に放送。全44話。

ストーリー

レース中の事故により、一度はレースの道を断念した轟鷹也。だが、今一度香取レーシングチームのドライバーとして、苦難や挫折を味わいながらも自身の経験、テクニックをマシンの設計に反映させながら、トドロキスペシャルなどで名うてのレーサー達を相手に世界のレースを戦っていく。

概要

いわゆるスーパーカーブームを受けてこの1977年秋(10月初頭前後)には、カーレースアニメだけで『激走!ルーベンカイザー』『とびだせ!マシーン飛竜』『超スーパーカー ガッタイガー』そして本作と4本も同時に放映され、文字通りの競争状態となった。このうち、半年以上続いたのは『グランプリの鷹』だけで、残り3作は半年で放映終了した。本作はリアルさにこだわった描写やそのドラマ性で確実に視聴者の心を掴み、本来の予定だった2クール以降の延長を成し遂げた。

しかし、延長決定時期が遅かったこともあり、2クールまでのスタッフの殆どが他のアニメ制作へと移ってしまい、スタッフが入れ替わったことで、F0(エフゼロ)以降のイメージが変わった。DVDボックスの資料の中でもかかれているが、本来の最終回となる予定だった回で、ラリーを走りきった後、ゴールを過ぎても走り続ける鷹也の姿を、エンディングで歩き続ける鷹也の哀愁漂う背中につなげる筋書きだった。当時としては珍しく大人の雰囲気を持つアニメだった。

8輪の化け物マシン・トドロキスペシャルや、宮川泰が手がけた哀愁溢れるEDが特徴的である。また実在のレーサーで番組放送当時に第一線で活躍していたニキ・ラウダ(作品中ではニック・ラムダ)やマリオ・アンドレッティらが物語世界の中に登場、リアル嗜好に拍車をかけると共にモータースポーツ、中でもF1の世界観を当時の子供たちに近づけた功績もある。

またポピーが発売したトドロキスペシャルをはじめとした本作の玩具は、同社の普段てがけているキャラクター玩具と比べると作品同様、リアル指向である。

なお、元々の企画は『グランプリの虹』というタイトルの女性レーサーによる少女向けアニメの企画だった。これは当時少女に対して人気を誇った『キャンディ・キャンディ』の影響だろうとされている[1]

キャラクター:キャスト

登場メカニック

トドロキスペシャル
T1は、香取モータースが1977年シーズンからのF1参戦に際し開発。プロトタイプは6輪(後1軸並列ダブルタイヤ)で、路面グリップ性能等の向上を図るため、轟鷹也の意見を元に実戦用は前2軸4輪でステアリングする8輪車に改設計された。テクニカルサーキット用である。外観のイメージや、なにより非4輪のフォーミュラカーというコンセプトは、タイレルP34を参考にしたものと推測される。
その後シーズン途中から実戦での経験をフィードバックし、同年フランスGPより、勾配サーキット用で常に最適なダウンフォースを得られる様に自動可変スポイラー(鷹也がフライト中の飛行機の主翼についているフラップを見てヒントにした、という設定)を装備したT2、また同年イタリアGPから、高速サーキット用に車輪配置を前後2軸ずつに改め、空気抵抗を減らし高速性能を改善したT3が現れ、サーキットに応じて使い分ける事となった。T3が轟の操縦により同年の日本GP決勝(富士)で優勝している。
番組中でエンジン周りの説明等はなかったが、当時発売されていた模型の説明文には「水平対向12気筒3000ccエンジン(最大出力500ps/12000rpm)」を搭載するとしていた。8輪による複雑なメカニズムから来る重量増をカバーするため、コスワースDFVフェラーリ水平対向12気筒の対決が頂点に達していた当時の趨勢の中では珍しく、自社製の非常に強力なエンジンを搭載していると推測される。
T3から車大作が開発したセンサータイヤと呼ばれるシステムが装着されたが、これは現在のABS(アンチロックブレーキ)システムに相当するものである。
なお、現実のF1レギュレーションでは、1983年に「4輪まで」と明文化され6輪や8輪のF1は存在しえなくなった。T2のような走行中に可変する空力パーツは、1960年代末にF1に空力パーツが登場したごく初期には存在したが、すぐに「走行中は動かさず、車体に固定すること」という規制が掛けられたため[2]、本作放送時点で既に禁止されており2010年までは存在できなかった。(2011年より「可変リアウイング(ドラッグリダクションシステム)」が認められた)。
カトリ・スーパーロマン
香取モータース製。スペックは当時のフェラーリ・512BBランボルギーニ・カウンタックLP500S等のスーパーカーに匹敵する。第1話ではテスト走行の段階で、番組放送期間中に市販に至ったと推測される。1977年のモンテカルロ・ラリーサファリ・ラリーワークス参戦、後者で優勝している。またレース専用にワークスで改造されたグループ5シルエットフォーミュラ仕様があり、同年のル・マン24時間レースで優勝している。くさび形のボディを持つ2軸4輪のマシンだが、轟はモンテカルロ・ラリーで、乾燥路面に時おり混じるアイスバーン対策として後輪に通常のレーシングタイヤ以外にスパイクタイヤを履かせ、後輪を1軸並列ダブルタイヤにしていた。
F0サムライ
1978年に施行された新レギュレーション「F0(エフゼロ)」に際し香取モータースが開発。同年の日本GP(浅間山麓)で轟の操縦により優勝している。エンジンはガスタービンを用いている。
F0(エフゼロ)
旧ソ連が赤い星レーシングチームを結成し、宇宙技術を生かしてF1で活躍、中東産油国も豊富な資金を使ってF1に参入するなど、F1は国威発揚の場と化していた。負けじとアメリカもビッグ3(GM、フォード、クライスラー)が資金と技術を出し合ってオールアメリカレーシングチームを結成したが、成績は全く振るわなかった。その原因がF1の細かなレギュレーションがシンプル&ビッグ好みのアメリカ人の性格に合わないためと考えたビッグ3は、F1のレギュレーションを全廃して、アメリカ好みの排気量無制限という新レギュレーションを国際自動車連盟に強引に認めさせた。

この他、ライバルとなるF1マシンでフェラーリ・312T2ロータス・78などが、またスーパーカーでは前述の512BBやカウンタックの他、ランチア・ストラトスなどが登場。当時のアニメ作品では珍しく実在の車両が数多く登場し、当時の画力、技術をもってリアルに描かれていた。

制作スタッフ

  • 企画:別所孝治、田宮武 → 横山賢二 
  • 原案・監修:保富康午
  • オリジナルデザイン:杉野昭夫、小林檀
  • 音楽:宮川泰
  • チーフディレクター:りんたろう西沢信孝
  • 製作担当:菅原吉郎
  • 編集:花井正明
  • 録音:田中英行
  • 演出助手:井上昭、高山秀樹、吉沢孝男、佐々木勝利、立花遊、野寺佳人、石岬進、蕪木登喜司、原田久、福島和美、森孝
  • 美術設定:椋尾篁 → 辻忠直
  • 美術:窪田忠雄、山口俊和、勝又激、辻忠直、坂本信人、金子英俊
  • キャラクター設計:野田卓雄、小泉謙三
  • 制作:フジテレビ、東映動画

主題歌・挿入歌

全曲とも、作詞は保富康午、作曲は宮川泰による。主題歌の編曲も宮川泰が行ったが、挿入歌の編曲は武市昌久が担当した。

主題歌シングルは1977年10月発売(SCS-382)。挿入歌の初出は1978年2月発売のサウンドトラックLP(CS-7051)だが、「太陽に走れ」と「燃えろ青春」はシングルカット(SCS-400)もされた。

主題歌

オープニングテーマ「グランプリの鷹」
歌:水木一郎フィーリング・フリー
キングレコードから池田鴻によるカバー版が発売された。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」にて、劇中、真希波・マリ・イラストリアスがこのテーマを口ずさむシーンがある。
エンディングテーマ「レーサーブルース」
歌:水木一郎

挿入歌

「太陽に走れ」
歌:水木一郎
「ちいさな思い」
歌:堀江美都子
「燃えろ青春」
歌:こおろぎ'73若羽会コーラス
「CHEER UP! YOUNG FRIENDS」という英語版が「ささきいさお 英語盤/アニメヒットを歌う」に収録された。

放送リスト

話数 初回放送日 サブタイトル 脚本 演出 作画監督
1 1977年
09月22日
栄光へダッシュ! 辻真先 りんたろう 南条文平
2 9月29日 いつか不死鳥のように 上原正三 芹川有吾 白土武
3 10月6日 怪物マシーンに挑戦 川田武範 森利夫
4 10月13日 明日へのスピンターン 生頼昭憲 野田卓雄
5 10月20日 傷だらけの爆走 研次郎 富永貞義
6 10月27日 仮面のかげに炎が燃える 辻真先 山吉康夫 上村栄司
7 11月3日 ロードグリップにかけろ 原田益次 鈴木孝夫
8 11月10日 吠えろ六輪車 りんたろう 南条文平
9 11月17日 激走500マイル 蕪木登喜司 菊池城二
10 11月24日 黒い氷の恐怖 石崎すすむ 富永貞義
11 12月1日 おれのF1・8輪車 上原正三 川田武範 森利夫
12 12月8日 スペイン・愛の嵐 生頼昭憲 青鉢芳信
13 12月15日 奪われた轟スペシャル 原田益次 谷口守泰
14 12月22日 ラ・マンチャの風車 りんたろう 南条文平
15 12月29日 吠えろル・マン 小泉謙三 菊池城二
16 1978年
1月5日
勝った! おれは走った 山吉康夫 上村栄司
17 1月12日 明日の凱歌は俺のもの 辻真先 小泉謙三 菊池城二
18 1月19日 田園に吠えるマシン達 原田益次 鈴木孝夫
19 1月26日 シルバーストーンのしぶき 佐々木勝利 小松原一男
20 2月2日 モンツァGP前哨戦 川田武範 森利夫
21 2月9日 男が翼をたたむ時 小泉謙三 菊池城二
22 2月16日 F1日本グランプリ 上原正三 森下孝三 青鉢芳信
23 2月23日 父に捧げるGP優勝 蕪木登喜司 鈴木孝夫
24 3月2日 そしてアフリカへ 生頼昭憲 菊池城二
25 3月9日 サファリ5000キロ 山吉康夫 森利夫
26 3月16日 キリマンジャロの誓い 小泉謙三 野田卓雄
27 3月23日 東西に敵を迎えて 辻真先 西沢信孝 富永貞義
28 3月30日 ロッキー山に翼たたんで 森下孝三 鈴木康彦
29 4月6日 ターゲットは鷹也だ! 藤川桂介 小泉謙三
30 4月13日 復帰第一戦に命をかけろ 葛西治 篠田章
31 4月20日 ロングビーチに迷える鷹 辻真先 山吉康夫
32 4月27日 炎のジェロニモ 森下孝三 上村栄司
33 5月4日 富士障害物レース 西沢信孝 兼森義則
34 5月18日 生き返れ!! サムライ 藤川桂介 福島和美 菊池城二
35 5月25日 恐怖のF・0第一戦 案納正美 篠田章
36 6月1日 嵐のトレーニング 辻真先 森下孝三 森利夫
37 6月15日 ローレライは死も招く!? 明比正行 篠田章
38 6月22日 風雲ニューブルクリンク 西沢信孝 兼森義則
39 6月29日 激突!! 死線を越えて 明比正行 森利夫
40 7月6日 炎と涙のサーキット 案納正美 篠田章
41 7月20日 走れ、飛べ、野生の鷹 藤川桂介 川田武範 上條修
42 7月27日 モスクワに散ったライバル 森下孝三 森利夫
43 8月17日 浅間燃ゆ! 日本最大のレース 辻真先 明比正行 篠田章
44 8月31日 鷹よ雲の彼方にはばたけ! 山吉康夫 兼森義則

放送休止理由(1978年、いずれもプロ野球中継で放送枠は19:00~20:54)
5月11日:広島-巨人~広島市民球場
6月08日:ヤクルト-巨人~神宮球場
7月13日:中日-巨人~ナゴヤ球場
8月03日:ヤクルト-巨人~神宮球場
8月10日:中日-巨人~ナゴヤ球場

脚注

  1. 『懐かしのTVアニメ99の謎』二見書房、赤星政尚、早川優、高橋和光 ISBN 4576941992 99、100頁
  2. 非常に高い位置にマウントされバタバタ動く、といったような非常に危なっかしい、「リヒトホーヘンを思わせる」(第1次世界大戦の時代のパイロットのことだが、その愛機である赤く塗られた3葉機「フォッカー Dr.I」のイメージ)ものまで現れたという(レン・テリー『レーシングカー その設計の秘訣』p.176)

外部リンク

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