アルビール

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テンプレート:世界の市 アルビールأربيل ; Arbīl. Irbil, Erbilとも表記する、クルド語:هه‌ولێر, Hewlêr ヘウレール)は、イラク北部の都市であり、クルド人自治区主都アルビール県県庁所在地でもある。日本では「アルビル」と表記されることが多く、英語表記からアービルやエルビルと表記することもある。アラビア語クルド語口語の発音上においても、長母音が短母音化してアルビルに近く発音されることもある。

概要

アルビール県の県庁所在地であり、同県を含むクルド人自治区の主都である。推計人口約660,000人(1991年)。

古くはアルベラ(Arbela)と呼ばれ、紀元前331年アレクサンドロス3世(大王)がダレイオス3世率いるアケメネス朝を破ったガウガメラの戦いの合戦場となった。また、紀元1世紀にはユダヤ教を受容したアッシリア人の国家アディアバネ王国の都が置かれていた。

2003年イラク戦争フセイン政権が崩壊し、2005年に連邦制を規定した新憲法が制定され、2006年にクルド自治政府が正式に発足して、アルビールがクルド人自治区の主都となる。

エルビールの旧市街地は、中心にシタデルと呼ばれる古い城塞があり、そこから放射線状に街が伸び、同心円上にバイパス道路が通じている。旧市街地とは独立するかたちで、中心からやや離れた幹線道路沿いで新市街地が発展しており、高層ビルの建設ラッシュが続いている。

経済

爆弾テロの続く首都バグダードなどとは対照的に、治安が大幅に改善していることから、最近ではヨーロッパトルコなどの外国企業の進出が相次ぎ、日本を含む各国企業がイラク進出の窓口としている。また、自治政府は中央政府とは一線を画した独自の油田開発を進め、石油資源の輸出から得られる資金を背景に経済成長が続いている。そのため、中東屈指の商業都市ドバイにあやかって「第2のドバイ」とも呼ばれている。

治安

以前は、多国籍軍やクルド人に対するアラブ過激派のテロが多く、2004年2月4日には109人が死亡する大規模な爆弾テロが起きている。2005年5月4日にも自爆テロが発生し、46人が死亡した。その後、自治区3州の治安はおおむね安定した状態が続いていたが、2007年5月9日には、アルビールの内務省前で、トラックに仕掛けられた爆弾によるテロが発生し、19人が死亡、70人が負傷した。(AFP通信より引用)

現在、クルディスタン地域の中でも、アルビール市については、クルド自治政府や主要政党の機能が集中しているため、市の出入口にあたる幹線道路には検問が敷かれ、市内の警備体制もクルド人自治区の他の地域と比較しても厳重になっている。また、住民の大半がイスラム教スンニ派のクルド人で宗派間対立が少なく、イラク国内の他地域とは異なり、テロ事件の発生が限定的であるなど、情勢は比較的安定しており、治安が大幅に回復している。日本の外務省が発出するイラクに対する渡航情報(危険情報)においても、イラク国内の他地域は「退避を勧告します。渡航は延期してください」または「渡航の延期をお勧めします」であるのに対し、アルビール周辺は「渡航の是非を検討してください」と危険情報が緩和されている。

2011年7月には、池上彰がアルビルを訪問し、復興の様子や治安の改善ぶりを取材している。(版日経ビジネスONLINEより引用)

2014年、イラクとシャームのイスラーム国の武力攻撃がアルビール近郊に及び、野砲による攻撃を受けるようになった。同年8月8日、アメリカ軍がイスラーム国に対して空爆を開始。空爆初日は、近郊に設置された野砲が攻撃対象となり、艦載機2機により撃破されている[1]

交通

市内にはアルビール国際空港があり、クルド人自治区の玄関口となっている。近年は外国企業の進出が増え、それに比例するように国際線の便数が年々増加している。かつてアルビール - キルクーク - バグダッドにメーターゲージの鉄道が存在したが1988年に廃止となった。現在ではアルビールからモスル、ザフーを経てトルコに至る路線が計画されている。[2]

脚注

  1. テンプレート:Cite news
  2. 最新世界の鉄道 p97

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