アラゲキクラゲ

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:生物分類表 アラゲキクラゲ(荒毛木耳、テンプレート:Snamei)は、キクラゲ科キクラゲ属に属するキノコの一種。

形態

子実体は柄を欠き、杯形ないし腎臓形であるが、しばしば互いに押し合って形がゆがみ、窪んだ面に子実層を形成し、背面の一端で樹皮に付着し、径1-7㎝、高さ5-1.5㎝程度になる。子実層面は不規則なしわを生じることが多く、鮮時には帯紫褐色~帯赤褐色で光沢をあらわすが、乾くと黒っぽくなり、充分に成熟すれば白粉を生じる。肉は薄く、生時には弾力に富んだ堅いゼラチン質あるいは膠質、乾くと強靭な軟骨質となるが吸湿すれば再び原形に戻り、ほぼ無味無臭である。背面には灰色の粗毛を密布し、ビロードのような触感があり、その一部がやや細い突起となって、宿主の樹皮などに着く。

担子器は初めは円筒形であるが、成熟すれば水平に走る隔壁によって四室に仕切られ、個々の小室から一本ずつの小柄を伸ばし、その先端に胞子を形成する。胞子は腎臓形ないしソーセージ状で、無色・平滑、発芽してただちに菌糸を伸ばすか、あるいは、まず胞子の表面に「C」の字状に湾曲した細長い二次胞子を形成し、遊離した二次胞子が発芽して菌糸を形成する。担子器の間隙には、二個のを含んだ不捻の糸状菌糸が密に配列し、さらにその隙間は無色のゼラチン質で満たされている。担子器が密に並列した子実層と子実体背面の表皮層との間の肉の組織も、ゆるく絡み合った菌糸で構成され、その間隙をゼラチン質が埋めているが、その中間には菌糸がより密に絡まり合った厚い層(メデュラ層)が存在している。子実体背面の毛は長さ0.5㎜にも達し、分岐することはなく、無色で厚壁である。

生態

おもに初夏から晩秋、さまざまな広葉樹の倒木・切り株・立ち枯れ木などに群生する。生きた樹木の枝枯れ部などに発生することもある。また、温暖な地域では、降雨に恵まれさえすれば冬にも発生がみられる。

本種の胞子は一個の核を含み、交配型は二極性であるという[1]

分布

日本中国朝鮮半島から、フィリピンタイ王国マレーシアなど、東南アジアの温帯から熱帯にかけて広く分布する。北米南米にも産する。一般に、温暖な地域に多いとされているが、日本では北海道北部まで分布が確認されている。

類似種

キクラゲは本種よりも子実体がやや小さく、その背面の毛も短くて目立たない点や、子実体の組織内部に存在するメデュラ層がずっと薄い点で区別されている。また、北海道から記録されたオオアラゲキクラゲ(Auricularia hispida Iwade)は、胞子にしばしば一枚の隔壁を生じ、子実体背面の毛は多数が集合して長い束状をなすことで区別されている[2]。 なお、アラゲキクラゲに似て全体が淡いクリーム色を呈するものを一品種として扱い、ウスギキクラゲ(Auricularia polytricha f. leucochroma (Y. Kobay.) Y. Kobay.)と呼ぶ。小笠原諸島(母島)産の標本をもとに記載された[3]

北アメリカにおいては、本種はAuricularia cornea Ehrenb.やAuricularia tenuis (Lév.) Farl. との間に相互稔性が認められるとされ、種としての範疇には今後の検討の余地があるという[4]

利用

外観が類似した有毒きのこが少なく、古来から食用菌として利用されている。歯切れを生かし、炒め物酢の物などに用いられる。「木耳」の字が当てられることが多いが、これはキクラゲその他をも包含した総称名で、特にアラゲキクラゲを指す場合は「毛木耳」と呼ばれることがある。

人工栽培

中国・台湾・日本・ベトナムなどで行われている。ほとんどが原木栽培によるが、一部では木粉などを混合して煉瓦状に成形した菌床で栽培される。

原木栽培
原木伐採は休眠期(11〜3月)に行い、数ヶ月の乾燥の後、種菌を接種する。
排水良好で直射日光の当たらない、散水管理が可能な林地に伏せ込む。
発生は、種菌を接種した年の 7月下旬頃から始まり、翌年以降は春から降雨のたびに発生する。
原木一代の発生は、3〜5年程度継続する。
菌床栽培
広葉樹の木粉に、栄養材として小麦のふすま・砂糖・大豆粉・コメ糠・バガス(サトウキビの搾りかす)あるいはライムケーキ(テンサイの搾りかす)などを混合し、さらにpH調節のために、石膏や過リン酸カルシウムなどを適宜に加える。
培地の含水率を65パーセント程度に調整した後、コンテナに均一に充填し、滅菌する。放冷した後、無菌的に種菌を接種する。
18〜23℃の温度で約一ヶ月間培養し、培地の全面に充分に菌糸が蔓延し、子実体の原基が発生し始めたら、空中湿度の高い雰囲気下に移す。適度な空中湿度が保たれていないと、子実体は正常に展開・発育しない。また、一定の光量がないと着色せず、子実体の発育自体も阻害される。
原基形成の開始後、10日め程度から収穫が可能となる。適正な管理が行われれば一年間に3〜6回の収穫ができる。

脚注

  1. Luo, X. C., 1988. Studies on the polarity of Auricularia auricula and Auricularia polytricha. Acta Mycolociga Sinica 7:56-61.
  2. 岩出亥之助、1944. 日本産菌蕈類の研究 第一報. 数種の新種並稀種菌蕈類.東京大学農学部演習林報告33:49-64.
  3. Kobayasi, Y., 1981. The genus Auricularia. Bulletin of the National Science Museum, Tokyo. Series B (Botany) 7:41-67.
  4. Wong, G. J., and K. Wells, 1985. Comparative morphology, compatibility, and interfertility of Auricularia cornea, A. polytricha, and A. tenuis. Mycologia 79: 847-856.

外部リンク

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