アメリカ沿岸警備隊

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アメリカ沿岸警備隊(アメリカえんがんけいびたい、United States Coast Guard : USCG)は、アメリカ合衆国における沿岸警備隊国土安全保障省に所属し、人員は約42,000名。

アメリカ軍を構成する「陸軍」・「海軍」・「空軍」・「海兵隊」に次ぐ5番目の軍隊準軍事組織)であり、最小規模の武装組織でありながら、法の強制執行権を有し、捜索救難海洋汚染の調査から沿岸整備や監視まで幅広い任務にあたっている。また、隊員は海軍特殊部隊Navy SEALs)への応募資格がある。

日本国内では、横田基地内にアメリカ沿岸警備隊極東支部 (U.S. Coast Guard Far East) がある。かつては南鳥島硫黄島浦幌町(十勝太)にロラン局上瀬谷慶佐次通信所があった。

沿革

1790年8月4日財務省傘下に設立された「税関監視艇局(United States Revenue Cutter Service)」を前身とする。1798年擬似戦争を期に海軍が再設立されるまで、税関監視艇局がアメリカ合衆国唯一の海上武装組織であった[1]

1915年1月28日に「税関監視艇局」と「救命局(United States Life-Saving Service)」が統合され「沿岸警備隊(Coast Guard)」となった。1939年には「灯台局(United States Lighthouse Service)」を吸収した。1967年運輸省(United States Department of Transportation)が設置されると沿岸警備隊はその傘下に移管された。

アメリカ同時多発テロ事件の影響を受け、2003年3月31日国土安全保障省が設置され移管。

概要

国土安全保障省の管轄下にあり、連邦機関として法執行権限を有する。それにより海上および五大湖などの内水面における治安維持捜索救難環境保全、海洋調査等にあたっている。「カッター」と呼ばれる哨戒艦艇(大型巡視船)[2]および航空機多数を保有し、アメリカ各地に拠点を持つ。本部所在地はワシントンD.C.

1915年1月28日議会が提出した法案によって沿岸警備隊は現在の形となった。沿岸警備隊設置の法的根拠は合衆国法典第14編(沿岸警備隊)第1条に「沿岸警備隊は1915年1月28日に設立され、軍事組織となり合衆国軍常備部門となる。」(テンプレート:合衆国法典)とある。また、第10編(軍隊)第101条テンプレート:合衆国法典)では、陸海空軍・海兵隊と並び、アメリカ合衆国の軍隊(armed forces)であることが示され、国防への協力も任務とされている(テンプレート:合衆国法典)。

合衆国議会における宣戦布告大統領の命令等の戦時には、アメリカ海軍の指揮下に入る(テンプレート:合衆国法典)。そのため、第二次世界大戦朝鮮戦争ベトナム戦争などにも参加している。

モットーは"Semper Paratus"(ラテン語)、英語にすると"Always Ready"、つまり『常に備えあり』で、いつでも事態に対処できるようにしているということである[3]

構成

階級

アメリカ沿岸警備隊長官(Chief of the Coast Guard)は大将(Admiral テンプレート:合衆国法典)であり、1名が補されている。

士官
士官 Officers
大将

Admiral (ADM)

中将

Vice Admiral (VADM)

少将(上)

Rear Admiral [4][5] (RADM)

少将(下)

Rear Admiral, Lower Half (RDML)

大佐

Captain (CAPT)

中佐

Commander (CDR)

少佐

Lieutenant Commander (LCDR)

大尉

Lieutenant (LT)

中尉

Lieutenant Junior Grade [4][5] (LTJG)

少尉

Ensign (ENS)

O-10 O-9 O-8 O-7 O-6 O-5 O-4 O-3 O-2 O-1
准士官
准士官の階級の最上位は4等、最下位は2等である。2等以上は大統領名によって任命される。沿岸警備隊では5等及び1等の階級は設定されていない。
准士官 Warrant Officers
4等准尉

Chief Warrant Officer Four

3等准尉

Chief Warrant Officer Three

2等准尉

Chief Warrant Officer Two

W-4 W-3 W-2
下士官
下士官 Non Commissioned Officer
沿岸警備隊最上級兵曹長

Master Chief Petty Officer of the Coast Guard (MCPOCG)

地域等最上級兵曹長

Master Chief Petty Officer of the Coast Guard Reserve Force or Area/DCO/DCMS Command Master Chief Petty Officer

部隊等最上級兵曹長

Command Master Chief Petty Officer (CMC)

最上級兵曹長

Master Chief Petty Officer (MCPO)

上級兵曹長

Senior Chief Petty Officer (SCPO)

兵曹長

Chief Petty Officer (CPO)

一等兵曹

Petty Officer First Class (PO1)

二等兵曹

Petty Officer Second Class (PO2)

三等兵曹

Petty Officer Third Class (PO3)

E-9 E-8 E-7 E-6 E-5 E-4
41px
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Seamen
上等水兵

Seaman (SN)

一等水兵

Seaman Apprentice (SA)

二等水兵

Seaman Recruit (SR)

E-3 E-2 E-1

養成

士官の養成は、コネチカット州ニューロンドンにあるアメリカ沿岸警備隊士官学校によって行なわれる。4年間の教育を受けた後に、理学士の資格を得て、少尉に任官される。艦艇(カッター)乗員や陸上勤務のほか、一部は航空機搭乗員の訓練に回される。卒業生には最低5年の任官義務がある。他の軍と異なり、予備役将校訓練課程は設置されていない。

新兵については、ニュージャージー州ケープメイにあるケープメイ沿岸警備隊訓練センターにて8週間の基礎訓練・教育が行なわれる。

また、法律家技術者など7千名以上の文民を採用している[6]

組織

2014年現在、沿岸警備隊は国土安全保障省に属する。

すべての下部組織は沿岸警備隊長官に属する。

方面部隊

海上保安部隊

沿岸警備隊は海上の管轄地域を大きく太平洋大西洋(五大湖含む)方面に分け、太平洋方面4個管区、大西洋方面5個管区にて担当している。

海上管区別方面部隊
保安方面 管区名 指揮本部 担当地域
大西洋方面 第1管区 マサチューセッツ州ボストン ニューイングランド各州、ニューヨーク州、北部ニュージャージー州
第5管区 バージニア州ポーツマス ペンシルベニア州、南部ニュージャージー州、 デラウェア州メリーランド州、バージニア州、ノースカロライナ州
第7管区 フロリダ州マイアミ サウスカロライナ州ジョージア州、東部フロリダ州
第8管区 ルイジアナ州ニューオーリンズ 大規模河川など
第9管区 オハイオ州クリーブランド 五大湖周辺
太平洋方面 第11管区 カリフォルニア州アラメダ カリフォルニア州、アリゾナ州ネバダ州ユタ州
第13管区 ワシントン州シアトル オレゴン州ワシントン州アイダホ州ワイオミング州
第14管区 ハワイ州ホノルル ハワイ州
第17管区 アラスカ州ジュノー アラスカ州

航空基地所在地

航空管区別方面部隊
保安方面 管区名 基地所在地
大西洋方面 第1管区 マサチューセッツ州ケープコッド
第5管区 ノースカロライナ州エリザベスシティ、ニュージャージー州アトランティックシティ
第7管区 フロリダ州クリアウォーター、フロリダ州マイアミ、ジョージア州サバンナ、プエルトリコ
第8管区 テキサス州ヒューストン、コーパスクリスティ、ルイジアナ州ニューオリンズ。アラバマ州モービル
第9管区 ミシガン州デトロイト、ミシガン州トラバースシティ
太平洋方面 第11管区 カリフォルニア州フンボルトベイサクラメント
サンフランシスコロサンジェルスサンディエゴ
第13管区 オレゴン州アストリア、ノースバンド、ワシントン州ポートエンジェルス
第14管区 ハワイ州バーバーズポイント
第17管区 アラスカ州コディアックシトカ

主な装備

艦船

カッター
ボート

航空機

銃器

アメリカ沿岸警備隊に関する映画

関連項目

脚注

テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:Sister テンプレート:アメリカ合衆国

テンプレート:アメリカ合衆国の行政組織テンプレート:Gunji-stub
  1. 沿岸警備隊は戦時には「第1艦隊 (First fleet)」として編成される、とする説が流布されているがこれは正しくない。1790年からアメリカ海軍の艦隊が編成される1798年までの間、アメリカの唯一の海上兵力としてアメリカの海上交易を保護したという歴史に敬意を表して「第1艦隊」という非公式な名称を持っているだけの話であり、第1艦隊は1946年から第3艦隊に編入され消滅・欠番となる1973年まで沿岸警備隊とは無関係に存在していた
  2. 諸外国の領域警備制度 p5 高井晉ほか 防衛研究所紀要 第3巻第2号 2000年11月
  3. ボーイスカウトの「備えよ常に」に似るが、命令されているのではなく自発的にやっているという点が異なる
  4. 4.0 4.1 [1] 14 USC 41. Grades and ratings
  5. 5.0 5.1 [2] 37 USC 201. Pay grades: assignment to; general rules
  6. USCG Civlian Careers