ワカメ

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ワカメ(100g中)の主な脂肪酸の種類[1]
項目 分量(g)
脂肪 0.64
飽和脂肪酸 0.13
14:0(ミリスチン酸 0.007
16:0(パルミチン酸 0.117
18:0(ステアリン酸 0.006
一価不飽和脂肪酸 0.058
16:1(パルミトレイン酸 0.019
18:1(オレイン酸 0.02
20:1 0.02
多価不飽和脂肪酸 0.218
18:2(リノール酸 0.01
18:3(α-リノレン酸 0.002
20:4(未同定) 0.021
20:5 n-3(エイコサペンタエン酸(EPA)) 0.186
乾物100g中の食物繊維[2]
項目 分量
食物繊維総量 68.9 g
水溶性食物繊維 9.0 g
不溶性食物繊維 59.9 g

ワカメ若布和布稚海藻[3]学名テンプレート:Snamei)は、褐藻綱コンブ目チガイソ科海藻である。アオワカメテンプレート:Snamei)は別種。

概要

日本海側では北海道以南、太平洋岸では北海道南西部から九州にかけての海岸、朝鮮半島南部の両岸の、低潮線付近から下に生育する。根状の部分で岩などに固着し、葉状部を水中に伸ばし、長さは2mにも達する。葉状部の中心には主軸があって、それを中心に左右に広く伸び、大きく羽状に裂ける。広がった葉の基部には、とても厚くなった葉状部がちぢまり、折れ重なったような部分がある。これをメカブ(和布蕪)と呼び、生殖細胞が集まっている部分である。

ワカメは世代交代を行なう。一般に知られているワカメは胞子体(複相世代)であり、メカブで作られた遊走子から発芽した配偶体は、ごく小さなものである。

海苔と同じく、古くから日本人に親しまれてきた海藻であり、『万葉集』にも現れている。主に食用として用いられ、酢の物、汁物の具として使われたが、豊作祈願の神事などにも利用されていた。

侵略的外来種

ワカメは、世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の1つである。

ワカメの遊走子が日本からの商船バラストタンクに注入されたバラスト水に混入した状態でニュージーランドオーストラリアヨーロッパ諸国の沿岸域に運ばれ、そこで水と共に放出されて増殖しており、外来生物として問題になっている。

語誌 と歴史

ワカメは乾燥が容易で、軽く移動も容易であったこともあり、先史から日本で広く食べられていたことが確認されている。縄文時代の遺跡からは、ワカメを含む海藻の植物遺存体が見つかっており[4]、この時代から食されていたことが明らかになっている。

和語では古くは、藻類の「も」に対し、食用の海草一般を「め」と呼んでいた。漢字では、古くは「海藻」(平城宮木簡)、「軍布」(万葉集、藤原京木簡)、「和布」(色葉字類抄)などと当てられていた。古代に食されていた海藻の主体はワカメであったらしく、この「め」は、特にワカメを指していた[5]。ワカメという語は、「ワカ+メ」、つまり若い(新しい)海藻に由来する。「ワカ」を「タマ(玉)」などと同じ美称と捉えれば、古代にあっては海藻類一般を指していた可能性があり、それがワカメを特定する名称となったのは中世以降かもしれない[6]。万葉集には「和可米」「稚海藻」(いずれも訓は「わかめ」)の他、「和海藻」(「にぎめ」、やわらかいワカメのこと)が見られる。他に、万葉集に頻出する「玉藻(たまも)」も、歌によってはワカメを指すかもしれない。

各地で採れたワカメを朝廷への献上品としていたことが確認できる(平城宮木簡)。延喜式(927)によれば、ワカメを含む多くの海藻が神饌として奉納されており、さらには『正倉院文書』などによると、給与としても用いられていた[7]

利用

食用

旬のものであれば生で流通することもあるが、主に葉の部分を塩漬けしたり乾燥させたりして保存性を高めて商品化される。使うときは水に漬け、塩抜きあるいは戻して用いる。メカブは湯通ししてからそのまま食べるか、乾燥させてから細かく切って流通されることが多い。市販のワカメは緑色であるが、生きた状態では褐色であり、湯通しすることで緑色となる。

ワカメは味噌汁などの汁物の具としてよく使われる。他にも酢の物、炒め物、サラダ、地域によっては天ぷらやしゃぶしゃぶ等幅広く料理される。メカブは細かく叩いて粘りを出したものがパックになって売られることもある。旨み成分を多く含み、また低カロリーであることから、ダイエット食品としても適している。ワカメに多く含まれる栄養素は、食物繊維アルギン酸、フコイダンなどで、血中コレステロール値を下げたり、動脈硬化や心筋梗塞を防ぐなどの効果があると言われている。

ワカメを食用に供する習慣はほぼ日本と朝鮮半島にしかなく、日本や朝鮮半島と同じく海藻を食べる習慣が一応ある中国ですら食べなかった。しかし中国でも近年は日本からの養殖技術の導入により、日本向けの輸出用に養殖されたものが中国国内の市場に出回り、食べられるようになっている。

一方で、朝鮮半島ではワカメを日本以上に多食し、韓国国民一人あたりの年間ワカメ平均消費量は、日本の三倍と言われている。日本と異なり、韓国では天然ワカメと養殖ワカメに歴然としたブランド格差があり、天然ワカメは非常に貴重視され高値で取引される。天然ワカメが取れる磯や海域は畑や田と同じ不動産扱いされ、厳しい管理のもとで一族に代々相続される。また、韓国では誕生日にワカメのスープを飲む習慣がある。

健康食品としての機能

高血圧症とワカメ
ワカメ等の海草類に含まれるアルギン酸は、消化管中で食物中のナトリウムと化合し一部がアルギン酸ナトリウムに変化する。アルギン酸ナトリウムはヒトの腸管内の消化酵素では分解できないため便として排出される、結果的に体内へのナトリウム吸収量が抑制されることになる。また、ペプチド類にはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用のタイプも含まれており、ラットによる動物実験では吸収されたペプチドによる血圧降下作用が示されている[8]
肥満予防効果
ワカメに微量に含まれるフコキサンチンは肥満予防効果があることが解明されている[9][10]

水質浄化機能

横浜の「みなとみらい地区」の地先海域では、「夢ワカメ・ワークショップ」という環境教育のプロジェクトを行っており、地元の小学生など総勢三百名で横浜港でワカメを養殖している。ワカメは海中のリン窒素を取り込みながら成長し、海水をきれいにする。

ワカメにまつわる隠語

タクシー運転手の間では隠語として「回送」の意(海藻にかけて)、もしくは酔っ払いの客の意(揺ら揺ら揺れている事から)で使用される。また陰毛を表す隠語として用いられる事もある(わかめ酒)。

また、コンパクトカセットVHSなどのテープメディアが損傷した時に形状がワカメのようにくしゃくしゃになってしまうことから用いられることもある。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister

テンプレート:Protist-stub
  1. http://ndb.nal.usda.gov/
  2. 海藻の食物繊維に関する食品栄養学的研究、吉江由美子、日本水産学会誌、Vol.67 (2001) No.4 P619-622
  3. 大辞林にある「裙蔕菜(裙蒂菜)」はワカメの漢名であるが、貝原益軒の『大和本草』などごく一部書物を除いて、日本で実際に使われることは極めて稀である。
  4. 日本ひじき協議会わかめ健々学々
  5. 「め」は、元々ワカメを指していたが、やがて海藻一般を指すようになったとする説もある。小島憲之 他(校注・訳), 『新編 日本古典文学全集7 萬葉集(2)』, 東京, 小学館, 1995, 225頁.
  6. 日本国語大辞典』第2版, 小学館, 2000-2002年。
  7. 二野瓶徳夫, 「和布」の項, 『国史大辞典』より, 吉川弘文館, 1979-1997.
  8. テンプレート:PDFlink 水産大学校研究報告 第51巻 第4号(2003年3月発行) p.141-146
  9. 金沢和樹 「フコキサンチン」『日本食品科学工学会誌』55号、2008年、194頁
  10. 宮下和夫・細川雅史「海藻中に含まれる多機能性カロテノイド:フコキサンチン」 『日本水産学会誌』 Vol.74 (2008) No.2 P261-262