ポン酢
ポン酢(ポンず)とは、柑橘類の果汁を用いた和食の調味料である。
語源
オランダ語 pons に由来する[1](現代オランダでは廃語)。pons は、英語の punch (パンチ、ポンチ)からの借用語で[2]、酒類を湯や牛乳で割り、果汁やソーダや糖を加えた一種のカクテルである。この語の正確な語源はわかっていないが、一説によれば、5種類の材料から作られることから マラーティー語(とヒンディー語)で「5」を意味する pānch と呼ばれているインドの飲み物に由来するという[2]。すでに1632年には英語文献に現れている。
日本ではもともとは「ポンス」と呼ばれていて、楢林雑話(1799年)で「和蘭の酒をポンスと云、これを製するには、焼酎一杯、水二杯沙糖宜きほどに入、肉豆蒄、香気あるために入」とある。日国に載っているこの語のヴァリアントの初出を年代順にしるせば、「ポンス」(1799年)、「ポンチ」(1887年)、「パンチ」(1969年) となる。後二者は英語 punch からの音訳である。
これが次に橙をはじめとする柑橘系果実の絞り汁を指すようになり、この意味での文献への初出は1884年で「又その売品は一切安売にて、其中橙は例のポンスに製することも出来るより気強く」(東京横浜毎日新聞[1])とある。やがてポンスはポン酢と解されるようになり、今日に至る。
定義
狭義のポン酢は、レモン、ライム、ダイダイ、ユズ、スダチ、カボスなど柑橘類の果汁に酢酸を加えて味をととのえ保存性を高めたものである。酢酸を加えない柑橘類の果汁を特に生ポン酢と呼ぶこともある。
ほかに、とくに日常会話では、以下に解説する“ポン酢醤油”を指して「ポン酢」と略称することが一般的である。
ポン酢醤油
ポン酢醤油(味付きポン酢)は、柑橘類の絞り汁に醤油を加えた調味料のこと。酢、味醂、鰹節、昆布などを加えることもある。 醤油と同様に幅広い料理に活用でき、主としてフグなどのちり鍋、鶏肉の水炊きなどの鍋料理を食べる際に手元の小鉢にとる付けタレとして用いられてきた。和食だと白身魚の刺身や冷しゃぶ、豆腐料理、あん肝や鰹に紅葉おろしと一緒にかけたり、酢の物などの酸味の適した料理の付けタレ、かけタレとしても用いられたりする。洋食ではドレッシングの感覚でサラダにかけたりして和洋中問わず使われる場面が多い。 また餃子、秋刀魚などの焼き魚、蒸し物等を食べる時にも好みに応じて使われる。 マヨネーズと合わせて和風のドレッシングにするなどしてさまざまな料理に応用することもある。 冷やし中華や餃子に付けダレとして袋に入ったポン酢醤油がついてくることも多い。
一部の相撲部屋ではちゃんこ鍋に使うポン酢は市販のものを買うのではなく、酒石酸に醤油を混ぜたものを使い、香りづけに柑橘類を絞ったものを入れている。
2011年頃から、各社から相次いで「ジュレタイプ」のポン酢が発売され、それぞれ好調な売れ行きを見せている[3]。
レシピ例
材料
- 柑橘類の果汁:5
- 醤油:2から3
- 日本酒:1
- 出汁昆布:適宜(数cm分)。
- 鰹節:適宜(好みによって数gから数百g)。
作り方
- 醤油と酒を合わせ、そこに出汁昆布をいれて半日置く。
- 昆布を取り除き、火にかける。
- 煮立ったらすぐに鰹節を鍋に投入して火を消し、ゆっくり冷ます。
- 冷めたら漉して、鰹節を取り除く。
- 4と果汁とを合わせ、冷蔵庫で数日寝かせて熟成させる。
脚注
参考文献
- 東和男『発酵と醸造 3』(光琳、2004年、ISBN 4-7712-0026-2)